【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

女○○

2021-12-26 14:45:52 | Weblog

 おなご先生(女教師)、女給、女漫才師、女社長、女医……こういった言葉には「この職業は本来男のものだった」という主張が込められているように私には感じられます。さらにその言葉が言われ始めた時には、「その職業で女性はまだ少数派」であると同時に「女性がその職業に就くことが社会的に公認されている」ことも示されていると私は考えます。
 最近は「女上司」ということばがネットで登場します。すると、「上司」という“職業"もまた、現在は女性は少数派であるけれど、これからどんどんその割合は増えていく(真に男女平等の社会(会社)ではその割合は半々に近づく)はずということでしょう。
 そういえば、政治の世界で、首長が女性、は日本ではまだまだ少数派ですが、「女議長」「女市長」「女都知事」なんて呼び方はされていませんね。ということは、日本で「女性の首長」はまだ社会に(少数派としてさえ)“公認"されていないのかな。

【ただいま読書中】『食卓を変えた植物学者 ──世界くだものハンティングの旅』ダニエル・ストーン 著、三木直子 訳、築地書館、2021年、2900円(税別)

 19世紀末、建国してまだ100年ちょっとのアメリカには「アメリカの食べ物」と言えるものはほとんどありませんでした。入植者の食事は、トウモロコシまたは小麦やライ麦のパン、バター、ベーコン、豆、ジャガイモ、という質素なものでした。それを大きく変えたのが、あまり腕の良くない植物学者で素人スパイのデヴィッド・フェアチャイルドです。
 彼がアメリカに持ち込んだのは、シトロン(コルシカ)を皮切りに、ザクロ(マルタ)、スイカとアボカド(チリ)、パイナップル(南アフリカ)、ケール(クロアチア)、種無しブドウ(イタリア)、パパイヤ(セイロン)、デーツ(イラク)、大豆(インドネシア)、マンゴー(ヴェトナム)、モモとマイヤー・レモン(中国)……この足跡を辿るだけで、圧倒されます。そうそう、食べ物ではありませんがエジプト綿(エジプト)と桜(日本)も彼はアメリカに持ち込んでいます。
 1870年頃からアメリカの「食事」「食べ物」は変化し始めていました。缶切りなどの新しい調理器具が普及し、「バランスの取れた栄養」という概念も普及し始めます。料理法も多彩になり、本書では「最上流階級では卵が、ポーチドエッグ、茹で卵、目玉焼き、スクランブルエッグ、エッグクリーム、またはエッグノッグとして供された」と嬉しそうに書いてあります。江戸時代の「卵百珍」を教えてあげたいなあ。ともかくアメリカは「デヴィッド・フェアチャイルド」を必要としていたのです、それも切実に。
 熱意は溢れるほどあるが、現実的な目的や手段を欠いてまごまごしている若者に、偶然出会った大富豪のランスロップが「慈善ではなくて投資として」ジャワ行きの旅費を出してくれることになります。
 こういった「個人の冒険物語」と並行して、「植物の歴史」「食物の歴史」が同時に語られます。それと「アメリカの(食の)歴史」も。
 今私たちが普通に食べているもの、これらはちょっと前には「普通」ではなかったことを思い出させてくれる本でした。例えば、カリフォルニアのオレンジ、輸入牛肉、キーウィなど、昭和の私の子供時代には「日本では売っていないもの」でしたっけ。今ではその辺のスーパーで簡単に手に入りますけどね。