10月5日のNY金は4営業日ぶりの反落に。NYコメックスの通常取引は9.70ドル安の1720.80ドルで取引を終了した。今週に入り水準を切り上げていた貴金属全般も反落に。
週明けに発表された全米製造業の景況指数の低下や前月比で10%ほど減少した求人件数などを受け、米連邦準備理事会(FRB)がタカ派姿勢を転換するとの見方が浮上し、米長期金利が低下。同時に主要通貨に対しドルも売られドル指数(DXY)は4日には1日の下げ率が20年3月以降で最大(ロイター)となっていた。それに対し5日は、こうしたセンチメントに早くも修正を促すように、朝方発表された雇用関連指標が底堅い内容となったほか、FRB高官の金融引き締め環境が長期間続くというタカ派的な見通しを相次いで表明したことで、流れは反転した。ただし、市場の動きは比較的小さかった。米10年債利回りは3営業日ぶりに上昇し3.757%に、DXYも前日比1%上昇し111.208で終了した。前日まで大きく値上がりしていた米国株は小幅に反落となった。株価は10月3、4日と米長期金利が大きく下がったからと株価は急騰したが、昨日書いたように4日はすでに下げ止まっていた。
長期金利もDXYも戻ったことで、5日のNY金は、ロンドン時間に一度は前日比プラス圏に浮上したものの、売り直される形でNY時間は水準を切り下げることになった。NYの昼前には1708.80ドルまで売られたものの、終盤に向け買戻しの動きが見られ下げ幅を縮小。通常取引は冒頭で触れたように1720.80ドルで終了。その後の時間外取引でも買いが見られ、1725.10ドルで終了となった。
この日企業向け給与計算サービスのADP(オートマチック・データ・プロセッシング)が発表した全米雇用報告では、民間雇用者数は9月に20万8000人増加した。市場予想(20万人増)を上回った。統計では新たに賃金に関するデータも示され、職を変えなかった人の賃金の伸びは7.8%と、増加率は少なくとも2年ぶりの大きさとなった。FRBによる急激な利上げの中で、労働市場が勢いを失っていないことが示された。一方、同じ日に発表された9月のISM(米供給管理協会)非製造業景況指数は56.7と8月から小幅に低下したものの、市場予想(56.0)を上回った。
今週もFRB高官の発言が続いているが、この日はアトランタ連銀のボスティック総裁が、政策金利を年末までに4~4.5%に引き上げた上で金融引き締めを維持すると発言。この辺は、ほかのメンバーも同じことを言っているし、言ってきた。おっつ!!と思ったのは、次の発言だった。
「緩和に向かって急転換することは支持しないし、その逆だ。経済活動が減速してインフレ率が減速し始めれば2023年に当局は利下げに着手する可能性があるとの臆測が既にかなり広がっているのはもちろん承知の通りだが、私ならそれほど早期ではないと言うだろう(10月5日、Bloomberg)」。
まさに週明け2営業日に起きた(結果的に株価を急騰させた)市場の緩和観測をけん制したもので、先走りする市場に釘をさすことになった。
一方、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、0.75%幅の利上げペースを減速させるには高いハードルがあるとした。(変動の大きいエネンルギーと食品を除いた)コアインフレ率が上昇する中で引き締めのペースを減速させることは「非常に困難」だと強調している。8月の米消費者物価指数(CPI)でコア指数が、前年同月比6.3%上昇と、7月の同5.9%上昇から加速した経緯がある。9月のCPIは来週10月13日に発表予定となっている。