亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

FRBを勢いづかせる雇用統計、金は反落

2022年08月08日 19時49分03秒 | 金市場

先週末8月5日のNY市場の金価格は反落となった。発表された7月の米雇用統計は前月比の就業者数が予想値を大きく超えるサプライズとなり、景気の先行き懸念が後退。米連邦準備理事会(FRB)が 積極的なペースでの利上げを継続しやすくなるとの見方が広がり、発表直後に長期金利が急伸。発表前から強含みに推移していたドルは、対円を中心に満遍なく上昇となった。この動きを受けて雇用統計発表後から金市場は売りが膨らみ、NY金は1805ドルから1782ドルまで20ドルを超える下げに見舞われることになった。売り一巡後は、買い戻しの動きがみられたものの1790ドル台半ばまで戻すのがうやっとで、その後は狭いレンジの取引に移行し、そのまま終了となった。NYコメックスの通常取引は、前日比15.70ドル安の1791.20ドルで終了となった。その後の時間外取引でも水準に変化なく、1792.40ドルで週末の取引を終了した。前日に1カ月ぶりの1800ドル台で引けて、この日もNY時間外のロンドンの取引時間帯には1811.60ドルまで買い進まれていたが、雇用統計で暗転することになった。

 

7月の雇用統計だが、景気動向を映す非農業部門雇用者数(NFP)は前月比52万8000人増と、増加幅は今回2万人強上方修正された6月の39万8000人から拡大し、市場予想(25万8000人)も大きく上回った。失業率は3.5%と6月(3.6%)から低下し、2020年2月以来の低水準となった。市場予想(3.6%)も下回った。インフレとの関連で注目された平均時給の伸び率も前月比、前年同月比ともに市場予想以上となった。平均時給は前月比0.5%増となり、0.3%増の予想を上回り伸びが加速した。前年同月比では5.2%と市場予想の4.9%を上回った。

そもそも雇用者数の伸びの市場予想が前月を下回っていたのは、ここにきてハイテク企業の一角や小売業などでレイオフ(一時解雇)が増加していることがある。それを映し週次ベースの新規失業保険申請件数も増加傾向をたどっている。3月下旬に週16万件強と約53年ぶりの低水準から、7月下旬には26万件に達している。

FRBは今年3月以降の利上げサイクルで失業率は4.2%程度まで悪化を見込んでいるが、今回の結果を受け失業率がすぐに上昇しないとみて大幅な利上げを継続するとみられる。実際市場でも50bp(ベーシスポイント、0.5%)が有力視されていた9月の連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ幅は、75bp利上げ見通しの織り込みが急速に進んでいる。債券市場では10年債利回りが一時2.861%まで上昇。前日は2.697%だった。ドルは対円で1.5%高の134.99円まで買われ1日の上昇率としては6月半ば以来の大きさとなった。ドル指数(DXY)は一時106.930に急伸し(前日は105.693)106.621で終了。9月の利上げ幅予想の拡大と合わせファンドの金売り手掛かりとなった。

 

問題は雇用統計が遅行指数とされること。7月28日に発表された米4~6月期GDP速報値がマイナス0.9%と2期連続のマイナスとなったが、雇用市場は経済の減速に遅れて反応する傾向がある。ここまでのFRBによる1980年代を彷彿させる連続大幅利上げにより、今後失業率などは大幅に上昇するとの指摘も見られている。

今週は、10日(水)に米7月の消費者物価指数(CPI)、翌11日(木)に同生産者物価指数(PPI)の発表が控える。言うまでもなく消費者物価指数が注目度が高いが、前年比で前月の9.1%から8.8%の伸びに鈍化が見込まれている。8.8%でも40年ぶりの高水準に変わりなし。

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