亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

戻り売りのNY金に見る強さ  

2023年02月13日 20時37分59秒 | 金市場

先週末は9日夕刻から大阪出張につき更新できずに5日ぶりということに。

 

先週のNY金は、前週末に発表された1月の米雇用統計のサプライズとなった雇用者増の上振れにより大きく切り下げた水準(1876.60ドル)付近での滞留となった。具体的には、非農業部門就業者(NFP)の前月比51.7万人増に象徴される想定外の米労働市場の強さが、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げをさらに長引かせるとの警戒感が支配する市場環境が生まれることになった。

0.25%の利上げを決め政策金利を4.50~4.75%とした2月1日に終了した連邦公開市場委員会(FOMC)の時点ではなお、市場の見方は最終利上げ到達点金利(ターミナルレート)は5%超に至らずというものだった。5%超を見込むFRBとの間に見通しの温度差が存在していたが、市場予想(18.5万人増、ロイター)の3倍近い増加となったNFPの結果は、市場に対し政策金利見通しの修正を迫ることになった。

債券先物市場が表す金利見通しは5%を超え、市場とFRBの見方の違いは解消することになった。

そうなればなったで、今度は強気の引き締め継続は労働市場の強さゆえとの解釈から(その通りだが)景気後退(リセッション)に至らずソフトランディング(景気の軟着陸)が可能ではないかとの見方が台頭している。

ただし、それもインフレが一定の落ち着きをみせる必要があり、でなければ利上げは続き、結局やり過ぎに至ることになる。雇用が強いということはモノのインフレは収まっても、人件費などからサービスのインフレは収まらなければ、消費者物価指数(CPI)のコア指数自体も、これまで順調に鈍化してきたものの今後は時に月次の上昇もあるということになる。

足元で14日発表のCPIでは、月次の加速が想定されており、その上振れを市場は恐れている。

 

雇用に関連する指標は、遅行指標といって遅れて数字に表れることで知られるもの。ハイテク産業のみならず幅広く大企業が余剰人員の削減計画を発表し実行してる中で、そもそも単月の指標が上振れたというだけで全体の見方をすぐに変えるのもどうかなと思う。少なくとも3月3日に発表される2月分のデータに合わせ見直される数字を待つ必要があると思う。

 

話をNY金に戻すならば、先週後半、とくに9日、10日の値動きを見て思うのは1800ドル半ばで値固めに入る、いわゆる日柄整理に移行したのではということだ。

先週10日はNY時間の早朝にミシガン大学の2月の消費者信頼感指数(速報値)が発表され、66.4と前月の64.9から上昇し、2022年1月以来13カ月ぶりの高水準を付けた。その一方で、1年先の期待インフレ率は4.2%と1月の3.9%から上昇した。パウエルFRB議長が注目している指標として知られるもので、短期のインフレ期待の上昇には、このところのガソリン価格の上昇が反映されたとの指摘がある。根強いインフレ圧力を示すものとされ、利上げの継続観測を強めることになった。

この結果を受け、米10年債利回りは一時3.749%と1月6日以来の高水準を付け、ドル指数(DXY)は103.683まで見て103.630と前日比0.4%高で終了。ドル指数は2週連続で上昇。2週連続での上昇は昨年10月以来初めてとなる。

しかし、この環境の中でNY金は、1875ドルを挟む狭いレンジで推移し、そのまま終了した。この打たれ強さ(resilient)に注目している。

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