亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

インフレ高止まりで各種前提が崩れる金融市場 

2022年08月18日 19時53分14秒 | 金市場

1週間ぶりの更新になります。和歌山にて日々のNYの動向をチェックしながら、仕事とまったく関係ないことをやっておりました。月初の広島のセミナーでは、このブログの内容が難しいとの指摘をもらった。

さて今週はNY金が節目の1800ドル割れとなっている。

週初めに発表された中国の経済指標が減速したことを受けコモディティ全般が売られる中で、宝飾品を中心に同国の金需要の減少見通しもあり、NY金は全般相場に連動する形で心理的な節目1800ドル割れに。 先週末まで7月18日以降4週連続で上昇し、その上昇幅は111.90ドル、6.6%となっていた。ただし、その上昇の背景は先物市場におけるファンドの空売り(ショート)の買戻しだった。8月9日までの2週間で重量換算で約150トンものショートが解消されたが、それが1800ドル超への戻りを演出した。つまり現在は溜まっていた買戻し圧力が放出された状況にある。先週は新規買い(フレッシュ・ロング)とみられる動きもあったが、続かなかった。

17日は1770ドル台前半まで安値を見たが、中国指標にかぶる形でドルが再浮上し、ドル指数(DXY)が106ポイント台後半の3週間ぶりの高値に戻していること。さらに米10年債利回りも2.90%と7月20日以来約1カ月ぶりの水準に浮上したことも金の売りにつながった。とはいえ先物市場での買戻しが一巡し、地合いが悪化しているという内部要因の影響が大きいといえる。

なお、米長期金利の上昇については、17日発表の英国の7月CPI(消費者物価指数)が前年同月比10.1%上昇し、市場予想以上の伸びになり世界的なインフレ圧力の高さが意識されたことがあった。

 

注目の7月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨だが、タカ派、ハト派と目線によりどちらにも取れる内容となった。

まず、米国のインフレ圧力が弱まっているとの「証拠はほとんどない」とし、物価上昇を抑制するために必要なだけ経済を減速させる方針、すなわち利上げの継続方針を固めていることを強調した。ただし一方で、ここまでの利上げの効果を検証しながら、「どこかの時点で利上げペースを緩めることが適切になる」と判断していることが明らかになった。利上げが経済に及ぼすにはラグがあり(一定の時間がかかる)、状況により必要以上に金融政策を引き締めてしまうリスクがあると多くのメンバーが認識していることも判明した。

メディアでは、政策見通し(フォワードガイダンス)を示さなかったことが指摘された。しかし、新型コロナ禍を経た立ち直りのタイミングでのウクライナ戦争など、現在の景気サイクルが前例のないものであることは事実で、利上げペースや政策転換については何ら示唆的なものがなかったというよりも、示せないというのが実情だろう。この秋から来年初めには利上げペースを緩め、来年春には利下げに転じるとの見方の下で、この夏は米国株式が大きく戻したものの、FRBサイドにはそうした見通しはなく、認識のずれも明らかになっている。むしろ市場のこの楽観を修正しようとの発言が、先週時点で続いていた経緯がある。

一言で表すなら、すべてインフレ次第ということに。「しつこいインフレ」との表現も使われ始めており、インフレが高止まりするならば、金融市場での各種前提が崩れることになりそうだ。

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