亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

FRB初回利上げ後に金上昇のアノマリー

2022年01月26日 20時34分44秒 | 金市場

NY金は、引き締め強化が予想されるFOMC前にもかかわらず25日、心理的な節目の価格1850ドルを突破した。1850ドルを前に利益確定の売りが控えることから、ここ数日は売り買い交錯状態となっていたが、この水準をクリア。終値ベース(1852.50ドル)では昨年11月18日以来約2カ月ぶりの高値水準ということに。

日本時間の、明朝4時に声明文が発表されるFOMCは、3月の利上げ開始が強く示唆されるのだろう。市場ではその後の継続的な利上げの規模や(市場からの資金回収を意味する)保有資産(バランスシート)の縮小開始のタイミングやその方法に関心が集まっている。終了後に公開される声明文には現れないFRBの意向を探ろうと、今回はいつになくパウエル議長の記者会見では冒頭のスピーチはともかく、質疑応答が盛り上がりそうだ。

今回のFOMCとは別に今後のFRBの政策に関する見方は大きく分かれている。

ドイツ銀行は年内に6回、あるいは7回の利上げ実施の可能性を指摘。オランダINGは利上げ開始後に着手されるとみられる資産縮小(資金回収)の効果が大きい場合には、利上げ回数は少なくて済むとの見方を示している。一方、このところ不安定さを増し変動性が高まっている株式市場の状況を考慮し、市場予想の高まりほどにはFRBのタカ派化はないとの見方もある。この点は、明朝のパウエル発言が注目される。

 

過去の値動きからは、金価格はFRBの初回の利上げ後に、上昇基調を強めるパターンが見られている。この辺りはYouTubeやPodcast、オンライン・セミナーでも取り上げてきた。近いところでは前回2015年12月にFRBが国際金融危機後初めて利上げに転じた時も、上昇に転じた経緯がある。

その時は金市場には向い風となる利上げを前に、先物市場で売り建て(空売り)を増やしたファンドが、実際の利上げ実施後に買戻しに動き反転上昇となった。ただし今回、金先物市場の動きに活発さは感じられない。今回は、不安定さが続く株式市場の状況やウクライナ情勢の緊迫化などが加わっており、さらにインフレの高進が続いていることがサポート要因になっている。

NY金の次の節目は昨年11月17日の1870.20ドルとなる。その上が昨年6月2日の1909.90ドルが控える。FRBによる引き締め策強化は、金の売り要因で向い風となるのは言うまでもない。それにもかかわらず、足元で一昨日取り上げたように金ETF(上場投信)に大量の資金流入が見られたが、これが週明けの欧米市場で話題となっている。1日で28トン弱、金額ベースでみた増加額としては過去最大の16憶3000万ドルにもなったことに、意外感が大きかったようだ。ちなみに週明けの25日も4.65トンの増加となった。

実は24日(月)Podcastを更新した際に、年金基金などのポートフォリオの配分の見直し(re-balancing)であれば、1月下旬から2月に増加が続くことが多いことに触れたのだが、FOMCの結果を受けて、どうなるか。年金基金など長期投資家であれば金ETFの買いは続くと思う。止むようなら、まさに足元の株式市場や地政学要因に絡んだ、どちらかというと短期的な買い手ということだろう。

ドル建て価格が初めて2000ドルを突破した2020年8月に、円建て金価格も過去最高値を更新した(グラム当たり7032円)。当時に比べドル円相場は7.5%、約8円ドル高円安状態にあることから、値動き次第では円建て価格の過去最高値更新の可能性もありそうだ。

さて、FOMCどうなるか。。今夜は早めにZZzzz

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「#35 過剰なリスクセンチメントが作る株価暴落と追い風の金市場」

 

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