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亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

FOMCを消化し視界開ける金市場

2021年12月16日 20時34分12秒 | 金市場

FOMCは市場予想に沿った内容となった。テーパリング(量的緩和策の縮小)の加速が決められ、声明文からはインフレが「一過性」との文言が削除され、インフレ率が「しばらくの間」目標の2%を超えるとの認識が盛り込まれた。これらは、すべて11月30日の議会証言でパウエルFRB議長が語っていたこと。市場では政策転換の受け入れ態勢が整っており株式はじめ市場に混乱は見られず、むしろ足元の懸念事項となっているインフレ対応に乗り出したことが安心感につながった。株価は議長の記者会見中に上昇を続けた。

一時は、かなりタカ派に傾いた決定内容を受けて昨年7月以来17か月ぶりの高値圏(96.906)まで上昇していたドル指数(DXY)は、終盤に急速に上げ幅を削ることになった。リスクオン・モードに切り替わったことを表す。米10年債利回り(長期金利)の上昇も限定的なものにとどまり、1.5%を取りに行こうという雰囲気すら感じられない時間チャーとなった。基本的にいまだカネ余り状態に変化なく、利回り探しの豊富な滞留資金の存在が長期債の価格を支えている。したがって、長期金利の低位安定が先行きの景気減速を示しているのか否かは、FRBではないが、今後のデータ次第ということか。

いずれにしても、FRBによる周到な準備が奏効し、「市場との対話」が機能したのは間違いなかろう。“well-communicated”ということ。

 

NY金の方は、声明文が発表される前の段階で終了していた通常取引は、前日比7.80ドル安の1764.50ドルとなっていた。前日に続き約2週間ぶりの安値水準となる。向い風のFOMCに際しては、いつものことだが、今回は利上げの前倒しなどが強く示唆されることを警戒したとみられる。

その後の声明文発表とメンバー全員(18名)による経済予測にて、政策金利の予測中央値から22年の利上げ回数が3回と前回9月時の1回から上がったことなどを受け、金は時間外取引で1753.00ドルに急落。ただし、この水準では買いが見られ1760ドルを挟んで売り買い交錯状態に移行。その後、パウエル議長の記者会見が始まり進行するにつれて買い優勢に転じ、そのまま1770ドル台を回復、一時は1781.30ドルまで買われ、電子取引の終了価格は1777.30ドルとなった。FOMCを挟んだ金市場の値動きの推移は、株式市場と似た展開だった。

報道されたように今回示された政策方針のメインは、年明け1月に資産購入の減額は300憶ドルに倍増され量的緩和策は22年3月中旬には終了するというもの。問題は次のステップ利上げについて、前回はテーパリング終了から1年以上の間を開けたがパウエル議長は、今回は利上げまでの期間は長くないとした。来年の春の時点ではインフレも高水準を維持しているとみられ、いつでも利上げできるんだぞ、にらみを利かせているんだぞと、期待インフレ率を抑えるというのが狙いと思う。センチメントがインフレ方向に傾いてしまうことは避けたいだろう。

リーマンに象徴される国際金融危機時の緩和策からの正常過程との比較で、今回は経済がはるかに強く、完全雇用に近づいていることから、利上げまでの時間は短くなるとしている。景気の過熱度合いが当時とまったく異なることによる。そもそも金融機能が傷んでいないゆえに、カネ巡りがいいところに、大量の資金がばら撒かれたことによる。FRBはやり過ぎたと思うのだが、それは今後の正常化への展開の中で検証することになる。

メンバー予測では22年の3回に続き23年も3回の利上げが見込まれている。インフレについては、足元の状況は一段と伸びが持続的になるリスクが存在するとしながらも、議長は「供給制約は21年中に緩和するとの予測が広がっており、インフレは22年末にかけて大きく低下するとみられる」とした。

総じて言えるのは、内容が市場に「織り込ませた」範囲内にとどまったばかりでなく、見通しの面で不透明感が後退したことがある。もちろん事態は流動的ではあるものの、指針が示されたことで今後の環境変化に対する各市場の対応策も立てやすくなったと思われる。

金市場については、利上げ方針が固まったものの、当面のインフレ環境を考えると実質金利のマイナス状態が持続することから、下値は堅いだろう。結局、FOMC前と後では、後の方が高いという見通しをいくつかの媒体で示してきたが、現時点ではそうなっている。節目のイベントを抜けて動きやすくなったNY金は、再び1800ドル台乗せから上値トライに向かうものと思う。

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