下毛野(しもつけの)みかもの山の小楢(こなら)如(の)す
目細(まぐは)し児(こ)ろは誰(た)が笥(け)か持たむ
=巻14-3424 作者未詳=
下野のみかも山に生える小楢のように美しいあの娘は、誰の食器を持つのだろう(誰の妻になるのであろうか)。という意味。
「下つ毛野」は、今の栃木県。「みかもの山」は栃木県下都賀(しもつが)郡藤岡町、東北自動車道佐野SAの近くにある標高は229mたらずの三毳山(みかもやま)。
歌碑は佐野SAのレストラン脇の小庭園内におかれている。
わきには「みかもやま」の方角を指す標識も立っていた。
東北自動車道の目の前に見えるなだらかな小山が三毳山である。
その流麗な姿は、万葉人の時代より人々の心を和ませてきている。
三毳山の一部はみかも山公園となっており、山の北側にカタクリの群生地がある。
小楢の若葉と雄花序
小楢は若葉が広がる時に雄花序が咲いて10 センチくらいに垂れ下がる。
つやのある若葉もきれいだが、長く垂れ下がった白い雄花も良いものだ。
「小楢如す」は若葉のことのようだが、私は白い雄花序のことではないか、とも思っている。美しい娘の髪飾りを連想させるからだ。
石 踏まず
空 ゆつり行く時ぬよ
汝が心のれ
鎌倉時代頃の解釈風に
鎌倉の 稲村ヶ崎
日が暮れて来たので
宿を借りるとするか
日暮れ時・マジックアワー(朝夕)
む 等で代用してきたようで
とくに語尾の「む」は、「ん」 と読む場合が多いようです。
タガケカ モタム‥▲
たが家 かもたん‥◎
誰が家 借もたん=屋戸/宿を借りなん(鎌倉〜室町頃)
誰かの家を借りる、泊めてもらうという事は
宿を借りるということ。
三毳山の小楢は存在しなかったことになる。
みかもノ山の越ならの須は、後にみかほの関、崎、みかもの崎と略称で詠み継がれてきたので
安蘇の山と都賀郡大田和の山が、みかも山となるまで、みかも山の小楢の歌は万葉の時代から約千年の間詠まれて来なかった。