前回、前々回の「333」がすごかった。
「333」とは、パンサー、ジャングルポケット(以下、ジャンポケ)、ジューシーズのトリオ3組によるバラエティ番組である。
前々回の企画は、それぞれ話し合い、打ち合わせなしでパスタを一緒につくるというもの。
材料は、それぞれ勝手に買ってくるため、最終的にパスタづくりに必要な材料がすべて揃うのか分からない。この相手の動きを予想して行動することから生じる衝突や奇跡が見どころの企画であった。
しかし、この企画はすでに3回目でこれまで「鍋」、「鍋リベンジ」の企画をすでにやっていた。
重要なのは、ここから。この収録がパンサーの向井が不在のなかで行われたということである。
向井は普段でこのチームでは「まわし」と呼ばれる番組構成上の中心、サッカーで言えばミッドフィルダー、野球で言えばキャッチャー的なポジションにいた。
この企画はその問題点を逆手にとり、向井がいないと番組がどうなるのか、平成ノブシコブシの徳井が先輩として裏でモニターをチェックすることで、後半、全員にダメだしするという趣旨だった。
その結果、この企画はバラエティ番組がどのように構成されているのか、その骨組みを正確に明らかにすることに成功した。
では、ここからパスタの回がどのような構成で、どのように失敗し、何がバラエティを形成しているのか、私なりに整理してみよう。
1.材料選択
向井がいないことを踏まえて、ジャンポケの太田が軽くボケる。「(向井のことは)いつも邪魔だと思っていましたもん。」
これは他のメンバーによって放置されてしまったが、この太田のボケが番組構成上、大きなフリになっている。
つまり、太田がまわす → 失敗する → 太田を責める という展開。
あるいは、太田がまわす → 成功する →向井いらないな という展開。
どちらに転んでもよく、とにかく重要なのは、ここがフリになっているということ、ストーリー上の起点になっている、ということだ。
それをメンバーの誰かがより明確にしても良かっただろう。
ここから番組はどうなったか。
実質的なまわし、つまり「裏まわし」と呼ばれる役目は、ジューシーズの松橋が担った。
松橋は普段この番組ではそれほど全面に出ないが、常に番組の流れを俯瞰しており、一番まともなメンバーである。
材料選択のくだりがはじまった直後、太田がまわしていると、松橋が「いい感じでまわしてますね」といじった。
これは全体の流れからして、重要なフリになっている。
そもそも太田がまわしているのは不自然で(力んでいてテンションが高い)、視聴者はまだそれを飲み込めていない。
松橋がそれをイジることで、視聴者も飲み込め、その後の「失敗(or成功)」のフリを重ねることになった。
さらに、パンサーの尾形の食材選択のファインプレーを褒める流れが出来、松橋はすかさず「いつものケンカの原因は向井」と発言し、流れを決定。
尾形の食材選択もうまく処理され、その後の「失敗」のフリが出来た。
実はこの時点で通常とは違うことが起きている。
それはジャンポケの斉藤が全く活躍していない、ということだ。
実は普段、向井はそれほど発言しているわけでなく、流れの多くは斉藤がつくっている。
向井に処理を委ねられるという安心感からなのか、斉藤は流れのなかですぐに飛び出し、起伏をつけている。
しかし、向井がいない時点で斉藤は危険を察知したのか、まったく前に出なくなってしまった。
その後、番組は最悪な方向に展開する。
ジャンポケのおたけが、すべての流れを潰しにかかるのである。
おたけは料理が得意、という位置づけになっていて、そのせいか前に出てこようとしてしまった。
彼は完全な天然で全く計算が出来ないタイプの人である。
番組構成上、最悪なことが2回起きている。どちらも、おたけが犯人である。
第一に、卵でもめた部分。
斉藤が買ってきた卵をメンバーが批判し始めた。
流れで言えば、絶対に批判を強め、揉めてうまくいかない方向が望ましい。
そうしないと、「太田が回してメンバーが結局もめた、つまり失敗」という流れが出来ないからだ。
ところが、ここにおたけが乱入し、全くもめることなく、おたけの天然ボケだけが挟み込まれ、グダグダになってしまった。
これで番組構成上最も重要な一場面がつぶれた。
第二に、パスタの量でもめた部分。
パスタを買ったのが、ジャンポケの太田と、ジューシーズの児玉で、ここは量で揉める場面だった。
とにかく、麺が多すぎるのであって、ここでどちらかを徹底して批判し、後の食事のシーンでのフリにする必要があった。
仮にこの麺の量が実際に作ってみた場合に適切でもいいのだ。その時、反撃させることで流れが出来るのだから。
ところが、この麺がかぶったことについて揉める流れを、再度、おたけがフォローを入れて潰してしまう。
その結果、材料選択から食事までの流れをつなぐ重要な線が断ち切れてしまったのである。
ついでに言うと、おたけは、その後、赤羽の「とろけるチーズ」を買ってきたという明らかなボケも潰した。
2.調理開始
ここからはさらに展開がひどくなる。
麺のフリがおたけによって破壊されたために、麺の調理のくだりが生きてこない。
番組の流れが完全におかしくなったことに気づいているジューシーズの松橋は、ここで突破を試みる。
ジャンポケの斉藤と揉め、ジューシーズの児玉と揉めはじめた。
ここで何とか番組の流れをつくりたいところだったが、まさか、ここでジャンポケのおたけ再度乱入し、この流れも潰してしまったのである。
ここで思わず叫ぶジューシーズ松橋。
「向井なら何してた?」
最大の敗因は、おたけの度重なる乱入をいじって処理できず、放置してしまったことだった。
最初に処理して二度と出てこられないようにしておかなかったために、すべての展開を潰してしまったのである。
3.食事
当然、ここで麺のくだりの決着をつけるところ。
本来なら、「麺が多すぎる →うまくゆでられず →まずい」の流れだった。
だが、その流れをおたけが何度も潰したので、番組ではまったくつながらず、ただただ「マズイ・・・」というだけになってしまった。
また本来なら、「メンバーがもめた、しかも、まずかった」といことで、「太田機能していなかった」というオチになるはずだったのだが、
それもおたけが潰したので、ただただジューシーズ松橋が「太田さんが全然機能していない」と個別に発言したことになり、全く意味のないフレーズになってしまったのであった。
だが、番組の構造は複雑だ。
この失敗を予想していたかのように、その後、ノブコブ徳井がダメだしをしにくるわけである。
結局、この番組は、バラエティ番組がいかに難しいものかを視聴者に教えるという、リテラシー養成番組になったのであった。
「333」とは、パンサー、ジャングルポケット(以下、ジャンポケ)、ジューシーズのトリオ3組によるバラエティ番組である。
前々回の企画は、それぞれ話し合い、打ち合わせなしでパスタを一緒につくるというもの。
材料は、それぞれ勝手に買ってくるため、最終的にパスタづくりに必要な材料がすべて揃うのか分からない。この相手の動きを予想して行動することから生じる衝突や奇跡が見どころの企画であった。
しかし、この企画はすでに3回目でこれまで「鍋」、「鍋リベンジ」の企画をすでにやっていた。
重要なのは、ここから。この収録がパンサーの向井が不在のなかで行われたということである。
向井は普段でこのチームでは「まわし」と呼ばれる番組構成上の中心、サッカーで言えばミッドフィルダー、野球で言えばキャッチャー的なポジションにいた。
この企画はその問題点を逆手にとり、向井がいないと番組がどうなるのか、平成ノブシコブシの徳井が先輩として裏でモニターをチェックすることで、後半、全員にダメだしするという趣旨だった。
その結果、この企画はバラエティ番組がどのように構成されているのか、その骨組みを正確に明らかにすることに成功した。
では、ここからパスタの回がどのような構成で、どのように失敗し、何がバラエティを形成しているのか、私なりに整理してみよう。
1.材料選択
向井がいないことを踏まえて、ジャンポケの太田が軽くボケる。「(向井のことは)いつも邪魔だと思っていましたもん。」
これは他のメンバーによって放置されてしまったが、この太田のボケが番組構成上、大きなフリになっている。
つまり、太田がまわす → 失敗する → 太田を責める という展開。
あるいは、太田がまわす → 成功する →向井いらないな という展開。
どちらに転んでもよく、とにかく重要なのは、ここがフリになっているということ、ストーリー上の起点になっている、ということだ。
それをメンバーの誰かがより明確にしても良かっただろう。
ここから番組はどうなったか。
実質的なまわし、つまり「裏まわし」と呼ばれる役目は、ジューシーズの松橋が担った。
松橋は普段この番組ではそれほど全面に出ないが、常に番組の流れを俯瞰しており、一番まともなメンバーである。
材料選択のくだりがはじまった直後、太田がまわしていると、松橋が「いい感じでまわしてますね」といじった。
これは全体の流れからして、重要なフリになっている。
そもそも太田がまわしているのは不自然で(力んでいてテンションが高い)、視聴者はまだそれを飲み込めていない。
松橋がそれをイジることで、視聴者も飲み込め、その後の「失敗(or成功)」のフリを重ねることになった。
さらに、パンサーの尾形の食材選択のファインプレーを褒める流れが出来、松橋はすかさず「いつものケンカの原因は向井」と発言し、流れを決定。
尾形の食材選択もうまく処理され、その後の「失敗」のフリが出来た。
実はこの時点で通常とは違うことが起きている。
それはジャンポケの斉藤が全く活躍していない、ということだ。
実は普段、向井はそれほど発言しているわけでなく、流れの多くは斉藤がつくっている。
向井に処理を委ねられるという安心感からなのか、斉藤は流れのなかですぐに飛び出し、起伏をつけている。
しかし、向井がいない時点で斉藤は危険を察知したのか、まったく前に出なくなってしまった。
その後、番組は最悪な方向に展開する。
ジャンポケのおたけが、すべての流れを潰しにかかるのである。
おたけは料理が得意、という位置づけになっていて、そのせいか前に出てこようとしてしまった。
彼は完全な天然で全く計算が出来ないタイプの人である。
番組構成上、最悪なことが2回起きている。どちらも、おたけが犯人である。
第一に、卵でもめた部分。
斉藤が買ってきた卵をメンバーが批判し始めた。
流れで言えば、絶対に批判を強め、揉めてうまくいかない方向が望ましい。
そうしないと、「太田が回してメンバーが結局もめた、つまり失敗」という流れが出来ないからだ。
ところが、ここにおたけが乱入し、全くもめることなく、おたけの天然ボケだけが挟み込まれ、グダグダになってしまった。
これで番組構成上最も重要な一場面がつぶれた。
第二に、パスタの量でもめた部分。
パスタを買ったのが、ジャンポケの太田と、ジューシーズの児玉で、ここは量で揉める場面だった。
とにかく、麺が多すぎるのであって、ここでどちらかを徹底して批判し、後の食事のシーンでのフリにする必要があった。
仮にこの麺の量が実際に作ってみた場合に適切でもいいのだ。その時、反撃させることで流れが出来るのだから。
ところが、この麺がかぶったことについて揉める流れを、再度、おたけがフォローを入れて潰してしまう。
その結果、材料選択から食事までの流れをつなぐ重要な線が断ち切れてしまったのである。
ついでに言うと、おたけは、その後、赤羽の「とろけるチーズ」を買ってきたという明らかなボケも潰した。
2.調理開始
ここからはさらに展開がひどくなる。
麺のフリがおたけによって破壊されたために、麺の調理のくだりが生きてこない。
番組の流れが完全におかしくなったことに気づいているジューシーズの松橋は、ここで突破を試みる。
ジャンポケの斉藤と揉め、ジューシーズの児玉と揉めはじめた。
ここで何とか番組の流れをつくりたいところだったが、まさか、ここでジャンポケのおたけ再度乱入し、この流れも潰してしまったのである。
ここで思わず叫ぶジューシーズ松橋。
「向井なら何してた?」
最大の敗因は、おたけの度重なる乱入をいじって処理できず、放置してしまったことだった。
最初に処理して二度と出てこられないようにしておかなかったために、すべての展開を潰してしまったのである。
3.食事
当然、ここで麺のくだりの決着をつけるところ。
本来なら、「麺が多すぎる →うまくゆでられず →まずい」の流れだった。
だが、その流れをおたけが何度も潰したので、番組ではまったくつながらず、ただただ「マズイ・・・」というだけになってしまった。
また本来なら、「メンバーがもめた、しかも、まずかった」といことで、「太田機能していなかった」というオチになるはずだったのだが、
それもおたけが潰したので、ただただジューシーズ松橋が「太田さんが全然機能していない」と個別に発言したことになり、全く意味のないフレーズになってしまったのであった。
だが、番組の構造は複雑だ。
この失敗を予想していたかのように、その後、ノブコブ徳井がダメだしをしにくるわけである。
結局、この番組は、バラエティ番組がいかに難しいものかを視聴者に教えるという、リテラシー養成番組になったのであった。