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マイナカード 制度の根幹揺らぐ混乱

2023年05月16日 | 生活

「東京新聞」社説 2023年5月16日 

 マイナンバーカードを巡る事故が相次いでいる。証明書発行サービスで他人の文書が交付されたり、マイナ保険証では別人の医療情報が閲覧された。普及を優先し、個人情報保護を軽んじてきた政策のつけではないか。

 マイナカードを使ったコンビニでの証明書発行サービスでは、他人の証明書が交付された事故が東京都足立区、横浜市、川崎市、徳島市で十四件確認された。富士通の子会社が開発したシステムの不具合が原因とされる。

 マイナ保険証で別人の医療情報が閲覧された事故も五件起きた。投薬ミスが起きれば、生死に関わる事故につながりかねない。健康保険組合などによる登録ミスが原因とされるが、同様のミスは全国で約七千三百件あったという。

 住民票や戸籍謄本などは個人情報の根幹であり、窓口で交付する際は本人確認が徹底されている。医療情報は他人の目にさらされてはならない秘匿情報だ。

 新しいシステムの導入に伴う不具合は珍しくないとしても、不具合やヒューマンエラーの発生を前提に二重、三重の情報漏れ対策が講じられなければならない。

 一連の事故はずさんな導入実態を浮き彫りにし、「十分なセキュリティー対策」という政府の説明が看板倒れだったことを示す。

 デジタル庁の対応の鈍さも指摘せざるを得ない。誤交付は三月からあったにもかかわらず、業者への指示は大型連休明け。証明書発行サービスは自治体の業務だが、カード普及の旗を振ってきたのはデジタル庁だ。制度運営の監督を担う自覚に欠けてはいまいか。

 マイナカードの申請率は、マイナポイント付与などにより三月末時点で76%を超えたが、相次ぐ事故は情報漏えいなど国民が抱いてきた制度への不安が解消していないことを浮き彫りにした。

 健康保険証の廃止とマイナ保険証への一本化、マイナカードのより広い行政分野での活用などを定めたマイナンバー法改正案は衆院を通過し、参院で審議中だ。

 用途が増えれば、事故の恐れも高まる。健康保険証の廃止で無保険者が生まれることへの懸念も解消されていない。欧州諸国などでは個人情報保護の観点から類似制度の断念や見直しが進む。

 参院では事故の検証に加え、制度の是非を含めて徹底的に審議するよう求めたい。


人権感覚0な政権でこれはすこぶる危ない。

菜の花情報

今日は持参した600mⅬのお茶1本で間に合わず、ただの水600mⅬもカラになった。
疲れた感あり。
明朝の予想最低気温は9℃。
少しハウスを開けて帰ってきた。


ジャニーズ事務所・藤島ジュリー社長が「話したこと」と「話さなかったこと」──性加害を生んだ構造的問題

2023年05月15日 | なんだかんだ。

松谷創一郎ジャーナリスト

YAHOOニュース(個人)5/15(月) 

 

4つのポイント

 5月14日、故・ジャニー喜多川前社長による性加害問題について、ジャニーズ事務所の藤島ジュリーK.社長が動画で声明を出した。記者会見を望む声も多かったが、ジャニーズ事務所は先代から経営陣がいっさい公式の場に顔を出すことはなかったので、ジュリー社長が顔を出したこの声明はかなり異例のことだ。

 その内容は、動画で1分ほどの謝罪をし、その他の疑問については書面で回答するという形式だった。それらは、同社のオフィシャルサイトに掲載されている。筆者も先月4月30日に、関係者を通じてジャニーズ事務所に質問しており、この回答はそれらも含むさまざまなメディアから寄せられたものを集合させたものである(筆者の質問内容はこちら)。

 そうしたジュリー社長の声明だが、そのポイントは4つにまとめられるだろうか。

性加害の事実を認めるかどうか

2004年の『週刊文春』裁判結審後の対応

第三者委員会を設置しない理由

話さなかったこと

 以下、この4点について考えていく。

被害者が限定される“難しさ”

 まず性加害の事実認定についてだが、これについては「『事実』と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではな」い、と明言を避けている。文脈的にも、認めているようにも読めるし、認めていないようにも読める。

 そこからは、集団訴訟への発展を避けようとするジャニーズ事務所の苦しい立場も感じられるが、本件特有の“難しさ”もかいま見える。というのは、カウアン・オカモト氏をはじめとした多くの被害を認めてしまえば、同社所属の現役タレントも被害を受けている可能性を認めることとなり、結果的に二次被害を引き起こしてしまうことに繋がりかねないからだ。

 つまりこの曖昧なスタンスは、被害者を救済するのと同時に、現役タレントを保護することのバランスを取ろうとして生じている。「憶測による誹謗中傷等の二次被害についても慎重に配慮しなければならない」と述べているのもそのためだ。

 筆者が4月18日の記事「ジャニー喜多川氏『性加害問題』の課題」で指摘したのも、まさにこのことだった。それはジャニーズ事務所だけでなく、ファンの多くも不安視していることでもある。

 現役タレントの保護のために被害者の救済を無視することはできず、しかし、被害者の救済のために現役タレントを見捨てるわけにもいかない──被害者が限定されている本件には、常にこの“難しさ”がつきまとう。

被害は恥ではなく、加害者が悪い

 そのときひとつのヒントとなるのは、この問題の調査を求める署名を集めた「PENLIGHT ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」が5月11日に行なった記者会見にあるかもしれない。

 被害者の救済と現役タレントの保護をどう両立すればいいのか、なにか妙案はあるか?──会見での筆者の質問に対し、発起人のひとりである高田あすみさん(仮名)はこう話した。

「二次被害を引き起こすのは社会全体の人権感覚の問題です。被害に遭ったのは恥ずかしいことではなく、加害者が悪いと捉えられる社会を作っていく必要がある」

 それは、今回の問題に新たに一筋の道を照らす考え方だろう。被害者を蔑む視点を社会が許容するからこそ被害者が沈黙を余儀なくされ、そしてまた社会で加害行為が繰り返される──それを断ち切ることこそが、現役のジャニーズタレントを保護するうえで重要であるという視点だ。

 一方、TBS以外の民放テレビ局がこの問題の報道に消極的な理由は、「現役タレントの保護」だと関係者から耳にした。だが、当然のことながらその姿勢は声をあげた被害者を見捨てることを意味する。

 そもそも報道機関の重要な役割のひとつは、社会における議題設定(アジェンダ・セッティング)だが、現状は「現役タレントの保護」をタテマエ的な言い訳に使っているようにも見える。必要なのは、被害者の訴えを受け止めて、被害者への偏見を緩和するための議論を促すことだ。現状、TBSを除く民放4局はその立場を放棄していると断じざるをえない。

白波瀬傑副社長の責任

 次に2004年に『週刊文春』に対する名誉毀損裁判で、ジャニー喜多川氏の性加害(裁判では「セクハラ」)が認定された以降のジャニーズ事務所の対応についてだ。

 当時すでに幹部だったジュリー社長は「知らなかった」と述べ、ジャニー喜多川氏と姉のメリー喜多川氏のふたりが会社運営をほぼ担ってきたと話している。これは苦しい言い訳のように見えるが、喜多川姉弟の独裁体制は生前からよく知られていたことでもあった。そして、ジュリー社長がいまになってその状況を「異常」と捉えているあたりにも強い悔恨が見える。

 ただし、その場合にキーマンとなるのはジュリー社長だけではない。長らく広報を担当してきた白波瀬傑副社長も重要人物だ。現在70代前半と見られる白波瀬氏は、メディア側には広く知られた存在だ。ジャニーズ事務所は、タレント出演の番組や映画などコンテンツを盾にしてメディア側を操縦してきた。

 たとえばジャニー氏は、テレビ朝日『ミュージックステーション』の皇達也プロデューサー(故人)に対し、「(競合グループを)出したらいいじゃない。ただ、うちのタレントと被るから、うちは出さない方がいいね」とタレント引き上げをちらつかせたという(『週刊新潮』2019年7月25日号)。また2019年7月には、元SMAPの3人の民放テレビ番組出演に圧力をかけた疑いがあるとして、公正取引委員会から「注意」されたことも記憶に新しい。

 こうした水面下のさまざま差配を指揮してきたのは、広報担当の白波瀬副社長と見られる。2004年の『文春』裁判の結審の際も、民放テレビ局をはじめ多くのメディアが追従することはなかった。そうした状況において広報を担当していたのが白波瀬氏だ。そんな彼が、裁判結果=ジャニー氏の性加害問題を知らなかったとは考えにくい。

 ジュリー社長は、当時ジャニー氏が「加害を強く否定していた」と説明するが、その一方で白波瀬氏が報道になんらかの関与をした疑いはある。白波瀬副社長の責任は確実に追及されなければならない。

第三者委員会を望まない理由

 3つ目は、第三者委員会を設置しない理由だ。当初から筆者も含め多くのひとびとが望むのはこの対応だが、今回もそれは否定された。

 ジュリー社長は複数の理由をあげているが、そのひとつは「調査段階で、本件でのヒアリングを望まない方々も対象となる可能性が大きい」ことだ。そこで想定されている「望まない方々」とは、おそらく所属タレントたちだ。

 ここまでの筆者の取材で見えてきているのは、所属する現役タレントたちの多くが第三者委員会の設置に反対していることだ。ただしタレント同士でも温度差があり、調査を望む者もいるという。この問題の複雑さは、やはりここにある。

 だが、そもそも第三者委員会は調査内容をすべて公開することを前提とするわけではない。調査結果を公開するかどうかの判断も第三者委員会に委ねなければならない。そこでは実態解明を目的としながらも、プライバシーに配慮することは当然だ。なにより、現役であるがゆえに被害を押し殺し、そのうえで精神的なケアや補償を受けられないことは不条理だ。

 補助線をひとつ引くならば、たとえば2012年にイギリスの人気司会者だったジミー・サヴィルが死後に多くの性加害を行なっていたことが発覚した事件が参考になるだろう。サヴィルを番組で起用していた公共放送・BBCは、216ページにわたる長大な調査結果を発表した(”THE DAME JANET SMITH REVIEW”2016年/PDF)。これは、BBCの施設内で性加害が行われていたためだ。そこでは時系列かつ人物別に被害実態が明らかにされており、当然のことながらプライバシーも保護されている。

 こうした前例がありながらもジャニーズ事務所がかたくなに第三者委員会を拒むのであれば、それはタレントの姿勢以外にも「隠したいなにか」があると邪推されても仕方がない。

 たとえば『週刊文春』は、ジャニーズ事務所のスタッフからジャニーズJr.の少年たちを全日空ホテルに送り届けていた証言を得ている(2023年4月27日号)。それが本当に知らないだけか、あるいは「未必の故意」かはわからないが、そうしたことを解明するためにも第三者委員会は必要だ。

 そしてもちろん、ジャニー氏による性加害の実態解明は、単にジャニーズ事務所のためだけに必要なわけでない。それは日本の未来のために必要だ。日本社会が本件を教訓としなければならないからだ。

「ジャニーズ利権」にすがるテレビ局

 最後に、今回のジュリー氏が話さなかったことについてだ。それはジャニーズ事務所のメディアコントロールだ。前述したように、ジャニーズはコンテンツを盾に巧みにメディアを操縦してきた。それを指揮してきたのが、白波瀬副社長であることにも触れた。

 今回の件でも、日本テレビ・テレビ朝日・フジテレビの民放3社はいまも積極的にこの問題を報じようとしない。それは、やはり長いあいだジャニーズ事務所とズブズブの関係にあるからだ。筆者はこの問題が騒がれだした3月終わりの段階で、「民放が官邸や政府よりもずっと怖れているのは間違いなくジャニーズ事務所だ」と書いたが、その後の展開は残念なことにその通りになった(『朝日新聞GLOBE+』2023年3月30日)。

 たしかに、確実に数字が取れるジャニーズのコンテンツは、斜陽のテレビ局にとっては決して失いたくないものに違いない。だが、この「ジャニーズ利権」を保持するために、TBS以外の民放局は報道機関としてのプライドを捨てた状態にある。

 たとえば定例会見でテレビ朝日の篠塚浩社長は「今後の推移を見守りたい」と発言し、フジテレビの港浩一社長は「事実関係がよく分からないのでコメントは差し控える」とそれぞれ述べた。『報道ステーション』や『FNN Live News α』というニュース番組があるにもかかわらず、自分たちで調査して報道する気はさらさらない様子だ。それは、「報道機関としてのオワコン宣言」であるのと同時に、「ジャニーズ事務所の2軍宣言」でもある。

 筆者がジャニーズ事務所に望んだのは、「自動忖度機」に成り下がったメディアの“呪い”を解くことでもあった。

 ジャニーズタレントがレギュラーのテレビ朝日『ミュージックステーション』には、いまだに競合グループが出演できない状況が続いている。Da-iCE、JO1、INI、BE:FIRSTなどがそうだ。このうちJO1とBE:FIRSTは『紅白歌合戦』に出場しており、Da-iCEは日本レコード大賞を受賞している。さらにJO1とINIには元ジャニーズJr.のメンバーが含まれている(「ジャニーズ忖度がなくなる日」2023年2月23日)。

 ジャニーズは、このようにコンテンツを盾にして報道を左右してきた。これがメディアコントロールだ。

性加害の温床となったメディア支配

 そして、こうしたメディア支配こそがジャニー氏が性加害を続けた温床にもなった。

 2004年に『文春』裁判が結審したときに追及がなされなかったのも、このズブズブの関係があったからだ。また、この構造的な関係によって間接的に加害行為へ加担していることを自覚しているからこそ、テレビ朝日とフジテレビは現在も報道に及び腰になっていると推察される(そうでないならば、今夜の番組でちゃんと説明すれば良い)。

 筆者がジュリー社長に強く望むのは、先代の社長・副社長がテレビ局にかけた“呪い”を解くことだ。それは先月末に筆者が投げた質問にも含まれていたが、残念なことに今回はその回答は得られなかった。

 ジャニーズ事務所のコンテンツを担保としたメディア支配が続き、それによって追及を逃れたジャニー氏が再度加害行為を繰り返していた可能性について、社会はより重大な関心を向けるべきだ。この問題は、ジャニー氏の単独行動としてではなく、構造的に読み解かなければなにも解決には進まない。しかも、メディア支配はいまも続いている。

 われわれ報道する側は、芸能プロダクションに嫌がらせをしたいから批判するのではない。問題があればそれを指摘して改善を促し、社会をより良くすることが目的だ。しかし、それが機能不全になったからこそ、ジャニー氏は加害行為を繰り返し、ジャニーズ事務所はいま地獄を見ており、テレビ局もその泥舟に乗って膝まで水に浸かっている。

 もうそろそろ目を覚ますときではないか。

問題は始まったばかり

 このジャニー喜多川氏の性加害問題は、まだなにも解決にいたっていない。カウアン・オカモト氏とジャニーズ事務所は面談をしたものの、なんらかの合意にいたったわけではない。

 さらにその後、『週刊文春』でふたりが実名・顔出しで被害を訴えた。「Me Too」は今後も続く可能性もある。

 ジャニー氏の加害行為の全容はまだ見えず、はじめて報道された1960年代から再調査する必要もあるだろう。過去に声をあげながらも、「芸能ゴシップ」として軽視されてきたひとびとに目を向けることも必要だ。

 ジュリー社長の声明も、これが始まりであって決して最後であってはならない。この問題が終わるのは、まだまだ先だ──。

松谷創一郎 ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。

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櫻井翔の日テレnews zeroは?…「news23」ジャニーズ性加害問題を放送で視聴者から声あがる(一部抜粋)

日刊ゲンダイ2023/05/15

 

「news23」(TBS系)が異例の“自己批判”だ。

 5月11日の放送で、故・ジャニー喜多川氏(2019年死去)が行っていたとされる性加害問題について、メインキャスターの小川彩佳(38)が「少なくとも私達の番組ではお伝えしてこなかった」と触れ、約10分間にわたって同疑惑を報じた。

 3月に放送された英BBCによる特集番組以来、ジャニー喜多川氏の性加害問題についてはNHKが扱ったほか、民放にもわずかながら報道する動きがあった。そんな中、夜のニュース番組が大々的に報じるいう、大きな“突破口”が開いたとも言える動きがあった以上、他の民放の夜のニュース番組がこぞって疑惑を報じれば、事態は大きく動く可能性がある。

 一方では、この動きに乗り遅れそうな番組がある。「news zero」(日本テレビ系)だ。同番組は「news23」と同時間帯(午後11時~)の放送。フリーの有働由美子アナウンサー(54)がメインキャスターを努めているほか、各曜日ごとに担当キャスターを置く布陣。そして月曜日のキャスターは……「嵐」の櫻井翔(41)なのだ。

 櫻井本人が所属するジャニーズ事務所のかつての代表者の疑惑を取り上げるとなれば、番組側が及び腰になりそうなもの。現にツイッターには「news23」の報道を受け、《報道としての過ちをしっかりと認める姿勢が見られて安心した。信頼できると思った。櫻井キャスターのいる日テレは?》といった声があがり始めている。

古い記事ですが参考までに。(こんな古い事件なのでした)

ジャニー喜多川社長の美談を垂れ流し性的虐待問題を一切報じないマスコミ!元ジュニアが法廷で証言、最高裁でも確定してるのに

リテラ2019.07.11

 6月9日にジャニーズ事務所の代表取締役社長であるジャニー喜多川氏が逝去し、ワイドショーのみならず『報道ステーション』(テレビ朝日)や『news23』(TBS)などの報道番組まで、ありとあらゆるメディアが横並びで追悼報道を展開している。

 ジャニー社長のショービジネス、芸能・エンタテインメント界での功績、スターを多数輩出した卓越した審美眼、タレントたちとの親子のような強い絆……。湯水のようにジャニー社長賛美報道が繰り広げられているが、しかし一方で、メディアが一切触れていないことがある。ジャニー社長の性的虐待という問題だ。

 実はかなり古い時代から、ジャニー社長のタレントやジュニアに対する性的虐待の告発は数多く存在した。なかでも衝撃的だったのが、1988年に元フォーリーブスの北公次が出した告発本『光GENJIへ』(データハウス)だろう。北はこのなかでジャニー社長からの性的虐待を赤裸々に記しているが、その後も元ジャニーズの中谷良による『ジャニーズの逆襲』(データハウス/1989年)、平本淳也の『ジャニーズのすべて 少年愛の館』(鹿砦社/1996年)、豊川誕の『ひとりぼっちの旅立ち』(鹿砦社/1997年)、光GENJIの候補メンバーだった木山将吾の『Smapへ――そして、すべてのジャニーズタレントへ』(鹿砦社/2005年)などの告発本が刊行され、いずれもジャニー社長からの性的虐待を訴えたのだ。

 多くのマスコミは、ジャニーズタブーのため、これら告発本やその内容はほぼ黙殺、まともな検証がなされていないため、現在ではジャニー社長の性的虐待を“都市伝説”のように思っている向きも多いだろう。しかし、ジャニー社長のタレントたちへの性的虐待は都市伝説などではないばかりか、最高裁でも認定された事実なのだ。

 その裁判のきっかけは、1999年に「週刊文春」(文藝春秋)がジャニーズ事務所の数々の問題を告発するキャンペーン記事を掲載したことだった。キャンペーンは10回以上に及び、そのなかでも衝撃的だったのがジャニー社長の性的虐待や児童虐待だった。

 記事は複数の元ジュニアやジャニーズOBの証言をもとに、ジャニー社長の性的虐待を赤裸々に告発するものだったが、これに対し同年11月、ジャニーズ事務所は名誉毀損で「週刊文春」を提訴。そして裁判でジャニー社長の性的虐待の有無が争われることとなった。その裁判の過程で「週刊文春」側証人として元ジャニーズJr.の2人が出廷、裁判の場で、性的虐待の実態を赤裸々に語ったのだ。

 ジャニーズタブーのためマスコミはその裁判の動向はほとんど報じていなかったことに加え、元ジュニアの証言は性被害というセンシティブな問題であることから非公開で行われたため、まったく外部に伝わっていなかったが、月刊誌『噂の真相』(2002年2月号)が、その証言内容をつかみ詳細を報じている。

 記事によれば、証言に立った元ジュニアは2人とも未成年。2001年7月25日大阪地裁のある法廷でのことだという。証言者のひとりであるA君は仕事で夜遅くなり、電車がなくなったとき、他のジュニア数人と“合宿所”と呼ばれるジャニー社長の自宅である六本木の高級マンションに宿泊した。そんななかジャニー社長から性的虐待を受けたのだという。

法廷で元ジュニアが証言したジャニー喜多川社長による性的虐待

 A君の証言によると、「合宿所で寝ていたらジャニーさんが横に来て、足をマッサージし始めた。普通に触ってきた。ちょっとイヤだった」と言い、その後、「だんだんエスカレート」し、性的な行為をされたという。これ以上は生々しいため具体的な記述は控えるが、もっと直接的な性行為などの詳細な証言もあったという。

 もう一人、SMAPやV6のバックで踊ったり、CMやジュニアのコンサートにも出た経歴があるというB君も、寝ているときにジャニー社長が布団の中に入ってきて性的な行為をされたという証言をしている。

 さらに、A君もB君もそろって、ジュニア仲間や先輩らの間で、こんなふうに言われていたと明かしている。

「断ればテレビや舞台に出ることができないらしい」

「ジャニーさんからそういう行為を受けたら、いい仕事がもらえる。逆に受けなかったり拒否するとデビューできない」

 ジャニー社長の行為は性的虐待だけでなく、その立場や力関係を背景にしたパワハラでもあったということだろう。しかも、それを未成年者に対しておこなっていた。これら被害者証言の後には、ジャニー社長の証言が控えており、ジャニー社長もその法廷にいたという。

そして、ジャニー社長は自身の証言として「(被害者少年たちが)嘘をついている」と反論していたというが、その後の裁判の展開はむしろ、ジャニー社長のセクハラ行為を認定するものになった。

高裁でも確定してもジャニー社長のセクハラを一切報じないマスコミ

 こうしてジャニー社長の性的虐待が裁判の場で告発されたのだが、2002年3月の一審判決は「セクハラ行為の重要部分が真実だと証明されていない」という不可解な理由で「週刊文春」側に880万円の損害賠償を求めるものだった。しかし、これに対し「週刊文春」側が不服とし控訴、2003年7月の高裁ではジャニー社長のセクハラ行為が認定されるという逆転判決が出され、損害賠償も120万円と大幅に減額。判決は「逆らえばデビューできなくなる拒絶不能な状態に乗じ、社長がセクハラしている」との記載について、「被害者の少年たちの証言は具体的で詳細なのに、事務所側は具体的に反論していない」と指摘し、「セクハラに関する記事の重要部分は真実」と判断した。そして、ジャニーズ側が不服として最高裁に上告したが、2004年2月に上告は棄却、これで最高裁においてもジャニー社長のセクハラ行為が確定されたのだ。

 この衝撃的な裁判は、当時、海外メディアでも大きく報じられたが、しかし国内マスコミはほぼ黙殺。ジャニー社長の行為のみならず、裁判で確定したセクハラ問題までジャニーズタブーで沈黙する日本メディアの姿勢も、それ以上に大問題だろう。

 また、一部で取り上げられたとしても、当時はジャニー社長の性的指向ばかりがセンセーショナルにクローズアップされるかたちとなっていた面もあるが、ジャニー社長の行為の本質は、芸能人生の命運を握る権力者であることを背景にしたパワハラをともなう性的虐待、しかも未成年への虐待だ。

 しかし当時も、そして#MeToo運動の拡大もあり世界中でセクハラ・パワハラに対する問題意識が高まっている現在においても、ジャニー社長の負の問題について、マスコミは口をつぐんだままだ。

 なかには“十年以上も前の過去のこと”などと嘯く人もいるかもしれない。だが、世界的に見ても、#MeTooの発端となった映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインへの告発は十年以上前や数十年も前の行為も含まれており、また大きな衝撃をもって報じられたカトリック教会の莫大な人数の神父による性的虐待・隠蔽もまた、過去に遡って検証されている問題だ。

 ジャニー社長が歴史に残るプロデューサーであることは否定しないが、であればこそ、正の面だけでなく負の側面も検証されてしかるべきだろう。実際、イギリスの公共放送局・BBCは、ジャニー社長の訃報を伝える記事のなかで、その功績だけではなく性的虐待問題にも言及している。しかし、上述の通り、国内メディアはジャニー社長賛美一色。『報道ステーション』や『news23』のような報道番組までもが横並びの賛美報道しかできないのは異常だ。

 いまメディアで喧伝されているジャニー社長の功績とされる部分の多くもまた、男性グループを実質的に独占してきたことなど、こうしたジャニーズ事務所の強権的なマスコミ支配によるところが大きいことも付記しておきたい。

 ジャニーズタブーに縛られたマスコミだが、ジャニー社長が逝去したいまこそ、こうした性的虐待、パワハラの実態を再び検証すべきではないのか。

(編集部)

また長くなってしまいましたのでこれにて。


G7広島サミットの焦点 問われる「核なき世界」

2023年05月14日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」2023年5月14日

 主要7カ国首脳会議(G7サミット)が19~21日の日程で、被爆地・広島で開かれます。最大の焦点である「核兵器のない世界」への前進をめぐり、多くの被爆者や市民、非政府組織(NGO)は、各国首脳が被爆者との懇談などで被爆の実相に触れ、核兵器廃絶や核軍縮に向けた議論を望んでいます。議長を務める岸田文雄首相の対応が問われます。(石橋さくら)

 岸田首相は昨年5月の記者会見で、広島での開催を選んだ理由として、「核兵器の惨禍を人類が二度と起こさないとの誓いを示したい」と主張。今月8日の記者会見では、「核兵器のない世界」について成果文書に盛り込みたいとの考えを示しました。開会中は、G7首脳らとともに平和記念公園と原爆資料館を訪問する予定です。

核抑止強化狙い

 しかし岸田政権は、核兵器廃絶とは真逆の核抑止強化の動きを強めています。今年1月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同発表は、昨年末の安保3文書の大軍拡方針に伴い、核兵器を含めた「米国の拡大抑止」は「日本の能力によって強化される」などと明言。長野県軽井沢町で先月開催されたG7外相会合の共同声明でも、「核兵器のない世界」の実現は「究極の目標」と先送りするにとどまらず、核兵器の存在は「防衛目的の役割を果たす」と正当化しました。さらに、7日の日韓首脳会談で、北朝鮮の挑発行為に対し、21日に広島で日米韓首脳会談を開き、核抑止である「拡大抑止」強化を協議することを確認しました。

 これに対し、被爆者団体などから「被爆地広島で、『核は必要』などと発信することは許されない」とする批判の声が続出。原水爆禁止日本協議会は10日、「核抑止」を強調する政府の姿勢を批判し、G7サミットで核兵器禁止を訴えるよう求める署名を外務省に提出しました。

 そもそも、G7メンバーのうち、米英仏の3カ国が核保有国で、ドイツ、イタリアには米国との「核共有」で戦術核が配備されています。日本とカナダも米国の「核の傘」のもとにあります。

 さらに、ロシアがウクライナ侵略で、核兵器の先制使用で威嚇していることにより、「核には核を」の逆流も強まっています。G7の中でも、英国が21年に核弾頭保有数の上限目標を引き上げる方針を表明。米国は最新鋭の核弾頭や、その運搬手段である原潜、戦略爆撃機の開発など、戦力の「近代化」を進めています。

禁止条約署名を

 こうした現状に対し、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は先月、G7加盟国の国会議員を迎えフォーラムを開催。ドイツのマーラ・スペラバーク氏(緑の党)は、長崎の被爆者で故人の谷口稜曄(すみてる)氏が人生をかけて核廃絶を訴えたことに言及し、「被爆地広島でG7は核廃絶に取り組まなければいけない」と強調。イタリアのラウラ・ボルドリーニ氏(民主党)は、核廃絶は国会議員の責務だと述べ、「この地球の未来を信じるなら核兵器禁止条約こそ必要だ」と力を込めるなど、自国政府に核兵器禁止条約への署名を求める決意を相次いで示しました。

“異議ない3点”発信を

 日本共産党の志位和夫委員長は、昨年8月の核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終文書案に言及。同案には、(1)「核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道的結末への深い懸念」(2)NPT6条のもとで合意されている「核兵器の全廃を達成するという核兵器国の明確な約束の再確認」(3)核兵器禁止条約の発効と第1回締約国会議の開催を「認識」する―とした3点が盛り込まれており、「この3点はG7参加国も異議をとなえなかった。ならば、G7サミットでは、少なくともこの3点を発信すべきだ」と提起しました。

外交 排除か包摂か

 主要7カ国(G7)首脳会議では、ロシアによるウクライナ侵略や、東シナ海、南シナ海で覇権主義的行動を強める中国への対応も主要議題となる中、外交努力による緊張緩和が求められています。

 ウクライナ支援をめぐっては、同国のゼレンスキー大統領がオンラインで会合に出席。新たな支援策やロシアへの追加制裁などが注目されます。

 中国をめぐっては、4月のG7外相会合の共同声明で、事実上の中国包囲網である「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の重要性を強調。一方、「ASEAN(東南アジア諸国連合)インド太平洋構想」(AOIP)に言及するなど、中国を含めた包摂的枠組みへの関与も示唆しました。

 立場の違いによる対立が深まっている今、必要なことは、相手との関係を遮断するのでなく、関係国を含んだ対話の枠組みを積極的につくり、真剣な対話と協力を進めることです。戦争の悲惨さを物語る被爆地広島で、軍事衝突の危険を高める「排除」に向かうのか、中国・米国も取り込む平和の枠組みをつくる「包摂」に向かうのかが問われています。

 アフリカ諸国をはじめとした新興途上国「グローバル・サウス」との連携も重要になっています。これら諸国はG7諸国とも中ロとも等距離をとっている国が多く、「多数派」形成の観点から連携強化が重要焦点になっています。こうした地政学的な観点でなく、ロシアのウクライナ侵略による食料・エネルギー価格高騰に苦しむ途上国への積極的貢献こそ求められます。

多様性 日本の対応は

自民へ批判必至

 G7サミットでは、LGBTを含む性的少数者の権利保護も議題になり、共同声明に盛り込まれる見通しです。これまでもG7サミットではジェンダー平等の推進が強調されてきました。昨年6月にドイツのエルマウで開催された会合での共同声明で「性自認や性的指向に関係なく、差別や暴力から保護することへの完全な関与」を宣言。今年4月の外相会合でも、共同声明で性的少数者らの権利に関し、G7が世界を主導することを確認しました。

 こうした中、G7諸国の中で唯一、同性婚を認める法制度やLGBTへの差別を禁止する法制度がない日本の対応が問われています。今年2月、荒井勝喜首相秘書官(当時)が性的少数者について「見るのも嫌だ」「(同性婚導入で)国を捨てる人も出てくる」などと差別発言をしたことを受け、G7サミット前の法制化を目指し、超党派でLGBTの理解増進法案がまとめられました。しかし、「差別は許されない」などの文言に自民党内の右派が反対し、動きは止まってしまいました。

 一方、1日の「共同」世論調査では、同性婚を「認めるほうがよい」との回答が71%に上るなど、G7サミットを前に同性婚の法制度を実現すべきだとの声が高まっています。さらに、米国などからも日本の対応の遅れにクギをさす発言が相次ぎました。こうした内外世論に押された自民党は12日、サミット前に修正案を国会提出することで合意しましたが、超党派でまとめた法案を否定しながら、国際世論に配慮する形であわてて法案を提出する自民党の姿勢に批判が高まりそうです。

G7とは

発言力強める途上国 存在意義に疑問の声も

 1970年代に入り、ニクソン・ショック(ドルを基軸とした通貨体制の崩壊)や第1次石油危機などに直面した西側諸国の結束を強めるため、75年、日本を含む6カ国で第1回サミットを開催。76年にカナダが加わり、「G7」に。90年代からロシアも参加し、「G8」になりましたが、2014年のクリミア侵略でロシアの参加が停止。G7に戻りました。

 当初は世界経済や金融が主要議題でしたが、近年は地球温暖化、貧困、人権など幅広いテーマが議題になっています。また、中国やインドが台頭し、多くの途上国が発言力を強めるなか、「東西冷戦」の産物であるG7の存在意義が繰り返し問われています。

 日本での開催は1979年の東京サミット以来、今回で7回目。


「被爆地広島で、『核は必要』などと発信することは許されない」
これにつきます。

園のようす。


岸田首相「TIME」誌問題で露見した日本マスコミの権力忖度体質!

2023年05月13日 | 社会・経済

 岸田が『世界一受けたい授業』に出演する日テレは

リテラ 2023.05.13

 岸田政権が、安倍・菅政権そっくりの“報道圧力”体質をあらわにした。昨日12日発売のアメリカの雑誌「TIME」の表紙を飾った岸田文雄首相だが、電子版で公開された特集記事の見出しに外務省が文句をつけ、見出しを修正させたのだ。

 当初、電子版の特集記事の見出しは「岸田首相が平和主義だった日本を軍事大国に変えようとしている」というものだったが、これに対し、外務省は「TIME」誌側に「見出しと中身が異なっているとして異議を伝えた」という。その結果、電子版の見出しは「岸田首相は平和主義だった日本に、国際舞台でより積極的な役割を与えようとしている」に修正されたのだ。

 共同通信の記事では、政府関係者が「修正を求めたわけではないが、見出しと記事の中身があまりに違うので指摘した。どう変えるのかはタイム誌の判断だ」と話しているが、記事のほうでも、岸田首相が戦後最大規模となる軍備増強を発表し、防衛予算で世界第3位となることを指摘したり、「防衛力の強化が核兵器のない世界を目指して努力するという岸田首相の公約と矛盾する」といった見方があると紹介している。つまり、「見出しと記事の中身があまりに違う」というわけではまったくない。

 だいたい、当初の見出しである「岸田首相が平和主義だった日本を軍事大国に変えようとしている」というのは、正真正銘の事実ではないか。実際、防衛予算が世界第3位になる防衛費増額だけではなく、岸田首相は歴代の政権が否定してきた敵基地攻撃能力の保有や、アメリカ製の長距離巡航ミサイル・トマホーク400発の導入を決めている。紙のほうの「TIME」の表紙では、悪巧みをするような表情を浮かべた岸田首相の写真とともに「日本の選択」「岸田首相は何十年もつづく平和主義を放棄し、自国を真の軍事大国にしている」と銘打たれているが、まさに岸田首相の政策を的確に評したタイトルと言えるだろう。

 いや、見出しと中身が合っているのかどうかの問題以前に、総理大臣のインタビュー記事に対し、政府が記事の見出しやタイトルに口出しして修正させることは、編集権への不当な介入、報道圧力にほかならない。総務省の放送法解釈変更問題では安倍政権下でおこなわれてきた放送局への報道圧力が再び注目を集めたが、岸田政権も結局は同じ体質なのである。

 しかも、岸田政権は今回、こうした報道圧力を国内のみならず海外メディアに対してまで振るってしまった。G7サミット開催を前に、議長国だというのに、反民主主義的な体質を世界中に晒すとは、開いた口が塞がらない。

日テレ『news zero』は報道圧力批判せず「軍事大国という言葉に違和感」「軍事大国は誇張」と政府の言い分に丸乗り

 だが、さらに酷いのが、国内メディアの報道ぶりだ。海外メディアの報道に政府が不当に介入して見出しを変えさせるという、けっして他人事ではない問題であるにもかかわらず、テレビも新聞も政府の言い分を垂れ流すだけ。

 そんななかでも、とくに酷かったのが、日本テレビの報道だ。

 11日放送の『news zero』(日本テレビ)では、キャスターの有働由美子が「アメリカの有力誌『TIME』の表紙を飾った岸田首相の写真。これだけの決め顔はあまり見たことがありません」などと口にすると、小栗泉・日本テレビ解説委員が「写真については、首相周辺からは『こんな写真、いままで見たことない』『ちょいワル風で良いんじゃないの?』などと評判が良いです」とコメント。見出しが修正された件について、疑義を呈することもなく政府の主張を取り上げただけだった。

 その上、有働キャスターが「『日本は軍事大国などではない』と思っていても、アメリカ側はじつはそう思っているとも考えられるのでしょうか」と問うと、小栗委員は「私も軍事大国という言葉に違和感がありました」などと言い出し、防衛費増額や敵基地攻撃能力の保有によって安全保障戦略を大きく変えたことは事実としながら「一方で、核兵器は持たないし、専守防衛は守っているということで、軍事大国かどうかは、どこに重心を置いて見るかによって変わってくるかもしれませんね」と解説したのだ。

「専守防衛は守っている」って、いったい何を言っているのか。集団的自衛権の行使は、自国が武力攻撃を受けていなくても他国への攻撃を自国の攻撃だとして反撃することであり、専守防衛を逸脱する行為だ。しかも、政府が購入を進めているトマホークは対地攻撃に特化したものであり、専守防衛の範囲を超えている。こうした問題を指摘するのが解説委員の仕事であるはずだが、それを「専守防衛は守っている」「軍事大国かどうかは、どこに重心を置いて見るかによって変わってくる」と説明するとは、呆れてものも言えない。

 さらに、この戯言でしかない解説のあと、曜日レギュラーを務める元ラグビー日本代表キャプテン・廣瀬俊朗氏が「『軍事大国』というタイトルは誇張していて、フェアではないような気はしました」 とコメント。最後は、“国際社会がどう見ているかをチェックすることも大事”という無難なまとめで終わった。

安倍のと同じやり口! 岸田首相と会食繰り返す日テレ幹部たち 『世界一受けたい授業』に岸田出演で政権PRに加担

 政府が報道の見出しに口出しするという国際的な問題を引き起こしたにもかかわらず、それを指摘することもなく、むしろ政府に同調して「軍事大国は言い過ぎ」と言わんばかりの報道をおこなう──。もはやため息しか出てこないだろう。

 しかも、こうした“忖度報道”の背景には、岸田首相と日テレの密着関係がある。実際、今月10日に岸田首相は日テレ顧問の大久保好男氏らと会食し、3月14日にも粕谷賢之・日テレ取締役常務執行役員らと会食。昨年12月16日には日テレが所有する東芝の迎賓館施設だった「高輪館」で、杉山美邦会長に石沢顕社長、大久保氏や粕谷氏という日テレ幹部が揃って岸田首相を“接待”している。

 さらに、本日13日には、日テレの長寿人気番組である『世界一受けたい授業』に岸田首相が「特別講師」として出演。すでに収録を終えており、岸田首相は「総理のお仕事」と「G7広島サミット」について講義するという。

 メディア幹部と会食を繰り返し、好意的な報道をおこなうテレビ局のバラエティ番組に出演して好感度を上げる。これはまさしく安倍政権のメディア戦略であり、岸田政権もまったく同じことを実行しているのだ。このような関係のなかで、政府による報道圧力を批判することなど、どだい無理な話。情けないにも程があるだろう。

(編集部)


菜の花情報(パンフレットより)

 

⑮の道を挟んで南(地図上では下)がわが園地です。
ご来場の際は当園までお出でいただければ嬉しいです。

今日の菜の花

会場畑周りは駐禁看板やコーンが置いてあり畑には「入るな」の立て札が林立。
ちょっとどーかなと思う節がある。
せっかく来ていただくのだからいい写真も撮りたいだろうに。


佐川宣寿氏の代理人「訴訟が継続して再就職にダメージ」意見書提出前倒し求める

2023年05月12日 | 社会・経済

赤澤竜也作家 編集者

YAHOOニュース(個人)5/8(月) 

 

「そんなこと言わないでよ。わたしの夫は亡くなっているんですよ」

 公文書改ざんを強要され自殺した元近畿財務局職員・赤木俊夫さんの妻・雅子さんは佐川宣寿元国税庁長官の代理人に向かって叫ぶと、泣き伏してしまった。

 5月8日、大阪地方裁判所で行われた損害賠償請求訴訟控訴審の進行協議のなかでの出来事である。佐川氏の4名の弁護士はウェブ上での参加だったという。

 いったいなにが起こっていたのだろうか。

国は税金を使って真相解明を阻んだ

 赤木雅子さんは2020年3月18日、国と佐川宣寿元国税庁長官に対する損害賠償請求訴訟を提起した。

 目的はひとつ。夫がなぜ死ななくてはならなかったのか。その真相を知りたい。ただ、それだけだった。

 財務省は公文書改ざん発覚後の2018年6月4日、「改ざん等に関する調査報告書」なる文書をとりまとめた。しかし、誰が、いつ、どこで、どのようにして改ざんを指示し、どのような命令系統で下達されたのかが一切書かれていない、およそ「調査報告」という名に値しない代物だった。

 佐川氏については「改ざんの方向性を決定づけた」とのみ記される一方、「全貌までは承知していない」という記載もあるなど、どう関わっていたのかまったくわからない。

「最終的には佐川さんに話してもらうしか真相にはたどり着けない」。そういう思いから、国だけではなく佐川宣寿元国税庁長官個人も訴えたのである。

 俊夫さんは雅子さんに、「ボクは改ざんに関するメモを残しているんだ」と何度も話していた。また俊夫さんの直属の上司である池田靖統括国有財産管理官(当時)もまた、雅子さんに「赤木さんは改ざんに関してきっちりしたファイルを作っていた。ファイルには本省からの指示、修正箇所、改ざんの過程が一目でわかるように整理されていた」と証言していた。訴状においては、この「赤木ファイル」の提出も求めた。

 裁判で国はひたすら遅延行為を繰り返した。しかし、原告による文書提出命令申立が認められそうになったため、訴訟提起から1年3ヵ月後の2021年6月21日、赤木ファイルを証拠として提出するに至った。

 同年の秋になり裁判長が証人尋問の可能性を口にしたあとの12月15日。国は突然、「原告の請求を認諾する」と宣言。お金を払うということで裁判を強制終了させてしまう。

 国会の答弁(2022年2月14日衆議院予算委員会など)によると、国が訴えられた請求をそのまま呑んだケースはそれまで過去3件しかなかった。しかも今回のケースは過去最高額。佐川氏ら財務官僚の証人尋問を防ぐため、国民の税金を使って一方的に訴訟を打ち止めにしたのだった。

 佐川宣寿元国税庁長官に対する訴訟のみ継続したものの、2022年11月25日、大阪地方裁判所は佐川氏の尋問も認めぬまま請求を棄却した。

立ちはだかった最高裁判例の壁

 判決においては「国に賠償を求めることができる以上個人として損害賠償責任を負わない。損害賠償責任を負わない以上、原告(雅子さん)に対して道義上はともかく、行為について説明したり謝罪したりすべき法的義務が、信義則上発生すると考えることはできない」と述べられた。

「公権力の行使に当たる国の公務員がその職務を行うにつき故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合には、国がその被害者に対して賠償の責めに任じ、公務員個人はその賠償の責任を負うものではない」という最高裁の確立した判例があり、それにのっとった判決なのだという。

 国家公務員に個人責任は問えない。

 今回のように重大な違法性があるケースにおいて、本当にそれでいいのか。控訴審においては、この最高裁判例という高い壁に挑んでいるのである。

「佐川さんにはやっぱり真実を語ってほしい」

 控訴人(赤木さん側)は裁判所に提出する意見書を書いてもらうべく、権威のある大学の先生方に打診をし続けた。しかし、なかなか色よい返事がもらえない。ようやく某大学の名誉教授から前向きな返答をもらい、非公開で行われた5月8日の進行協議において裁判長に、「意見書を書いてもらい、6月末日には提出する」と告げた。

 裁判長は「では、もう1回進行協議を7月に入れまして、控訴人の意見書と準備書面に対して被控訴人(佐川氏側)の反論が必要かどうか見てもらったうえ、弁論期日を入れるという進行にしたいと思いますが、被控訴人はなにかご意見はございますか?」と尋ねたという。

 すると、佐川氏の代理人は、

「意見書の提出を1ヵ月ぐらい前倒ししていただきたい。佐川は訴訟が継続して就職活動もできない状態になっており、長引くことがダメージになっております。(意見書を書いてくれる)先生は能力も高いと思われますので、急いでいただいて、日程を1ヵ月早めて欲しい」

 と言い出したため、冒頭のような展開となったのだった。

 雅子さんは、

「夫は再就職しようと思ってもできないんです。それを思うと感情的になってしまいました。左側の裁判官さんが、『相手方のご意見をまず、聞いてからどうするかを決めますので』となだめて下さり、生越先生がずっと手を握ってくれたので、なんとか落ち着くことができたんです」

「夫はどんなに苦しい思いをして死んだのか。わかってらっしゃるのかしら。もう裁判をやめよう。何度も思いました。でも、やっぱりやめられない。やめるわけにはいかないと強く感じさせる出来事でした」

 と語る。

 佐川宣寿元国税庁長官ひとりの責任であると考えているのではない。雅子さんの口から「佐川さんもお気の毒だ」という言葉が洩れるのを何度も耳にしている。詰め腹を切らされ、全責任を背負い込んだということも理解しているという。

 でも、やっぱり夫の死の真相を知りたい。「佐川さんに聞くしかない」のである。そして改ざんが行われた当時、財務省理財局長という重責を担った彼には国民に対して真相を語る責務があるはずだ。そのような思いが込められた控訴審は今後も続いていく。

赤澤竜也 作家 編集者

大阪府出身。慶應義塾大学文学部卒業後、公益法人勤務、進学塾講師、信用金庫営業マン、飲食店経営、トラック運転手、週刊誌記者などに従事。著書としてノンフィクションに「国策不捜査『森友事件』の全貌」(文藝春秋・籠池泰典氏との共著)「銀行員だった父と偽装請負だった僕」(ダイヤモンド社)、「内川家。」(飛鳥新社)、「サッカー日本代表の少年時代」(PHP研究所・共著)、小説では「吹部!」「白球ガールズ」「まぁちんぐ! 吹部!#2」(KADOKAWA)など。編集者として山岸忍氏の「負けへんで! 東証一部上場企業社長VS地検特捜部」(文藝春秋)の企画・構成を担当。日本文藝家協会会員。


何とか今日のものになりました。

寒いです。
今夜もストーブ3台です。


子どもや若者たち自身に「将来、子どもなんて欲しくない」と思わせてしまう国に未来はあるのか?

2023年05月11日 | 生活

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

YAHOOニュース(個人) 5/9(火)

「子どもなんて欲しくない」

日本に限らず、先進諸国の出生率は軒並み低下している。家族関係政府支出予算をあげようが、世界各国何の効果も出ていない。

→「異次元の少子化対策」を検証する~子育て支援は出生率に影響するのか?

結果としての出生率低下だけではなく、そもそも今の子どもや若者が「子どもを欲していない」という状況があるのだろうか。

内閣府が継続調査している「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」から紐解いていきたい。

この調査は、日本、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの計7か国の13-29歳までの若者男女に対して行われている。その中で「子どもの希望人数」について聞いた質問に対して「子どもは欲しくない」と回答した割合で比較した。

データは、2013年と2018年の調査データと、2020年時点での各国の合計特殊出生率(TFR)実績もプロットしている。2020年の実績としたのは、調査対象が13-29歳であり、まだ結婚出産が不可能な年齢も多く含まれているため、後ろ倒しのデータを採用している。

7か国の比較

図1(図はてんさいできませんでした)

これによれば、2013年時点では、日本も韓国も他の欧米諸国と同様に「子どもが欲しくない」という解答は1割程度だったが、5年後の2018年調査では、日本が+5.9ポイントの16.7%、韓国に至っては+10.8ポイントの21%と倍増してしまっている。ドイツとスウェーデンも「子ども欲しくない」率はあがっているものの、それでも1割程度に収まっている。

当然、「子どもは欲しくない」という割合が高ければ高いほど、2020年の合計特殊出生率の実績値は低い。その相関係数は▲0.9519であり、限りなくMAXに近い強い負の相関となる。

出生率増減との相関

「子ども欲しくない」率と合計特殊出生率の5年間増減率を比較したグラフが以下である。

図2(同様)

全体的に、「子ども欲しくない」率があがっていればいるほど出生率は下がっているが、米国と英国は「子ども欲しくない」率が下がっている(=「子ども欲しい」率があがっている)にもかかわらず、出生率は下がっている。「子ども欲しくない」率に変動のなかったフランスでも出生率は下がっている。

むしろ、60%近くも若者の「子ども欲しくない」率があがっているにもかかわらず、出生率はそれほど低下していない日本は、少子化とは言え、今は30代の既婚女性が健闘しているといえるだろう。

つまり、すでに結婚した女性は子を産んでいるのであり、これから懸念すべきは、2人目や3人目の子の産み控えがあるというより、子ども0人→1人が減っていることでの全体の低出生率なのである。

2018年段階の13-29歳が、最終的に子を産む時期は、この対象者の上限が49歳となる20年後の2038年に判明すると思うが、少なくとも13-29歳の子どもや若者のうち16.7%が「子ども欲しくない」と回答し、しかも、2013-2018年の5年間で「子ども欲しくない」率が6割も上昇していることの方が深刻だろう。

もちろん、13-29歳のうち10代はまだ子どもを持つことの実感がない割合も高いと思われるが、それでもこの若い世代が20年後の出生を担うのである。子どものうちから「将来、子どもなんかいらない」と思わせてしまう社会はどうなんだろう。

日本と韓国の急激な上昇

日本と韓国だけが、なぜ2013-2018年の間にこれほどまでに若者の「子ども欲しくない」率が高まったかという点はいろいろ解釈があると思うが、この両国において、子どもの教育費(特に公的な教育費ではなく学校以外でかかるもの)の負担が大きいと親たちが嘆いていることと決して無縁ではない。

→「子どもにお金がかかりすぎ」少子化が進む日本と韓国だけ異質な教育費負担

子どもは親のことをよく見ている。

親が家計のやりくり、特に子どもである自分へのコストに頭を悩ませている姿を垣間見た時、子どもは「自分は迷惑な存在なのだ」と自分を責め、そんなことであれば「子どもなんていらない」と思ってしまう子がいないと断定できない。

また、20代に関していえば、奨学金の問題もあるだろう。就職したとしても、運よく都会の大企業に就職できた恵まれた3割の層は別にすれば、7割は中小企業勤めである。想像していたよりも少ない給料と思うように手取りが増えないという経済環境が存在する。「子どもが欲しい」とか以前の問題として、日々の生活に精一杯な若者も多い。

「なんとかなる」という希望すらない

しかも、昭和の高度成長期のように「今は貧しくても10年後、20年後には必ずなんとかなる」という先輩モデルすら存在しない。今の40代の先輩社員を見ても、ちょうど氷河期世代先輩たちは「給料が全然あがらない」と嘆き続け、いまだに独身のままの中年が多い。

それで、若者が自分の将来に夢や希望を持てなくても、彼らを責められようか。

このままいけば、韓国のように子どもの時から2割以上が「子ども欲しくない」と思い、出生率も1.0を切るような事態になることも否定できない。

何度もいうが、もし本当に少子化対策を真剣にやろうとするならば、今結婚していて子どもを育てられる環境の親に対する「子育て支援」では的外れだ。女性の平均初産年齢が30歳を超える時代で、これから一人の女性が3人も4人も出産することは年齢的に苦しくなる。母親が全員3人産めば、少子化は解決などという鉛筆なめなめの大嘘は本当に害悪なのでやめてほしいものだ。

→「2人産んだ母親がもう一人子どもを産めば少子化は解決」などという説の嘘

それよりも、子どもたちが、「自分のせいで親が苦しい思いをしている。生まれてこなければよかった」などと思うことがないよう、また、若者たちが「どうせ頑張ったところで先は変わらない」などと諦観しないよう、子どもと若者たちへの希望をもたらすとともに、今子育て中の所得中間層の親も日々眉間に皺をよせることのない「全体的な景気の底上げ」こそが必要なのではないか。

それゆえに、今この時期に、子育て支援の体で、結局増税や社会保障費の増額などにつながる政策は論外なのである。

東京中央区の出生率トップ「結婚も出産も豊かな貴族夫婦だけが享受できる特権的行為」となったのか?

荒川和久

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。


おまけにキナ臭い話満載だ。
せっかく産んでもいじめを受けたりじさつされたのではたまったものではない。
高教育費、奨学金返済、ひも付き研究、自衛隊に入ろう、これでは産みたくなくなるのはよ~くわかる。

寒い日が続いている。
明朝の予想最低気温、0℃、1℃です。
アメダス地点でしょうから、現地はもっと下がります。
さらに石油ストーブ1台をもって行き今日は3台点灯です。

明日は札幌へ行ってきます。
更新できないかもしれません。


性差別撤廃条約選択議定書

2023年05月10日 | 社会・経済

早稲田大学名誉教授 浅倉むつ子さん

「しんぶん赤旗」2023年5月10日

国連への個人通報が可能に G7を機に日本の批准ぜひ

 広島で開かれるG7(主要7カ国)首脳会議に向けて、世界38カ国、87人の市民代表がジェンダー平等などの提言(W7=ウーマン・セブンJapan)を議長国・日本政府に提出し、G7サミットのコミュニケに反映するよう要請しました。W7の提言作成にあたり女性差別撤廃条約選択議定書の批准を盛り込むよう働きかけた女性差別撤廃条約実現アクション共同代表で早稲田大学名誉教授の浅倉むつ子さんに聞きました。(加來恵子)

 ―日本はジェンダー平等の後進国といえる状態です。その原因は何でしょうか。

 世界経済フォーラムが示した2022年のジェンダーギャップ指数の順位は146カ国中116位です。大きな原因は、法整備の遅れ、つまり日本の政治の責任が非常に大きいと思います。

 日本は1985年に女性差別撤廃条約を批准しましたが、政界・経済界は男女平等に消極的でした。女性たちが望んだ「雇用平等法」ではなく「均等法」という弱い法律しかできなかったのもそこに原因がありました。

 その後、男女共同参画社会基本法など、法整備は少しずつ進みましたが、今世紀初頭には、性教育やジェンダー平等に対する大規模なバックラッシュ(揺り戻し)が起きました。

 一方、ハラスメントなどが社会問題化するたびに、必要最低限の法整備が行われました。でも、それらは対症療法的なものでしかなく、法体系を根本から見直して、ジェンダー平等という目標に向かって進む流れはできていません。

 これに対して、他の国では、男女平等を実現させるために、さまざまな立法改革を行ってきました。たとえば包括的な差別禁止法をつくり、政治分野にも割当制を導入してきました。イギリスの「平等法」や、フランスの「パリテ法」(男女同数法)がよい例です。日本はことごとく遅れてしまい、現在の状況に陥っているのです。

 ―日本の政治が変わらないもとで頼みの綱は司法にあると指摘していますね。

 司法が権利侵害された人を救済できれば、社会も変わります。ところが、女性差別撤廃条約とのかかわりで裁判の実態を見ると、日本の裁判所は、法律に基づく救済命令を出す一方、女性差別撤廃条約を根拠にして判決を出していません。条約には直接的効力はないと解釈しているからです。これでは、せっかく条約を批准しても司法判断は変わらないことになります。

 この問題を変える一つの手段は、同条約の選択議定書を批准して、個人通報ができるようにすることです。選択議定書は条約から20年後の1999年にできましたが、日本はこれを批准していません。

 個人通報を利用できるのは、国内で救済手続きを尽くした人、つまり最高裁でも権利が救済されなかった人です。この人たちも、日本が選択議定書を批准すれば、最終手段として、国連の人権委員会に通報できるのです。

 個人通報を受けると、人権委員会は各国に「見解」を出し、救済を勧告します。これに法的拘束力はありませんが、多くの国はこの勧告を順守しています。

 もし私たちが個人通報できるようになれば、日本の裁判所も、国際的な人権規範を考慮しながら判決を書かなければいけなくなるでしょう。なぜなら、最終的には国際的な人権水準に照らした判断が求められることを裁判官も意識せざるをえなくなるからです。このように、個人通報は日本の司法を変えるきっかけになると考えます。

 ―G7に向けて世界のNGOがW7Japan提言を日本政府に提出しました。

 昨年ドイツで開かれたG7の首脳コミュニケは、「ジェンダー平等の達成は、われわれが強じんで包摂的な民主的社会に向け努力し、また、世界中での権威主義の高まり並びに女性及び女児の権利に対する反発に対抗するために、不可欠である」と明言しました。また、あらゆる多様性をもつ人々の完全かつ平等で意義ある参加を確保して、「すべての政策分野に一貫してジェンダー平等を主流化させることを追求する」と述べました。

 岸田首相は、ドイツG7コミュニケへの支持を明確に表明しています。

 W7Japanの提言には、五つの課題が盛り込まれています。その中の一つであるフェミニスト外交政策は、女性差別撤廃条約とその選択議定書をはじめとする国連人権条約の完全で効果的な実施を求めています。

 日本は議長国としてG7コミュニケをつくる責任があります。ところが、日本はその選択議定書を批准していないのです。一方、米国も条約を批准していないのですが、米国には「米州機構」があり、国際的な人権保障システムが独自に存在します。日本と同列に扱うことはできません。

 日本は選択議定書批准について「検討中」と繰り返して20年にもなります。今回のG7議長国である日本が選択議定書を批准していないのは、とても恥ずかしいことです。この機にぜひ、選択議定書を批准することを内外に明言してほしいものです。

 あさくら・むつこ 早稲田大学名誉教授、女性差別撤廃条約実現アクション共同代表。日本学術会議会員(2003~14年)、ジェンダー法学会理事長(07~09年)。著書に『労働法とジェンダー』、『同一価値労働同一賃金の実現』(編著)など


菜の花情報

寒いです。15日ころから最低気温も上がってくるようです。


古賀茂明 米中の認識が一致 日本社会の変貌 

2023年05月09日 | 社会・経済

2023/05/09

先月末、この春着任した呉江浩駐日中国大使の話を聞く機会があった。

 大使は、3回目の日本駐在で日本のことには詳しい。その大使が、15年ぶりに日本に来て非常に驚いたことがあるという。

 それは、テレビなどで、「日本には外敵がいるから防衛費を増やすのは当然だ」というようなことを政治家ではない「一般人が普通に」口にすることだ。15年前に離任する時には考えられなかったことだという。

 この話を聞いて私は本誌の今年2月3日号でも紹介した日本経済新聞(1月15日付)のインタビュー記事を思い出した。台湾有事の報告書で話題になった米国の戦略国際問題研究所(CSIS)の日本部長クリストファー・ジョンストン氏は次のように語っていた。

「2010年ごろは台湾有事のシナリオを話すのは不可能だった。いま日米はより率直に現実的に話し合えるようになり、議論が深まっている。反撃能力の保有は東アジアでの抑止力と安定に貢献できる。……前向きな一歩だ」

 この言葉は、アメリカが、日本社会(あるいは世論)の安全保障に関する「常識」が大きく変わったと見ていることを端的に示している。今から10年ほど前までは、アメリカが台湾有事の話を持ち出したくても、日本国内でそれが受け入れられる余地がなかったから、話すことさえできなかった。だが、今は台湾有事=日本有事とか「敵基地攻撃能力(反撃能力)」保有が当然視され、トマホークを爆買いし北京まで射程に収める長距離ミサイルの開発を急ぐところまでエスカレートする防衛政策を世論が受け入れているように見える。

 もちろん、米側から見れば、これはポジティブに評価すべきことだから、ジョンストン氏は何のためらいもなく正直に述べたのだろう。

 一方、これと同じ現象を呉大使は驚きをもって受け止め、さらに、非常に危険な予兆を読み取ったのではないか。

 ここから先は私の考えだが、10年前には日本の領土外にある台湾で起きた武力紛争に日本が参戦することは憲法上許されなかった。それが安倍政権の解釈改憲による集団的自衛権行使容認で参戦が可能になったという大変化が起きた。それを前提にすると、台湾有事=日本有事とか防衛費倍増や敵基地攻撃能力などの議論が芋づる式に肯定される道が開かれる。

 10年前の一般の日本国民にはこうした議論が受け入れられる余地はなく、政治家も持論を声高に述べることは控えた。だが、今や政治家どころか一般人が右翼政治家と同じことを言い始めている。こうなると、「敵が攻めて来るぞ!」「このままではやられてしまう!」「ならば、先にやるしかない」と自民党が声高に唱え始めた時、以前なら「戦争なんてとんでもない!」という反対世論が強まる可能性が高かったが、今は、「そうだ、そうだ!頑張れ、自衛隊!」の大合唱になる怖れすらある。戦争を止める最後の砦である国民世論が全く歯止めにならない状況が生まれつつあるのだ。

 だからこそ、米中の外交の専門家が、日本世論の「激変」を共に認識した。だが、肝心の日本国民はこれに気付いていないようだ。いざ開戦となってからでは遅い。日本国民は、米中の指摘を機に、自らの「変節」を早く改めるべきだ。

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。自身が企画プロデューサーを務めた映画『妖怪の孫』の原案『分断と凋落の日本』(講談社)が発売中

※週刊朝日  2023年5月19日号


とはいえ、そう簡単には改まらないのが現実だ。
何がそうさせたのか?
プーチンと習近平か?

悪法が衆議院を通過した。


入管難民法改正、杉並で3500人反対デモ 「罪のない人に手錠をかけ、先の見えない人生に追いやる」<動画あり>

2023年05月08日 | 社会・経済

「東京新聞」2023年5月7日

入管難民法改正案に反対を訴える(左から)ウィシュマ・サンダマリさんの妹ワヨミさん、ミャンマーの少数民族ロヒンギャのミョーチョーチョーさん、ウィシュマさんの妹ポールニマさんら=7日、東京都杉並区で

入管難民法改正案に反対を訴える(左から)ウィシュマ・サンダマリさんの妹ワヨミさん、ミャンマーの少数民族ロヒンギャのミョーチョーチョーさん、ウィシュマさんの妹ポールニマさんら=7日、東京都杉並区で

 政府が今国会での成立を目指す入管難民法改正案の廃案を訴えるデモが7日、東京都杉並区であった。「杉並から差別をなくす会」など、外国人支援や反差別運動に取り組む約100団体が賛同した実行委員会が呼びかけ、3500人(主催者発表)が集まった。どしゃ降りの雨の中、参加者は「入管は人権守れ!」などと書いたプラカードを手に、高円寺から阿佐谷までを練り歩いた。
 入管難民法改正案は、難民認定申請中でも国内の外国人を強制送還できる内容などが問題視されている。与党は9日の衆院本会議で採決し、衆院通過を図る構えだ。
入管難民法改正案に反対を訴えるウィシュマ・サンダマリさんの妹ポールニマさん(左後方)。同手前はワヨミさん

入管難民法改正案に反対を訴えるウィシュマ・サンダマリさんの妹ポールニマさん(左後方)。同手前はワヨミさん

 高円寺中央公園で開かれた集会では、名古屋出入国在留管理局に収容中に死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)=遺族弁護団の指宿昭一弁護士が「改悪はいまからでも止められる。諦めず廃案まで闘おう」とあいさつ。3回目の難民申請を却下されたミャンマー出身で少数民族ロヒンギャのミョーチョーチョーさんは「2006年8月に命や家族が危ないと日本に逃げてきた。入管は罪のない人に手錠をかけ、先の見えない人生に追いやる。法案は、市民の声で止めないといけない」と声を上げた。
 ウィシュマさんの妹ポールニマさん(28)も「姉の死の真相究明をせず、法案を成立させようとしている。絶対に納得がいかない」と訴えた。(望月衣塑子)
 

 みんな同じ人間です。そのうち日本からも難民として海外へ行かなければならない羽目になりかねない状況になりつつあるのかも。
寒いです。
 今日もハウス内2台のストーブを点けてきました。
雪が積もったところもあったようです。
園のようす。
ボケと山吹が咲きそう
そろそろ菜の花情報ですね。
暖かくなったら一気に咲きそうです。
15日以降でしょう。

子どもが国や社会に求めること、「高校・大学の無償化」「いじめなくして」

2023年05月07日 | 生活

1万人の回答がこれだ

10〜18歳の子どもの約6割が、2023年4月に施行された「こども基本法」を「聞いたことはない」と回答した

ハフポスト日本版編集部   2023年05月05日

 

国や社会が子どものために優先的に取り組むべきこととして、高校と大学の無償化やいじめ対策を求める子どもが約4割に上ることが、日本財団による1万人の子どもを対象にした調査で分かった。

2023年3月、10〜18歳の男女にインターネット上でアンケート調査を実施した。

「国や社会が子どものために優先的に取り組むべきこと」を複数回答式で尋ねたところ、「高校・大学までの教育を無料で受けられること」と答えた子どもが最も多く、40.3%を占めた。

続いて「いじめのない社会を作ること」(36.7%)、「子どもが犯罪や悪いことに巻き込まれることなく、安全に過ごせること」(33.7%)、「本当に困っている子どもの声にしっかり耳を傾けること」(30.6%)、「すべての子どもが平等に扱われること」(28.8%)の回答者が多かった。

「今や将来の生活を良くするために、世の中のどんなことを変えるべきか」との質問に対しては全体の約7割が回答。「経済面の支援」(回答者の17.7%)が最多を占めた。「平等な社会(にする)」「政治改革」はそれぞれ回答者の10.7%を占めた。

2023年4月には、子どもに関する政策を決める際に、子どもたちの意見を反映するための取り組みを国や自治体に義務付ける「こども基本法」が施行された。

同法について聞いたことがあるかを尋ねたところ、61.5%の子どもが「聞いたことはない」と回答した。「聞いたことがある」と答えた子どもは29.8%、「知っている」は7.3%、「詳しく知っている」は1.4%にとどまった。

〈取材・文=金春喜 @chu_ni_kim / ハフポスト日本版〉


是非とも「子どもたちの意見を反映」させていただきたいものだ。

晴れてよい天気だが空気が冷たい。
今朝のハウス内の最低気温も3℃を下まわった。
2台のストーブを点けていても。

しばらくこのような冷たい朝を迎えねばならないようだ。

赤いチューリップ

これはツツジの種類。もうすぐ咲きそうだ。


放射線育種なしにカドミウム対策は可能?

2023年05月06日 | 自然・農業・環境問題

印鑰智哉のblog 2023/04/26

  https://project.inyaku.net/archives/9177#more-9177

 毎日「あきたこまち」をいただいています。とてもおいしいお米だと思います。しかし、これを放射線育種米に転換してしまう動きが進もうとしています。秋田県は2月24日県議会農林水産委員会で、「あきたこまち」をカドミウムをほとんど吸収しない新品種「あきたこまちR」に2025年以降、全面的に転換することを報告したと報道されています。でも、この報告では「あきたこまちR」が放射線照射によって作られた交配種であることは伝えていません(1)。「あきたこまち」は秋田県が作るお米の7割を超える主力品種です。

 放射線育種は核の「平和的利用」という大義名分のため、かなり昔から使われている技術です。しかし、放射線によって遺伝子を傷つけることが果たして望ましい育種であるか、しっかりとした議論はされてきたでしょうか? ほとんどの人は知りもしない中で進められていたのが実際ではないでしょうか? 

 でもこう言うと、カドミウム汚染の問題はどうするんだ、と言われるでしょう。今回の放射線育種米への転換はカドミウム・ヒ素汚染対策の一環であり、放射線照射によってOsNramp5遺伝子の1塩基を壊すことでカドミウムをほとんど吸収しないお米が作ることができる。その品種に全量転換すればカドミウム被害を減らすことができるというわけです。確かにカドミウム問題は大きな問題だと思います(2)。

 でもちょっと待った! カドミウム対策には放射線育種が必須なのか、それ以外に方法がないのか、しっかり検証が必要です。

 実際に、遺伝子操作による「品種改良」は決してうまく行っているとはいえません。これまでさまざまな遺伝子操作による品種が作られてきましたけど、ほとんどのものは遺伝子操作を使わない、従来の品種改良で作られたものの方がすぐれた品種が得られています。たとえば、塩害耐性、干ばつや高温に耐えられる品種、低リグニンの品種、収量の多い品種など、さまざまなものが作られましたが、たいがいのものは遺伝子操作使わない従来の品種改良の方がよりよいものが実現できているのです。

 唯一の例外が除草剤耐性害虫抵抗性という分野です。もっともこれはラウンドアップかけても枯れないとか、虫を殺す毒素を作り出すというもので、この分野だと確かに遺伝子操作が強みを発揮しますが、この効能が有効なのは数年のみで、すぐに雑草も虫も耐性を獲得してしまい効果が減ってしまいます。結局、長く使い続けることはできず、画期的な品種とは呼びがたいものです。こうした遺伝子操作品種が環境や健康への懸念は大きいのもマイナスです。

 カドミウムおよびヒ素汚染対策として、今後の日本の食をカドミウムやヒ素汚染から防ぎ、また環境中の汚染をどう減らしていくかは重要な課題です。でも、世界の中に存在する多数の在来種、そして農法によって解決する道は存在していると思います。もしその道が見つからなければ有機の「あきたこまち」は姿を消してしまいます。

 もし、放射線育種を選択するというのなら、それは政府や地方自治体が勝手に決めるのではなく、お米の生産者、そしてお米を食べる人がその議論に参加する必要があると思います。知らされずに食べさせられることだけはちょっとゴメンです。

 OKシードプロジェクトでは5月9日にオンライン学習会を開催します。ぜひ、ご参加ください。

OKシードプロジェクト学習会「放射線による突然変異育種って何?」

https://okseed.jp/news/entry-177.html

 僕は、この放射線育種ではない「あきたこまち」を2025年以降も食べ続けたいと思います。放射線育種を使わずにカドミウム対策もできる道を見つけることができると思います。

(1) 秋田県農林水産委員会

https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/70452

ここの資料では放射線育種については一言も触れられていない。

「あきたこまちR」、秋田県の奨励品種に カドミウム吸収抑制、農家の負担軽減へ

https://www.sakigake.jp/news/article/20230225AK0016/

秋田魁新報社の報道でも一言も触れられていない。

しかし、「あきたこまちR」は重イオンビーム照射によって作られた「コシヒカリ環1号」の後代交配種

https://www.jstage.jst.go.jp/article/fertilizerscience/44/44/44_77/_pdf

(2) お米のヒ素・カドミウムを同時低減する技術

https://www.affrc.maff.go.jp/docs/project/seika/2020/r2_seikashu_14.html


明朝の予想最低気温2℃ポータブル石油ストーブ2台に点火して帰ってきた。
桜もかなり散っている。

チューリップが咲きだした。

白い水仙。

そろそろ終わりか?


精子提供者は誰?子どもとつなぐ団体が始動。「自分は何者なのか」近親婚への不安も

2023年05月05日 | 生活

精子や卵子の提供で生まれた人が、血縁上のつながりのある提供者が誰かを知ることができるように。子どもの「出自を知る権利」を守るための取り組みが始まった。

ハフポスト 2023年05月04日 

  國﨑万智(Machi Kunizaki)

日本では、第三者が介入する生殖補助医療で生まれた子どもの「出自を知る権利」は保障されていない

「精子というモノと母親から生まれたという感覚がとても嫌だと感じています。モノではなく、きちんと実在する人がいたから今自分がいると実感したい」

第三者から精子提供を受ける「非配偶者間人工授精(AID)」で生まれた石塚幸子さんは、国会で開かれた集会でそう訴えた。2022年5月のことだ。

国内の医療機関でAIDは70年以上前から実施され、これまでに1万人以上が生まれたといわれる。ほとんどのケースで、「ドナーは匿名」という条件で進められてきた。そのため親から告知されたり、DNA検査を受けたりして出生の真実を知った人たちの中から、出自の情報を求める声が上がっていた。

自分は何者なのかーー。血縁上のつながりがあるドナーの情報を得られないため、生まれた子どもの中にはアイデンティティーの喪失に直面する人もいる。

日本も批准する子どもの権利条約は「児童は、できる限り、その父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する」と定めている。

海外では、子どもの「出自を知る権利」を法律で保障する国が増えている。日本では約20年前から制度化に向けて議論されてきたが、いまだに法的保障はされていない。

石塚さんが国会内の集会で声を上げた1年後の2023年4月、こうした現状に一石を投じる動きがあった。

精子や卵子の提供で生まれた子どもと提供者をつなぐことを目的とした一般社団法人「ドナーリンク・ジャパン」が、日本で初めて設立された。石塚さんが事務局を務め、研究者や医師、臨床心理士、弁護士などがメンバーに加わる。

DNA検査でマッチング、専門職のサポートも

生まれた人と提供者を、どう結びつけるのか?

4月に記者会見を開いた同法人によると、精子や卵子の提供で生まれた人と提供者が、血液型や身体的特徴、提供先の医療機関などの情報を登録する。さらに、同法人と提携する企業がDNA検査を行い、遺伝的なつながりが近いとみられる人を特定し、双方の希望に応じて交流を仲介するという。

マッチングの際には、社会福祉士や臨床発達心理士らが双方とそれぞれ面談し、心理面でのサポートをする。

対象となるのは、国内の医療機関で実施されたAIDで生まれた人と提供者だ。今後は、近年広がっているSNSを通じた個人間での精子提供や、海外の医療機関で生まれた当事者などにも対象を広げることを検討しているという。

◇ ◇

石塚さんが精子提供で生まれたことを知ったのは、23歳の時だった。遺伝性疾患のある父親からの遺伝を心配する石塚さんに対し、母親は大学病院で第三者から精子の提供を受けて石塚さんを産んだこと、提供者が誰か分からないことを告げたという。

「自分は何者なのか、という不安がいつまでも解消できない」(石塚さん)

告知の時期や方法、その後の不適切な対応で、生まれた子どもが自分の存在を肯定できなくなったり、親子関係が悪化したりすることもある。

さらに、提供者の情報にアクセスできないことで、AIDで生まれた人はアイデンティティーの喪失だけでなく、同じ提供者から生まれた人同士の近親婚のリスクにさらされる。当事者の中には、体質的にかかりやすい疾病や遺伝病が分からないという不安を抱える人もいる。

出自を知るのは「基本的な人権」

「出自を知る権利」を巡っては、超党派の議員連盟が2022年3月、ドナー情報の保管や開示などを定める法案の叩き台をまとめた。ドナーの個人情報の管理を担う公的機関の設置や、情報の保存期間を100年とすることなどを盛り込んだが、ドナーの承諾が開示の条件とされた。

ドナーリンク・ジャパンのメンバーで、1990年代から約30年にわたりAIDで生まれた人たちへの聞き取りをしてきた明治学院大教授の柘植あづみさんは、「(AIDで)生まれた人からドナーについて知りたいと要望があったとき、ドナーが『嫌だ』と言ったら子どもには何も知らされない。そういう叩き台が出ていること自体に危機感を持っている」と強調する。

「日本社会がAIDの技術を続けていくのだとしたら、どんな法律や仕組みが必要なのか。より良い制度が必要という立場で関わっていきたい」(柘植さん)

叩き台の通りに法律が成立したとしても、適用されるのはこれから生まれてくる子どもたちだ。石塚さんは「法律ができても私のようにすでに生まれている人は対象にならない。そうした人たちのための救済措置を作りたかった」と、団体設立への思いを明かす。

「出自を知る権利」の制度化が日本で遅々として進まない中、匿名の精子や卵子提供によって子どもたちが生まれ続けている現状がある。

団体の代表理事で、お茶の水女子大研究協力員の仙波由加里さんは「出自を知ることは、人としての基本的な人権。それを求めるのは当たり前のこと」だと強調する。

団体では、生まれた人と提供者だけでなく、同じ提供者から生まれた人同士や、提供したことのある人同士をそれぞれつなぐ役割も担うとしている。

ドナーリンクへの登録を希望する人らを対象としたオンライン説明会は、5月8日に開かれる。

<取材・執筆=國崎万智(@machiruda0702)/ハフポスト日本版>


目先の事だけ、人権感覚0。

今日は満月。地震被害大きくなければいいのだが。

すみれ

エゾノリュウキンカ

 

 


生きづらい女子たちへ 親しい人の最期から考えた自らの老後と『塀の中のおばあさん』

2023年05月04日 | 生活

雨宮処凛(作家、活動家)

Imidas連載コラム2023/05/02

 

 今年(2023年)に入ってから、親しい人の訃報が続いている。

 1月には、鈴木邦男さんが死去。享年79。新右翼「一水会」を創設した人で、メディアにもよく登場していた。私が21歳頃の時に知り合い、物書きになるきっかけを作ってくれるなど非常にお世話になった人で、いつもニコニコしている鈴木さんに、思えば私は会った瞬間からなついていた。

 2月には、この20年ほど親しくさせて頂いた「だめ連」のぺぺ長谷川さんが亡くなった。享年56。1992年、仕事が続かない、モテない、なんの取り柄もないなど「だめ」な人たちが「だめ」をこじらせないための場である「だめ連」を結成し、以降30年以上、できるだけ働かず「交流」をメイン活動として生きてきた。

 そうしてこのところ、有名人の死も続いている。3月には、ノーベル賞作家の大江健三郎氏が死去。また4月2日、世界的音楽家である坂本龍一氏が亡くなったことが報じられた。そうして4月6日には、ムツゴロウさんこと畑正憲氏の訃報が日本中を駆け巡った。

 さて、私にとって「東京のお父さん」のような存在だった鈴木さんの死因は、誤嚥性肺炎。数年前からパーキンソン病などで体調を崩し、入退院を繰り返していた。そんな鈴木さんの晩年を見ていて大きく学んだことがある。それは「愛される」ということが、いかにセーフティネットたりえるかということだ。

 その前に強調しておきたいのは、鈴木さんは私が今まで出会った人類の中でもっとも寛容で、もっとも優しい人であるということだ。「右翼」と聞いて連想するコワモテな感じとは真逆。私は鈴木さんが人を否定するのを見たことがないし、上から目線で何かを言うのを聞いたことがない上、何かを押し付けられたこともない。

 そんな鈴木さんの暮らしぶりは、出会った時から「清貧」そのものだった。生涯にわたって妻子は持たず、住まいは東京・落合の木造アパート「みやま荘」の6畳一間。晩年までそこに住み、著書には自宅住所と電話番号を掲載。それが鈴木さんなりの「言論の覚悟」だったのだが、そのせいで自宅前の洗濯機を放火されたりもした。一応「右翼のトップ」で様々なメディアに登場する有名人なのに偉そうなところはひとつもなく、いつもみんなと飲むのはびっくりするほどの安居酒屋だった。

 そんな鈴木さんの「お別れの会」と「鈴木邦男さんを偲び語る会」には、鳩山由紀夫元首相や鈴木宗男議員、福島みずほ議員など政治家をはじめ、田原総一朗氏や佐高信氏、森達也氏、中森明夫氏、金平茂紀氏、辛淑玉氏などなどそうそうたる言論人やジャーナリストが集結。それだけでなく、追悼の言葉を述べた中にはオウムの麻原三女の姿もあった。硬軟・左右問わずに交友関係は広く、多くの人から愛された鈴木さんの周りには、出会った頃から彼を慕う多くの若い世代がいて、「邦男ガールズ」「邦男ボーイズ」と呼ばれていた。

 そんな鈴木さんのすごさを思い知ったのは、数年前、体調を崩しがちになってからのことだ。

 とにかく、常に誰かが鈴木さんのそばにいるのである。そうしてイベントや集会への送り迎えをしたり、遠出の講演などに付き添ったりする。お金が発生するわけでもないのに嬉しそうに鈴木さんの「介護」を買って出る邦男ガールズ、ボーイズたち。そんな話を聞くと、「遺産目当てでは」なんて思う人もいるかもしれない。が、残念ながら鈴木さんにそんなものはないだろう。それなのに、みんながこぞって鈴木さんの「介護」をしたがる。こんな幸せなことってあるだろうか。

 私は感動していた。超高齢社会の中、特に独居高齢男性は孤独の中にいる。1週間、誰とも口をきかないなんてこともザラにあるようだ。が、それは男性自身に原因があることもままある。例えば介護の仕事をしている友人知人の中には、高齢男性の暴力や暴言、セクハラ、また不機嫌さを撒き散らす言動に悩まされている人もいる。

 しかし、振り返れば鈴木さんはいつも機嫌がよかった。そうして知らない人から「ファンです」などと言われようものならニコニコしながら「すみません」となぜか謝り、また、どんな安居酒屋のおつまみにも文句を言わず、「わーい」と無邪気に喜んでいた。そんな人の周りには、自然と老若男女が集まってくるというものだ。鈴木さんにはもっともっと長生きしてもらい、「愛される右翼・鈴木邦男の機嫌良く老後を過ごす方法」みたいな講座を高齢男性向けにやってほしかったと本気で思っている。

 お金があるわけでもなく、家族もいない一人暮らしの鈴木さん。だけどおそらく、一度も「孤独死」など心配せずに生涯を終えた。この一点だけで、「人生の勝利者」という言葉がふさわしいのではないだろうか。

 一方、56歳で逝ったぺぺ長谷川さんの「死に様」も非常に彼らしいものだった。

 20代から最低限のアルバイトしかせず、「交流」を生活の中心にする生き方は「コウリャー」(プロの交流家、的な意味)と呼ばれ、数多くのデモや集会、飲み会に参加してはいろいろな人と交流するぺぺさんの周りには、やはり彼を慕う多くの人の姿があった。

 そんな彼がガンであることを知ったのは数年前。しかし、変わった様子はあまりなく、死の前月まで自身のバンドのライブにも出演。

 そんな彼が突然亡くなった週の土日、行きつけの居酒屋には棺が持ち込まれ、「ぺぺ長谷川をみんなで送る交流会」が開催された。2日間にわたり、全国から集まったのは約700人。みんながぺぺさんの棺に寄せ書きをし、その周りでお酒を飲んだ。店に入りきれない人たちは近くの公園で大宴会。その光景は、ぺぺさんの「交流人生」の集大成のようだった。

 ぺぺさんらしかったのは、楽しい思い出ばかりではなく、滞納家賃もたくさん残して逝ったことだ。しかし、それを知った友人知人たちから多くのカンパが集まり、瞬く間に滞納家賃問題は解決したのだから天晴れとしか言いようがない。また、ぺぺさんの家族は皆亡くなっていることから部屋の片付けなどを友人らが担ったのだが、そこは21世紀なのに南京虫が巣くう魔境。友人らは全身防護服に身を包み、福島第一原発に入る作業員のような姿で汚部屋と格闘。無事、南京虫との戦いに勝利したという。

 鈴木さん、ぺぺさん、どちらもお金はなかったけれど、彼らを愛する人たちが大勢いたという点で共通している。

 さて、このように身近な人の最期を立て続けに目の当たりにすれば、どうしたって「私が死んだ後、どうなるのだろう」という思いが湧いてくる。2人とも私と同じ独り身、一人暮らし。気になるのは死んだあとのことだけではない。死に至る過程で寄り添ってくれる人はいるのか、介護してくれる人はいるのか、お金はあるのかといった心配も次々に湧いてくる。

 ちなみに私は40代後半だというのに、民間の医療保険などにはひとつも加入していない。老後に備えていることは皆無で、フリーランスなので頼りは国民年金だけ。最近、「将来もらえる年金額」みたいな通知が来たが、月に4万円とかだった。これから先、結婚の予定なども当然ないし、私は東京在住、親と兄弟は全員北海道なのでいざという時に頼れる距離ではない。今のところ、コロナにかかった時などは友人に家の前に食料を「置き配」してもらうなどして助けてもらってきたが、老いるということは、そんなふうに頼れる誰かがどんどん死んでしまうことと同義である。考えるほどに、不安がむくむくと頭をもたげ、大きくなっていくではないか。

 そんな最近、さらに不安を掻き立てるような一冊を読んだ。それは猪熊律子著『塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で』(角川新書、2023年)。

 タイトル通り、刑務所に入っているおばあさんについての本なのだが、今、刑務所には高齢女性が増えているという。そんな「おばあさん」たちが刑務所に入る理由の9割は「窃盗」

 本書によると、男性受刑者は著しく減っているにも関わらず、女性受刑者は高止まりの傾向。20年の女性の受刑者は1770人。入所者全体に占める割合は10.6%で、戦後初めて10%を超えたという。

 その中でも増加ぶりが目立つのが、65歳以上の高齢女性。1989年にはわずか1.9%だったのが、今では19%と約2割。そして罪名は、高齢女性では89%が「窃盗」とダントツなのだという。

 本書には、刑務所に高齢者向けとして軟らかい食事や「刻み食」が用意されていること、また介護福祉士の手を借りて入浴し、刑務官におむつ交換をされる高齢受刑者の姿が描かれている。

 実際に万引きで捕まった女性もインタビューに応じている。「トマトやキュウリ1本ぐらいでここに来ちゃった」と語る70代女性が刑務所に来たのは7回目。夫の暴力への「腹いせというわけでもないんだけど」、万引きをすると気持ちが落ち着いたという。

 別の80代の女性は、スーパーで野菜やおかずを盗んで刑務所へ。入所は3度目。生活に困窮していたわけではないが、夫やきょうだいの死などの喪失感、また老後への不安から節約したいという思いがあったようだ。

 また、ある80代の受刑者は、「デコポンとリンゴ、牛乳、レトルトのカレー」を盗んで刑務所入り。別の90歳近い受刑者は、「スーパーでイチゴを盗んだ」。70代まで仕事をしていたが、「生活が苦しく、コメなどの食料品をそれまで何度か盗んだ」果ての犯行。また別の70代女性は、「節約したい」という思いから夕食の材料を盗んで収容されたという。

 本書によると、高齢者が盗んだものの金額は3000円未満が約7割を占め、品物は食料品類が69.7%(法務省「平成30年版 犯罪白書」)。

 万引きの動機として多いのは、高齢者の場合「節約」。高齢女性ではその割合は約8割にまで上るという。また、高齢被疑者は一般高齢者に比べ、「現在の生活が苦しい」と感じている者の割合が多く、一般高齢者17.7%と比較して、高齢被疑者では44.6%。

 いつからか、「人生100年時代」なんて言葉をよく耳にするようになった。が、それが意味するのは、長い長い老後を過ごさなければいけないということだ。そんな中、誰もが老後への不安を抱えている。それは私たちから見てすでに「老後」を迎えている人も例外ではない。いつまで生きるのか、医療費はいくらかかるのか、最後は高齢者施設などに入所するのか、その入居費は、そして月々いくらかかるのかなど、考えれば考えるほどに「老後の人生、金次第」という事実にぶちあたる。今の時代、子どもにだってなかなか頼れないだろう。逆に現役世代が高齢の親から援助してもらっているなんて話も聞くくらいだ。が、高齢者がみんなお金を持っているかと言えば答えはノー。日本の貧困率は全世代で15.7%だが、66歳以上では20%。しかも65歳以上の単身女性に限ると56.2%。5人に1人の高齢者が貧困というのが実態なのだ。

 2009年には、そんな高齢者の貧困を象徴するような事件が起きている。群馬県の高齢者施設「静養ホームたまゆら」で火災が発生して10人が死亡したのだ。火災後に世間を驚かせたのは、亡くなったうちの7人が群馬県から遠く離れた東京で生活保護を利用する人だったこと。しかも施設にいた22人のうち、実に15人が墨田区の紹介で入所していたのだ。

 なぜ、このような事態が発生していたのか。それは、身寄りがなく、貧しい高齢者の受け皿が圧倒的に不足しているということに尽きる。そんな「たまゆら」は無届け施設で認知症や障害がある人が多かったのだが、違法な建て増しで施設内の構造が複雑だった上、防火設備はなく、当直は1人。また、認知症の人の部屋には外から鍵がかけられていた。そんなことから多くの命が奪われたのだ。

 このような話を聞くと、「未来の自分たちの姿ではないか」という暗澹たる気持ちに襲われる。ちなみに40代単身の貯蓄ゼロ世帯は実に4割。そして現在40代の未婚率はというと、40~44歳で26.9%。45〜49歳は24.6%(2020年 国勢調査)。このまま結婚せず、子どもも持たず、そして貯金もない層がどうやって老後を乗り切るのか。

『塀の中のおばあさん』では、そんな現在40代のロスジェネの未来予想図にも頁が割かれている。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、生涯未婚率(50歳時の未婚割合)は40年には男性約3割、女性は約2割まで上昇するという。40年と言えば、私は65歳(!?)。そしてその5年後の45年には総人口に占める65歳以上の女性の割合が2割を超える「おばあさんの世紀」が来ると予測されているという。しかも国の研究機関の推計によると、45年には女性の平均寿命は現在(21年)の87.57歳(男性は81.47歳)を上回り、90歳を超える見通しだというではないか。

「おばあさんの世紀」。なんだかショッキングな言葉だけど、「おじさんの世紀」とか「荒ぶる若者の世紀」とかよりは平和な気がしないでもない。だけどおばあさんがマジョリティになったら、きっと壮絶な「高齢者ヘイト」が広がるだろう。そういえば、故・石原慎太郎都知事は「文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババア」「女性が生殖能力を失っても生きているのは無駄で罪」などと他人の言葉を引用する形で発言して大きな批判を浴びたが、「おばあさんの世紀」にはそんな「ババアヘイト」が溢れ、22年公開の映画『PLAN 75』(75歳以上が自らの生死を選択できる制度が施行された世界を描く/ハピネットファントム・スタジオ配給)みたいな政策が本当に実現してしまうかもしれない。

 そんな国に生きるのは、どうしたって勘弁してもらいたい。それは「おばあさん」というだけで罵倒され、場合によっては殺されるかもしれない世界だ。それに「おばあさん」って、究極の弱者だ。ひったくりだって強盗だって、腕力のない高齢女性がターゲットにされやすい。

 最悪の未来予想図が的中しないために今、できること。それがなんなのか、必死で知恵を絞っている。


「今、できること」
さて、何ができるだろうか?

結局できないかもしれない。
今を楽しむことか。

桜も散り始めた。

 

 


76年前からあった「憲法が骨抜きに」の気がかり

2023年05月03日 | 社会・経済

「日本人の『意識の覚醒』なければ」と芦部信喜氏

「東京新聞」2023年5月3日 06時00分

◆安保政策の転換、改憲論議…今に通じる警鐘

 日本国憲法は3日、施行76年を迎えた。戦後を代表する憲法学者の故芦部信喜あしべのぶよし氏は1947年5月の施行前に発表した論考で、戦前のドイツを引き合いに、憲法が将来、骨抜きになることへの危機感を示していた。当時の警鐘は、憲法の平和主義を揺るがす安全保障関連法の制定や敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有、表現の自由に影響を与える放送法の「解釈変更」などが続く現代の政治に重く響き、改憲論議が進む今、遺族は「改めて日が当たれば」と願う。(佐藤裕介)

 「新憲法とわれらの覚悟」と題する論考は、1946年11月の憲法公布直後にしたため、自身が発行に関わった冊子「伊那春秋」第4号(47年2月20日)に掲載した。存在は知られながらも、現物が確認されない「幻の原稿」だったが、2年前に見つかり、出身地の地元紙・信濃毎日新聞や本紙が報じ、岩波書店の月刊誌「世界」(2022年5月号)が全文掲載した。

 論考「新憲法とわれらの覚悟」 戦後の日本を代表する憲法学の権威、芦部信喜東大名誉教授(1923〜99年)が、自ら編集兼発行人を務めたガリ版刷り冊子「伊那春秋」で発表。2021年6月に長野県駒ケ根市の土蔵で見つかった。経年劣化などで判読が難しい部分があったため、情報が寄せられた信濃毎日新聞は高見勝利上智大名誉教授に判読を依頼した上で翌7月に報道した。

 芦部氏の長女は憲法記念日を前に取材に応じ、「悲惨な戦争体験を通じて憲法の思想を形成した父の原点と言える内容で、特別な意味がある」と証言。最近、目を通した憲法学者からは「生前の研究を貫く主張の核心部分が既に表れている」と評価する声が上がる。

◆当時、最も民主的だったワイマール憲法も骨抜きにされたから

 芦部氏は論考で、国民主権や民主主義などの価値を守っていくためには「主体的自立の精神を獲得せねばならぬ」と強調。日本人の「意識の覚醒」が伴わない限り、憲法は「時の経過と共に空文に葬り去ってしまうことが、決してないとは言えない」と説き、戦前のドイツの歴史を「対岸の火災視できない」と訴えた。

 第一次世界大戦後に制定されたドイツのワイマール憲法は国民主権や生存権を盛り込み、当時、最も民主的とされた。しかし、ヒトラーが首相就任後、憲法に基づく大統領緊急令を出させたり、政府に国会審議を経ない立法を認める全権委任法を制定したりして、基本権保障を骨抜きにした。

 芦部氏らが立ち上げた「全国憲法研究会」の現代表、駒村圭吾慶応大教授は論考を読み、「現代の政治の『憲法の危機』に向き合っていく必要がある」と感じた。安倍政権以降の「一強多弱」とも称される政治状況の下、「与党の思い一つで法律を変えられ、憲法の人権保障が底抜けになることも懸念される」からだ。

 野党も論考を重く受け止める。ワイマール憲法にも規定された緊急事態条項創設に慎重な立場を示す立憲民主党の奥野総一郎衆院議員は取材に「他者の主張に耳を傾けず、国民を分断する形で進む改憲論議のあり方に警鐘を鳴らしている」と話した。


今朝も外へ出ると薄い氷が張っていた。
これ以上伸ばせないので定植作業を始める。
GW農家にとって一番忙しい時だ。

園地の風景

ベニバナイチヤクソウ

エゾエンゴサク

すみれ

さくら


 


殺傷武器の輸出 平和国家の信頼損ねる

2023年05月02日 | 社会・経済

「東京新聞」社説 2023年5月2日 

 自民、公明両党が防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針を見直すための協議を始めた。政府・自民党は殺傷能力を持つ武器の輸出解禁を目指すが、武器輸出を厳しく自制してきた平和国家の歩みを止めてはならない。
 戦後日本は一九六〇〜七〇年代に「武器輸出三原則」を確立し、武器輸出を実質的に禁じてきた。紛争当事国への武器提供は戦闘を助長する恐れが強く、武力による国際紛争の解決を否定した憲法九条と相いれないためだ。
 こうした姿勢を転換し、武器輸出への道を開いたのが安倍晋三政権であり、二〇一四年にそれまでの武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則を閣議決定した。
 この場合でも、殺傷能力のある武器の輸出は米国など安全保障で協力する国との共同開発・生産に限るなど、運用指針で制約を設けていたが、岸田文雄政権は日本に望ましい安全保障環境をつくるためとして、さらなる制限緩和を視野に入れた制度見直しを、新しい国家安全保障戦略に盛り込んだ。
 与党協議は先月二十五日に初会合を開いた。国際法違反の侵略を受ける国への殺傷性武器の提供解禁、日英伊三カ国で共同開発する次期戦闘機の第三国への輸出円滑化などが論点になる見通しだ。
 日本のウクライナ支援は現在、民生品や非殺傷装備などにとどまるが、殺傷性武器の輸出が解禁されれば、日本製武器が戦闘に使われることになる。共同開発した武器が第三国経由で紛争当事国に渡ることも否定できない。
 政府が「同志国」と認める途上国に防衛装備品や関連インフラを無償提供する新制度「政府安全保障能力強化支援(OSA)」も地域の緊張を高める恐れがある。
 OSAは防衛装備移転三原則に基づいて実施され、政府が念頭に置く東南アジア各国や太平洋島しょ国などに殺傷性武器を輸出すれば、中国に挑発と受け取られる可能性があるからだ。
 途上国ではクーデターで政治体制が一変する例もあり、日本製武器が内戦を激化させかねない。
 民生支援に徹する日本の姿勢は国際社会で高く評価されており、殺傷性武器の輸出解禁は平和国家の信頼を損ねる。国会での徹底審議や国民的議論もなく、政府・与党内協議だけの政策転換が許されないのは当然だ。

戦争を放棄した国が戦争を仕掛ける国になってしまった。
憲法を守れ!
 
今朝は氷点下。朝外へ出るとうっすらと霜が降りている。水たまりには薄い氷が張っていた。ハウスの温度管理が大変。

モンシロチョウ初見
 
昼から深川市の丸山公園に行ってきた。数年ぶりだ。
一面のカタクリが見事。ところどころエゾエンゴサクも。