「日本人の『意識の覚醒』なければ」と芦部信喜氏
「東京新聞」2023年5月3日 06時00分
◆安保政策の転換、改憲論議…今に通じる警鐘
日本国憲法は3日、施行76年を迎えた。戦後を代表する憲法学者の故芦部信喜あしべのぶよし氏は1947年5月の施行前に発表した論考で、戦前のドイツを引き合いに、憲法が将来、骨抜きになることへの危機感を示していた。当時の警鐘は、憲法の平和主義を揺るがす安全保障関連法の制定や敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有、表現の自由に影響を与える放送法の「解釈変更」などが続く現代の政治に重く響き、改憲論議が進む今、遺族は「改めて日が当たれば」と願う。(佐藤裕介)
「新憲法とわれらの覚悟」と題する論考は、1946年11月の憲法公布直後にしたため、自身が発行に関わった冊子「伊那春秋」第4号(47年2月20日)に掲載した。存在は知られながらも、現物が確認されない「幻の原稿」だったが、2年前に見つかり、出身地の地元紙・信濃毎日新聞や本紙が報じ、岩波書店の月刊誌「世界」(2022年5月号)が全文掲載した。
論考「新憲法とわれらの覚悟」 戦後の日本を代表する憲法学の権威、芦部信喜東大名誉教授(1923〜99年)が、自ら編集兼発行人を務めたガリ版刷り冊子「伊那春秋」で発表。2021年6月に長野県駒ケ根市の土蔵で見つかった。経年劣化などで判読が難しい部分があったため、情報が寄せられた信濃毎日新聞は高見勝利上智大名誉教授に判読を依頼した上で翌7月に報道した。
芦部氏の長女は憲法記念日を前に取材に応じ、「悲惨な戦争体験を通じて憲法の思想を形成した父の原点と言える内容で、特別な意味がある」と証言。最近、目を通した憲法学者からは「生前の研究を貫く主張の核心部分が既に表れている」と評価する声が上がる。
◆当時、最も民主的だったワイマール憲法も骨抜きにされたから
芦部氏は論考で、国民主権や民主主義などの価値を守っていくためには「主体的自立の精神を獲得せねばならぬ」と強調。日本人の「意識の覚醒」が伴わない限り、憲法は「時の経過と共に空文に葬り去ってしまうことが、決してないとは言えない」と説き、戦前のドイツの歴史を「対岸の火災視できない」と訴えた。
第一次世界大戦後に制定されたドイツのワイマール憲法は国民主権や生存権を盛り込み、当時、最も民主的とされた。しかし、ヒトラーが首相就任後、憲法に基づく大統領緊急令を出させたり、政府に国会審議を経ない立法を認める全権委任法を制定したりして、基本権保障を骨抜きにした。
芦部氏らが立ち上げた「全国憲法研究会」の現代表、駒村圭吾慶応大教授は論考を読み、「現代の政治の『憲法の危機』に向き合っていく必要がある」と感じた。安倍政権以降の「一強多弱」とも称される政治状況の下、「与党の思い一つで法律を変えられ、憲法の人権保障が底抜けになることも懸念される」からだ。
野党も論考を重く受け止める。ワイマール憲法にも規定された緊急事態条項創設に慎重な立場を示す立憲民主党の奥野総一郎衆院議員は取材に「他者の主張に耳を傾けず、国民を分断する形で進む改憲論議のあり方に警鐘を鳴らしている」と話した。
今朝も外へ出ると薄い氷が張っていた。
これ以上伸ばせないので定植作業を始める。
GW農家にとって一番忙しい時だ。
園地の風景
ベニバナイチヤクソウ
エゾエンゴサク
すみれ
さくら