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性差別撤廃条約選択議定書

2023年05月10日 | 社会・経済

早稲田大学名誉教授 浅倉むつ子さん

「しんぶん赤旗」2023年5月10日

国連への個人通報が可能に G7を機に日本の批准ぜひ

 広島で開かれるG7(主要7カ国)首脳会議に向けて、世界38カ国、87人の市民代表がジェンダー平等などの提言(W7=ウーマン・セブンJapan)を議長国・日本政府に提出し、G7サミットのコミュニケに反映するよう要請しました。W7の提言作成にあたり女性差別撤廃条約選択議定書の批准を盛り込むよう働きかけた女性差別撤廃条約実現アクション共同代表で早稲田大学名誉教授の浅倉むつ子さんに聞きました。(加來恵子)

 ―日本はジェンダー平等の後進国といえる状態です。その原因は何でしょうか。

 世界経済フォーラムが示した2022年のジェンダーギャップ指数の順位は146カ国中116位です。大きな原因は、法整備の遅れ、つまり日本の政治の責任が非常に大きいと思います。

 日本は1985年に女性差別撤廃条約を批准しましたが、政界・経済界は男女平等に消極的でした。女性たちが望んだ「雇用平等法」ではなく「均等法」という弱い法律しかできなかったのもそこに原因がありました。

 その後、男女共同参画社会基本法など、法整備は少しずつ進みましたが、今世紀初頭には、性教育やジェンダー平等に対する大規模なバックラッシュ(揺り戻し)が起きました。

 一方、ハラスメントなどが社会問題化するたびに、必要最低限の法整備が行われました。でも、それらは対症療法的なものでしかなく、法体系を根本から見直して、ジェンダー平等という目標に向かって進む流れはできていません。

 これに対して、他の国では、男女平等を実現させるために、さまざまな立法改革を行ってきました。たとえば包括的な差別禁止法をつくり、政治分野にも割当制を導入してきました。イギリスの「平等法」や、フランスの「パリテ法」(男女同数法)がよい例です。日本はことごとく遅れてしまい、現在の状況に陥っているのです。

 ―日本の政治が変わらないもとで頼みの綱は司法にあると指摘していますね。

 司法が権利侵害された人を救済できれば、社会も変わります。ところが、女性差別撤廃条約とのかかわりで裁判の実態を見ると、日本の裁判所は、法律に基づく救済命令を出す一方、女性差別撤廃条約を根拠にして判決を出していません。条約には直接的効力はないと解釈しているからです。これでは、せっかく条約を批准しても司法判断は変わらないことになります。

 この問題を変える一つの手段は、同条約の選択議定書を批准して、個人通報ができるようにすることです。選択議定書は条約から20年後の1999年にできましたが、日本はこれを批准していません。

 個人通報を利用できるのは、国内で救済手続きを尽くした人、つまり最高裁でも権利が救済されなかった人です。この人たちも、日本が選択議定書を批准すれば、最終手段として、国連の人権委員会に通報できるのです。

 個人通報を受けると、人権委員会は各国に「見解」を出し、救済を勧告します。これに法的拘束力はありませんが、多くの国はこの勧告を順守しています。

 もし私たちが個人通報できるようになれば、日本の裁判所も、国際的な人権規範を考慮しながら判決を書かなければいけなくなるでしょう。なぜなら、最終的には国際的な人権水準に照らした判断が求められることを裁判官も意識せざるをえなくなるからです。このように、個人通報は日本の司法を変えるきっかけになると考えます。

 ―G7に向けて世界のNGOがW7Japan提言を日本政府に提出しました。

 昨年ドイツで開かれたG7の首脳コミュニケは、「ジェンダー平等の達成は、われわれが強じんで包摂的な民主的社会に向け努力し、また、世界中での権威主義の高まり並びに女性及び女児の権利に対する反発に対抗するために、不可欠である」と明言しました。また、あらゆる多様性をもつ人々の完全かつ平等で意義ある参加を確保して、「すべての政策分野に一貫してジェンダー平等を主流化させることを追求する」と述べました。

 岸田首相は、ドイツG7コミュニケへの支持を明確に表明しています。

 W7Japanの提言には、五つの課題が盛り込まれています。その中の一つであるフェミニスト外交政策は、女性差別撤廃条約とその選択議定書をはじめとする国連人権条約の完全で効果的な実施を求めています。

 日本は議長国としてG7コミュニケをつくる責任があります。ところが、日本はその選択議定書を批准していないのです。一方、米国も条約を批准していないのですが、米国には「米州機構」があり、国際的な人権保障システムが独自に存在します。日本と同列に扱うことはできません。

 日本は選択議定書批准について「検討中」と繰り返して20年にもなります。今回のG7議長国である日本が選択議定書を批准していないのは、とても恥ずかしいことです。この機にぜひ、選択議定書を批准することを内外に明言してほしいものです。

 あさくら・むつこ 早稲田大学名誉教授、女性差別撤廃条約実現アクション共同代表。日本学術会議会員(2003~14年)、ジェンダー法学会理事長(07~09年)。著書に『労働法とジェンダー』、『同一価値労働同一賃金の実現』(編著)など


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寒いです。15日ころから最低気温も上がってくるようです。



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