五高の歴史・落穂拾い

旧制第五高等学校の六十年にわたる想い出の歴史のエピソードを集めている。

習学寮清規

2010-01-05 04:10:17 | 五高の歴史

黒髪では名称も習学寮と命名され生活の基礎として原則として全寮制であった。習学寮食堂清規は明治二十三年十二月当時の舎監であった黒本植教授が自ら文を作り之を横巻きに書いて食堂に掲げたものである。再び復習の為習学寮清規を掲げる。これは常に習学寮に掲げられ生徒の精神的支柱となった。

 

習学寮食堂清規 潔ヲ欲スルハ食ナリ、汚レ易キハ堂ナリ。清規ナルベケンヤ。食堂清規ヲ掲グ。喇叭時ヲ報ズ、急躁ナルベカラズ。遊塵浮動、粉々食ニ入ル。而シテ悟ラズ、其レ能ク懼レザランヤ。数百ノ寮生一堂ニ会ス、尤礼儀ヲ貴ブ、且夫、飲食ノ声高気ハ飛走ヲ然リトス。人ニシテ之ニ倣フ、其可ヲ知ラザルナリ。緩嚼急痰、必当ニ節アルベシ。冷熱内ヲ損ス、須ク其適ヲ要スベシ況ヤ出入後先、其時ニ迨バザル炊夫ノ煩、思ハザルベカラズ。食前食後、毎ニ労逸アリ。其逸ニ寡クシテ、其労ニ多クス。之ヲ是ルハ其人ニ存ス。剛ニ過ギテ中トイヘリ、古人欺カザルナリ。時至リテ食シ、食シテ過サズ。克ク其慾ヲ制スル、是レヲ真ノ丈夫トス。夫、多食厭クコトナシ、己ニ其生ヲ傷フ。時ニシテ食ハズ、恣ニ間食ヲ貪ルハ百病ノ源ナリ。其害タル豈最大ナラズヤ、戒メヨヤ。天物暴殄は聖賢ノ誠ムル所。粒々辛苦ハ凡夫モ亦知ル。況ヤ茲ニ学スル者ニ於テヲヤ。且、卓上狼藉、胸中悪ヲナス、君子忠怒ノ道ニアラザル也。一粒一滴、朝昏浸漬、他日積テ異臭ヲ成ス。是ソノ物。夫、積臭堂ニ満タバ、誰カ其食ヲ欲セン。摂食ノ係ル所其レ察スベキ哉。炊モ亦是レ人ノ子ナリ。此子アリ乃甘胒ヲ得ト思フベシ。疾呼怒言渓谷奚苛過スル事ヲ得ンヤ。

 明治歳在己亥蝋月                教授兼舎監   黒本 植 書