旅芸い者放浪記

前沢政次 ブログ

上野千鶴子『ケアの社会学』

2011-12-17 12:10:45 | 読書

上野千鶴子さんの研究集大成である書物が出版され、一昨年3月鹿児島市での在宅医学会の際にお会いしたご縁もありましたので、12月11日の北海道新聞現代読書ナビ欄で紹介しました。新聞には修正したものが掲載されましたが、次は原文です。最後に新聞に書けなかった感想を述べます。

 そもそも育児・介護・介助・看護・などを包含する「ケア」とは何であるかを緻密に検証し、当事者主権による協セクターの重要性を提示するのは、上野千鶴子「ケアの社会学」である。
 小さな字で五百頁に及ぶ大著であるが、数多くの歴史的研究成果を踏まえながら、上野ケア学を展開する。
 ケアの定義は
   依存的な存在である成人または子どもの身体的かつ情緒的な要求を、それが担われ、遂行される規範的・経済的・社会的枠組のもとにおいて、満たすことに関わる行為と関係(メアリ・デイ)
を採用する。
 ケアを相互関係、相互行為ととらえる。労働ととらえる。ケア当事者としての受け手の主権の立場を明確にする。それゆえに、「不適切なケアを強制されない権利」を重視し、「ケアされるプロ」(小山内美智子)としての発言を尊重する。
 制度や政策、サービスの最初で最後の判定者が、第一次的なニーズの主体である当事者である。理想の介護は個別的ケアであることを強調する。
 介護の担い手は4つに分類する。官セクター(国家)、民セクター(市場)、協セクター(市民社会)、私セクター(家族)。
 私セクターには選択の自由を、ケアの社会化では市場化オプションを避け、ケア費用は国家化し、ケア労働は協セクターへ分配するのが福祉多元社会の最適解とする。協セクターの取り組みを紹介し、官セクターの限界を提示する。
 市民社会の成熟こそわが国の介護に求められている解である。

[感想]紹介のため、必死で読んでみましたが、ぼくにはとても消化できませんでした。ケアを労働とすることにも抵抗を感じました。自分にとっては医療ばかりでなく、日常生活での人とのふれあいの中にケアがありますから。上野さんも在宅医療のメーリングリストの中で本の中に間違いがあったことを述べています。それがどこであるか、ぼくには分かりません。