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俳優・勝地涼くんのこと。

『盲導犬クイールの一生』(1)

2007-10-12 00:54:53 | 他作品
2003年にNHK総合で放映(全七回)。クイールという名の盲導犬の生後間もない時期から永眠までを、人々との関わりを重視して描いた半ノンフィクションドラマ。
のちに『クイール』のタイトルで映画化もされ、盲導犬に対する世間の知名度・理解度を上げるのに大いに貢献したものと思われます。

勝地くんは不登校の少年・政晴役で第三話にゲスト出演(第二話にも顔見せ程度にちょこっと出てきます)。
この作品の彼(当時16歳)は実に可愛いとの評判を方々で見かけていたので、出番はほぼ一話のみということもあり、演技やストーリー上の役割よりむしろビジュアル要素に期待しながら視聴したのですが――。

・・・・・・すごい。

正直ビジュアルに目がいったのは3回以上見返してからで(確かに可愛かった)、もっぱら彼の演技に目が釘付けでした。
もともと大げさな芝居をする人ではないけれど、演出家の意図なのか、いつも以上に表情も声音も抑え気味。
前半は自室のベランダや河川敷?などで台詞もなくただ佇んでいるシーンばかりなのに、あるかなしかの表情が政晴の内面の鬱屈した思いを伝えてくる。
下手すれば単にぼーっとしてるようにしか見えなくなってしまうだろうに、まだ16歳の俳優にこんな難易度の高い演技を要求した演出の思い切りに驚かされました。

バットダコは次第に薄くなり、少し本気で走っただけで息が上がってしまう。
日々脆弱になってゆく自身の身体と一人向き合いながら、今の自分の弱さを知ればこそ何を始めることもできずにいる。
そんな不安や苛立ちを諦めで包んで皮膚の一枚下に抑え込んでいる緊迫感と苦しさが、一見静かな彼の佇まいから存分に伝わってきました。

クイールにボールをぶつけようとしたと誤解されても、ちゃんと釈明せずに「すみませんでした」と頭を下げて話を打ち切ってしまう。
全てに自信を失い、人と関わることさえ億劫になってしまっているのが、力なく歩き去る後ろ姿に集約されているようでした。

(彼が外に心を開いてゆくのは三都子(沢口靖子さん)に追いかけられたこと、ついでクイールと駆け回って遊んだことがきっかけになっている。
本来野球少年の政晴は日常的にかなりの運動量をこなしていたはずなので、運動しない=不自然な状態はそれ自体かなりのストレスだったと思われます。
体を動かすことが心を開いてゆくのに繋がる流れはとても自然)。

そしてこの前半部の無表情に近い表情があればこそ、中盤以降、クイールと遊ぶときの笑顔や交通事故で野球をあきらめた事情を語るときの涙(これらの表情の動きもかなり控えめです)が活きる。
彼が少しずつ表情を取り戻してゆくのに(それが涙であってさえ)なんだか嬉しい心地になります。
夏祭りの帰り、両親に三都子と勇(勝村政信さん)とクーちゃんを紹介する場面などごく自然に明るい笑顔を見せてますし。
(なのに政晴の両親は、長らく引き篭もりがちで表情も失っていた息子がああやって笑えるようになったことに全然反応しないのですよね。あの親じゃ無理もない、という感じですが)

(つづく)

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