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about him

俳優・勝地涼くんのこと。

『ピクトアップ』(1)

2007-12-29 02:24:31 | 雑誌など

2007年2月号(2006年12月発売)。「試行錯誤から生まれてくるもの」というタイトルで、翌月発売(12月レンタル開始)のDVDドラマ『ソウルトレイン』を特集。
初主演(勝地涼)、初演技(掟ポルシェ)、初監督(三浦大輔)三人それぞれへのインタビューを載せています。

正統派若手俳優、雑誌連載からバラエティ出演まで幅広く活動する異色ミュージシャン、赤裸々な作風で知られる劇団の主催者という異なるフィールドから集まった彼らですが、この作品で大きな「初めて」に直面したのは三人共通。
それだけに全員が「自分はまだまだ」的コメントをしていて、とくに勝地くんのインタビューは不安感が色濃い。何か後半インタビューというより悩み相談みたいになってるし(笑)。

もっとも彼の場合は『ソウルトレイン』に対してというより、当時すでに撮影に入っていただろうドラマ『ハケンの品格』が主たる原因だと思いますが。
「(どの現場でも)顔合わせの日は必ずお腹が痛くなる」というのは『イージス』の時にも言ってましたが、この時期あちこちのインタビューでこの話を見かけました。
2004年の『それは突然、嵐のように』以来3年ぶりの連ドラ出演とあって、かなりナーバスになってるんだろうなと感じたものでした。
案の定「もう久々のドラマなので、最初のうちは雰囲気にのまれてましたね。」「じつは最初のころ、緊張しちゃって全然話せなかったんです。」(『POTATO』2007年3月号)だそうで。

勝地くんは公式の場で愚痴ったりする人ではないですが、ことさら自分を装うこともしないので、かつての事務所公式メッセージ(不定期更新)と違ってスケジュールの決まっている雑誌取材だと、精神的なコンディションがはっきり出てしまいますね。
といっても多少発言が後ろ向きなだけで、笑いを交えた語り口調はいつも通り丁寧で穏やかなので特に問題はないんですが。こういうところ彼はプロだなあと思います。
(『POTATO』2007年7月号のインタビューで「勝地くんの思うカッコいい男とは・・・?」という質問に「何があってもフラットにいられる人かな。だけど自分の弱さもちゃんと人前で出せるような男の人がカッコいいと思います」と答えているのを読んだとき、すでに理想の男性像を地で行ってるなーと思ったものです)

むしろしんどい時に無理に陽気に振舞われるより個人的には嬉しかったり。
何というか、彼が辛さを隠して明るく装ってるのを見て「元気そうで良かった~」とか思い違いしたくはないのです。一ファンとして、何も出来ないなりに心配くらいはしていたいなと。

一方で「初主演」に関しては意外なほど気負いがない印象。
「主役は初めてですね。」というインタビュアーさんの振りを「そうですね。」とあっさり流し、初主演それ自体への意気込みや感慨などは一切語らない。
代わりに「ひとつのシチュエーションで、ほとんどがたった2人で展開する物語自体、初めての経験でした」「作品を通してずっと出ている分、気持ちをつなげて演じれることが嬉しかった。」と演技環境について述べる。

初の主役に浮かれる発言がないのは彼特有の謙虚さもあるでしょうが、彼にとって「主演」の効用がクレジットの順番などでなく、作品全体の流れに深く関われることにあるからなんでしょうね。この人は本当にお芝居が好きなんだなあと再認識しました。

(つづく)


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『TV Bros』

2007-12-25 02:01:12 | 雑誌など
2006年12月23日-1月8日号で、勝地くんと掟ポルシェさんの対談形式のインタビュー記事を2ページにわたり掲載。
内容はもちろん二人が共演したDVD、近くレンタル開始だった『ソウルトレイン』について。

しかし表紙にはポルシェさんの名前しか載ってなかったり、「掟ポルシェ×勝地涼」「DVD『SOUL TRAIN』の準主役に掟ポルシェが抜てきされた!・・・というわけで主役の勝地涼さんとの対談をお届けします。」というアオリなど、完全にポルシェさん中心の視点なのが面白い。
テレビ雑誌なだけに「くるくるドカン」でお茶の間でも知名度の高いポルシェさん優先なのか、テレビ雑誌でありながらサブカル誌のような趣きの紙面作りだけに、サブカル系著名人であるポルシェさん寄りなのか・・・なんて思ってたら、ポルシェさんは『TV Bros』に連載持ってらっしゃる模様。納得。

そして肝心の記事の中身はといえば・・・爆笑。『ソウルトレイン』撮影の舞台裏がいろいろと語られてたんですが――。

ポルシェさんが投げ掛けるエロトークの数々、おばちゃん(浅見千代子さん)の過激なポディタッチ・・・。
私を感激させたあの事務所公式メッセージ(こちら参照)の裏でそんな下ネタの波状攻撃にさらされていたとは!よく汚れないまま戻ってきてくれました(笑)。

『ソウルトレイン』公式ページのBBS(2007年1月19日分)でスタッフの「ヤマノテトレイン」さんが、撮影当時の思い出として「待ち時間に読み合わせをしているのかと思いきや、しきりと勝地さんに下ネタ攻撃をしている掟さん」を挙げてらっしゃいますが、勝地くんは防戦一方だったんですかね?
この対談でもポルシェさんは結構シモ系のネタをフってるんですが、勝地くんはそれを正面から受けるでもなく適当に受け流すでもなく、にこやかに返しを入れながらも自分からは一言の猥語も口にしないという、意外にも高度な話術を見せていたのに妙に感心してしまいました。

この二人、倍近い年齢差(ポルシェさんは68年、勝地くんは86年生まれ。『DVDでーた』2007年1月号によると勝地くんは10歳差くらいだと思ってたそうですが)にもかかわらず息ぴったりの仲良しっぷり。
年の差を超越して、あの物堅い勝地くんに一人称「俺」(基本は敬語口調だけど)で話させてしまうポルシェさんてすごい。
終盤『ソウルトレイン』続編の構想で盛り上がるところなどインタビュアーさん置いてきぼりです(最後は勝地くんがそれとなくまとめてますけどね)。

正直この二人がこれだけ気が合ってるのってちょっと不思議だったのです。
5~6日の短期間とはいえ、それだけにかえって濃密な時間を多く二人で過ごした&ハードスケジュールをともに乗り切った連帯感はあるでしょうが、年齢差を抜きにしても彼らの立ち位置は全く異なっている。
中学一年でスカウトされデビューした勝地くんがアルバイト経験がないのに対し、ポルシェさんは「3日でやめたバイト、10や20じゃきかないですから」というバイトキング、実際の勝地くんが須藤とかけ離れているのと対照的に、ポルシェさんは多分に野木に通ずるものを持っている。

勝地くんは何というか、王道を歩いている人だと思うのです。
もちろんいわゆるエリートコースと違い、役者稼業も水モノだしほとんど人権無視だったりしますが、大きな挫折もなく着々とキャリアを積んでいる。
家族や周囲の人間から当たり前のように愛されてきたんだろうな、という感じの「愛されオーラ」を自然と醸し出している。

一方のポルシェさんは本業のミュージシャンのほかテレビのバラエティーから雑誌連載、DJまで幅広くこなす才人ですが、本人的には「何でもやらないと食っていけませんから。」というスタンスのようで(『ピクトアップ』2007年2月号参照)、自身のキャリアを自嘲気味に語る口調には、その内容の裏返しともいうべき非王道に生きる者の自負心が感じられる。正反対というか全然接点がないんですよね。
ポルシェさんの「毎日バイトしかない人生の不安感がわからないでしょ?俺なんて常にその連続だったのに(笑)」(『DVDでーた』2007年1月号)という発言も、二人の「生きる世界の違い」を思わせます。

『ピクトアップ』で三浦監督が「2人とも、全然ジャンルが違う方ですけど、相性がすごくよくて、一体感があったので。うん、それはいい意味で予想外でした。」と語っていたところの、彼らの結束は何によって育まれたのだろう?
翌年、『婦人公論』の勝地くんインタビューを読んだときにこの疑問が解けたような気がしました。詳しくは『ピクトアップ』の項で。

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小栗くん

2007-12-21 01:54:16 | その他
初めて小栗くんを見たのは2001年放映の単発ドラマ『憧れの人』でした。
小栗くんは主人公(松本幸四郎さん)の息子役。マッチョイズムを押し付けてくる父親とメーキャップへの強い関心の狭間で苦しみ奇行を繰り返す腺病質な少年を演じていました。
それから少しした頃雑誌で「期待の若手俳優」として紹介されているのをたまたま読んだこともあり、「演技派の少年俳優」として私の中に彼の名前は記憶されることとなりました。 

小栗くんの名前を改めて認識したのは数年後、2006年1月の「はなまるカフェ」で、勝地くんが同じ野球チームのメンバーとして小栗くんを挙げた時でした。
この頃はすでに『花より男子』などで結構な人気者になっていて、「ああ、あの時の子が活躍してるな」とは思ってたんですが、この「はなまるカフェ」以来、新たに「勝地くんのお友達」として気になる存在になったのでした。 

勝地くんのファンになってから、彼の友達を中心に若手俳優・女優さんたちのインタビューをときおり読むようになったのですが、一番読む頻度が高いのが小栗くんのインタビュー。
歯に衣着せぬ発言連発で記事が面白いせいもありますが、言葉の端々に勝地くんと共通するものを感じることがあるのが主たる理由。年少の勝地くんの方が小栗くんにいろいろと影響を受けているのかも。 

以前こちらで小栗くんを「イケメン演技派」の枠に入れたんですが、本来は彼も「演技派」枠の人なんじゃないかと思います。むしろ「演技派」枠を志向している―アイドル俳優より渋い役者でありたいと望んでいる人というべきか。
フォトエッセイ集『同級生』をオーソドックスな写真&日記の構成にせず、さまざまな業種の同い年の若者との対談集にしたり(前書きによると、フェトエッセイの企画をもらったとき「色んな生き方をしている同い年にいっぱい会いたいんですけど」と小栗くんからこの形式を提案したそうです)、パーソナリティをつとめるラジオ番組『オールナイトニッポン』で一般人から脚本・役者を募集する「オールナイトニッポン演劇部」のコーナーを設けたり、というスタンスにも、アイドルでなく役者、他人とりわけ才能ある若者と一緒に作品を作り上げてゆくクリエーターでありたいという自負心を感じます。

それだけに不本意にアイドル的人気が加熱してしまったことに戸惑っているのが、最近の言動にはっきりとうかがえます。
以前にもまして露悪的発言が増え(このところメディアへの露出がすさまじいせいでなおのこと目立つ)、自分を偶像視するファンへの苛立ちを隠そうともしない。
それは『CREA』(2007年7月号)インタビューのコメントや、同年11月11日放映の『情熱大陸』前編での、(蜷川幸雄さんとの)トークショーのために午前3時ごろから並ぶファンに対する「もうやめて欲しい本当にああいうの」発言でも明らか。

とくに『CREA』の「僕にどんなイメージを持ってもらっても別にいいんだけど、ロケ先のホテルにいっぱい人が来てしまったり、というような環境は耐えられない。普通の友達と居酒屋に行っても、会話を聞かれてたりするし、東京が住みにくくなりましたね。」という言葉は読みながら溜息が出ました。
小栗くんに限ったことではないですが、あまりにも苛酷。絶えず他人の目にさらされ、自分は悪くないとはいえ連れの友達やホテル・お店にかける迷惑も心苦しく――ファンがいればこそ成り立つ仕事とはいっても、ろくろく息もつけない気分でしょうね。

2007年夏の舞台『お気に召すまま』の時も、観劇中のマナーの悪さのみならず、出待ち・入り待ちのファンが会場の搬入口を塞いで荷物の受け渡しを妨げたり信号待ちの車に群がる危険行為まであったそうですし・・・。
(これらについては「お気に召すまま」公式ブログにレポがたくさん寄せられています)
勝地くんも出演した11月~12月の『カリギュラ』ではそういう話を(浅見のかぎりでは)見かけないので、会場や小栗くんサイドで何らかの対策を取ったのかも。
夏の『犬顔家の一族の陰謀』(東京公演)では当日券の列のそばを普通に役者さんが通って楽屋入りしてたらしいので、突出した人気者がいるかどうかで関係者の対応も全然違ってくるんでしょうね。

こういう話を聞くと、勝地くんも今はまだ良いけれど、この先もっと知名度と人気が上がっていったら小栗くんのような苦しみを抱えて、性格柄はっきり口には出さなくても「もうやめて欲しい本当にああいうの」と思ったりするんだろうか、とか考えてしまいます。
今だって彼は小栗くんからファンの迷惑話をつぶさに聞いているだろうし、実際その場に立ち会ったこともあるかもしれない。ある程度彼も小栗くんの苛立ちを共有してるわけですよね。
会場のスタッフにも心を配り(
こちら参照)、『SOUL TRAIN』メイキングでは「近所への迷惑」を気にしていた彼のことですから、自分のファンが周囲に迷惑をかける事態というのは、それこそ「耐えられない」んじゃないか。
一ファンとして、どういうスタンスを取るのが一番彼の負担にならないのだろうか、と改めてつくづくと思ったものでした。


p.s. 小栗くん初のタイトルロールとなった『カリギュラ』は大成功のうちに千秋楽を迎えました。
私は結局観劇できなかったので以下はネットなどでの劇評からの推定になりますが、興業的に、というだけでなく演出のクオリティ、役者陣の演技もおおむね好評だった様子。
主役の小栗くんについても、「台詞が聞き取りづらい」という批判を多く見かけたものの、カリギュラの激情・孤独感を見事に体現していたとトータルの評価は上々。

そして露出度の高さに拠るだけではないセクシーさ、悪辣な行動、カリスマ性は、イギリス公演のさいに「セクシーのカリスマ」と現地で絶賛された『タイタス・アンドロニカス』(蜷川幸雄演出、2006年)のエアロンにも通じるのでは。
2003年の『ハムレット』以来小栗くんを育ててきた感のある蜷川さんのこと、現在の異常なブームが一段落したあたりで初タイトルロールである『カリギュラ』をイギリスへ持っていって、舞台役者としての小栗くんの名声を確立しようと計画してたりして。
小栗くん本人同様、蜷川さんも現在彼がアイドル的にもてはやされているのを苦々しく思っているだけに、十分ありえるような気がします。シェイクスピア作品じゃないので『タイタス~』のようにRSC(ロイヤルシェイクスピアカンパニー)招待作品とはならないでしょうけど。

ファンやマスメディアへの怒りを(時には行きすぎとも思えるほどに)臆さず口にしたり目上にもタメ口だったり、冗談で尊大な口をきいてみたり、普段の言動が役に引きずられたりの小栗くんは、今後も毀誉褒貶激しいでしょうが、そうした「大人になりきれない不安定さ」が、際立ったスタイルの良さと並んで彼の(それゆえに意思に反して「演技派」枠でいられなくなってしまった)「華」の源なのだと思います。
その「華」を持つ彼はこの先実績を重ねてゆくことで、今のようなアイドル的人気俳優からこれからの演劇界・映像界の中心を担う実力派のスターにシフトしてゆけるんじゃないでしょうか。
「(蜷川さんからの)人気が先行しがちな自分への宿題」とこの作品を捉え、大千秋楽翌日の夜のラジオで「最っ高。ほんっとに、最っ高です。こんな達成感初めてほんとに」と語っていた小栗くんにとって、『カリギュラ』は彼の俳優史の記念碑的存在になったことと思います。1月6日のwowowでの放映が心待ちです。

ちなみに『カリギュラ』関連では小栗くんと勝地くんの仲良しエピソードをあれこれ聞けたのも嬉しかったのですが、これについてはまたいずれ。


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『SOUL TRAIN』(2)-4(注・ネタバレしてます)

2007-12-18 01:48:15 | SOUL TRAIN
第10章

・「今日僕は彼女に告白する」はいいとして、「何なら結婚を申し込んでもいい」・・・。
出会って数日、口をきいたのは数回でこのヒートっぷり。妄想パワーでどんどん暴走するあたりはさすが野木と気が合うだけあるというか。

・自分の嫁の外見を表現するのに「バケモノみたいな」ってひどい(笑)。それで通じちゃうし。
彼女が川村とデキてる、という須藤のものすごい発想に笑った。
最終章の「野木さんのこと、好きになっちゃったの」もそうですが、第一の妄想を一部だけ塗り替えた第二の妄想がちょっと間を空けて出てくる映像表現も笑いを増幅している。

・いきなりすごい打ち明け話をはじめるおじさん(蛭子能収さん)。リストラ親父といい、須藤は他人の長話にしょっちゅう付き合わされてしまう。キャラ的にすごーくわかりますけど。

・ついに念力に頼りだす須藤。今お客が入ってきたら、随分アヤしい店員だと思うことだろう・・・。

・「すべては僕の勘違い・・・。だとしたら僕はとんだピエロ?」 いやはじめっから・・・。

・『マルキン』を見て川村と「白い女」が仲直ししたんだろうなーとやたら楽しげな野木。先には川村への意趣返しに彼女と須藤をくっつけようと煽っていたのに。
内心須藤に彼女ができるのは、さらに気にくわない事態なんでしょうねえ。
野木が出てゆくのを見送る須藤のふくれっつらがえらく可愛いです。

・自転車の前でハイテンションで足をばたつかせながら言葉以前の奇声を発する須藤。その後のバンザイ三唱以上に心底の喜びっぷりが伝わってきました。
こういうとこ、須藤は格好悪いけど可愛いんですよねえ。

 

最終章

・「僕の妄想はもう妄想ではない。現実になってるんだ」。いや妄想だから(笑)。
それにしても彼女が別れ話のもつれで川村に殴られてるところを妄想して、本気で助けに向かってしまう須藤は妄想と現実の境目を見失ってるわけで・・・考えてみると一歩間違えばサイコホラーにもなりうる題材ですねこの話。

・川村のハーレーを追ってママチャリを方向転換させる須藤の意外と敏捷な動き。たしかに「今の僕はかっこいい」かも。
店に到着して自転車を普通に止めずにことさら倒してゆくのも、急いでたからというよりカッコ付けの一環のように思えます。

・川村に殴られる野木の情けなさ過ぎる弱っちさ。ポルシェさんこの作品がほとんど初演技とは思えません。
しかし須藤は無視で野木のみポコったのは、「白い女」からあのビデオは野木が押し付けた(須藤はむしろ別のを勧めてた)と聞いてたからか。単に須藤が不在だったからか。
「あの人たちが勧めたの」という野木引用による彼女の台詞からだと後者っぽいです。須藤は悪くないんだけどなあ。

・「ウンコ」を連呼するナレーション。おいおいおい(笑)。
このシーンといい、「もうパンパンだ」のあたりといい、どんな顔してナレーションしてたのやら。

・怪我に構わず野木に事情を話せと迫る須藤。
このシーンに限らないですが、高めの声と「これがなんなの?」のような子供っぽいしゃべり方のせいで、須藤は設定年齢(25歳)よりずいぶん少年ぽく初々しい印象があります。
撮影当時勝地くんはまだ19歳なので設定年齢より若く見えるのは当然なんですが、苦労してないぶん精神的に幼い今どきの若者って感じで、むしろその初々しさがはまってます。

・「濃厚ホイッププリン」のPOP、なぜにラーメンマン(笑)。

・賞味期限切れもしくは期限切れ近いプリンをあげた程度で「いつかやらしてくれる」と期待するコンビニ店員たち。この物語に出てくる男は川村以外みんな妄想屋ばかりか。

・なぜか須藤たちは川村の家を知っている。全然仲良くないのに。そして勇ましく川村の家に行ってからの格好悪さはさすがです。

・須藤と野木が妄想する「白い女」と川村の情事。こんなところでこけし再登場。
正直なところ原作を読んだとき、須藤が彼女に幻滅したのはつまるところ彼女がキャバ嬢なのが原因ぽいのがちょっと引っかかったのです(キャバ嬢の何が悪いのだ)。
まあ初心な青年としては抵抗あっても仕方ない(むしろ自然)かも、でも男としての器量は川村の方が断然上だねー、などと思ってたんですが、DVDだと「白い女」と川村のセックス現場を押さえた(と思いこんだ)ことで、彼女が自分に気がないとはっきりわかって妄想が破れた、という感じになってたのでそこは納得。

・川村宅に乗り込んで「来年30なんぞ、しかも童貞なんだ!」と意味不明な暴露を始める野木。
これ実は須藤の妄想なので、須藤の中の野木イメージがこうなんですよね。ひどいなあ(笑)。

・いきなり柄悪く「白い女」を罵倒する須藤。でも微妙に敬語で一人称は「僕」(笑)。
「全然可愛くねえから!」と語尾の「ら」が巻き舌になり、「このブサイクがあ!」のくだりは一音ずつスタッカートのような発音。これじゃヤンキー通り越して長距離トラックのおっちゃんみたいだよ須藤くん。
「白いからってなあ、調子のってんじゃねえぞこの野郎!」は野木なみに意味不明だし。
思い切りすごんでるようでいて、わざとツッコミどころ満載のユーモラスな感じに仕上げている。話の展開上、直後の「白い女」を迫力で上回っちゃまずいですもんね。

・「白い女」豹変。うわあド迫力。力ない笑いをうかべながら「すみません・・・」とつぶやく須藤。妄想の中でさえ勝てないのか・・・。

・「白い女は黒い女になった」のナレーションとともに思い出の中の彼女の笑顔がブラックな表情に塗り替えられてゆく(この一連の表情が実に良い)。
まあ実際の彼女は白くも黒くもない普通の女の子だと思うんですよ。須藤に対する思わせぶりな態度も、場の雰囲気をなるべく居心地よくする工夫+仕事の癖ってだけで、悪意あってもてない男をからかったわけじゃないのでは。
メイキングで真唯ちゃんも 「「白い女」ってどんな人?」との質問に「全部良かれと思ってやってる」と答えてますし。

・何もしないまま慌てて逃げ出す二人。しかも結局ハーレーを100円玉で傷つけるだけという・・・。
100円玉でギーッてやってる時の二人、とくに須藤が妙にいい笑顔をしている。ああ小さいなあ。

・並んで座って笑いあい、やがて嗚咽する二人。これもまた青春か。一部のモテ男以外の男たちの青春とはこうしたものなのかも。
この時バックに「なぜだか僕はその時こう思った。こいつとずっと付き合っていこうと。・・・たぶん。」というナレーションが入るのですが、勝地くん自身は『TV Bros』でのポルシェさんとの対談で「その後もずっと親友だったわけではないと思うんです。青春のイチ期間だけの関係っていうのがまたいいなあって」と、この時の須藤の気持ちは一過性のもの、という見解を語ってます。
実際『ソウルトレイン』原作のあとがきによると、まこちん先生と野木のモデルになった先輩とはいつしか音信不通になってしまったそうなので、それを思うと「刹那の友情」が何だか胸に沁みてきます。

・「白い女」に恋して以来マシになっていた須藤の寝ぐせが復活している。
この須藤の寝ぐせ設定ですが、「イケてない」「ダメー」な感じを出すのに無精髭とかでなく寝ぐせをもってきてくれたのに、勝地くんファンとして感謝(笑)。

・写真撮影。妄想のプリクラで「白い女」がいた位置に野木がはまりこむ。恋は破れ友情が残ったことが端的に示されている。

・水着アイドルのグラビアを見ながら、ビキニの端のあたりを指ではがすような動作をする須藤。こらこらっ(笑)。

・『ソウルトレイン』のアピール写真、二人の手には友情の証?の100円玉。実に無駄のない綺麗なオチ。
すっかり元通りのグダグダ生活に戻ってしまった、こんな二人の青春はもうしばらくは続きそうです。オープニングと同じ音楽、同じレコードが回転する映像はその象徴ですね。

 

p.s. 上記の感想文を書くため『ソウルトレイン』を見返していた11月半ばごろ、当の勝地くんは蜷川幸雄演出の舞台『カリギュラ』に出演中でした。
観劇された方の感想を見るに勝地くん演じるところの詩人シピオンは、「圧倒的な透明感」「壊れそうなほどに繊細」「儚げで美しい」――。
こうした感想を読んだ後に『ソウルトレイン』を見るとあまりのギャップに笑いが止まらない。ちょっとちょっとシピオン!
彼の役の振り幅の大きさを改めて痛感し、顔で大笑いして心で感じ入ったものでありました。


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『SOUL TRAIN』(2)-3(注・ネタバレしてます)

2007-12-15 01:48:51 | SOUL TRAIN
第6章

・何とか「白い女」方向に話を誘導しようとする須藤のナレーションが腹黒い(笑)。勝地くんもこの腹黒いところが面白いっていってましたね。
しかしさりげなく言える状況を作ろうと丸一章分腐心する流れが可笑しすぎる。ストレートに言やあいいものを。

・立て板に水のごときナレーションは超早口なのに内容がしっかり聞き取れる。
滑舌の良くない俳優さんならこのナレーションは成り立たないわけで、勝地くんを須藤役に起用した効用がこんなところに。

・「うわー、なにそれ?ハズカシー!」って口調がまるで女子高生のようで(笑)。「いや、そんなにこの男が賢いわけがない」とかさらっとひどい事考えてるし。

・「恋をしてる童貞としていない童貞」って勝手に野木も童貞認定してますが、ちゃんと根拠あるんですかね。
野木の性格上自分から打ち明けたりしなさそうなので、単なる須藤くんの想像か?

・自分を奮い立たせようとする「行け行けっ」ってちょっとかすれた声の必死さも、少し後の「すみませんすみません」の弱弱しいようでいてなんか誇らしげな響きも、感情の乗せ方が絶妙。反応なさすぎる野木に対する「死んだ?」も笑ってしまった。

・「俺、メロンて苦手なんだよね」から「野木は故障したようだ」の流れが笑えるやら緊迫感に満ちているやら。

 

第7章

・須藤妄想ビジョン。「もう教えない」でふくれる「白い女」がキュートです。

・27時間前の話題にいきなり「え?」と返事を返すとは。いつもいきなりな野木とはいえ、相当にショックが強かったんでしょうね。

・「すまんな須藤君」は怪人二十面相のごとく、「問題は川村や」はヤクザ映画のごとく。「あいつはな、ここソウルトレインのガンなんだよ」って川村くんが一体何をした(笑)。

・野木の語る須藤と「白い女」をくっつける計画。これは単なるハッタリとあとでわかりますが、27時間このネタを考えてたのかな・・・。

 

第8章

・再びリストラ親父登場。ちょっと心温まるいいシーン。このブロンソンに関する薀蓄は全部田口さんのアドリブというからすごい。びくびく引きつる表情も含めまさに怪演。
しかし「毎回話聞いてくれて」って何回このオヤジにつかまってるんだ須藤。

・リストラ親父の「君ってモテるでしょ」に気をよくしたか、須藤は一人プリクラを。
この写真、実にいい表情で笑ってるんですよね。日頃からおどおどしないでこのくらいさわやかな笑顔をふりまいてたら、きっと本当にモテるようになるよ・・・。

・「バイトの帰りにここ通るんですけど」 彼女が深夜の仕事をしてるのがこの時点で明かされていて、「実はキャバ嬢」の伏線になっている。

・ゲームの画面に向かって一人バカバカ言い続ける野木。ちょっと鬼気迫るものがあるかも。

第9章

・「昨日の彼女の行動、映画の中で恋に落ちていく女性のそれに限りなく類似している」。
第5章での「J-POPの詩の中にこの気持ちの答えがありそうな気がした」もそうですが、映画や音楽の中にしか比較例を見つけられないのが、いかに実生活で恋愛にうといかを浮き彫りにしている。
独白なのにかかわらず妙に説明的なのも笑いを誘う。

・再びソウルトレインにやってくる「白い女」。
昨日と服が同じなのが、これが須藤の妄想だという伏線(若い女の子が二日連続で全く同じ服装ということはまずない)になっている。しかし予知夢なみに正確な妄想だこと。

・イチジクと手だけが出てくるしょーもないビデオ『マルキン』。
『TV Bros』2006年12月23日-1月8日号で勝地くんが語ったところによると、「あの卑猥なビデオ、プロデューサーがイチジク2パック使って撮ったものなんですよ(笑)。」だそう。
いかにも低予算低レベルっぽいこのAV?、ダメーな感じのビデオ屋に実にフィットしている。

・「女の子にやさしい、よくわからない映画」という表現が笑える。勝地くんお気に入りの『The World of GOLDEN EGGS』あたりいかがですか?
彼女が須藤のお勧めの方を持っていってれば彼の甘い妄想はもうしばらく続いたものを。

・野木が彼女に『マルキン』を勧めたときの「邪魔しないでよ」と言いたげな須藤の顔、彼女に『マルキン』を押し付けようとする野木の有無を言わさぬ笑顔がどちらもいい味です。

・プリンを渡して去ってゆく「白い女」を見送る須藤の表情が・・・。なんつー締まりのない顔してるんだ君は(笑)。
くにゃくにゃ腰砕けな動きといい・・・名優ですよほんと。

・「ハーレー乗ってんだから女くらい殴って当たり前だ」。 
野木の暴論の中でも最高クラスの一つ。この作品ほとんど野木語録が作れそうな勢いです。

・妄想のキスシーン。超へっぴり腰なのに大爆笑。
これほど格好悪いキスシーンを見たのは初めてです(笑)。妄想の中でくらいもうちょっとビシッと決めて見せんかい。

(つづく)


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『SOUL TRAIN』(2)-2(注・ネタバレしてます)

2007-12-11 02:02:46 | SOUL TRAIN
第3章

・妄想ビジョンによる「僕の時間、川村の時間」。二人ともなぜあのポージング。とくに川村(笑)。

・野木の話の振り方は例によって唐突にして過激。そしてその展開を完璧に読んでいる須藤。これって名コンビ?

・昨夜の「白い女」登場を川村が仕掛けたドッキリじゃないかという野木。
しかし見知らぬ女(しかも可愛い)がいきなり入ってきたら「驚く」のはわかるが、「どうにもこうにもならなくなる」ってのはどうなのか(笑)。いかに自分たちが女に免疫がないか告白してるようなもんだよなあ。

・ハーレーに傷をつけられた場合の川村の反応を野木が想像するのだが・・・何そのハードボイルド。
この場面に限らないが、野木の妄想力は断然須藤を上まわってる気がする。

・不気味に笑いながらデータの自爆テロに走る野木。わけわからん事で一人暴走し一人冷静に返る野木といいように振り回されっぱなしの須藤のあわて方が可笑しい。
多くがこの二人の会話劇と言ってよいこの作品、表情から声のトーンに至るまでの二人のキャラの立ち方が物語を支えている。「支えている」という表現の芯の通った響きがおよそ似合わない作品ですが(笑)。

・「ゲームつけっぱなしでこいつらずっとセックスしてたんじゃねえの!?」 発言の根拠が全くわからない(笑)。
「わざわざセーブする?」という須藤の疑問に対する「ゲームをセーブすることだけは忘れてねえんだよ」という回答も無理やりすぎて。

・「僕は少し怖くなった。黒い妄想がどんどんとエスカレートしてゆく自分に」のナレーションを受けて、妄想の中で「白い女」にこけしでせまる須藤がどんどんアップになりそのまま暗転。なるほど黒い。

 

第4章

・カウンターで化粧するおばちゃん(浅見千代子さん)。ほとんど台詞もないのに、パーマヘアと無表情の白い顔は大仏様のごときインパクト。

・川村に話しかける須藤の声の小さいこと。そして「すみません」を連発するキョドりっぷり。本人も認めるとおり、男として、というか人として何かもう最初から完全に負けている。
長身痩躯のモデル体型な川村と並ぶと須藤がいかにももっさりと冴えなく見えてくる。
公式サイトの壁紙でメインキャスト4人で並んでいるところや、セルDVDのメイキングでじゃれあってる時には全然見劣りしないのに。
以前こちらでも書きましたが、メイクや衣装は同じでも中の人格次第で別人のように違って見える勝地くんに改めて感心したものでした。

・エプロンをつける須藤。左右のひもが捻じれてますが、これはキャラ演出としてわざとやってるんでしょうね。
メイキングで「わざと服がよれるようにリュックしょったりしてる」(概要)と語ってましたし。

・川村は一応一つ年上の須藤にそれは横柄。野木は川村が彼女を使って自分たちにドッキリを仕掛けたと勘ぐってたけど、ドッキリ仕掛ける以前に彼らのことなど全く眼中になさそうだ。
しかし何故彼女を連れてくるかな。「白い女」だって須藤とバックルームに二人きりになる時間があるんじゃ気詰まりだろうに。それだけ一緒にいたいってことですかね。

・ほぼ初対面の女の子に持ち出す話題が「ガンダム好きですか」→「ザクってわかります?」。
前回、須藤・野木はいわゆるオタクじゃないと書いたんですが、とっさにガンダムしか出ないあたりやっぱり微オタですかね(笑)。まあ美少女アニメのネタを振らなかっただけマシというものでしょうか。

・妄想の中でソファに押し倒した?「白い女」に迫る須藤が「マジでヤリたそうな顔」をしていてちょっとドキッとした。一種色っぽいというかエロいというか。
通常勝地くんが演じる役は本人の人間性を反映してか、時に透明な少年の色気、稀に男の色気を感じさせはしても決していやらしくはならない。
しかし『ソウルトレイン』では、その透明感やさわやかさがぎりぎりまで抑えられていて、結果須藤くんには他の役では見られなかったたぐいのエロティシズム―ムッツリスケベ感が備わったように思います。
ちなみに2007年夏の舞台『犬顔家の一族の陰謀』で演じたさわやか少年・野見山玉男も根は結構なエロガキでしたが、玉男の場合「さわやかじゃないことがしたーい!」と晴れやかに叫んでしまうほどにさわやかなスケベだったので、ムッツリ感もエロティシズムも全然でした。

・須藤に笑顔で話しかけてくる「白い女」のカットは、距離感からすると須藤の目線で撮られている。
ゆえに彼女の仕草のいちいちや襟足、スカートから伸びる足などを舐めるような映像の流れが何やらエロ。

・「会話のボールがピンポン玉のような軽やかさとスピードで跳ねていた!」 
単に盛り上げ上手な彼女の言葉に「そうっすね」とドモり気味にうなづいてるだけなのだが。これでも女性と話した中で最も中身のある会話なんだな・・・。

・落とした飴を拾う「白い女」を見つめる須藤のナレーション。切れ切れな言葉の羅列→喘ぎ→「ダメだ。もうパンパンだ~」という流れがエロ全開。声がかすれ気味なのも何だか色っぽい。
その直後机に頭をぶつけてうめくところや「ちょっとコンビニ言ってきます」という台詞のトーンに表れた必死さ・・・。一連の情けない演技に、改めて「上手いなあ」と思ったものでした。

・カウンターで川村がなんと洋書を読んでいる。意外にインテリ。
しかもイケメンでスタイル抜群でハーレー乗ってて喧嘩も強い――これで金回りがよかったら無敵ですね。

・コンビニの立ち読みシーンで原作者の石原まこちん先生が登場。まこちん先生曰く須藤を演じる勝地くんを見て「(顔の造作は)全く違うのに、『オレがいる』と感じた」そうです。

・憑かれたように話し続けるリストラ親父(田口トモロヲさん)。目付きといい突然激昂するところといい実にヤバそうな感じ。
わけわからん薀蓄につきあわされる須藤とバックルームで楽しげに話す二人のコントラストが楽しいというか悲しいというか。

 

第5章

・前章のエロモードから一転して純情路線に妄想が転換。
しかし自分で押し倒して?おいて「自分を大切にしてほしい」もないもんだ。台詞のいかにもな陳腐さも須藤らしいというか。

・「名前は美穂」に始まるやたら具体的かつ清純な妄想。妄想ビジョンの全てにソフトフォーカスがかかってるあたりが夢心地。

・原作ではこの第5章に相当するあたりから何度か須藤の家庭が登場するのですが、DVDではそこの部分―「親不孝息子・須藤」をすっぱり切って、「ダメーなフリーター・須藤」にキャラの見せ方を限定している。
それもまた原作より湿り気のない、ポップな青春ムービーに仕上げるうえで大きかったように思います。

・自転車でソウルトレインに向かう場面はバックルームの「白い女」同様須藤目線で撮られている。恋する男の目に映る街はいつもより輝いている?

(つづく)


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『SOUL TRAIN』(2)-1(注・ネタバレしてます)

2007-12-07 02:14:31 | SOUL TRAIN
第1章

・棒読みに近い淡々としたナレーションは、「白い女」(高橋真唯ちゃん)登場以降、急速にテンションが上がってゆく。このへんの緩急のつけ方はさすが。

・バックルームでゲームに興じる須藤と野木(掟ポルシェさん)の顔のドアップ。
この場面以外でも『ソウルトレイン』は超アップを多用している。第6章などとくに。
これだけ顔のドアップが連続する作品もなかなかないのでは?撮られる側も結構勇気を要しそうです。
ナレーション言うところの「むさくるしいバックルーム」感がよく出ています。

・須藤は自分ではゲームをやらない(やっている場面がない)のにやたら攻略法に詳しい。
家でやりこんでるってことなんでしょうが、ゲームにはまってるからというより、他にやること、やりたいことがないからだらだらゲームしてる感じなんだろうと想像されます。
須藤も野木も外見はオタク的(ビジュアルに無頓着)ですが、何かに一点集中しているオタク特有の熱さは感じられない。
ぬるーい日々を送っている彼らだからこそ、須藤が熱くなれる対象=「白い女」を見出したときに物語が動き出してゆく。

・大井町の姉妹店の「イケメン従業員がタラタラしてる」と文句を垂れる野木。バックルームでゲームを(現在進行形で)しているあなたが言えることでは・・・(笑)。

・「ここで時間をつぶせば1時間900円もらえるのだから」 東京・深夜のバイトなのに時給安っ!まあこれだけ仕事してなければ妥当な気はしますが。

・「SOUL TRAIN」と書かれたレコード盤が回転するタイトルバック。
「ソウルトレイン」というタイトル(店名)がおそらく70年代の音楽番組「ソウルトレイン」から取られている(もしくはジョン・コルトレーンのアルバム『ソウルトレーン(SOUL TRANE)』?)のをふまえたのでしょう。
ダルそうなコーラス+メロディラインのBGMも作品の雰囲気を象徴している。

・ホモカップル登場。「たまに客は来る」というそっけないナレーションが妙にツボ。
この二人、ペアルックと何かと見交わす視線だけでさりげなくアヤしい感じを醸しだしてるのがさすが。
画面からは見切れてますが、メイキングを見ると、カップルの一人(山崎樹範さん)がもう一人(家城啓之さん)のバッグから会員証を取り出すところが写っています。ますますアヤしい(笑)。

・「おまえここのバイトで殺したいやつとかいる?」 いきなりすぎる野木の言葉に笑う。
「あんな奴眼中にねえ」といったそばから川村(黄川田将也くん)の悪口をまくしたてるところや、「殺す」「ブッ殺す」の説明といい、野木キャラ全開。
このあたりの野木の台詞はポルシェさんのアドリブかと思ったんですが、原作見返すとほぼその通りの台詞なんですね。全身で野木を体現してるかのようなポルシェさんのはまりっぷりを実感。

・「川村は(中略)いわゆるイケメンだからだ。っていう僕もそうなのだが」のくだりで、一瞬「須藤は自分をイケメンだと思ってるのか?」と勘違いしてしまった。
須藤の容姿が原作通り(毒舌の野木に「不潔っつーか、ハックルベリーみたいな面構え」と言われてるくらいで具体的描写はないが、「我ながら目を背けたくなる・・・」ともあるので、どう考えてもハンサムではありえない)ならまず誤解しえないんですが、実写の須藤くんは「元」が良いのでつい(笑)。

・あまり人の悪口を表立っては言いたがらない(優しいからというより気弱さのゆえに)いい子ちゃんキャラの須藤と毒舌調の野木が仲が良いのは不思議みたいですが、ダメ同士でコンプレックスを刺激されないからでしょうね。
お互い内心では「こいつには勝ってる」と思ってそう。

・「でも川村くんの彼女って管野美穂そっくりらしいっすよ」 まったく意味をなさない反論が可笑しい(須藤自身もツッこんでるし)。実際それで野木も黙るし。
こういうしょうもない会話の流れがリアルで、ダメーな感じの若者たちのダメーな青春を生々しく伝えてくる。

 

第2章

・店長=グッチョ(田中要次さん)に新作をもっと入れるよう進言する時の、須藤の不安げな視線の揺れとおどおどした笑顔がナイス。須藤のキャラがわかりやすく出ている。

・「君たちさあ、ホモなの?」 グッチョの凶悪な笑顔がコワイ。
そして「えっ?」って顔になってる須藤の目がキラキラしてて綺麗。須藤は基本的に光のない黒ベタな目の印象が強いのですが、時に見せる澄んだ目の色はやっぱり勝地くんだなあ、とちょっとホッとしたり。

・グッチョが帰ったことを確認した野木が須藤の後ろでドアを閉め電気を消す。「ホモなの?」会話の直後だけに、一瞬ヤバいものを感じてしまった(笑)。
それを狙った演出ですよね。

・「AV観るとき電気消すだろ」の発言からすると、二人一緒にAVを観るのは初めてのよう。確かにいつもゲームばかりだもんなあ。
この日に限りゲームをしないのはプレステが持ち出されたからだと後で明かされますが、「ゲームがなきゃAV」というのが・・・。他にすることないのかと。

・須藤、野木の間をカメラが行き来するときにしばしば(特に須藤寄りに)おっぱいおもちゃがたびたび写りこむ。
こういう小道具も「いかにもありそうな感じの部屋」を演出している。

・「40つったら貯金億は欲しいよな」。 
これ原作では40歳ではなく29歳(原作でのグッチョの年齢)、しかも野木は28歳設定なので一年で億貯められる気でいるわけだ(具体的な当ては皆無)。
映画では現在29歳だから一応11年の猶予があるわけで、ちょっとは数字にリアリティが出たようでもある。ちょっとだけだけど。

・オレンジのピンポン玉を転がす野木の手のアップ。
原作では「へこましたり、戻したり」してるものを「転がす」に変えただけで妙にエロに。AVから流れる嬌声とおっぱいおもちゃも相乗効果。

・「白い女」登場。真唯ちゃんは本当にちょっと管野美穂さんに似ている。
それもあってのキャスティングでしょうが、雰囲気や細かな媚態に溢れた挙措もまさに「白い女」でした。ハマリ役だなあ。この作品本当にキャストにハズレがない。

・「そして白い」→「彼女は白い女」というナレーション=思考の流れが意味不明(笑)。「白い女」というネーミングもセンスもあるんだかないんだか。

・「管野美穂とか加藤あいとかそっち系」。 この数ヶ月後にリアル加藤あいさんと『ハケンの品格』で共演(しかも彼女に片思いする役で)してるのを思うと、何か感慨深いなあ・・・。
『POTATO』2007年3月号によると、久々の連ドラの現場で上がりまくってた勝地くんが周囲に馴染むきっかけを作ってくれたのも加藤さんだったらしいですしね。

・須藤の妄想ビジョン発動。「おしゃれな紙袋」というボキャブラリー、「何かおしゃれなやつ」と続けるあたりのダサさがいかにも須藤らしい。

・「白い女」が紙袋の中から取り出したのはこけし。AV見てるときは特に鼻の下伸ばす風でもなかった(でも静かにガン見)須藤ですが、内心は結構なムッツリスケベのようで。
妄想ワールドに繰り返し登場するこのこけし、原作を読み返したら出てなかったのに驚いた。インパクト強すぎてつい原作から存在してたような気になっていた。
ちなみに後にこのこけしは希望者に抽選でプレゼントされました(笑)。

・「白い女」は川村の彼女と知った男二人は、「ていうか、ブスじゃね?」「まあ、大したこと、ないよね」。いじましいよ君たち。

(つづく)


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『SOUL TRAIN』(1)-2

2007-12-04 01:30:14 | SOUL TRAIN
勝地くん以外のキャスティングも実に秀逸。まず須藤の先輩・野木を演じた掟ポルシェさん。
この作品で初めて知った方だったのでいっさい先入観がなかったせいもあるのかもしれませんが、それにしてもビジュアルも雰囲気も話し方も、全てが原作の野木そのままだった。というよりポルシェさんの野木の印象が強すぎて、原作を読んださいの野木イメージがすっかり「ポルシェ色」に塗り替えられてしまった感じです。
なもんで、素のポルシェさんもああいう人のような気になってしまってるんですが、実際どうなんでしょうね。
『ソウルトレイン』がらみの一連のインタビューを読むかぎりでは、大枠では野木のイメージを裏切られませんでした(そう言われてご本人が喜ぶかは微妙ですが)。
ただ『ピクトアップ』でのインタビューには芯に一本筋の通った人柄を感じて、以来密かに尊敬の念を覚えたりしています。 

「白い女」を演じた高橋真唯さん。
「白い女」はコンビニの店員たちに「マジエロイ」と言われるだけのコケティッシュな色香と須藤の白い幻想の対象足りうるだけの清純さを合わせ持たねばならない、なかなか難易度の高い役柄。それを真唯ちゃんはしっかり自分のものにしていました。
ラスト付近の「黒い女」への変貌シーンもお見事でした。 

川村役の黄川田将也くん。勝地くんも出演していた『バトルロワイアルⅡ』で名前を知った俳優さん。
黄川田くん自身もメイキングで語っていたように、川村という役は「クールで嫌味なイケメン」という表層しか描かれていない。
実際の川村がどんな男なのかほとんど手掛かりがなく、須藤目線のストーリー展開上細かい役作りはかえって邪魔になってしまう。
これまた難しい役柄だったことと思いますが、さらっとごく自然に演じていたのはさすがでした。
メイキングで、単に仲が良いというだけでなく、何かと勝地くんを主役として立ててくれているのにも人柄を感じたものです。 

その他の脇のキャラクターも田中要次さん、田口トモロヲさん、蛭子能収さんなどなど、見事に癖者揃いのキャスティング。短い出演時間の中で実に濃い存在感を作品に焼き付けていました。
しかし実はこの作品一番の「癖者」は勝地くんだったんじゃないだろうか。これだけの個性派キャストの中で、正統派俳優である彼が主役を張っていることがある意味最大の見所というか。
勝地くんも『ピクトアップ』のインタビューで言って(答えて)ましたが、須藤は主役でありながら、そして彼の妄想を機軸に物語が展開してゆくにもかかわらず、受けの芝居が中心なのですよね。
野木のまくしたてる暴論&突発的怪行動に翻弄され、店にやってくるヘンな客たちに振り回され・・・。自身は強い個性を示すことなく、周囲の個性を受けて月のように静かに輝く、そんな感じでしょうか。 

そして最後に監督の三浦大輔さん。「劇団ポツドール」を主宰されている、本来演劇界の方であり、『ソウルトレイン』は初めて手がけた映像作品だったそう。
須藤の家庭関連のエピソードを全部切ったり川村の家に殴り込ませたり、原作の改変具合が実に絶妙でした。
とくにこけしに代表されるエロ要素を多分に追加しつつも、淫靡にならずシュールなポップ感覚に結び付けているあたり。
メイキングで勝地くんが「(監督は)天才ですね。」と言っていたのが頷けます。 

この作品、DVDレンタル開始に先がけ、10月~11月にかけて「yahoo!動画」で全11話が数話ずつ配信されましたが、そのうちテレビ地上派の深夜枠なんかで1話ずつ放送したりすると面白いんじゃないかな。
個性派揃いのキャストと妄想まみれのゆるいストーリーでマニアックに受けそうな気が。
1話ごとの長さがバラバラなのがネックですが、それもまた『ソウルトレイン』らしいゆるさってことで。


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