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俳優・勝地涼くんのこと。

『機動戦士ガンダム00』(1)-22(注・ネタバレしてます)

2025-05-13 00:13:10 | ガンダム00

ルイス・ハレヴィ

経済特区・東京にスペインからやってきた留学生。沙慈のガールフレンド。明るく積極的かつわがままな性格で沙慈を振り回しまくる。

正直ファーストシーズン前半は「何だこの子」と思っていた。彼女と沙慈の女性上位なカップルの微笑ましい日常が戦闘に明け暮れる刹那や世界情勢との対比として描かれているのはわかるものの、さすがに言動が自分勝手すぎないかと。
特に母親がスペインに帰ってしまい寂しさから泣きまくっていた時、刹那から「母親が帰ったくらいでなぜ泣く」「会おうと思えばいつでも会える。死んだわけじゃない」と言われる場面。沙慈は両親をすでに亡くしていて、まさに母親にどれほど会いたいと思っても二度と会うことはできないのだ。
刹那の言葉で、沙慈の前で母親に会えないと泣く無神経さに気づくどころか(沙慈本人に同じ台詞をもう少し優しめに言われたなら、さすがに自重しただろうか)、「沙慈、こいつ嫌い!叩くか殴るかして!」とはあまりな言い草。
沙慈はわざわざ頼んで刹那に来てもらっているのに(あの無愛想な刹那を連れてくることがルイスの慰めになると考えるセンスはどうかと思うが)、彼氏?の友人に対するこの態度は沙慈のメンツを潰すようなものではないか。
また自分を慰めるためにと沙慈に高価な指輪をねだるあたりもどんなものか。住居を見るかぎり、両親がないとはいえ姉が有名企業で働いている沙慈はさほど生活に困窮しているようではないが、この指輪を買うためにバイトのシフトを詰めまくったくらいで裕福といえるほどではないだろう。
(小説版では「両親の遺してくれた保険金でこのマンションを買い、その余りと報道局に勤めている姉の稼ぎで人並みな生活はできていたが、沙慈自身、ぼんやりと養われているだけというのは気がとがめ、奨学金を受けて学校に通っている。苦学生というわけではない。やはり人並みという評価が妥当だろうと沙慈本人も思っていた」とある)
その沙慈に負担をかけるとわかっていて高価なプレゼントを要求する(人の好い沙慈ならきっと本当にプレゼントを買おうと頑張ってしまうのは想定できたろうに)というのは、やはり引っかかるものがあった。
ただファーストシーズン中盤で彼女を襲った大きすぎる不幸―今度こそ本当に二度と両親と会えなくなったルイスが以前のように駄々をこねるのでなく身を震わせて泣きじゃくる哀切な姿、一人になって心細いだろうに日本に帰るよう沙慈の背中を押す時の静かな微笑みなどを見ると、あの頃の騒がしいルイスに、あの頃の二人の関係に戻ってくれとつい願わずにいられない。まさに制作陣の狙いどおりというところだろう。

セカンドシーズンでルイスはアロウズの軍人として登場する。彼女が軍人になったのも驚きなら、アロウズの資金面でのスポンサーというのにも驚いた。
沙慈の姉・絹江が「お金持ちのお嬢様って」と溜息をついていたことからも本人の言動からも、ルイスが資産家の娘であることは察せられていたが、アロウズのスポンサーともなると王留美が当主を務める王家並みの大富豪なのではないか。
それがボディガード(留美にとっての紅龍のような)もお目付け役もなしで単身故郷から遠く離れた異国に留学などよく許したものだ(ルイスいわく母親はもともと留学に反対だったそうだが)。結果、ハレヴィ家とはおよそ釣りあいそうもない庶民の少年と恋愛(まではいかないが)関係になってしまったし。
ルイスを連れ戻しにやってきた母親の方も、世界的に政情が不安定で渡航規制までかかっているなか単身(のように見える)日本までやってきたり、最初は沙慈との仲に反対したものの途中からはすっかり沙慈を(ルイスが焼きもちを焼くほどに)気に入ってしまったりと、ずいぶん気さくというか超セレブとは見えない。
渡航規制をかいくぐって来日できたのは「代議士の先生にお願いした」というあたりはいかにも上流階級らしいし、ルイスが運び込まれた病院でもハレヴィ家を「有名な資産家」と話していたので、金持ちなのは間違いないのだが。
まあおそらくはルイスの両親もそれなりの資産家ではあったが、トリニティの攻撃によって親戚(この人たちも多くはハレヴィ姓)のほとんどが亡くなった結果、ほぼ全ハレヴィ家の遺産がルイスに転がりこんできた形だったのではないか。
まだ十代の、それも王留美のように早期から名家の跡取りとしての英才教育を受けたわけでもない少女が、親やそれに代わる保護者もなしに莫大な財産とともに社会に放り出されたようなもので、しかも細胞障害のために左手首から先を失い体調面でも半病人同然――悪い人間が利用しようと近づいてきてもおかしくない危険きわまりない状況といってよい。
実際リボンズはルイスが受け継いだ財産をアロウズのために出資させる一方、ナノマシンによって治療のように見せながら人間をイノベイドもどきに作り変える実験の被験体とした。その過程でルイスにたびたびガンダムに対する憎悪を焚きつけてもいる。
左手と両親を亡くした直後はもっぱら悲しみの感情をあらわにしていたルイスが、4年後のセカンドシーズンでは両親と親族の仇であるガンダムへの復讐一途に走っているのはいささか違和感があるが、この違和感―ルイスらしくない感じは、彼女の復讐心がもっぱらリボンズによって強引に植え付けられたものであることに由来するのだろう。沙慈が言ったように〈ルイスはそんな女の子じゃない〉〈彼女が自分の意志で変わったというのは嘘〉というのが正しいように思える。
ちなみにこの台詞に続く沙慈のルイス評は「優しい女の子」「宇宙に行くために一生懸命勉強した」「我がままをいって相手の気を引こうとする不器用なところ(がある)」「本当は淋しがりや」。
そんなに繊細なタイプだったっけ?と思いかけたが、初めの方を見返してみると、あと二年で留学も終わる、沙慈は将来のことを考えてるか、その中に私の事は入ってるかと尋ねたときなどとても不安げな表情をしている。沙慈が「漠然とね」と曖昧な答えを返したのに対して無言で席を離れてから振り返って「こういう時、追いかけるの!」とすねてみせるので深刻な雰囲気にならないのだが、ああやって怒ってみせたりするのも不安を紛らわすため、空気を重くして沙慈に精神的な負担をかけないための彼女なりの気遣いだったのかもしれない。
(「一生懸命勉強」の方も、ソレスタルビーイングがらみのレポートをどう書くか悩む沙慈に「そんなの適当に書けばいいじゃん」なんて言ってたりして、そこまで一生懸命勉強してる感はなかったが・・・。地上の紛争の話で宇宙関連の勉強じゃなかったから?)。

ともあれ、沙慈を想う気持ちとガンダムへの憎しみの間で葛藤し、その苦悩の果てに意識を失うのみならず一度は呼吸も心臓も止まったのだから尋常ではない。
この葛藤の破壊的な激しさは、ルイスの中の二つの感情がぶつかりあったというよりも、ルイス本来の感情と外から植え付けられた感情=異物とが真っ向から衝突した結果と見るべきだろう。刹那が感じとったように、アニュー同様「何かに取り込まれている」状態―リボンズの支配下に置かれていたわけだ。
刹那が真のイノベイターとして覚醒したおかげで彼女は奇跡的に息を吹き返したが、それ以上に沙慈が根気強く、拒絶されても殺されかけてさえ諦めずにルイスを説得し続け愛し続けたことが最終的に彼女を救った。
沙慈の回想によるとカフェテリアで居眠りしていた沙慈にルイスが声をかけたのが二人の出会いだったそうだが、ここで沙慈に声をかけたルイスの慧眼は大したものだ。
沙慈はいかにも優柔不断で、意志が弱いと「よく言われます」と苦笑いしているような男の子だが、4年間変わらずルイスを想い続け、命がけでルイスを取り戻しにくる芯の強さと勇気を備えていた。ルイスの家柄ならもっと裕福な、高価なペアリングも即座に買ってくれるような男だって寄ってきただろうに、沙慈を選んだ彼女の目の確かさが(そして沙慈が運命のいたずらでソレスタルビーイングに身を寄せていたことが)彼女を疑似イノベイターの戦闘マシンとして生きる道から解放したのである。

劇場版を見ると結局ルイスはイノベイターとして覚醒するに至った可能性が高く(映画時点では脳量子波が通常より強い“イノベイター予備軍”に留まっているようだが)、沙慈の方はオーライザーの臨時パイロットとしてたびたびダブルオーライザーによるトランザムバーストの渦中に身を置きながらも脳量子波を使えるようになった気配がないことから、一生イノベイターにはならなかった可能性が高いように思われる。
イノベイターと非イノベイターでは身体能力や寿命にも大きく差が出る。それがいずれ二人の前に壁として立ちはだかる時が来るかもしれないが、彼らならどんな障害も乗り越えて生涯添い遂げたに違いない、と劇場版の二人の会話―軌道エレベーターの防衛に赴くことを決めた沙慈と送り出すルイス―を聞くと思えるのである。

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