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俳優・勝地涼くんのこと。

『機動戦士ガンダム00』(1)ー28(注・ネタバレしてます)

2025-07-17 19:53:17 | ガンダム00

しかしなぜそもそも三国家群にGNドライヴとそれを搭載する機体を持たせる必要があるのか。それには二つの理由があると思う。
一つは三国家群が「ひとつにまとまる」にはソレスタルビーイングに対抗するために結託するというだけでなく、結託した結果としてソレスタルビーイングに勝利するというストーリーが必要だと考えたから。
セルゲイ・スミルノフ大佐(当時は中佐)がいうところの「勝利の美酒」の味を、これまでソレスタルビーイングに圧倒されてきた世界に対して味わわせる―それによって三国家群の結託を心理的にも強めて対ソレスタルビーイングのための一時の物に終わらせない効果を狙ったのではないだろうか。
だからといってアレルヤたちが危惧したように、本当にソレスタルビーイングを世界統一のための捨て石として滅ぼさせるつもりはなかったろう。
三国家群がGNドライヴを手に入れれば、資金力と人員数において一秘密組織に過ぎないソレスタルビーイングを優にしのぐ彼らが優位に立つのは目に見えていたが、ソレスタルビーイングのための隠し玉をイオリアは用意していた。それがトランザムシステムである。
トランザムシステムはアレハンドロとリボンズによるヴェーダ掌握及びイオリアの冷凍睡眠体射殺を契機としてオリジナルのGNドライヴに対して解放されたが(どちらの行為が直接の引き鉄となったのかははっきりしない)、もし“裏切り者”が現れなかったならせっかく開発したトランザムが発動しないままだったとは思えない。
確かにアレハンドロが「イオリア・シュヘンベルグは私の計画変更さえ予測していたというのか」と驚愕したことからもわかるように、裏切り者の登場も想定内でありそれに対抗する準備もしていた。しかし裏切り者ありきで、裏切り者の存在に寄りかかった計画を立てはしないと思うのだ。
もしアレハンドロたちの裏切りがなかったとしても、ガンダムマイスターたち、特にエクシアのパイロットが真の危機に陥った時にはトランザムが使用可能になるように仕掛けがなされていたのではないだろうか。
三国家群の合同軍事演習で刹那が危ういところでネーナに救われた時、そしてサーシェス操るスローネツヴァイに追い詰められぎりぎりでトランザムが初めて可能になった時、もう少しネーナの登場やアレハンドロたちのヴェーダ掌握&イオリア射殺が遅れていたら、その時点でトランザムが発動していたのかもしれない(このトランザムシステムの開発データがエウロパで発見されたハロに入ってなかったことは、ハロが最初から三国家群の手に渡る前提だった証左であろう)。

ともあれオリジナルのGNドライヴの中に隠されていたこの新機能によって、ソレスタルビーイングはそれまでの劣勢をどうにかはね返す。といってもすでにフォーリンエンジェルス作戦の第一弾でロックオンが利き目を負傷、ガンダム数機も損傷を負っている状況にあって、圧倒的劣勢からどうにか善戦できる程度になった程度とも言えるが。
この頃のトランザムは一度使うと、その後しばらく機体性能が極端に落ちるという諸刃の剣状態でもあった。最終回で刹那がグラハムと戦った時、刹那はアレハンドロとの戦いでトランザムを使った直後だった。それがなければグラハムと相討ちではなく完全勝利することもできたかもしれない。
パイロットとしての技量ではずっと勝っているだろうグラハムを相手にトランザム直後に機体性能が落ち込んだ状態で(グラハムの側にもGNドライヴ搭載を前提としないフラッグに無理やりGNドライヴを組み込んだため機体バランスが悪くなっているというハンデがあったとはいえ)、引き分け―怪我の程度からすれば辛勝に持っていったのだから刹那も大したものだ。
ファーストシーズンラストの時点で地球連邦の発足と引き替えるようにソレスタルビーイングは表舞台から姿を消したものの、GNドライヴは5機とも無事でマイスターは一人死亡・二人行方不明ながらツインドライヴ他の研究を進めるためのラボと人員も健在であった。一見組織が壊滅したかに見せて雌伏し活動再開の時機を待つという、ある意味ベストの形に持っていけたのはトランザムがあったればこそだろう。
つまり三国家群にGNドライヴ搭載のMSを持たせることでソレスタルビーイングに勝利させ彼らの結束を高めて地球政府設立へ持っていく、トランザムシステムを得たソレスタルビーイングもぎりぎり延命する、というのがイオリアの想定だったのではないだろうか。

そしてもう一つの理由は、三国家群が独自にガンダムを超えるMSとそのためのエンジン(ドライヴ)を開発することを妨げるため。
何といってもイオリア・シュヘンベルグは200年前の人間である。そしてソレスタルビーイングが公然と活動を開始するまでには百年以上の時間が必要になることも理解していた。科学技術は日進月歩であり、ソレスタルビーイングが武力介入を開始するまでにGNドライヴを超えるような画期的な装置や理論が生まれていないとも限らない。
実際には初めて人前に姿を現したガンダム=ガンダムエクシアはAEUの最新型MSイナクトを性能で圧倒し、各陣営はガンダムの残留品、それこそ塗料からでもガンダムの正体に迫ろうとし、相次ぐガンダム鹵獲作戦へと繋がっていく。
三国家群がガンダムを解析してガンダムと同じような機体を作ろうとするのは当然の心理であり、イオリアも木星探査船での開発データをハロの中に残す形でそれを推奨した。
イオリアとしてはガンダム=GNドライヴを搭載する機体を模倣してほしかったのだ。模倣であるかぎりMSドライヴの理論を構築したイオリアの手の内にあり、かつオリジナルのGNドライヴ(稼働時間無制限、トランザムシステムを秘密裡に内包)の方に分がある。
逆にいえば、模倣を超えた、あるいは全く別系統の、ガンダムに勝る機体を造られることは何としても避けたかった。

それがはっきり現れているのがエイフマン教授の死である。エイフマン教授はGNドライヴのメカニズムがトポロジカル・ディフェクトに拠っていることを確信し、120年前の木星有人探査計画との関連に気づき、独自のトランザム理論さえ打ち立てていた。
“裏切り者”が三国家群に疑似GNドライヴを渡したのは教授の死後なので、教授はGNドライヴの現物を見たことはないしトランザムに至っては(教授に限らずイオリア以外は誰も)存在自体知らないのに、である。
ガンダムの戦闘データからGNドライヴの原理に行き着き、そこからトランザムのシステムさえ自身で考案したエイフマン教授が存命だったら、ユニオンの資金力と技術力を背景にソレスタルビーイングより早く“トランザムを使用しても機体性能が落ちない”仕様を可能にしていたかもしれない。
彼のこの、イオリアに匹敵するような天才的頭脳が警戒の対象となった。ユニオンのMSWAD基地がスローネに襲撃されたさいにエイフマン教授は命を落とすが、その直前に教授のパソコンの画面に「あなたは知りすぎた」旨のメッセージが一瞬表示される。
後に教授の愛弟子だったビリー・カタギリが推察した通り、基地の襲撃が目的と見せつつ真の攻撃目標はエイフマン教授個人、教授の抹殺が目的だったのだ。<br>
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やや話は逸れるが、上の推察に際してビリーとグラハムは、「教授はガンダムのエネルギー機関と特殊粒子の本質に迫ろうとしていた。何らかの方法でそれを知ったソレスタルビーイングが武力介入の振りとして教授の抹殺をはかった」「軍の中に内通者が!?」「いないと考える方が不自然だよ」という会話を交わしている。
状況からすれば教授の研究内容を“内通”したのは教授のパソコンをハッキングしたヴェーダのように見えるがそれを知るのは亡きエイフマン教授と視聴者のみ、「あなたは知りすぎた」のメッセージを知らないビリーが人間の内通者を想定するのは無理からぬところであるが、一方でビリーの言う通り、ユニオンほどの巨大な組織の中にスパイが全く紛れ込んでいないと考えるのも確かに不自然な感はある。王留美がプトレマイオスクルーに数々重要な情報を流すことが可能なのは、彼女の手先が三国家群の全てに入りこんでいればこそだろうし。
ただこの時基地を襲撃したのはガンダムスローネ、この時点で留美はまだトリニティと協力関係を結んではいない。教授の件はさておくとしても、トリニティ―ラグナ―アレハンドロ―リボンズ(イノベイド)というラインに対してユニオンの情報を流している人間の内通者というのがいたりするのか。
最終回までそれらしい人物は登場してこなかったが、もしいるとすれば物語的には名もないスパイではなく、ちゃんとキャスト名のある、意外性のある人物であることが望ましい。これに当てはまる人物がいることはいる。ビリーの叔父であるホーマー・カタギリだ。
ビリーの頼みに応じて貴重な疑似GNドライヴを1基融通してくれたくらいで、ユニオン軍の中でもかなりの高位にあったはずの彼は、その後アロウズが発足するにあたって最高司令官の地位についている。アロウズが実質イノベイドたちの傀儡だったことを考えると、以前からの協力者であり自分たちの意思に沿って動いてくれるホーマーがトップの座に就くようリボンズが細工をした―そんな想像が湧いてくるのだ。
さしたる根拠もない想像に過ぎないし、上で書いたようにエイフマン教授の研究内容について知りえたのは“教授のパソコンをハッキングしたヴェーダ”であって、人間のスパイではありえないと思うが。
ヴェーダにしてさえ手書きのメモの形で残されたトランザム理論や、死の直前に思いついて心の声で呟いたのみの(盗聴器でも拾えない)イオリアと有人探査船の関連性発見などは知りようもないので、あくまで「ガンダムのエネルギー機関と特殊粒子の本質に迫ろうとしていた」ことをもって死に値するほどの脅威と判断したものだろう。
まあ内通者の存在を示唆する発言をしたビリー当人が、スメラギがソレスタルビーイングの一員と知らず合同軍事演習についてのデータを漏洩したりしたことを思うと、“内通者はあんただろ”という皮肉を効かせた場面なのかな、という気もしてくる(笑)。
そんなビリーはエイフマン教授のように“消される”ことなく物語の最後まで生き延びている。ビリーとてイナクトのお披露目の場に現れたエクシアとコーラサワーが操縦するイナクトの戦いを一度見ただけで「おそらくあの光ははフォトンの崩壊現象によるもの」とGN粒子の本質を言い当てたほどの才能の持ち主なのだが、なぜお目こぼしされたのか。
想像するに、女の気を引きたさに軍の重要機密を漏洩してしまうような人間的な甘さが、やりようでイオリア計画に利用できる、第二段階の重要な担い手であるアロウズの軍事力強化に貢献してくれそうだと判断された、とかかな。

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