・必死に竜子/秋日子のもとを目指して走るお父さんを見つめての霊体秋日子のナレーション「あなたのためにこんなに一生懸命走ってくれる人がここに一人いるのだから」は、フランクリンを取り戻すべくゴミ収集車を追いかける竜子を見つつ、「あんなに必死に何かを追いかけることが私にもあるだろうか」と自問する場面と対になっている。
しかし茂多くんたちが竜子を成仏させようとしてるときに、体に戻るべき秋日子がこんな離れた場所にいていいんだろうか?
〈第17回〉
・カウントダウンの途中で茂多くんの部屋に飛び込んでくるお父さん。
飾りつけはパーティー風だが、三人手を繋ぐ姿はほとんど降霊会。お父さんは何の集まりだと思っただろうか。
・原田さんの告白に対して、自分が今もおそらくはこれからもずっと、死んだ妻を思い続けて忘れることはない、と断りを入れるお父さん。
意外にさっぱり引き下がった原田さんは口調は明るく口元も微笑んでいたが、大きな目が涙でうるんでいる。
立ち上がったあと振り返ることなく足早に走り去ったのはきっと涙を見せたくなかったからだろう・・・。
・竜子が夫からこうも愛されていたと知って、「自分の代わりにおばさんが生きればいい」と言う秋日子を、竜子は「こんなに長いことあたしといっしょにいてまだわかんないの?どんなに人生が素晴らしいか。どんなにぎゅうぎゅう中身が詰まってるか」と諭す。
死んだ当初「こんな人生じゃ全然納得いかない」と神様に訴え、娘からは「お母さんみたいにはなりたくない」とまで言われた竜子が、今は人生の勝利者の顔をしている。
人の値打ちは優れた業績を打ち立てるとかそんなことばかりじゃないのだと教えてくれる場面。
・「あなたも自分の人生生きてみなさい。いろんなことやってみなさい。恋もしなさい。結婚もしなさい。できたら子供も作りなさい。やれることはなんでもやってみなさい。人生どんな味がするものか、苦いもの、甘いもの、しょっぱいもの、せいいっぱい味わってみなさい。生きていて損することなんか何ひとつない。」
良い事も悪い事も含めさまざまな経験を積んで、泣いて笑って苦しんで悩んで、そうして人生も感性も豊かになってゆく。このドラマの中で一番好きな、一番重かった台詞です。
最近勝地くんがインタビューで、「二十年間生きてきて、その間にあった事を覚えてはいるものの、ちゃんと自分の引き出しに出来ていない、それが僕が今全然足りないところなんだとすごく痛感しています。もっと日常でいろんな事を感じ取ってそのことをちゃんと記憶として残していかないと」(「エンタメキャッチ」2007年1月21日放映分、概要)と話していたのを聞いて、この台詞が強く思い出されました。
〈第18回〉
・お父さんと竜子/秋日子が思わず抱き合うところで、いきなり春夫が現れるという流れに笑う。ちょっとしたホラー作品のような怖さ。
最終回手前まで竜子がお父さんの前にも関わらず秋日子の姿を保っていたのは、来るべき別れをこれ以上辛くしないために気合いを入れて竜子の顔にならないようしてたんでしょうね・・・。
・お父さんと竜子/秋日子の関係を疑う春夫は、相手が女子高生ということでなく、「死んでから一ヶ月しか経たないのに、おふくろが可哀想だ」という観点から怒っている。
今まで母親を悪し様に言ってきた春夫の言葉だけにぐっとくる。
「ありがとう」と竜子/秋日子が応える本当の意味が彼には理解しようもないのがまた切ない。
〈第19回〉
・石の上から海に落ちた竜子/秋日子を助けに飛び込む春夫。あの程度の深さにあの飛び込み方は頭打ちそうで怖い(笑)。
・「今はまだ泣けない」。そう言いながら声を詰まらせ鼻をすする春夫。彼の一番の見せ場ではないかと思います。
・記念撮影から海辺を歩くシーンにかけて、いつもは(霊体の)秋日子によるナレーションが竜子(秋日子ボイス)のナレーションになっている。
家族一人一人への別れを込めた場面だからこそですね。
〈最終回〉
・海辺で本来の姿をとった竜子に出会うお父さん。強引に竜子を抱きしめ・・・えええ!?
「冥土の土産」って!? 「言葉もいらない、見つめ交わす目もいらない」のはどうなった!?
・自分のことを、子供たちと話すときは「お父さん」、よその人と話すときは「私」という久留さんが竜子に対しては「俺」と話すのが新鮮で、お父さんがにわかに「男性」に見えてしまった。眼鏡を外した顔も二枚目だ。
・自分の体に戻ることへの不安を訴える秋日子の口調がリサと変わらないほどに幼くて、竜子の前では「娘」になってしまうんだなあ、としみじみ。
・「人生ってほんと素晴らしい。だからお父さん、あたしのために人生狭くしないで」。
台詞の内容もピン子さんの演技も素晴らしいが、それ以上にボキャブラリー、表現そのものの美しさにぐっときてしまった。
この作品にはこうした魅力的なフレーズが多い。「(人生が)どんなにぎゅうぎゅう中身が詰まってるか」「今お母さんにありがとうって言いたいよ」「あの子のこと、大目に見てやっていただけないでしょうか」などなど。
特別詩的ではない、ごく平易な語彙なのに、相手を思う気持ちや優しさに溢れた素敵な言葉たち。脚本の力ですね!
・最後のカウントダウン後に振りかえった時の秋日子の微笑み。
竜子の笑顔とも陰を背負っていた秋日子の表情とも違う、生まれ変わった秋日子の顔。
朝一番の日差しの中での微笑が印象的でした。
・空港での別れ際、秋日子とリサはハグしあうが、リサは今も秋日子に母親を感じ続けているのだろうか。
鋭敏な彼女は「おねえちゃんが変わった」のを無意識に察しているだろうと思いますが。
米子が見送りに来なかったのは用事があったのかもしれないけれど、茂多くんが外で待機してるのはなぜだろう。お父さんともリサとも大いに面識はあるのに。
・茂多くんのバイクの後ろに乗る秋日子。結局この二人付き合うことになったんでしょうね。
お母さんと彼と親友とに支えられ、また支えて、秋日子は元気に生きているようです。明るく笑う彼女の顔は竜子に負けないくらい生き生きとしているから。