about him

俳優・勝地涼くんのこと。

『ハケンの品格』(2)-8(注・ネタバレしてます)

2008-02-28 02:25:10 | ハケンの品格
〈第五回〉

・仕事中に居眠りする小笠原のおでこに春子が消しゴムをぶつけて起こす。そのあんまりな行動に美雪ほかみなの非難の視線が。
「寝ている人を起こしただけですが、何か?」と春子は例の切り捨て台詞を返しますが、「なーにか?」といつになくちょっと間延びしたトーンに可愛げがあります。
その後も小笠原のパソコン音痴が炸裂するたびに春子はあれこれ投げようとするとするのですが(しかもだんだん重いものになる)、その行動も本人は激怒してるのかもしれないけれど、なんかユーモラス。

・マーケティング課のデスクに座ってからを数えるだけでも一ヶ月以上たってるはずなのに、パソコンの電源の入れ方さえわからないというのは、いくらなんでも・・・。しかも本人は反省の色なく覚える気があるようでさえない。
春子の小笠原への腹の立てっぷりはかなり過激ではありますが、後に自ら語るように、自分の能力だけを頼りに生きている春子にしてみれば、会社に寄生して向上しようという気がない小笠原が許しがたいんでしょうね。

・桐島部長に呼び出され、小笠原のリストラを告げられる里中。「昔は腕のいい営業マンだった」という言葉が、小笠原の現状のダメっぷりを見せ付けられた後だけに身にしみる。
小笠原の、自身の無知に無反省なばかりかへらへら笑い飛ばすような態度も、その実せめて周囲も自分も深刻な気分にさせまいとする強がりなのかなとも思えます。
ちなみに小笠原役小松政夫さんは芸能界に入る前は、本当に車のトップセールスマンだったそう(小松さんの自伝的エッセイ『のぼせもんやけん』に詳しいです。持ちネタの「長い目で見てください」のモデル話もあり)。

・すれちがいざま春子に「ハケンは国税局とか関係なくていいわね」と嫌味を言う黒岩。春子が別に何をしたわけでもないのに、やつあたり的言い草。確かにこの回後半で春子と美雪以外のハケンは販売二課の大騒ぎをよそに(むしろ肴に)くつろいでいますが。
結局春子は「国税局とか関係な」いいどころか、粉飾決算疑惑をはらすのに最大の貢献をすることになります。

・「あんたさっき小笠原さんを虐待してただろ」となどという東海林。
虐待という表現に思わず笑う。虐待とは自分より明らかに弱い者、子供や老人に対する行為を指すんじゃないか。本来正社員より立場の弱いハケンが社員(嘱託だけど)を「虐待してた」とは普通ならまず表現しないだろう。
春子に「あの人を老人扱いするな」と言いつつ、東海林こそが、そして里中たちも無意識に小笠原を老人、弱者とみなしているのが「虐待」の語に匂わされている。

・「私はハエと遊んでいる暇はないんです。」 
前回ラスト以来春子の東海林に対する態度は一段ときついものになっている。自分の中の彼に惹かれる部分を押し殺そうとするゆえ、なのか?

・朝食を食べそびれた浅野がおにぎりを食べていたのをきっかけに、小笠原さんが塩むすびの話を。そこで急遽塩むすびの企画のためのリサーチを命じる里中。
春子をやりかけの仕事を後まわしに小笠原に同行させ、「僕は浅野くんとコンビニ回りますから」。・・・マーケティング課は他に急ぎの仕事ってないんだろうか?

・「小笠原さん、がんばりましょうね」と小笠原の両肩に手を置く里中に春子が訝しげな視線を送る。性急に小笠原名義の企画を立ち上げようとするのも含め、この時点で春子はうすうす事態に勘付きつつあるんでしょうね(でも後で東海林に「小笠原さんはな、今大変なんだよ」と言われて驚いた顔してたけど)。
それに対し小笠原は自分に関わることなのに、里中の様子が妙なのに気づかない。デパートでの遊びほうけっぷりといい・・・春子の言う通り「危機感がなさすぎた」んですよね。

・パソコンが信用できないと語る小笠原。しかしそんな個人的感情は、今や業務に欠かせないパソコンを習得しない、する努力もしない理由にはならない。
パソコンができなくてもお釣りがくるほど他のスキルで会社の役に立てるのならそれもアリだろうが(だからこそ里中もパソコン技術に関係ない「商品企画力」で小笠原に手柄を立てようとした)。「そうですか」という春子の冷淡な返事も「あんたの好き嫌いは関係ない」という意味でしょうね。
この場面では「十年ぐらい前までは、伝票ってのはみんな手書きだったんだけどねえ」という台詞を通して、ごく自然な形で伏線を張っている。

・小笠原を捜して歩く春子が首を左右に大きく振り向ける。「大前体操」や前回の直角歩き、数話後の車の安全確認もそうですが、この大げさな動作が無口・無表情・無礼な春子にユーモラスさを加味しています。
しかし「迷子のお知らせ」ってのは(笑)。こういう場合「お客様のお呼び出しをいたします」ですよねえ。呆れ果てたように春子が目を閉じているのもいい味。

・小笠原を迎えに行かないことを責める東海林に「迷子の老人の面倒を見るのは私の契約に入ってはおりません。」と言い切る。
実際おむすびのリサーチで来てるのだから、食品フロアでおむすびを扱ってるコーナーを回れば春子と合流するのは難しくなかったろうに、にもかかわらず春子と行きあわなかった小笠原は、食品フロアまで春子を捜しに降りてきてもいない可能性が高い。
というかわざわざ捜さなくても自分もリサーチに回り始めれば自然と出会えただろうに。仕事を何もせずにただ迎えに来てもらうのを漫然と待ってるようでは「迷子の老人」と言われても仕方あるまい。
そして春子が小笠原を迎えに行かず置き去りにして帰ってきたのは、「面倒を見なければならない老人」扱いにしていないからこそなのでは。居眠りしてても叱らず、パソコンが使えなくてもデパートで迷子になっても、「優しくしてあげるべき」だと考える東海林やマーケティング課の他メンパーの方が遥かに彼を「穏やかな余生をおくる老人」と見なしているように思えます。

・にこにこ笑いながら帰ってきて、迷子になって東海林に迎えに来てもらったと悪びれずに告げる小笠原。本来恥ずかしい話のはずなのだが。
迎えに来てくれた東海林のことを「この人(春子)と違って優しいから」などと言っているが、こんなことで優しくされるようじゃお終いだ、との意識もない。恥ずかしいだけでなく職業人としての信用を失いかねない話をほいほい話してしまうとは。
現に桐島が渋い顔をしてます。迷子になった事実以上に、その事に対する意識の低さを問題に思ってるんでしょうね。

・里中は塩むすびの企画書を「これ小笠原さんの企画なんだ」と言って東海林に見せるけれど、実際は小笠原は思いつきでさえない雑談として塩むすびの話を口にしただけで、それを企画にしようと考えたのは里中、企画書の形にしたのは春子である。
小笠原はデパートで遊んで迷子になってただけ。その間に春子は本来彼がすべき仕事を全部やってくれている。迎えに来てくれなかった春子が冷たいと文句を言う前に、まずお詫びとお礼を言うべきところなんですけどね。

・「仕事早くなったね」と誉められ謙遜する美雪に、「若い人はどんどん覚えちゃうから」と言う小笠原。
確かに年が若い分吸収力もあるし機械に馴染みやすいのは確かでしょうが、それ以上に前回家賃も払えないほどの薄給の恐怖を経験したこと、二ヶ月後の契約更新を目指すと決めたことが、美雪の危機感と向上心に繋がってるのでしょう。
一番大事なのは「やる気」であり、若さのせいで片付けるのは努力しない言い訳と響く。美雪の努力に対して失礼でもあるし。
春子が間髪入れずに「忘れる人もいますが」と反駁したのはそのへんにムッときたからでしょう。

・誰もツッコんでないのにお腹が鳴ったことをいきなり言い訳し始める春子。この時の表情や声の出し方が、いかにも精一杯意地張ってる感じで、春子の可愛げが思いきり出ていました。篠原さん名演技。
この言い訳台詞で春子が迎えにこそ行かなかったものの、所在が知れるまでは小笠原の行方を心配して昼食返上で捜していたのがわかるようになってます。
こういうことをはっきり口にするのは自分の優しさを隠そう隠そうとしてる感のある春子らしくない気はしますけど。

・このタイミングで桐島が春子に小笠原について思うところを尋ねたのは、さっきの話を聞いて改めて小笠原の能力とやる気に不安を覚えたからなのがうかがえます。
そして部屋を出て行く桐島・春子・里中を深刻な顔で見守る東海林。彼は桐島の話の内容、それに春子がどう返すかまでおよそ推測しているのでしょう。

・社食の料金が社員とハケンとで倍も違うというのがここで明かされる。たまに顔を出す程度の外部の営業さんならともかく、三ヶ月はこの会社にいるハケンに割引チケットとか支給されないんだ?ハケンも多く使ってる会社なのに扱い悪いなあ。第一回でS&Fに入ってたハケンの女性が文句言ってたのはこういうところもあるんでしょうね。
おごってくれようとする桐島に「結構です!」と怒鳴るように断るのは失礼ではありますが、春子としてはなあなあになるのが一番嫌いですものね。

・「もうお腹が空きすぎて目が回りそうなのでこれで失礼します。」 
思い切り私事だなあ(笑)。どこまでも率直ということか。まあ本来は休憩時間のはずですし。

・おじいちゃんと孫のように仲良く肩を並べて会社を出る美雪と小笠原。
先に春子は「ハケンの立場として言わせてもらえば」と前置きしたうえで小笠原を「マーケティング課のお荷物」と断じましたが、同じくハケンの美雪は小笠原をお荷物扱いどころか祖父のように慕っている。美雪は気持ちのうえでハケンというより正社員寄りなんですよね。それはマグロ事件の時の対応にはっきり現れています(待遇の面で社員と違うことを思い知らされた前回はそれが揺らぎましたが)。
美雪が元からのハケン希望でなく、正社員になれなかったからハケンになった、というのもその一因でしょう。彼女が最終的に社員への昇格を目指す根は第一回の時点から周到に描かれているのですね。

・東海林が自分を笑ったリュートに「わたし、あなた、キライ」。日本語通じますって(笑)。

・「よそ者のハケンが人事のことにまで首突っ込んでんじゃねえ!」 
春子自身は「ハケンに社員の査定をさせるんですか?」と東海林同様「ハケンは人事に首を突っ込むべきではない」考えを述べていたのに、そこを押して桐島が彼女の意見を聞き出したのだが。
その場にいて話の流れを知っている里中が何もフォローしないのは、彼も春子の発言に腹を立ててるからか。

・「私は一人で生きていけます」に対して「一人じゃないだろ」と返したのに、ツネさんのような)「ハケン仲間がいる」とか「同じ課の仲間がいる」とか続けるかと思えば、「一本だろ!電信柱一本で立ってろよ!」。思わず「そう来るか」と笑ってしまった。東海林は真剣に怒ってるんですけどね。
しかし「おまえが死にそうになっても、助けてくれるやつなんてこの世に一人もいないからな」という言葉を、嫌味っぽい口調でなくしみじみと悲しげな調子で口にした東海林に、前回の「何でそんなに寂しいこと言うんだよ」を思い出しました。
春子に「フラれた」わだかまりがあるから毒のある言い方になるけれど、思いはあの時と同じなのかもしれません。

・小笠原が家族の顔を思い浮かべれば(通勤ラッシュも)そんなの苦にならないと言っていた、と語る里中。
小笠原は先に美雪にも「仕事はともかく会社は大好き」だと話していましたが、ならばその大好きな会社に貢献できるように、家族を守るためにも、もっといい仕事をするため努力するべきだったんじゃないか。会社や家族を愛しているのは、ろくろく仕事をせず給料をもらう理由にはなりませんし。

・「ハケンは三ヶ月に一度リストラの恐怖にさらされるんです。」 
これは正社員の側から見ると結構盲点でしょうね。実際二人とも黙っちゃってます。
そして「今度はあなたたちの番かもしれませんね」という台詞は終盤の東海林の状況を思うと、一種予言めいて聞こえてきます。

・「あなたあの二人と喧嘩してるときって、とても楽しそうね」という眉子ママ。あれで楽しそうなのか?春子自身も「ありえない」って言ってるし。
しかしドラマ的にはああした「理解者」キャラが言う言葉は真実と相場が決まっている。確かに春子はプライベートの場に訪ねてきた二人をすげなく追い返さなかった。そもそも「悪い予感がする」と言いながらその場に留まっていたのも、ある意味彼らを待っていたのかも。

・黒岩が里中に「小笠原さんいなくなっちゃうんだって?」と問うのにマーケティング課の面々は驚く。
折りを見て里中から伝達されるべき事柄を、みんないるところで口にするのは軽々しくないかなあ。「これだけハケンがいたら小笠原さんやることなくなっちゃうわよ」という嫌味を(ハケンの近くんの発言に腹立ったとはいえ)ハケンたちの前で言ってしまうのも。
パソコンスキルを買われてやってきた近くんは言うに及ばず、春子も美雪もみなパソコンを使っての業務が主のようなので、パソコンの使えない小笠原さんと仕事かぶってないし。

・小笠原さんが去るのも仕方ないという態度の近くんに浅野がとがめるような目を向ける。それも単純な非難の目ではなく、「小笠原さんのことそんなふうに思ってたの?」と言いたげな、「一緒に働く仲間と思ってたのに裏切られた」ショックみたいなものをその表情に感じました。
もっとも近くんの方も曖昧な笑顔を浮かべつつ意味なく歩きながら―皆と視線を合わせないようにして―喋っているので、浅野たちのように素直に小笠原さんを惜しめない事にいささか罪悪感を覚えているようにも見えます。
近くんは基本ハケンらしくドライなんですが、マグロ騒ぎの時に「今日は僕も手伝いますから」と申し出たようにまんざら情がないわけでもない。ドライに徹しようとする(結局徹しきれない)春子とウェット全開の美雪の中間に位置するキャラクターですね。まあ男性なんで、女性が多い派遣社員を代表するキャラではないんですけど(代表キャラは販売二課の香と瞳でしょう)。

・二つ上で春子たちと「パソコンの使えない小笠原さんと仕事かぶってない」と書いたんですが、美雪いわく「最近私が調子にのって小笠原さんの分の仕事までやっちゃってたから」。
小笠原さん普段どんな仕事してるんだろう。普通ならパソコンでやる計算とかグラフ作成なんかを全部手書きで(そのぶん時間かかって)やってるんですかね。で最近は美雪がそれを(パソコンで)肩代わりするようになった感じなんでしょうか。
自分自身の仕事と小笠原の分と両方自主的にこなしている美雪・・・なかなか有能なんでは。成長したなあ。

・「あれだけ仕事をしないで会社に居続けるスキルを、あなたがたも学ぶべきです。」
 あなた「がた」って誰かと思えばその後に香と瞳が写るのでハケン女子三人のことらしい。香たちより仕事してないのか・・・そうかも。
「座ってるだけであたしたちの倍くらい給料貰ってるんだよ」と聞かされて、さすがの美雪も(前回給料問題にはシビアなところを見せていたので)多少小笠原に反感を抱くかと思いきや「小笠原さん、すごいなー」。
そこで素直に感心できてしまう美雪こそすごい。他人を恨んだりそねんだりしないこの素直さは彼女の原動力かも。


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『ハケンの品格』(2)-7(注・ネタバレしてます)

2008-02-24 01:14:31 | ハケンの品格
・リュートと踊る春子を見て、意外に東海林より里中の方が不愉快そうな顔をしてる。
やきもちなのか、それともスーパーハケンな春子に憧れる部分の強い里中的には女っぽい春子はあまり見たくなかったりするのか。

・以前春子と品定めやったときもそうですが、眉子ママは東海林のことを話すとき「くるくるパー、マ」と変なところで区切る。一息で言ってあげてください(笑)。

・「ここじゃなんだから、表で話さないか」と言われて、何だかんだでついてゆく春子。脈なしでもない、のか?

・「途中省略して結論だけ聞くんだけど、俺のこと好き?嫌い?」 
こりゃまたずいぶん省略したもの。多分にとっぱずれた部分はあるとはいえ、この積極性は里中や浅野も見習ったほうがいいんじゃないかという気もする。特に浅野。でも玉砕するだけ?

・店の裏口での春子と東海林の会話は全台詞を書き出したくなるほどの名シーン。
ここで春子の処世の根本にあるのはハケンを(そして社員をもリストラという形で)平然と切り捨てる会社組織への不信感であることが、これまで以上の強さで描き出される。
対する東海林はかつての先輩たちがリストラでどんどんいなくなってもなお、その「家族」を切り捨てた会社を自分の「家庭」と信じている。それは東海林の愚かさでもあり同時に強さでもあり――一面においては里中以上に人が好いのかもしれませんね。

・こないだまで「ハケンは赤の他人ですよ。(中略)俺、家族と仕事したいんですよ。」と言っていた東海林が、ハケンでも認めるに足るスキルと業務への情熱を持つ春子とは、一緒にいい仕事がしたい(一緒に生きたい)と告げる。
そして彼がここで口にする「一緒に働くってさ、一緒に生きるってことと同じだろ」というプロボーズのような台詞は、第一回で美雪のモノローグに登場した「働くことは、生きることだと(春子に教えられた)」という一節を思い出させる。東海林と春子は根本的なところで仕事や人生に対する考え方が似通っているのだ。
「できる男」東海林にとって春子に対する好意=「一緒にいい仕事がしたい」だったように、春子もまた一緒にいい仕事ができる男をこそ好きになるんじゃないか。先に里中が「大前さんみたいに仕事できる人は、東海林さんみたいにできる男好きになるよ」と言ったように。

・「私はあと二ヶ月でいなくなるハケンです」という春子に東海林は「それが何だっていうんだ。二ヶ月後には俺はもっとあんたの事好きになってるかもしれない」と反論する。答えになってないんですが、東海林の春子への想いが伝わってきて胸がじんとする。
この直後揃ってくしゃみしたのに東海林は笑うのですが、春子は無言のまま上目遣いに東海林を睨む。そこには周囲に心を閉ざして自分を守ってきた春子の、自分の心をこじ開けようとする男への憎しみと、こじ開けられそうになるほどに彼の言葉に揺り動かされている複雑な心情がうかがえて、笑顔を見せるよりもずっと東海林への「愛」を感じてしまいました。
このシーンに限りませんが、篠原さんの表現力にはつくづく驚かされます。春子という、スーパーハケンとしての一種戯画化された極端な部分と、一人の女性としての繊細な部分を合わせ持つ難易度の高いキャラクターを見事演じきれたのは彼女だからこそですね。

・時給1800円の仕事につられた美雪は、販売二課のハケン・香(入山法子さん)の助言に従い、会社を休んで他の派遣仕事の面談に行こうと画策。
前回でハケンたりとも会社、少なくとも所属チームの利益をプライベートに優先させる気概をみせ、派閥に属するのをやめた美雪が、「みんな(その手のズル休みを)やってるよ」と言われてその気になってしまう。
退行してるようですが、それだけ薄給のショックは大きかったか。死活問題ですからね。
しかしこんな美味しい仕事(受付)の話が入ったのは、やはり彼女のスキル(美貌)がものをいったんですかね。

・意を決して一ツ木に明日休むと電話する美雪。「森さんはズル休みするような人じゃないって」との言葉が胸に刺さっている様子。
一ツ木さん完璧に見抜いてるかと思いきや、後で美雪の実家に連絡して唖然としてましたね。しかし「今日だけで六人目なんだよねー」って・・・一ツ木さん苦労多いな。

・昨日の夜の会話がきいたか熱を出した春子(実は知恵熱だったり?)。体温計の「38.8度」の文字に「だめだこりゃ」と呟くものの、休む気は毛頭なし。
しかし「(美雪が休んでも)大丈夫です。大前さんがいますから」と里中が言ったそばからのフラフラ加減が笑えます。舌回ってないし。新たな口癖「私としたことが」がここで初登場してます。

・美雪の母親が病気と聞いて、本気で心配顔の浅野・小笠原に対して、やはりハケンの近くんは「急病ね」と冷めた口調。彼は美雪が他の派遣会社にも登録するか検討してたのを知ってますしね。
関係ないですが、浅野くんが小笠原さんの肩を揉んでる姿が何だか微笑ましいです。

・同じく昨夜の長話がたたって風邪を引いた東海林は欠勤。ハケンの香と瞳は「社員は有給いっぱいあっていいね」と揶揄するような態度。これが里中なら心配するんだろうか(笑)。
こちらも職業意識の塊のような東海林が休んでも春子が休まない(休めない)のは前回話してたように「(自分たちハケンは)仕事に穴をあけるわけにいかない」からですね。実際今回の美雪のようにほいほい休んじゃうハケンの方が多いんでしょうが・・・。
ここはプロ意識の違いであり、春子をスーパーハケンたらしめたのは(ツネさんをマグロの神様たらしめたのも)スキル以上にまずこの気構えだったのでしょうね。それは今回ラストの眉子の言葉にも表れています。

・タチアナからの突然の電話に、不在の東海林以外で唯一ロシア語の話せる春子が出ることに。
熱で頭が回らずスペイン語で応対する、とかいうオチかと思えば、もっと大事態に発展してしまいましたね。
しかし例の感動的な春子と東海林の対話シーンが「寒風吹きすさぶ中での会話」→「風邪で春子フラフラ、東海林欠勤」という形でストーリーの伏線としても機能している。一つの場面に複数の意味を自然に持たせているストーリーの構成に脚本家の技量を感じます。

・15時までに書類を用意しなくてはならないのにインボイスだけ抜けている非常事態。とはいえほとんど販売二課の全員が美雪の机に殺到するというのも(そんなにいたってしょうがない)。
前回全然東海林を手伝わなかった反動でしょうか。いきなりの大騒ぎにマーケティング課の面々が目をぱちくりさせてます。
会社の共有ロッカー(書類入れ)の鍵を持ち帰るのは言語道断ですが、里中がきっちり回収すべきでしたね。あるいは所定の置場所があるならそこに戻させるか。そういうとこいい加減な会社ですねえ。合鍵の所在もはっきりしないときたし。
しかし今回の美雪は前回の頑張りとはうってかわって、書類ぶちまけ、鍵の持ち帰り、ズル休みとろくなことをしでかさない。結局一ツ木から実家に連絡行ってズル休みが親にまでバレたし、悪いことはできないものです。

・販売二課の大騒ぎをよそに香と瞳はのどかに美雪の面談の話を肴にコーヒーを飲む。
美雪が持ってるはずの鍵が問題になってるのに、春子に問い詰められなければ美雪の所在について知らん振りするつもりだったのか?少なくとも美雪の携帯に連絡するくらいできたはずなのに。それとも騒ぎの原因あるいは騒ぎ自体を知らないのか?
どちらにせよ彼女たちが、自分たちの所属している販売二課の状況に全くの無頓着であるのは明らか。東海林や黒岩が「ハケンが、会社の利益考えてるわけない」と言いたくなる気持ちもわかりますね。

・バイク便の人?からヘルメット&バイクを強制的に借り受けて美雪のもとへ向かう春子。
しかし日頃「私には関わりございません」と言い続けている彼女が、頼まれもしないのに熱のある体を押して美雪捜しに乗り出しているのは何故なのか。ツネさんの時のようにハケン仲間が仕事に穴をあけたならハケンの同志が埋めるべき、という考えに基づいてか。
「ハケンにハケンの面倒を見させようとする」考えには反発する春子ですが、同じハケン元のハケンが引き起こした不祥事――意図せざるミスばかりでなく意図的なサボり――の責任は追うべきだと思ってるのかも。
東海林はまた「俺のために・・・」って誤解するかな。それとも誤解じゃなくて・・・?

・「そこの森美雪、待ちなさい!」 
そういえば春子が美雪の名前を呼ぶのってこれが最初。美雪だけでなく上司にあたる里中と隣の課の主任である東海林以外、社内の人間に名前で呼び掛けるシーンが全くない。
ハケンを名前で呼ばない東海林を批判しつつも、彼女自身他人を名前で呼ぼうとしない。それはハケン正社員関係なく他人と深く関わりを持つまいとする春子の頑なさの表れなのでしょう。
彼女もある意味相手を一人の人間として向き合うまいとしていたわけで・・・そんなところも東海林とは似たもの同士ですね。
そしてこんな形でも美雪の名を呼んだのは、先の東海林とのやりとりでいくぶん心の扉が開かれたからなのかもしれません。続けて次回では初めて小笠原を名前で呼んでいますし。

・バイクを運転する春子の視界がぐらんぐらん揺れる。見開いたまんまの目といい、かなりヤバい状態なのでは。
それでもタチアナの乗ったタクシーをしっかり視認しているのはすごい。ヘルメットかぶってる春子を認識したタチアナの方もすごい。

・美雪から取り上げた鍵でロッカーを開ける春子。この回のストーリーは東海林の春子への告白と鍵のかかったロッカーへの対処が二つの柱となっている。東海林は春子に「もっと心を開いて」と言ったけれど、この「開かないロッカー」は、春子の閉ざされた心を暗示している・・・と見るのは穿ちすぎでしょうか。
春子の活躍によってロッカーの扉は開きましたが、春子の心の扉がちゃんと開くのはまだ先になりそうです。

・ロッカーの書類の中から数秒でインボイスを探し当てる春子。相変わらずすごいが・・・目見えてるのか?

・「私の車 追い抜かなかった?」というタチアナにロシア語で「それが何か?」と返す春子。ロシア語でも口癖は健在なのですね。

・親をだしに嘘をついた美雪を責めずに彼女の体を心配し、辛かったら帰って来いと話すお母さんは甘々ではありますが、こんな嘘をつかなきゃいけないほど美雪は苦しんでるんだ、という理解なんでしょうね。
美雪もそれがわかったからこそ泣きそうな顔になっていて・・・この方が正面から責められるよりこたえるかも。

・夜の道を暗い表情でとぼとぼと歩いていた美雪が足を止めて月を見上げ、それから次第に力強い歩調で歩き出す。
手の届かないような遠くにあって、でも自分の進む道を照らしてくれる――そんな月を春子に重ね合わせ、一歩ずつそこへ近づいてゆこうとする気持ちがその足取りから感じ取れます。

・コートのポケットから東海林の携帯番号を書いたメモを取り出した春子はふっと心から嬉しそうな笑顔を浮かべる。しかし「クルクルパーマの携帯」って・・・惚れた弱みでクルクルパーマ呼ばわり公認ですか。

・東海林の言葉を思い返したあとで春子は意を決してメモを握りつぶしてゴミ箱に捨てる。
東海林の気持ちを受け入れれば、ハケンとしての自分の生き方を捨てなくてはならなくなる。東海林に惹かれる気持ちを持ちながらも自分らしくあるためにそれを捨て去ろうとする(結局捨て切れずにメモをゴミ箱に残したままにしてたことは後々発覚します)春子の心情が切ないです。

・「1200円で頑張ります。目標は二ヶ月後の契約更新です」と笑う美雪の背中を見送って、春子も顔を振り向ける手前でかすかに微笑む。
春子自身は契約更新の意思はないものの、ふらふらせずに一つところで頑張ろうとする美雪の決意は好ましいものと映っているのですね。

・東海林にフグ料理に誘われて一瞬目の色を変える春子。「死ぬほど大好きです」という表現と無表情のコントラストも笑える。
メモを捨てたことに象徴されるように東海林をきっぱり拒絶するつもりだったんだろうに、いきなりこんなところで躓きかける(笑)。意外に食べ物に弱い、春子の微笑ましい部分ですね。

・しかし一拍のちにはしっかり拒絶。早口でまくしたてる口調は春子なりに必死なんじゃないかと。「そこらへんを飛び回ってるハエ~」のたとえはあんまりですが。
この台詞を言うとき本当に回りをハエが飛んでるかのように目が動いてるのも可笑しいです。

・春子のあまりな言い草に絶叫する東海林。「とっくり」「ブラックホール」に続いて今度は「電信柱」。せっかくいい雰囲気になりかけた二人の関係がすっかり元の木阿弥に。
気をきかせて場を外したはずの里中が素早く戻ってきて東海林を取り押さえてる(笑)。近くで聞き耳立ててたんですね。

(つづく)

 


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『ハケンの品格』(2)-6(注・ネタバレしてます)

2008-02-21 02:20:06 | ハケンの品格
〈第四回〉

・東海林のキスにノーリアクションでバスに乗って去ってゆく春子。そしてとんでもない現場を目撃してしまい悄然と一人立ち去る里中。
彼もまだ仕事中(残業中)なんでしょうから、東海林同様春子に言いたいことがあって抜け出してきたんだろうに。里中はこういう時本当に憐れっぽい感じになりますね。

・翌日の初給料にうきうきする美雪に「親孝行なんだね」と話しかける浅野。少し前から美雪の後ろで彼がそわそわ話し掛けたそうにしてるのが映っている。
この場面、その後で「じゃあ、正社員とハケンの恋愛は・・・」と話し掛ける時の両方とも、ためらいがちな声のトーンに彼のオクテっぷりがよく出てます。「あんたもジャマ」と春子に一蹴されちゃって可哀想。
「30すぎた女はみんな(こういう話題は)嫌いでしょ」との小笠原発言に黒岩のきつい視線が。でも焦る風でもなく飄々としてる小笠原さんはさすがに年の功。
マグロミーティングの時に黒岩が小笠原に失礼な口のきき方してたのは、おそらく日頃からしてるだろう、こうした古い日本の男なセクハラ発言に苛立ってた?

・S&F社の正社員(男)とハケン社員(女)の結婚式の場で、花嫁がハケンだということで双方の両親が大モメに。
「東海林さん司会なんだから何とかしてきなよ」と言い出す里中。里中が東海林に厄介事(里中自身の厄介事じゃないけど)を押し付けるパターンは珍しい。
とっさにお色直しにことよせて新郎新婦を退場させる東海林の手腕はお見事(声の調子が妙にフラフラしてるのは何かのモノマネ入ってますか?)。ついでにくるくるパーマをオールバックにしてるのにちょっと笑いました。

・結婚披露宴の最中に部長の印をもらいにくる春子。それもどうかという気はするが。課長とか代理の人がいるはずだけどなあ(笑)。
角でいちいち直角に曲がる正確な歩きっぷりが笑えます。そして泣いてる花嫁は結局どうなった?

・浅野くんによると「(春子の時給は)マグロの一件で3000円から3500円に上がったらしいですよ。」 早耳な彼のニュースソースはどこだ?
小笠原さんの「ギョ!」はマグロにかけての駄洒落でしょうが、小松さんのアドリブなのか「水産部 岸野帆立」などに続く脚本ないし演出の海産物ギャグシリーズの一貫か。

・「働かない正社員のおかげで、私たちハケンはお時給がいただける」という春子の発言に販売二課の男性陣が敵意ある眼差しを向ける。
対して今までなら真っ先に怒り出しそうな東海林は気まずそうな顔で目をそらす。なんか「うちの嫁がまた暴言吐いてすみません」みたいに見えるのですが(笑)。
そして「まあ気にしないで」と肩を叩く小笠原に「え・・・俺のこと?」と不安げに呟く浅野がキュート。彼を振り向く里中の表情も小笠原発言を肯定してるぽいぞ?

・マグロ解体ショーの件で「手放すには惜しい人材」と役員たちの意向で引き止められる春子。
「会社に縛られるような奴隷にはなりたくありません」発言は、本当に「正社員のプライドを傷つけても私は少しも嬉しく」ないのか?と聞きたくなるほどに過激ですが、行く先々でこうして引き止められてるだろう春子としては、このくらいきっぱり言わないと、ということなんでしょう。
「働かない正社員」発言に加えてのこの台詞に怒り心頭の社員たちは東海林を「びしっと言ってやんなさいよ」とたきつけるのだけど、いまや東海林的には春子の失礼発言より彼女が三ヶ月でいなくなることの方が大問題でしょうねえ。
しかしみんな本当に仕事しなさすぎ。マーケティング課などデスクにさえついていませんよ?

・やむなく皆の期待を背負って春子に話をしに行く東海林を、わらわらとついて行って応援するギャラリーたち。本っ当に仕事しないなあ(笑)。

・「大前、春子さん」と呼びかける東海林。「君」でも「お前」でも「そこのハケン!」でもないところに意識しまくりなのが表れてますね。
それを知ってか知らずか先日のキスを思わせる超至近距離で「何か!?」と普段の数割増しの迫力で詰め寄る春子。いきなりキスした弱みがあるだけに東海林タジタジ。
「忙しいんなら、いい」と完敗する東海林に桐島部長まで苦笑。「仕事しろ」という気も起きないのか。まったくこの会社は、と思ったら東海林自身から「働かない会社だなここは!」とツッコミが入りました(笑)。

・ようじ屋の東海林と里中。「大前さんに話があるんならしてくれば」「ごまかさなくていいから」といつになく尖った口調の里中。東海林と春子の急接近に苛立ってるのが出てる。
でもすぐに「ごめん」と捨てられた子犬の目になって「俺見ちゃったんだ」と告白するあたりはやはり里中。

・春子にキスしたときの状況を「なんかこう、吸い込まれる感じっていうの?」と表現する東海林。さすがはブラックホール春子。今思えば春子をブラックホールと評したのは東海林自身がすでに彼女に引き付けられていたからだったのかも。
自分も春子に惹かれていながら、「俺のこと救ってくれた」という誤解を「ツネさんのためだよ」などと訂正しない里中はやはり人が好い。

・やっと先日のキスについて彼女の気持ちを確認できた(また誤解を深めただけという気も)東海林は、ともかくも自分の電話番号を書いて春子のポケットに入れる。
後の「ハエ」発言を考えても、春子は全然相手にしてないような感じですが、その実このメモをずっと捨てずに持っていたのがのちのち明かされます。この時だって東海林がメモを書くあいだ帰らずに待ってましたしね。

・「珍しいから、打ち落としてみようかな」という東海林の照れ隠し発言に、(東海林の気性は呑み込んでるだろうに)「そんないい加減な気持ちなわけ?」と杯をテーブルに叩きつけるくらいに怒る里中。
春子を間に挟んで、二人の友情が微妙に揺れ動いている。

・雑踏の中で足を止め、「あと60日か」と呟く春子。第一回で「あと75日か~・・・」と呟いてた時と違い、春子の中に去りがたい気持ちが生まれているように思えます。
そんな感じの切なさが彼女の表情にありました。

・初給料の安さにめげる美雪。給料出たのに落ち込む美雪に戸惑う浅野に「一ヶ月目は大概ショックを受けるんだよ」と経験者の重みで語る近くん。
彼は浅野にはタメ口なのですね。23歳新入社員だからな(公式サイトによると近くんは30歳、里中と同い年の設定)。
ちなみに浅野に敬語で話す美雪は大学卒業後8ヶ月ほどのバイト生活を経てハケンライフに登録したので、彼と同い年の23歳ですね。

・「家賃と光熱費払ったら、次のお給料日まで持たないです~。」という美雪。
彼女は結構残業したり解体ショーの時は休日出勤もしてるんだけど・・・解体ショーの分は次回の給料分か?たしかにあの部屋家賃高そうだし。

・「大前さん、明日は私の秘書をやってくれませんか」 このうえない丁寧さで春子に頼みごとをする東海林に驚き。春子を動かすにはまず礼を尽くすこと、と思ってか。
でも春子が「承知いたしました」とにっこりするのは、「私からも頼むよ」の桐島部長の方になんだな・・・。

・「商談は俺が仕切る。あんたはついててくれればいいから。」何だかロビンソン百貨店の時と同じ流れなんだが。こりないな東海林。
春子と二人になる口実のような気もします。里中の方も「大前さんを取られた」って顔してるし。

・会社で東海林・里中と飲む一ツ木さん。人事部でなく彼らのとこにばかり出入りしてるなあ。
「(ハケンのトラブルで)二番目に多いのが、正社員との色恋沙汰」と言う一ツ木さんの台詞に豪快に吹く東海林。いや見事な吹きっぷりだ。
一ツ木さんうすうす東海林の春子への気持ちに勘付いての発言でしょうか。それとも相手があの春子だけにまさかと思ってるか?

・「大前さんみたいに仕事できる人は、東海林さんみたいにできる男好きになるよ」との里中の言葉に、春子が「カンタンテ」で東海林を「仕事はできるんだけど」と評していたのを思い出しました。あれはやはり彼女が東海林を選ぶ伏線だったんですかね。
しかし暗に自分は仕事ができないと認めている里中。謙虚というよりいささか覇気がなさすぎるような。
自分も春子にふさわしい男になってやる、くらいの気概を持てば、もともと部下に人望もある彼は「できる男」になれるんじゃないかと思うんですが。

・契約の関係文書を含む書類を床にぶちまけてしまう、美雪恒例の大ドジ。
この時美雪自身より先に里中が「すみません!」と謝ってる。こういう部下思いなところは彼の良さなんですが。しかしあからさまに伏線ですねこれ。

・忙しい春子に代わってお茶を運ぶ美雪の手付きが実に危なっかしい。ところでマグロといいエビといい、販売二課は水産関係の仕事多いなあ。

・仕事中によそのハケン会社の情報をパソコンで見てる美雪。こらこらっ。

・なかなかまとまらない商談にいらいらと時計を見ていた春子が6時を前に、ついに立ち上がりロシア語でまくしたてる(立ち上がる寸前の口の歪め方が見事)。
ぎりぎりまでは東海林を立てて黙ってたんでしょうけど、「残業はしない」ルールの方が優先だったらしい。
「春子のことだからロシア語も堪能で彼女が商談をまとめるんだろう」という視聴者の予想を、東海林が一ツ木に春子がロシア語の資格を持ってないことを確認する場面を入れてあらかじめ牽制したうえで、このオチへ持っていく。
それも単純に商談をまとめるのでなく、ほとんど喧嘩腰で怒鳴るという迫力シーン。視聴者の想像を上手に裏切ってみせるストーリー展開はさすが。
取引先の女性(タチアナ)は強気に出るあたりから足を組んでいるのですが、春子に一喝された時思わず座りなおしている。春子の勝ちがこの時点で決まったようなものですね。

・「カンタンテ」のカウンターで美雪は春子に貧乏の愚痴をこぼす。母親がへそくりで美雪の家賃を払ってくれたということは、娘の窮状は父親には内緒なのですね(連れ戻されるから?)。
しかしあの春子がプライベートの場所に美雪を入れているのに驚く。眉子ママやリュートが歓迎する以上は仕方ないということなのかな?その後東海林や里中まで来ちゃうし。公私の区別が曖昧になるのは一番春子の嫌うところだと思うけどなあ。

・「あんたって不幸な美人だよね」とリュートが謎の発言。
せっかく美人に生まれたのにそれをスキルとして生かしてない、そもそもスキルだと気づいてもないらしいことを指してるのでしょうか。その気になればモデルでも女優でもなれそうですもんね。

(つづく)


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『ハケンの品格』(2)-5(注・ネタバレしてます)

2008-02-18 01:50:54 | ハケンの品格
・里中の携帯に浅野経由で美雪から連絡が入る。
「(ハケンは)会社がどうなろうと、どうだっていいんだよ」と東海林が口にしたそばから、私用中にも関わらずツネさん発見の報をよこした美雪の行動が彼の理論を鮮やかに否定する。
このとき里中は「もしもし浅野くん」と電話に出て「ツネさん恵比寿にいるって」とだけ告げたので東海林が美雪の功績を知るのはもうちょっと後ですが。

・ツネさんに「お話だけでも聞いていただけないでしょうか」と懸命に頭を下げる美雪。
みんなが来るまでに帰られては困るので繋ぎに出たのでしょうが、単身初対面のツネさんを(ファンのおばちゃん達の凝視の中)説得に動いた美雪に驚いた。一人で外食するどころの勇気ではないはず。
正社員が上司との飲みを放り出して駆けつけてくるのはわかるとして、合コンそっちのけでの無料奉仕・・・。スキルはまだまだでも志は正社員にも負けない立派な職業人のものですね。

・小笠原の話を我が事のように大げさな口調で話してツネさんに取り入ろうとする東海林。
しっかり店を替えてツネさんと飲む約束を取り付けた東海林を、美雪が「さすがですね」と言うと浅野はちょっと寂しげな笑顔で頷く。
先に浅野が「小笠原さんが言ってたこと、そのまま言ってるよ」と苦笑しつつ美雪に話しかけたとき美雪は無反応だった。彼女が東海林の交渉術に感心していて(このあたりにも彼女の資質が見える気がします)、自分のことなど眼中にない、というのを感じ取ったんでしょうね。

・お茶を持ってきてくれた春子に「おう春ちゃん」と反応するツネさん。「お知り合いで?」と尋ねる東海林、内心「またしても・・・」の心境なのでしょう。

・ツネさんを遠目に見ながら「森ちゃん、お手柄お手柄」と浅野が誉めるのだが、ついで「本っ当に森くんのおかげだよ。ありがとう」と里中が微笑むと、美雪は「主任・・・」と笑顔で恥じらう。
いつもいいところを里中に持っていかれる浅野、この時は出遅れなかったのになあ。報われないですね。

・2000円のランチに毎日行く気でいる「おしゃれ派閥」のメンバーたち。ハケンの給料でこの余裕、みんな実家住まいなんですかね。

・春子と美雪が「友達」の何たるかについて話す。
社食のシーンで「春子は友達いなさそう」(第一回冒頭のアンダルシアの場面で、春子に大勢の友達がいるのは明かされてるわけですが)と皆の意見が一致してたことが、「その春子が友達と呼ぶのはどんな人間か?」とここで伏線として効いてくる。
春子は例によって「何だそのくだらない質問」。彼女は言葉が乱暴なときの方が大事な事を話してくれている感じです。

・「おしゃれ派閥」と一緒に食事に行った美雪は、黒岩が後輩の男子たちに昼食を奢っているのを目撃する。美雪は食事に行くたびいろんな人を見つける。
彼らが席を立った後で、一人憂鬱そうな顔の黒岩。孤独は深いなあ。

・春子が解体ショーに立ち会わないと聞いて「大丈夫?」と不信もあらわな緑川店長。前回の信用失墜がかなり響いている模様。
しかし春子をこのプロジェクトから(企画書作ってもらいながら)締め出そうとする東海林、桐島に言われたことなど完全無視ですね。
ツネさんを口説き落とした交渉術など本来有能ではあるんだろうから、依怙地さを捨てればいい仕事するんでしょうに。

・春子に対する東海林の嫉妬はなかなかに深刻、なのだが「あのとっくりはね、ブラックホールだよ?あのとっくりからいろんなものをものすごい重力で引き寄せて自分の力に変えてるんだよ!」という難癖がわけわからなすぎて笑いを誘う。春子に遭遇してしまった時のビビりっぷりもナイス。
春子の方も、後つけてるの盗聴してるの瞬間移動してるのと罵倒されたのに、ガツンとやりこめるでも無視するでもなく「東海林さんの頭は本っ当にビッグバンですね」と「冷静にわけわからねえこと言って」いるあたり、意外と暖かな応対。
それにしても東海林は春子がらみでは冷静さを欠きすぎている。結局それが遠因となって解体ショー危うく中止?の大ピンチを引き起こしてしまうことに。

・大量に届いたマグロに圧倒された東海林は、「これ本当に全部売りさばけるんですよね?」「デパートの本社からも視察に来るらしくて結果出さないと」などと余計なことを言ってツネさんを怒らせてしまう。
もう現物が届いてるんだから売りさばくよりほかないわけで、内心不安だろうともこちらの事情(ツネさんに言ったって仕方ない)などは胸にしまってツネさんに気持ちよく仕事してもらうのがベストだろう。
「らしくない」売場面積の計算間違いもそうですが、春子への対抗意識からくる焦りが、彼の技量を鈍らせてしまっている。

・ツネさんの骨折で解体ショー中止の危機にあって「だから俺は反対だったんだよ」などと手の平返す販売二課の面々。
そんな彼らを黒岩は「あんたたち最悪。船が沈みかけたらさっさと逃げ出すわけ?」と非難するが、マグロミーティングで東海林がいきなり前言を撤回して解体ショーを決めたときの反応を見るに、東海林のワンマン加減は少なからず同僚・部下たちの不満の種になってたんでしょうね。要は人望がない。
同じ状況でも里中だったら、美雪を先頭にマーケティング課全員自分から全面協力を申し出ただろう。現に里中が「マーケティング課は全面協力するから」と言うと後ろで全員が頷いてますし。東海林のためというより東海林に協力する里中のため、なんでしょうね。
あとで美雪は「私、里中主任と東海林主任の友情に感動してるんです」と言いますが、状況からすれば「東海林に向ける里中の友情の厚さに感動した」ってことですし。

・春子の協力をきっぱり拒む東海林。ハケンの、それも天敵の春子に頭を下げたくないのは無論のこととしても、直接の部下たちにも「力を貸してくれ」と頼むこともできない。
自分を恃むところが大きくしばしば大言壮語する東海林ゆえにこんな時は自分自身を追い詰めてしまう。
春子は里中に「大前さんも協力していただけますか」と言われたとき「業務時間内であれば」と答えてますが、彼女なら自ら解体ショーをやる(業務時間外になってしまう)以外の解決法も見つけられたでしょうか。

・春子に力を貸してほしいと、直接自分には関係ないのに「僕からもお願いします」と頭を下げる浅野。いい子ですねえ。
そしてさっき「マーケティング課は全面協力するから」の場にはいなかった近くんも「今日は僕も手伝いますから」と申し出る。彼は東海林に対しては腹を立ててるはずなので、やはり里中のため、なんでしょう。

・午前2時にいまだ店に詰めていた緑川店長の「ツネさんの代役ってどんな人?」と尋ねる口調が、一種躁状態な明るさから「まだ見つかってないのかよ!」の激昂へと変化。そのコントラストゆえに迫力と悲痛さが満ちている。
東海林を殴りかねない様子の緑川を止めに入る里中も「中里君」呼ばわりされても訂正できない勢いです。
そして東海林の萎れ方が、日頃偉そうな彼を見慣れているだけに何とも痛々しい。

・一人夜のオフィスで東海林が何か書き物をしていると、里中が差し入れを持って帰ってくる。
そっと書いていたものを書類?で隠す東海林。退職願なんだろうなと匂わせる(実際そうなのが後で明かされる)。
「残念、ヤキソバパンは売ってなかった」の軽口に始まり、東海林を励まし気を引き立てようとする里中。いい人ですねえ。

・朝の「カンタンテ」で春子とママが男談義。春子が里中を「顔はいいんだけど仕事できないんだよ」、東海林を「仕事はできるんだけど・・・ハケン差別者?」という評価なのは意外。
超仕事ができる春子から見ても東海林は「仕事はできる」に入るんですね。緑川店長に「東海林くんという人間は大丈夫なのか」と聞かれたときは「さあ」と答えたというのに。
そして部下に人望のない東海林より人を動かす人望はある里中の方が「仕事できない」という評価。また里中についてのプラス評価が顔の話だけで彼の人柄に触れていないのは、彼の人間性には大して興味を持ってないゆえのようにも思える。
逆に東海林については(マイナス評価なりに)人間性について言及していて、どんな意味にもせよ春子が東海林の人柄に興味を持っているのが感じられる。里中は「あの人」なのに対し東海林は「あいつ」呼ばわりなのも、嫌ってるというより屈折した親愛の情を感じます。
ママたちと話してるときの春子は会社にいるときとは別人のような柔らかい表情と口調なのが印象的。

・「カンタンテ」を訪ねてきた里中を一目見たママが「あら、あたしのタイプじゃない人」。これは失礼な(笑)。
里中が春子に会いに来たのは「解体師捜しに力を貸してくれ」かと思ったら「デパートに謝りに行くのに、店長に信頼の厚い春子に同行してほしい」だったんですね。
春子のいう通り「ハケンの私に頼むのは筋違い」なんですが、それはわかったうえで精一杯の選択だったわけですね。

・「東海林さんは辞表をポケットに入れてんだよ!あんなに会社を愛してる人いないんだ!何とか助けたいんだよ!」 
あの里中が初めて春子に(というか他人に)本気で怒鳴る。表情も涙交じりの声も台詞の内容も子供のよう、というか捨てられた子犬(これ、よく勝地くんに用いられる形容でもあります)のようでそれだけに心情に溢れているのが胸を打つ。それでも去り際に「大きな声出してすみませんでした」とママに謝る遠慮深さはやはり里中。
ママは「春ちゃん、いいの?」と尋ねますが、里中に同情しただけではなく、根は人の好い春子が里中の必死の申し出をはねつけたことで彼女自身の心に傷を残すことも心配したんじゃないでしょうか。
しかし「会社を愛してる」がゆえにハケンを差別する東海林の救済をハケンの春子に要請せざるを得ないというのもまた皮肉な。

・一人部屋で物思いにふける体の春子の携帯が鳴る。
机の上の携帯をいつにない性急さで確認する仕草に、マーケティング課の誰かからの連絡だと思ってた(解体ショーの行方が気になっている)のがうかがえます。

・集まったお客さんにマグロ解体ショーの中止を知らせ、謝りまくる東海林とマーケティング課の面々。
本当に販売二課のメンバーは誰も(「船が沈みかけたらさっさと逃げ出すわけ?」と彼らに怒った黒岩さんまで)手伝いにきてはくれないんですね。マーケティング課はハケンの美雪まで休日出勤してるのに。
それにしても部長や東海林がお客さんも見てる前でデパートの重役たちに頭下げるのはなあ。そういう事は奥でやりましょうよ。

・皆が頭下げまくる中マグロ解体ショー開催のアナウンス。もうちょっと早ければみんな無駄に頭下げずにすんだのに。
それ以前にまず誰かの携帯(二日前の夜にかけてきた美雪の番号はわかるはず)に連絡してあげないと、中止するって言ったり開催するって言ったりでお客さんが困ります。マグロの準備もあるから春子一人じゃセッティングできないだろうに・・・。
まあここからはコメディパートととして「そんなばかな」とツッコみつつ笑っておくのが正解でしょうね。

・結局春子が何とかするんだろうとは視聴者みな思ってたにしても、自らマグロをさばくというオチを当てた人はいたのだろうか(笑)。確かにツネさんと知り合いということは一緒に仕事した経験がある可能性はあったわけで・・・。
日頃無口・無愛想な春子とは対極のような対面販売でもそこはスーパーハケン、見事にやってのけます。
春子が出てきた瞬間から緑川店長ガッツポーズ入ってます。きっと以前春子がロビンソン百貨店に来たときも、こんな風に颯爽と彼を救ってくれたんでしょうね。
そして東海林ももはや悔しがるどころか穏やかな笑顔→泣き顔になっています。ここで彼にとっても春子がジャンヌ・ダルクになったんでしょうか。

・東海林が退院したツネさんに会いにやって来たとき、ツネさんは春子と話し中。春子の服装、借りた包丁を返しに来たところからすると、解体ショー当日(土曜日)の夕方らしい。
「またどっかで会おうね」という、サバサバしてるけど暖かな二人の交流、今まで見たこともないような春子の笑顔と優しい口調は、先の解体ショーと並んで、里中の言う通り自分は春子をまるで誤解していたのだと東海林に強い印象を与えたに違いない。
怪我と仕事に穴をあけたことで「もう引退時か」と気落ちしていたツネさんを春子が励ます姿は、ショーに穴をあけそうになって会社を辞める覚悟でいた自分を春子が救ってくれたことに重なったでしょうし。

・休日出勤の手当てはいらないという春子。「あれはビジネスじゃないからです」。
先に里中に「ビジネスと私情を混同させるのはやめてください」と言ったように、彼女は友達のためにやった行為を私情としてきっちり線を引いた。
そして彼女の言う友達とは、ずっと一緒にくっついている関係ではなく、普段はお互い腕一本で世を渡りつつ、まさかの時には協力しあえる関係を差すわけですね。
自分が思うのとは違う友情の形を見た里中も美雪もそれぞれが深い感慨を受けているのが表情でわかる。「以上ですが、何か?」といういつもの口癖も暖かく響きます。
この時桐島が春子と一ツ木に向ける穏やかな笑顔の間に一瞬鋭い表情になるのですが、自分の規範をかっちり持っていて金でも情でもコントロールできない春子に警戒心を感じたのでしょうか。

・「おしゃれ派閥」のメンバーに美雪は自分の心境を話して「一人で頑張ってみます」と宣言する。待たせたうえで言うんでなければもっといいんだけど。
通りすがりに美雪の言葉を聞きながらも、自分は奢り目当ての男性社員と合流して昼食に行く黒岩は、自分が持てない強さを持つ美雪に少し眩しさを覚えているようです。

・正面から春子に彼女を誤解してた、ハケンを信用してなかったことを詫びる東海林。
それはいいのだが、「部長から聞いた」と言いつつ、特別手当を断ったことしか聞いてなかった東海林はなんかとんでもない方向に誤解を。あの場に東海林がいなかったのがこんな伏線になっていたとは。
一つには相手が自分に惚れてると誤解したからこそ、こうも急激に軟化したんですね(自分のプライドが満たされる展開だから)。しかしいきなりキスまで行きますか。

(つづく)

 


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『ハケンの品格』(2)-4(注・ネタバレしてます)

2008-02-15 02:26:51 | ハケンの品格
〈第三回〉

・会議の席でマグロの販売についての主導権を巡り、水産部と大激論する東海林。
しかし「水産部は買い付けだけやってもらえますか」とはずいぶんな言い方。もうちょっと柔らかい表現があるだろうに。
この単刀直入っぷりは春子と通じるものがあるかも?

・水産部の社員とそのパソコンにお茶をかけてしまった美雪。立ち上がって手を動かしてた向こうがぶつかってきたようにも見えますが。
お茶かけられた男は、美雪の顔(美貌)を見てすっかりデレデレ。思えばこれまで美雪に惚れる男が浅野しか出てこなかったのが不思議ではある。
黒岩がそちらを見て呆れた顔をするのは、美雪の相変わらずなドジっぷりに対してか美人に弱い男心に対してか。

・美雪にお茶かけられた社員の「お茶を入れてくれたハケンさん、誰?」との問いに「大前春子さんです」と答える里中。
彼にお茶をついだのもこぼしたのも美雪なのは見ててわかってたはずなのに春子の名前しか出てこないあたり、前回のホッチキス対決以来すっかり春子に引きつけられてしまったよう。先にも桐島に注意されるほどに春子に見とれてましたしね。

・落ち込んで机につっぷす美雪に浅野が「森ちゃん・・・今度は?」とためらいがちに問いかけ曖昧な笑顔を浮かべる。
その声音や表情に「聞いていいのかな?」という迷いが表れている。日常生活の中のちょっとした感情表現の上手さはさすがです。
しかし美雪が何かやらかすのはもはや日常茶飯事なんですね。

・春子あてに間違って水産部の男どもからメールが届く。近くん人のメールを勝手に見るし読み上げるし。
そして男性陣の盛り上がりようが「あの大前さんに?」という感じでなかなかに失礼(笑)。春子もそっけない返信しつつ顔がほころんでるんですが。
しかし送信者「魚田潮」「岸野帆立」「浜田紀之」(紀→海苔)って、名前で水産部に配属決まったような人たちだ。

・「このメール全部森ちゃん宛てじゃない?」「それなら納得ですねえ」。小笠原さん正直すぎます。
「私に来たメールです!」って春子の怒り方(口の開き方)がコワい。返信の文面といい――だんだん面白い人になってきてます。いや、「くるくるパーマ」呼ばわりや大前体操に現れるように、もともとが面白い人なのか。
「余計なお世話じゃ、こら」以降の文面が気になります(笑)。

・会議が終わったところでいっせいにパソコンのメールをチェックする人々。そして「あれっ!?」って表情・・・いったい浜田さん以外の人のメールにはどんなこと書いてあったんだ。

・お昼が一人で食べられないという美雪。こういう女性って割にいるそうですね。
初日には販売二課のハケンの子たちと一緒に食べてましたが、買い出しの件で爪弾きにされてから今までどうしてたんだろう。毎日買い物忙しくて食いっぱぐれてたのか?これは少し後のシーンでコンビニのおにぎりで済ませてた(マーケティング課の部屋で?)のが判明。

・黒岩も一人で食べられない人だと見込んでお昼に誘う美雪。日頃あれだけキツいこと言われてるのにこたえてないらしいのはすごい。
そして一瞬満面の笑顔になってしまう黒岩。初めて彼女の可愛い部分を見ました。男だらけの環境でつっぱってるがために彼らの輪に馴染めず、だからと言ってハケンの女の子たちにもプライドゆえに混ざれず・・・。彼女も結構不器用な人なんでしょうね。

・エレベーター前で美雪に声をかけようとする浅野。
「食べる相手いないなら浅野くんに声かけなよ(ハケンから正社員、しかも女性から男性を誘いにくいだろうけど)」と感じつつ見てただけに、浅野くんから行くか!?と思ったら口を開きかけたところで里中に先を越されてしまう。
この「頑張って声をかけようとする→先越されてがっかり」という感情の流れが、台詞なしでも表情の動きで十二分に伝わってくる。先の「森ちゃん・・・今度は?」の場面もそうですが、こういうさりげない部分に彼の演技力を感じます。
一ツ木さんがエレベーター乗ってきた時も「また一人増えた・・・」(その分美雪との距離がなお遠くなる)って顔してます。

・春子のオフについて質問する里中。例のフラメンコ疑惑を確認したかったのかと思いきや(里中はそのつもりだったかもしれないけど)、ハケンの仕事してない時は海外放浪してるとの情報が。
「寂しくないんですかね」との美雪の疑問に「寂しいなんつーのはね人間の持つデリケートな感情だよ。一匹狼なんか感情なんかないから」と東海林は答えますが、ハケンを人扱いしないというのとは別次元で、孤高に生きる春子の人間離れした強さに敬意を抱くようになってるのが伝わってきます。

・何だかんだで春子の話題を楽しげに語る東海林。そんな東海林の姿と春子の孤独をうかがわせるプライベートに複雑な面持ちの里中。里中に自分のおかずを分けてあげる美雪。美雪と里中をちょっと寂しげに見つめる浅野。
微妙な五角関係?が社食のテーブル上に展開されています。

・里中への接近を阻むため美雪を自分たちの派閥に引き入れる女子ハケンたち。まあハンサムで人当たり柔らかく、ハケンにも丁寧な態度で接する里中がモテるのは無理からぬところ。
思えば美雪が使い走りの件で総スカン食ったのは、里中と同じ部署にいることへの嫉妬もあったんでしょうね。美雪を他の男に引っつけてしまおうというのが腹黒い。
しかし「合コンによるお婿さん探し」が主な活動内容だという彼女たち、前回黒岩が「男の気引きたくてハケンやってるのよ」と美雪を批判してましたが、その評価はこの「おしゃれ派閥」にこそ当てはまりそうです。

・「おしゃれ派閥」の子たちに髪を巻かれたことを春子に弁解する美雪を男性社員二人がへらーっとした笑顔で見ている。
冒頭部分でのメール攻勢といい、今回美雪モテまくり。社内恋愛、とくにハケンのそれについてが今回のテーマの一つだからでしょうね。

・マグロミーティングの席で東海林の意見(販売二課は全員一致でこれを支持)に、春子が挙手も振り返ることもせずに反論を述べる。しかし東海林は「出すぎたことを言うな」とは言わず彼女の意見を真剣に吟味している。
美雪や近くんハケン組もオブザーバー席ながら同席していて、前回に比べハケンの地位が格段にアップしてるのが感じられます。販売二課の女子ハケン二人がいないので、里中が同席させたいと申し出たからなんでしょうけど。

・マグロの解体ショーの魅力を力説する小笠原。それ感想だけで提案になってないよ、と内心ツッコんでたら黒岩も同様の言葉を。
しかし大先輩の小笠原に対するには失礼な口の聞き方。出世競争から脱落したロートルの小笠原が周囲から軽んじられてるのが感じられます。
対して東海林は即座にマグロの解体ショーを支持する。変わり身の早さはいかにも彼らしいが、解体ショーが春子の指摘したマグロの一般家庭での需要の高さにはまること、先日(春子のおかげで)拡大した百貨店ルートを早速利用するチャンスであることばかりでなく、二話後で明かされる小笠原への義理立てのゆえもあるのでしょう。ことさら小笠原ばかりを称揚するのは春子への嫌がらせだろうけど。

・「ザッツ・マグロ・ショー」の企画書を猛スピードで作成する春子。
この企画名って彼女が考えたんだろうか。後々繰り返し登場する東海林の文章センスの匂いがしますが。

・春子が里中に企画書を渡すと東海林が横から引ったくって内容を検討する。親しいとはいっても里中に対して失礼な行動ではある。
春子の東海林を睨むような視線(いつもだけど)、里中にだけにっこりと挨拶する動作も、東海林の無礼を咎めてるようでもある。
しかし企画書作りからマグロ解体師の手配まで、ショーの一切をマーケティング課が仕切ってる感じなんですが。本来彼らの業務は第一回のような市場調査なのでは?販売二課は何してるんだ?

・「私も先に失礼してもいいでしょうか」と断る美雪。
ハケンなのに社員と一緒に残業が当たり前みたいになってるんですね。まあ(珍しく)忙しい時ではあるんだけど。

・「森ちゃん、何であんなケバいグループに入ったんでしょうかね」とボヤく浅野。そりゃ孤高を貫く春子以外のハケンと固まろうとしたらあの子らしかいないからですが。
美雪が合コンとか行くの、誰かに取られちゃいそうで嫌なんでしょうね。

・無駄話してる浅野と小笠原の間に割り込むように小笠原に仕事を頼む里中。彼にしては意外と押しの強い行動。ほっとくといつまでも遊んでそうですからね小笠原さん。
「ががががくーん」となる小笠原さんを浅野くんがちょっと支えるようにする。この二人のやりとりは、おじいちゃんと孫みたいでなんか微笑ましいですね。

・エレベーターで春子に合コンについての話をふるハケン女子たち。何と大胆な(笑)。
「昔?」と春子の声の尖る春。男も女も関係ないスタンス(彼女くらいスキルが突出してると本当に関係ない)で仕事する春子ですが、女として終わってる扱いされるのは一応不本意らしい。これも女心か。

・合コン中に「マグロの神様」ツネさんを偶然発見する美雪。
内心退屈してたんでしょうが、周囲に対する目の配り方やネットで見たツネさんの顔をちゃんと覚えてるなど、存外彼女は優秀な職業人の資質は持っていそう。
すぐにツネさん発見を春子たちに知らせ目下の業務に繋げようとするのも。ツネさんとの遭遇は偶然でもそれをビジネスチャンスに変えたのは彼女自身。
しかしマグロ解体師ってああやってファンがついて「囲む会」やっちゃったりするもんなんですかね。

・「あの子(春子)は店長にコネがあるみたいだから、そこを上手く使え」と言う桐島に素直に「わかりました」と返す里中と「俺はごめんですね」と返す東海林。
春子を立てようとする人の良さが理由にせよハケンの能力を引き出せる(彼のために働きたいと思わせる)里中と、道具と切り捨てられず人間として認識してるがゆえに春子に意地になり、さらにはこれまでも多くのハケンが辞めていく原因を作ってきた東海林のどちらを、桐島は内心で評価していたでしょうか。

・「ハケンは赤の他人ですよ。(中略)俺、家族と仕事したいんですよ。」 第一回のラストに続いて東海林がハケンに反発する心情を吐露する。
入社式の時のエピソードなど、東海林が桐島をヨイショするのも、実は本心なのかもしれないなと感じさせます。根はかなりレトロな男なのですよね。
逆に優しすぎるのが玉の瑕のような里中の方が、目の前にいるハケンを受け入れ一緒にいい仕事をしていこうとする意味で、時代の変化を認めまいとする東海林より合理主義者といえるのかも。
このシーン、語る東海林たちを映すアングルからカメラが下がっていって、カウンター下で話を聞いている春子を捉える。春子が今はまだまだ天敵と言ってもよい東海林の心情を知り、咀嚼しているのがわかりやすく示されている。

(つづく)

p.s. 現在発売中の雑誌『CM NOW』の「春薫る スウィートスウィート 新作6CM」という特集でキットカットCM撮影のメイキングが載っています。勝地くんが写ってる写真は一枚だけですが、かなーり格好良いです♪ 一応お知らせ。

 


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『ハケンの品格』(2)-3(注・ネタバレしてます)

2008-02-12 01:57:04 | ハケンの品格
〈第二回〉

・すっかり自分になついてしまった美雪に「毛糸のパンツに先輩よばわりされる覚えはありません」と言い渡す春子。でもどこかこれまでに比べて口調に柔らかさがある。言葉の内容も何か面白いし。
彼女のクールになりきれない部分が、結局周囲の人間を引き付けてしまうのですね。

・昨夜「カンタンテ」で見た春子の姿を思い返して困惑の度を深める東海林と里中。二人が目を見合わせて頷きあうのは・・・「見なかったことにしよう」と暗黙のうちに了解しあった、ということでしょうか。
直後東海林は桐島に「大変結構なものを見させていただきまして・・・」と言うが、「結構なもの」=「シュールなもの」なわけですね。

・なぜか不機嫌な様子の桐島。これはラストでコーヒーサーバーを壊したからだとわかります。「故障中」とか張り紙してくれればいいのに人騒がせな。
八つ当たり気味の不機嫌さ(しかもこんな理由で)も上に立つものとしてどうかなあ。

・「おはようございます。里中主任」とにっこり里中にだけ挨拶する春子にカチーンとくる東海林。里中はちゃんと「大前さん」と名前を呼んで挨拶したのに東海林は挨拶してないんだから自分には挨拶しないと怒るのは筋が違うんだが。
しかし春子、里中の方から挨拶しなければどちらにも挨拶なしで「どいてください」のまま行き過ぎるつもりだったのか。それもちょっとなあ。

・始業前の「大前体操」が初登場。体操することがどうというより、あの春子が無表情にやってるところがユーモラス。
先のシーンで東海林が里中を盾にするように歩いてるのは何だろうと思ったら、ここで春子の前に突き飛ばす。なるほど里中に昨夜の事を聞かせようという・・・。

・「オーレ!」「楽しそうですね」「何だその冷ややかなリアクション」「そんなに構ってほしいんですか」 
言い争ってはいても前回のような本当に険悪な感じではなく痴話喧嘩めいた雰囲気。春子も何とかいいつつちゃんと返事してるし。

・「この人怒らせるとクレーンで吊り上げられちゃいますよ」「大前さん目的のためには手段を選びませんから」 
小笠原と浅野が微妙に春子シンパになってるのが笑えます。前回の衝撃が「この人はすごい!」と意識下にまで刷り込まれちゃったんでしょうねえ。

・美雪を相手にホッチキスの薀蓄を語り出す東海林。うわーウザい(笑)。ホッチキスのしかるべき留め方知らなかったくらいで「ハケンの教育はハケンさんがしっかりやってもらわないと」なんて言っちゃうのも(春子にこれ言うのは地雷発言だ)。
「仕事はできる」設定の東海林主任、よその課に来て薀蓄傾ける間に仕事しようよ。

・いろいろなホッチキスの打ち方を実践した後、「これが壁打ち」とギャグをかます東海林に「面白ーい!」と笑顔で手を叩く美雪に、『ソウルトレイン』の「白い女」(加藤あい似)を連想してしまった。

・東海林の壁打ちギャグに真面目に「ちがーう!」と突っ込む春子。「私には関わりございません」「~ですが、何か?」が決まり文句の春子が東海林に対しては何かとムキになる。
「おいそこのハケン!」「お前」呼ばわりでも春子に正面から突っかかってくる東海林は、おそらくは本人も無意識に春子をちゃんと作業機械ではなく人として認めている。
だから春子もつい彼女の思い描く「ハケンの領分」を越えて一人の人間として彼に対峙してしまうのでしょう。

・目をかっと見開いたままホッチキスを構えて東海林に迫り、壁に紙を打ち付ける春子がすごい迫力。特に歯をむくところは怖すぎ。
そのままのテンションで壁打ちについて課のメンバーに説明をはじめる春子。実は結構東海林と似た者同士か。みんな気を呑まれて頷いてます。

・「スーパーハケン大前春子がなぜ非正社員の道を選んだかは 定かでない」 
このナレーションもろに『木枯し紋次郎』。語りが田口トモロヲさんなのは『プロジェクトX』風を狙ったものか。

・「君、そこのとっくりセーターの君」 ことさら名前で呼ぶまいとする東海林の意地の張り方が面白い。春子の東海林と里中に対する態度の違いっぷりも笑いを誘う。
里中の「今日はうちの課暇だから」というセリフには「いつもじゃん?」とツッコみたくなった。

・「こういう偉そうなの連れてるとねこっちにもハクがついて商談有利に進められる」とか言って春子を借りてきた東海林が、「余計なことはするな」だの「営業なんだから笑え」だのと注意を与える。
無愛想で部長クラスにも歯に衣着せず物を言う春子を連れてくるのって結構危険では。少なくとも東海林はそう思ってるのにあえて連れてきたのは、出がけに里中に言ったように「あの女に俺の営業力見せつけてやる」のが真の目的なんでしょう。
要は彼女にいい格好を見せたいわけで、つまりは・・・。

・異常な早足で歩きながら「正社員さん」「東海林主任だ」と言い合う二人。もはや漫才コンビですな。

・コーヒーサーバー(の部品)を壊してしまった美雪(実はもともと壊したのは桐島)の、「弁償する」と言う言葉尻をとらえて「三回払いにしなさい」など嫌味な口調で責め立てる黒岩。
普通会社の備品を壊したといって従業員(正社員・派遣問わず)が弁償するケースはまずないように思うので、それわかったうえでの黒岩さんの森ちゃんイジメ?
でも一ツ木さんも小笠原さんも美雪が弁償するのが当たり前のように話を進めていたし・・・?

・落ち込む美雪に声をかける浅野。これ「メカに強い」浅野的にいい格好みせるチャンスだったんだけどなあ。「森ちゃん、また何かやっちゃったみたいですよ」とみなに状況を説明して済ませちゃってるのが彼の(恋する男として)ダメなところ。
部品が破損しちゃってるので最終的には直せないだろうけど、もうちょっと親身になってみせないと。
「わたしのコーヒーは?」の小笠原さんもひどいけど。

・このタイミングで「パソコンに強いハケン」近くん(上地雄輔さん)初登場。
指をキツネ(影絵の)形にしてぱたぱたやってみせるのはキツネの鳴き声「コン」と自分の名字「コン」をかけてるんですね。
勝地くんと上地さんはもともと仲良しだったそうで、よく撮影現場で変顔などして遊んでたそうです。上地さんと小栗旬くんも親しいようなので「上腕二頭筋」(勝地くんや小栗くんの所属する草野球チーム)つながりなのかも。

・近くんとチェンジして辞めさせられるのでは、と脅える美雪に対する一ツ木さんのアドバイスは・・・「キャラ立ちするハケンを目指してください」。
聞いてみればこれはこれで筋の通った意見なのだが、「キャラ立ち」という表現で思わず笑ってしまった。

・「ようじ屋」でちゃっかり春子の前に座って一人話しはじめる小笠原。
単なる自分語りかと思えば、時給3000円の春子に貧乏人の美雪を救済してやってほしいと頼みに来た模様。やっぱりいい人だ。自分の懐を痛める気はないようだけど(嘱託の給料なら15万くらい払えるだろうに)。

・春子は男性社員に頼まれるままコーヒーを買いに行こうとする美雪に「やめなさい」と言う。
本来の彼女からすればおせっかいな部類の言葉なんでしょうが、他のハケン女子のように美雪の行為がハケン全体の立場に影響するのを案じてるのでなく(それこそ春子ほど「キャラ立ち」していれば影響など皆無)、美雪自身のことを心配してるのだろう。
美雪に「大丈夫?」と声をかけた里中にすれ違いざま最近にない冷ややかな目を向けるのは、自分の部下が他の部署の雑用に使われるのを防げない里中の不甲斐なさを責めてるのかな。

・買ってきたコーヒー類を手渡すとき、美雪は「アズマさん」とちゃんと名前を呼ぶ。
美雪が一緒に働くメンバー以外の社員の名前も覚えている(大して記憶力がいいとも思えないので覚える努力をしたんじゃないか)のに対して、「アズマさん」の呼びかけは「君」。仕事のスキルはまだアレでも人間として美雪の方が上等ですね。

・春子の後をつけて「カンタンテ」へやってきた美雪。すでに19人からこうして訪ねてきてるそうなので、結構春子は行く先々で悩めるハケンの子に慕われたりしてるよう。
中には後の誕生日カードの寄せ書きの時のように、春子を泣かせてしまうような相手もいたのでしょうか・・・。

・リュートについでもらってお酒飲みつつ愚痴をこぼす美雪。15万円の借金がありながら高そうなお酒飲んでていいのか?「迷える子羊」ちゃんだからお店のおごりなのかな。

・男の子がUFOキャッチャーで苦戦するのにアドバイスしてぬいぐるみを取らせてあげる春子。根はかなりおせっかい焼きの親切さんなんでしょうね。それを見抜くからこそ美雪を含めて20人も彼女を慕ってくるわけで。
そして春子に「ありがとうお姉さん」とお礼をいう男の子。「おばさん」と言わなかったあたり懸命です。

・「ママー、おみやげー」 店に入ってきた春子は実にいい笑顔をしている。美雪が昔の自分に似てると言われて「えー!?」という表情も会社にいる時では考えられないほど生き生きしている。
昔の春子が真っ直ぐはいいとして「ぶきっちょ」だったとは意外。ぶきっちょとかってそうそう直るもんじゃないし。
まあ今でも人間関係には相当不器用な気もしますが。器用な人間だったらもっと周囲に波風立てず上手に他人を利用しつつしがらみを避けてゆけるはず。春子はむしろその能力を他人に当てにされる―利用される側。ある意味割に合わない生き方。
それでも最終的に他人の世話を焼いてしまうのは・・・まあお人良しなんですね。

・春子の住処について「誰かに言ったら、ぶっとばすわよ」 
言葉よりむしろあの春子が微笑んでるのがコワい(笑)。美雪も一発でビビるわけです。

・会社のLAN?のシステムの甘さを近くんが指摘したそばから、春子が作成済みのシステム管理部あて警告書を出してくる。近くんとしては自分の存在意義を疑問に思ってしまった瞬間じゃないだろうか。

・体よくハケン(近くんと春子)の手柄を取り上げ、美雪にヤキソバパンの買い出しを言いつける東海林。出たヤキソバパン。ハケンの敵・東海林主任の面目躍如?の場面。
しかし美雪、本来の業務って暇なのか。

・美雪が近くを通るとき、ハケンの女子二人がちょっと脇によける。よける必要ない距離なのに。そこに美雪を爪弾きする彼女たちの気分が集約されている。

・男性社員の使い走りにされている美雪に春子がお説教。
「みじめな仕事を断れない自分に言い訳してるだけでしょ。(中略)このままずーっとお使いハケンやってなさい」という春子ですが、彼女は後で黒岩が言うように「目立つことやって自分の時給が上がればそれでいい」―雑用自体を拒否してるわけじゃない。
雑用仕事の代名詞のように言われるお茶くみは業務の一貫として引き受けるし、それも飲んだ人を瞠目させるような美味しいお茶を入れる。
雑用仕事を雑用に終わらせず、ちゃんと「彼女ならではの仕事」にしている。ホッチキス打ちにしても同様。
与えられた業務を唯々諾々とやらされているだけの「みじめな仕事」にするかどうかは、自分のスキルと仕事に向かう態度次第なのですよね。

・ロビンソン百貨店の緑川店長(渡辺いっけいさん)からの電話(東海林の仕事ミスに対する苦情)が東海林でなく春子あてで来たことから事態が紛糾。
春子の態度が自分の顔を潰すものと東海林は激昂し、他の社員たちも「何様のつもりだ」と春子に腹を立てる。
しかしもともと春子をロビンソンに連れていったのは東海林だし、東海林より春子を歓待したのは緑川店長自身の意思。春子の方から自分を売り込んだわけではない。
この電話の応対についても春子の言う通り、彼女は電話に出ただけ。まあ普通なら途中で電話を保留にして東海林に事情を説明し、東海林自身から緑川に謝罪させる形を取るでしょうが、そもそも担当の東海林でなく春子あてに電話が来たこと自体が緑川の東海林に対する強い不信感を示しているわけだから(それにしても破格ではある)、緑川に信用のある春子が仕切った方が相手の信頼を得るには有効、と考えたんでしょう。

・「ハケンが、会社の利益考えてるわけないでしょ。なーんか目立つことやって自分の時給が上がればそれでいいんだから」という黒岩の台詞はさすがにひどい。
春子の独断専行に頭に来たにせよ、他のハケンもいる場所でこういう事を口にするのは、人(ハケン)を使う側の人間としては完全に不適格。「ハケンは人じゃない」と思ってるから?
黒岩の場合東海林と違ってハケンを嫌う理由が描かれていないので、単に高飛車なイヤな女に見えてしまうのが損ですね。
この台詞に先立って里中が、彼としては大分強い語調で「黒岩さん!」と彼女をたしなめてますが、続く「大前さんは販売二課のためを思って」という台詞は春子の真意を理解してのことか当り障りのないなだめ文句なのか。

・「黙れとっくり」「失敗はくるくるパーマだけにしてください」。毎度の掛け合いで緊張感をちょこっと緩和。
「これは天パだ!」と春子だけでなくフロアの皆にまでアピールするような東海林が可笑しい。

・先には男性社員に命ぜられるまま煙草などを買いに行く美雪を「男の気引きたくてハケンやってるのよ」とくさしていた黒岩がここでは「あなたが(サーバーを)壊したんだから、(コーヒーを)買ってきなさいよ」と言い出す。どうしろというのだ。

・春子が(他のハケンとともに)頼まれた書類のホッチキス留めの仕事を「俺がこのハケンさんに手本見せますよ。」と買ってでる東海林。
「手本はいいから仕事してよ仕事」という桐島部長。全くの正論です・・・。

・春子と東海林のホッチキス対決。マーケティング課のメンバーも含めて正社員は東海林側、ハケンは春子側に立っている。
マーケティング課の美雪、近くんは当然としても(美雪は春子を先輩と慕ってるし、近くんは先に東海林に手柄を横取りされたのを頭に来てる)、女子ハケン二人もこちらサイドに。
販売二課所属の彼女たちは春子側についちゃうと今後立場が微妙になる気もするけれど、東海林や黒岩にあそこまでハケンを罵られたあとですからね。
そして里中が春子サイドと東海林サイドの境目に立ってるのが彼らしい(一応顔は東海林向き)。
それにしてもフロア中あげてのこの騒ぎ。仕事しようよ。

・「向こう30年、俺の前でホッチキス持てなくしてやる」などという東海林。30年後も春子と付き合いあるつもりなのか。

・東海林の仕事が次第に雑になってきてるのに気づく里中。バラける事はなくても書類を受け取った人は「雑な留め方」と思うでしょうね。
全社員に配られるものなわけだから、事情を知らない営業二課&マーケティング課以外の人間にとっては何だこれ状態。会社全体にとっては不利益(大したレベルじゃないとはいえ)にしかならない対決ですねえ。

・対決中、ちらりと東海林側の書類の束の黄色い仕切りの紙に目をやる春子。
あれで東海林の進み具合を確認し、ぎりぎりのところで負ける(他のハケンの立場も背負ってるので僅差で負けないといけない)よう調整しているのがわかる。
この余裕を見ても、実質春子の圧勝ですね。

・「大前くん、負けたの?」と意外そうな声の桐島。東海林の負けを確信してたのか(笑)。

・勝負に敗れた春子は東海林にも大人しく頭を下げ、資料を配布に行った先で「ハケンさん」と呼ばれても言い返さず穏やかに流す。
まあハケンとしても一職員としても普通の姿ではあるんですけど、あの春子だけに美雪じゃなくても何だか物悲しくなります。
彼女がわざと負けたことは後で明かされるわけですけどね。

・「春子先輩にも勝ってほしかったです。春子先輩の敗北は私の未来の敗北です。」とは勝手な言い草。
一部の差なんだから、美雪が書類落とさなければ勝つか引き分けだったタイミング、つまりは美雪のせいとも言えるのに(実はわざと負けなのでそれがなくてもちゃんと負けたはずだけど)。

・「どうしてわざと負けたんですか。」と春子に問う里中。その口調は静かだけど絶対答えを引き出してみせるという決意がある。
普段優柔不断で弱弱しく見える里中ですが、ここと思うところでは絶対引かない。春子がわざと負けたのを見極める眼力もある。
上手く伸びてゆけば案外人の上に立つには適しているのかもしれません。

・「正社員のプライドを傷つけても私は少しも嬉しくありません。」「あの場を収めるのに他に方法がありましたか?」 
ホッチキス対決を受けた(そしてわざと負けた)ことで春子は損こそすれ何も得てはいない(勝ったところで他のハケンはともかく春子にメリットはなさそうだけど)。里中の台詞のように「販売二課の(周囲の)ためを思って」の行動ですね。
「(個人のプライドより大事なのは)ハケンとして生きていくことです。そのためには面子やプライドを重んじる正社員とも上手く共存していかねばなりません。」と春子は言うけれど、仕事を得るためにプライドは捨てる、という意味でなく、眉子ママが話したように「ハケンの仕事には誇りを持ってる」彼女には「ハケンの分を守ることが職業人としての自分のプライド」なのでしょう。
でなければ三ヶ月で去ってゆく(契約更新はしない)彼女は「正社員との共存」を「自分のスキルに対する評価」(勝負に負けたことで多少下がったはず)より優先する必要はないはずだし。

・春子のホッチキス技術に感服する東海林が一言、「気をつけろ賢ちゃん、こりゃ到底お前の手に負える女じゃねえぞ」。
暗に「自分の手になら負える」と言ってるようでもある・・・。

・翌朝エレベーターで春子と遭遇した東海林の「挨拶くらいしたらどうなんだ、大前さん」という言葉に、春子は「おはようございます、東海林主任」と穏やかに微笑む。
東海林が春子に笑顔を向けられたのは初めてなのでは。マーケティング課のメンバーでも里中以外で春子に微笑みかけられた人間ていない気がする(美雪は「ぶっとばすわよ」の脅し文句とともになら微笑みかけられたことあり)。
そんな春子に向ける東海林の表情にもこれまでにない畏敬の念とほのかな切なさがあるように思いました。

・コーヒーサーバーを壊したのが桐島部長だったことが発覚。それを聞いて美雪はともかく、里中・浅野・小笠原まで部長の机にわらわら寄ってくる。
そして我が事のように喜ぶ面々。販売二課とは対照的にマーケティング課ではハケンも仲間の一人なのがよく伝わってきます。
そして浅野が満面の笑顔なのですね。うん、いい子だ。

・「桐島部長が壊したコーヒーサーバー、直りましたよ」と、なんと浅野がコーヒーを全員分入れてくる。これまで当然のように(主として販売二課の連中にだけど)お使い役をやらされてた美雪にもちゃんとコーヒーを配ってくれる。
そういや美雪がパシリやらされてた時期にも、先輩たちの手前を慮ってかかばいこそしないものの浅野くんが美雪に用を頼んだことってなかったですね。わざわざ「桐島部長が壊した」と表現するのも含め・・・やっぱりいい子だ。
もちろん浅野個人の問題でなく、美雪が勇気を出してお使い拒否したこと、春子が僅差で敗れたとはいえ正社員と対等に戦ってみせたことが、フロア全体のハケンに対する見方を変えたのを象徴してるのでしょうが。
表面的には勝ったものの出来も含めれば春子の勝ちだと感じた東海林が居丈高な態度に出なくなった(エレベーターでの態度からの推測)せいもあるのかもしれません。

・「森ちゃん募金箱」の存在をバラされる浅野くん。確かに入社一年目の給料(意外に高給取りとはいえ)で15万円肩代わりはきついだろうけど・・・発想が何とも可愛らしい。
いっそ思い切って15万円貸しちゃって「返済は15回払いで」ってことにすれば、3ヶ月経って美雪が会社を離れたあとも、手渡し返済を口実に会えるのに。
そういうこすい事を思いつかないのが浅野くんの良さなんでしょうが。

・「今日は一段と寒いから、買い物なんか絶っ対断らなきゃダメだよ」。先には美雪がパシリに使われるのをかばえなかった里中が、彼女がパシリを抜け出すのを後押しする。
買い物を頼みに来る連中を里中がシャットアウトするのでなく美雪の口から断らせようとするのも、ただかばうのでなく、彼女が自分の力で強くなっていくのを見守る、という考えのように響きます。
しかし浅野は里中主任に美味しいとこ全部持ってかれちゃうなあ・・・。

・美雪が毛糸のパンツを愛用してるのを春子がさらっとバラす。意外なデリカシーのなさ。浅野くんがリアクションに困ってるじゃないか(笑)。
美雪が「先輩にだけ教える」と言ってたってのに。それとも春子のことだから何か深謀遠慮があったりするのか?そもそも春子がこういう全くの無駄口を利くこと自体珍しい。

・「春子先輩みたいなハケンには絶対になりませんから!」(この時の口調と表情がえらくキュート)と(多分に誤解に基づいて)宣言する美雪の言葉に春子はなぜか微笑んでいる。
これは「自分のようなハケンを目指すのでなく、あなたにしかなれないハケンになりなさい」という春子のエールと受け取ったんですが、どうでしょう?

(つづく)

 


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『ハケンの品格』(2)-2(注・ネタバレしてます)

2008-02-08 02:11:11 | ハケンの品格
・桐島のデスクへやってきた春子は、書類を片手で無造作に差し出す動作から発言の一つ一つまで無礼といっていいほどにそっけない。
それは「自分は名(上っ面の礼儀)ではなく実(仕事の成果)をこそ重んじる。企業もハケンを雇うのは本来実を求めてのことなのだから、名まで要求するな」という理念=春子にとってのあるべきハケンの姿を、自身の言動の一切をもって周囲に示していこうという意志の表れなのでしょう。
そして桐島が春子の態度に不快な様子を全く見せず、「許せませんよあの女」と言った東海林に「人件費削減のためにハケンを使う、これ企業の常識。三ヶ月だよ」と言い切るのは、彼がまさにハケンに実しか求めてない、ハケンを作業機械と見なしているから。
だから内心は一人の人間としてムッとする部分があってもハケンを使う「企業人」としてそのへんの感情は押し殺す。
彼の方が春子にストレートに腹を立てる東海林よりずっと、ハケンをモノとしか見ていないのですよね。奥さん元ハケンなのに。

・東海林は一ツ木に電話をかけて春子についての苦情をいい、「あんたのとこからハケンとるのもうやめようかな」と脅しをかける。
本来人事部でない東海林に、春子の処遇についてはまだしも(それだって直属の上司ではない)ハケン全般の雇用について仕切る権限などないはず。
人事部にそれなりの影響力はもってそうだけど(元人事部だし)直接一ツ木さんに電話するというのは、ドラマ的にわかりやすく見せようという意図と、あとは「TEAM-NACS」ファンへのサービスですかね。

・「カンタンテ」での春子は、会社にいる時とはうってかわった穏やかな笑顔を眉子ママ(白川由美さん)やリュート(城田優くん)に向ける。窓から入る柔らかな朝の光も春子の心持ちを象徴しているよう。
「また三ヶ月、ご厄介になります」との言葉通り、「契約が切れたら、サヨナラ」の派遣先と違い、ここは彼女の帰る場所なのですよね。
でも盛り付けたパエリアを下で一緒に食べず自室に持って上がるあたり、どこか彼女たちにも距離を置く部分があるのかな、という気もします。

・美雪を呼び出して彼女の作った書類を「全部うちのハケンにやり直しをさせました」と告げる黒岩の向こうで、ハケンの竹井瞳(清水由紀さん)が小馬鹿にしたような表情で美雪の方を見て、聞こえよがしに書類をデスクでトンとやって端を揃える。地味に上手いお芝居。
「一応部長にも報告しといたからね~」という黒岩さんの語尾の優しげな響きも嫌味が聞いていて恐ろしい。部屋の戸口近くで聞いている浅野くん、遠くて表情はわかりませんがきっと心配そうな顔してるんだろうな。

・春子に美雪を手伝ってあげてほしいと申し出て断られた里中の「手伝いたくない、ということですか」「もういいです」の言い方に人の良い彼なりに春子にイラッと来てるのが出ている。
一言「業務命令です」ときっぱり言い切れば作業機械としてのハケンに徹すると決めている春子は従ったはず。春子もある意味上司として自分を使いこなせるか里中を測っているのかも。

・6時の終業間際、席を立つ前にちょっと隣の美雪の方を気遣わしげに見つめる春子。この一瞬だけの表情に、彼女がハケンとして生きるにあたって封印し(ようとし)てきた情がこもっている。

・エレベーターでの春子と桐島のやりとり。ハケンをモノのごとくに割り切っている桐島が、ここでは春子の情に訴えかけるような言い方をする。
「ハケン」に徹しようとしてる春子への試し、というか一連の無礼な態度が内心癪に障っててちょっと意地悪言ってみた感じかな。
結局相変わらずきっぱりと言い返されて「言うねえ君も」と苦笑するわけですが。

・このエレベーターの会話で春子の方も「ハケンにハケンの面倒を見させようとする」社員にイラッと来てたのがわかる。
ただ里中の場合、ハケンに面倒事を押し付けようとしたのでなく、単に春子のスキルが一番高かったから春子に頼んだだけで、例えば浅野の方がパソコン入力のスキルが上だったら(彼は設定上はメカに強いことになっている)、浅野に頼んでたでしょう。
そうした「ハケンを作業機械でなく一チームメイトと見なしている」(歓迎会をしようとするとかの表面的なことだけでなく本心から)里中の性格を春子が了解するのはもう少し先のこと。

・カレンダーの日付に斜線を引きながら「あと75日か~・・・」と呟く春子。誰にも心を開かず作業機械に徹するような日々が楽しいはずもなく・・・。
自ら最良と信じて選んだ生き方でしょうが、彼女の憂鬱が伝わってきます。

・タクシーでS&F社近くに乗りつけた美雪に黒岩の嫌味が数連発。これだけ言われてもムッとした顔をせず素直に応対してる美雪は、性格的には本当いい子なんですよね。
逆に黒岩さんの態度はお局様丸出しでかなりヤな感じ。まあ男に交じってバリバリと責任ある仕事をこなすキャリアウーマンを自負してる彼女にとっては、ハケンの女の子たちの「とりあえず楽に仕事してお金もらえればいい」的な言動が気に入らないんでしょう。
美雪は本人としては真面目にやってるわけですが、黒岩さん的には「本当に仕事やる気があったら大学時代に相応のスキルを身に付けてるはずでしょ!」って感じなんじゃないかな。

・美雪が書類とデータの入ったディスクをタクシーに置き忘れたことでマーケティング課は大パニックに。
美雪と浅野が手分けせずに一緒にタクシー会社を回ってるのは非効率ではありますが、動揺しまくってる美雪を一人で行動させるのも危険な気はします。浅野に「次行こう」って促されたときも半ば自失状態に見えましたし。

・文書紛失の責任問題をうんぬんする東海林たち。東海林と黒岩は部署が違うので直接関係はないのですが(マーケティング課は販売二課から枝分かれしたようなので無関係ともいえないけど)、同僚の里中を心配して、ということでしょう。
この状況で黙々と仕事を続けている春子(実は美雪が紛失した分の書類を作っている・・・のかと思ったら全然違ってましたね)を東海林たちは責めるのだが、何とかして会議に書類を間に合わせる努力も目前の仕事も放棄して、間に合わなかった時の事後処理ばかりに気持ちが行っている東海林たちより、彼女の方がはるかに建設的にも思える。

・春子を罵倒する東海林を止めに入り、「お願いします。力になってください」と頭を下げる里中。
機械に頭を下げる人間はいない。「あなたたちは、ハケンを人と思ってるんですか」と社員を批判した春子はこうした里中の言動を、自分を口先だけでなく心から人として遇しているがゆえのものと認めたから彼のため動く気になったのですね。

・書類を置いて部屋を出て行く春子を見て、小笠原は「12時だから昼飯食いに行っちゃったのか」と考えるが、いつも春子が席を立つのは時報ちょうどの時間。
時報がなる数秒前に部屋を出たのは、業務時間内の行動=食事に行ったのではないのを示唆している。

・春子がS&F社を出たところで擦れ違ったタクシーをスローモーションで映し、さらにそれを凝視する春子のカット。先に春子はタクシーで出勤する美雪を目撃しているので、タクシーの柄が同じなのを見て一発でタクシー会社を特定したのがわかります。
そしてやはり美雪が出勤するのを見ている(それも春子のような信号待ちの数秒ではなく中の美雪に話しかけてもいる)黒岩はそれがどこのタクシーか覚えていなかった(覚えていれば当然里中に知らせるはず)。
つい数日前にハケンで来た春子と違い、黒岩は会社の近所を走っているこの会社のタクシーを見慣れているはずなのに。このへんに春子と黒岩の優劣が表れています。

・「タクシー、廃車されちゃったんです。」 多くの視聴者が「配車?歯医者?」と耳を疑ったらしい驚きの展開。即日廃車?現場検証とかは?
「森ちゃんが降りてすぐトラックに追突されて、それで運転手は病院に・・・」ってどれだけ不運なんだ。
ここまでの、職欲しさに自分のスキルを偽ったけど能力が追いつかずすぐ発覚したり、終わらない仕事をこっそり家に持ち帰ったり、重要データを紛失したり、という流れは我が身に置き換えて胸が痛かった人もいただろうと思うんですが、この超展開で一気にふっとんだんじゃなかろうか。
視聴者が真剣になりすぎないようにあえて極端なストーリーにしたんでしょうね。里中の「まだスクラップされてないなら希望を持とう」のセリフにも思わず笑ってしまった。

・書類とディスクを取り戻すべく廃車群をよじ登ろうとして転落する美雪。
男性陣三人が駆け寄るものの抱き起こしたのは里中と小笠原。浅野は今後もこういう局面でかならず出遅れてしまう。気の毒な。

・なんとクレーンを運転して登場する春子。タクシー会社を一発で特定した彼女はまずイーグルタクシーに電話して浅野に前後して状況を把握、どこからかクレーン車を借り出してきた、という流れでしょう。
「美雪が無くした分の書類を代わりに超短時間で仕上げる」というこちらのストーリー予測のはるか斜め上を行ってくれました。

・問題のタクシーを無事降ろしたあと一人クレーンを操縦して去ってゆく春子。「あっしには関わりのねえことでござんす」と言いつつ事件を解決し、その後どこへともなく去ってゆく木枯し紋次郎のごとく。
まあ春子はお昼ごはんに行っただけで、当面は休憩終われば会社に戻ってくるんですけど。

・「ようじ屋」で昼食をとりつつ自分について語る美雪。
就職試験に23社落ちたのは不況下ではそう珍しくないが、大学卒業からたかだか8か月の間にいろんなバイトを転々としたというのは、やはりしょっちゅう失敗やらかしてはクビになってたんだろうか。

・「日本中の会社が潰れようと私は大丈夫。ハケンが信じるのは自分と時給だけ。生きていく技術とスキルさえあれば自分の生きたいように生きていける」。
これは実際に自分が正社員だった昔にリストラを経験した(ことが回想シーンで暗示されている)経験から来る信念ですね。
でも淡々とした抑揚のない口調と無表情は、この言葉を自分自身に(周囲の情に流されないために)言い聞かせようとしてるようにも思えます。
日本中の会社が潰れたら雇ってくれるところがないような気もするけど・・・そしたら海外行くか。

・会社に帰ってきた美雪に向けられるフロアの皆の視線。まさに針のムシロと言う感じ。
でもいつにない厳しい表情で前を見て歩く美雪には、春子の言葉を受けて自分に出来るせいいっぱいをしようとする意志が漲っています。

・とはいえ、あれだけのことをしておいて「もう一度チャンスを下さい!」と言った美雪には驚いた。「上には黙っておきます」とあっさり不問にしてしまった里中にも。
確かに上に知れると里中の監督責任にもなりかねないから彼としても黙っといたほうがいいんだけど(里中のことだからそうした計算ではなく純粋に美雪をかばったぽいですが)。
しかし上に黙ってようにもフロア中が知ってるんだけどなあ。

・東海林のハケン嫌いの理由が明らかに。リストラされていった先輩たちを惜しめばこそ、彼らの位置に取って代わったハケンを許せない、と。
本来彼が怒るべきは先輩たちのリストラと代わりにハケンを採用する方針を決めた上層部なんですけどね。彼が腹を立てている春子だってリストラされてハケンになったことが暗示されているし、東海林の先輩たちも今はどこかでハケンとして働いているかもしれないわけで。
ここで東海林の仕事仲間に対する情の深さが示される。その情は里中にも共通なのだが、ハケンを仕事仲間に含めるか含めないかが二人の大きな違い。やがてその違いが二人の立場を大きく変えてゆくことになります。

・マーケティング課の初プレゼンは米の市場調査に関するもの。
ここで米がテーマだったこと(ここで米への関心が喚起された?)が、後の「ハケン弁当」と込みで里中が企画した「マイ弁当箱」(米から作ったプラスティック使用)につながってゆくわけですね。

・一人お茶を飲みながらかすかに口元に微笑みを浮かべる春子。日頃セーブしている「情」が一瞬にじみ出た場面でしょうか。

・「カンタンテ」でフラメンコを踊る春子に驚愕する東海林と里中。視聴者も一緒に驚愕。
驚きのあまり口も目も見開いたまま東海林の腕を激しくゆする里中とただ呆然とステージを凝視する東海林のどちらの方がよりショックが強かったやら。
桐島は春子がこの店に住んでること、彼女がここで踊ってることを承知の上で二人を連れてきたんですよね。
どういういきさつで彼がそれを知ったのか(目をつぶってフラメンコにノリノリだったことからすると、最初は本当にフラメンコ目当てでやってきて偶然知った?)、どんな思惑で東海林たちに春子のプライベートをバラしたのか。部長も謎が多い。

(つづく)

 


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『ハケンの品格』(2)-1(注・ネタバレしてます)

2008-02-05 02:02:57 | ハケンの品格
〈第一回〉

・いきなりスペイン・アンダルシアの草原で楽しげに歌い踊る人々の姿から物語が始まるのに驚いた。
このあとしばらく春子(篠原涼子さん)は非常識なまでにクールな顔ばかり見せることになるので、導入部の時点で本当の彼女は笑顔の素敵な、友人も多い女性だということを示すためですね。

・つづいて森美雪(加藤あいさん)が実家の母と電話する場面。
ストーリー的には派遣会社に登録する場面から始めてもいいところを、春子同様最初に彼女のバックボーン―プライベートの人間関係を出しておくことで、作品の語り手ともいうべき美雪に視聴者が感情移入しやすくしてある気がしました。
またこのシーンで聞ける美雪の方言は、彼女が地方から一人東京に出てきて頑張ろうとしてることの印象づけ+親しみやすいイメージの強調なのかなと思います。春子のスペイン語とのコントラストもあるのでしょうね

・「ハケンライフ」の一ツ木さん(安田顕さん)が名乗る場面で名前と年齢はともかく年収が出るのに笑う。この後「S&F」社の面々もこの形式で人物紹介がなされる。
ハケンと正社員のいろんな意味での格差を描いた物語にふさわしく、かつさりげなく斬新な演出な気が。

・「S&F」社の餅つき大会。今後作中で何度か登場する対決イベントシーンの先がけとして、お祭り好きな会社の体質を表している。
また桐島部長(松方弘樹さん)の磊落な親父っぽさ、里中(小泉孝太郎さん)のシャイな押しの弱さ、東海林(大泉洋さん)の巧みに自分を売り込む如才のなさなどを短い時間で端的に見せているのも上手い。
とくに東海林は、上司にゴマをするにしても正面から豪快に美辞麗句を並べるある種憎めない性格が、背広をぱっと投げる動きに集約されているように思えました。

・きなこ餅を食べる東海林と里中。二人が一つの皿から餅を取り合っているところに、のちのち時に同性愛的なまでの濃厚さを感じさせる二人の友情のあり方が早くも示されている。
お皿を持ってるのが里中の方なのにも(しかも東海林だけ机に腰かけてる)、二人の力関係と性格の違いがよく出てます。

・新設のマーケティング課主任の辞令をもらう里中。明らかにがっかり、というか茫然自失している里中に、「期待してるぞ、本心だから」「本当だぞ」と繰り返す桐島の言葉が繰り返すほどに嘘くさい(東海林にもそう突っ込まれる)。
「部屋は今資料室になっているあそこだ」の台詞とともに、薄暗い資料室の映像と「あーあ、可哀想」と言いたげな黒岩(板谷由夏さん)の顔が映るのも、「トバされ」感を強めている。
この時点で黒岩さんはまだ一言も台詞がないんですが、服装やクールな眼差しだけで、「デキる女」なのが十分に伝わってくるのはさすが。

・落胆しつつ帰りのバスに乗った里中と春子の出会い。普段の里中なら春子に言われずともご老人に席を譲ってたろうに、たまたまタイミングが悪かった。
この先(一応は)犬猿の仲となる東海林でなく、早くから(一応は)友好関係を築くことになる里中との出会いがこれなのが面白い。春子が頼りない里中を(力付くで)引き回してゆくことの前振りというか。
いきなりネクタイを掴んで里中を立たせる無礼さ&大の男に正面から喧嘩を売る鼻っ柱の強さも早くから春子のキャラを印象づけている。

・一ツ木さんの元にハケンの女性から「ヤキソバパンを買いに行かされるのが許せない」から辞めたい旨電話が。たえずハケンスタッフとハケン先の会社との板ばさみになってるこの人、中間管理職の悲哀に満ちている。
そして次の場面でハケンについて語る東海林がヤキソバパンを手にしているのに、「原因はお前か!」と多くの視聴者がツッコんだことだろう。
後に明かされる東海林のハケンに対する(「ハケンのことならお任せください!」なんて言いながらの)差別意識を、台詞で説明せずにさりげなく(でもはっきりわかるように)絵で見せている。このへんの演出は実に上手い。

・春子が来てくれるならもう一人のハケンは美雪で良いという桐島部長。春子をマーケティング課に配属するからには、まんざらマーケティング課も窓際ではないのですね。
しかし人事にいた経験からハケンに詳しくなったというわりに、東海林が以前もS&Fに来たはずの春子を知らないのが不思議。春子の年から言ってそんなに昔のことじゃないはずだし・・・?

・一人部屋で髪を切る春子。アルダルシアにいた頃の柔らかな女らしさを捨てて戦闘(仕事)モードに入るための儀式のように思えます。美容院に行くのでなく自分でざくざく髪を切る豪快さも独立独歩の春子らしい。
きっと美容師ないし理容師の免許ももってるんだろう、と思ったら最終回で理容師の免状を出してました。

・美雪はじめ皆が思わず立ちすくむ木枯しの中、全く動じず真っ直ぐ歩いてくる春子。
第二話以降のオープニングナレーションの「スーパーハケン大前春子がなぜ非正社員の道を選んだかは 定かでない」同様、明らかに『木枯し紋次郎』を意識している(「一ハケンの私には、関わりございません」なんてセリフもそう)。そういえば彼女のコートも何となく旅人さんのマント?風かも。
回りの人垣が自然と割れて彼女を通すあたりの戯画化された「ありえなさ」が、この作品をあくまでもコメディとして視聴者に届ける役割を果たしている。

・面談の席でも一言も口を聞かない春子に戸惑い憤慨する東海林。
春子の態度は確かにあまりに傍若無人に過ぎるのだけど、「いくらハケンでも本当に忙しい時は残業ぐらいしてもらわないと」の台詞に表れているように、待遇の面で明らかに正社員と差があるにもかかわらず何かの時にはハケンにも正社員並みの働きを期待し事実上強要する企業のあり方に抵抗するには、このくらい情にも状況にも流されない厳しい態度を貫く必要がある、ということなんでしょうね。
それは彼女にそれだけのスキルがあるから、というより立場を強くするためにスキルを磨いてきたから出来ること。ハケンらしい生き方―時給の分は(分だけ)きっちり仕事をする、社員と馴れ合わない―を実力で勝ち取る、その気概こそが「ハケンの品格」なのでは。
まあ彼女のスキルは多分に戯画化して描かれてる(マグロ解体のスキルなんて、普通は事務職のハケンは発揮する場がない)ので、真剣になりすぎずさらっと見られるわけですが。

・「入社一年目の俺とハケンだけって、いかにも寄せ集めって感じっすね。」 
浅野は上司である里中に一応敬語は使うものの一人称は「俺」で、サークルの先輩にでも対するような口調(もっとも東海林も桐島にこんな風な口の聞き方をしてますが)。当のハケン二人を前に「寄せ集め」発言も(寄せ集めに自分も含んでるとはいえ)ちょっと無神経。
このあたりに入社一年目らしい社会常識の不足が表れていて、勝地くんが浅野のキャラを「怖い者知らず」と評したのがわかるような。

・上述の浅野発言を「そんなことないよ。ベテランの小笠原さんもいるし」と里中がフォローするが、小笠原(小松政夫さん)を背後から、元資料室の面影を残すガランとした空間を背景に写すことで、浅野の言葉が喚起したマーケティング課の「窓際」感、小笠原さんもベテランといえば聞こえはいいが要はロートルであることをそれとなく印象づける効果を与えている。

・里中が美雪に「みんなで助け合って、いいチームにしたいと思います」と抱負を語っている時、早くも棚の整理に着手している春子。里中の言葉をのっけから無視する独断専行ぶり。
里中が注意しようとするも春子の眼力に呑まれる。初対面の時にも通ずるヘビに睨まれたカエル状態。
まあ里中の言葉って口当たりは良いけれど中身がない感じですからね。時には自分が憎まれても皆を引っ張っていこうというリーダーシップがない。
サークル活動ならそれでいいでしょうけど営利企業の一部署の主任としてはどんなものかと。春子もそう思えばこそのこの態度なんでしょう。
ゆえに里中が単なる八方美人のいい人キャラでなく、真性の「いい人」――前掲の台詞も口先だけの挨拶でなく本心から言ってるに違いない――なのがわかってくるにつれ、春子の彼への態度はずっと柔らかく、しかし甘すぎる部分については時に厳しく教え諭すような方向へ変わっていきます。

・だんまり無表情に座りつづける春子に「あの・・・何か怒ってますか?」、「何もするなという主任の指示に従っておりますが、何か?」と返され「・・・そうでしたか」。
気弱な口調に気弱な笑顔――普通なら温厚な善人と評されるだろう里中の上司として人間としての弱さが物語のごく初期であぶりだされている。

・「くるくるパーマって・・・聞かないね最近。」 「とっくり」という表現も古さではどっちこっちなような気も。
『木枯し紋次郎』ネタや小笠原役小松政夫さんのギャグなどある程度年配の人も視聴者に想定してるのでしょう。

・「ケンカ売ってんのかおまえ」「大前、春子です」。先の「くるくる」「とっくり」もですが、二人のかけあい(口喧嘩)の定番が早くも登場。彼ら二人の言い争い(間の取り方や声のトーンが絶妙)が作品のテンポを作り上げている。
「おまえ」に対して「大前」と言い返すところは、「ちゃんと名前で呼べ」という意味合いで、先の黒岩女史の「ハケンさん」呼びに対する答えになっています。

・時計の文字盤を透かしてマーケティング課のオフィスを捉える映像は、その後も時報の軽やかな音楽とセットで毎回のように登場し、テレビ評などでもたびたび好意的に取り上げられていた記憶があります。
定番台詞だけでなく定番映像も用意、さらには春子が意外な資格を出して事件解決という定番オチも含めて、視聴者に心地好い予定調和感を与える工夫がなされている。子供向け特撮作品やテレビ時代劇などのヒーローものに通ずるノリ。
実際『ハケン~』のストーリー自体、変格のヒーローものですしね。『木枯し紋次郎』のフィーチュアぶりからいっても。

・お茶入れの要請を無視(延期)してオフィスを出て行く春子に対して、「また髪見たあいつ」と怒る東海林。
こうした東海林の「怒るポイントのずれ」は今後もしばしば登場し、ハケン否定者である東海林のキャラを憎まれ役でなく「愛すべき単細胞」と感じさせ、かつ二人の対立を痴話喧嘩めいた笑えるものに仕立てている。これ大泉さんのアドリブもあるんですかね?

・美雪と目が合い会釈された浅野のへにゃ~っとした笑顔。笑った状態に固定された口元・目元の微妙な動き、「いいなあ~♪」という声のトーンは浅野くんのデレデレっぷりを大げさでなく伝えていて、さすがだなあと。
『ソウルトレイン』でへろへろ演技に開眼してしまいましたか?(笑)

・「ここだけの話、桐島部長の奥さんも元ハケンなんだよ。」と語る東海林たちの後ろの席には桐島部長が。東海林うしろうしろー!部長がエピフライ口にくわえたまま無表情に固まってるのもいい味です。
しかしこの「部長の奥さんが元ハケン」というのは何かの伏線かと思いきや、その後全然触れられなかったですねえ。

・春子との「出会い」を思い起こして、別人か?と一度は思いながらも、「いや、あのキャラの濃さは同一人物だ」とつぶやく里中。
バレンタインの回でハートかぶってたのもそうですが、里中ってさらっと笑えることやとんでもないことを言ったりしたりする。その天然ぷりが里中のキャラを頼りなくも愛すべきものにしている。

・話を聞かれてたと知って、あわててあからさまに媚び媚びな東海林に苦笑しながらデコピンする桐島部長。
微笑ましい上下関係、と見えますが、その実東海林も桐島も暗黙の了解の上でそれを演じている感じがする。サラリーマン社会らしい緊張感とでもいうか。

・春子と小笠原行きつけの定食屋「ようじ屋」。『木枯し紋次郎』(紋次郎がくわえている楊枝)を意識した店名ですが、今回見返して看板に三度笠をかぶった旅人さんのシルエット(顔のみ)が描いてあるのに気がついた。んー、芸が細かい。

・春子のあの態度を見ていたにもかかわらず、彼女と(一方的に)相席し、食事代も出そうとする小笠原。
「安い時給で苦労してる」ハケンへの同情だけでなく、先輩は後輩の面倒を見るもの、という昔ながらのサラリーマン的性格を持った人なのでしょう。

・総務から仕入れた「春子の時給が三千円」という話を披露する浅野。新入社員のくせに存外耳が早い、というか顔が広い。このへんは要領の良い現代っ子な感じ。

・頼んだ書類がまだ出来てない&出来が悪い件で美雪が黒岩や東海林に嫌味を言われているところへ春子が口を挟む。
傍目には「美雪をかばった」と見える行為ですが、春子としては「アバウトな指示を出した黒岩が美雪を批判することの不当さ」を指摘しただけ、自分は「情」ではなく「理」で発言したのだ、と主張するでしょうね。

・「歓迎会しなくちゃ」と言い出す里中。「マーケティング課の結成式」でなく、新参のハケン二人の歓迎会をやろうと考えるところに、彼がハケンも仕事仲間として捉え大事に思っているのがわかります。
里中が「ハケンさん」のような呼びかけをするシーンって一切ありませんしね。

(つづく)


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『ハケンの品格』(1)-2(注・ネタバレしてます)

2008-02-02 03:59:07 | ハケンの品格
『ハケンの品格』というドラマは基本的には前回書いた1のタイプに属する作品だと思いますが(ただしキャストは渋め)、同時に「志」を強く感じる作品でもありました。

現状では正社員に比して弱者の立場に置かれている派遣社員を主人公に据えてその縦横無尽の活躍を描く展開に、多くの派遣社員が溜飲を下げ、あるいはドラマをきっかけに正社員の反感を買うことを恐れ、また正社員は腹立たしさを覚えたり派遣の立場への理解を深めたりドラマの影響で派遣がつけ上がるのを懸念したりしたのが、公式非公式の掲示板の書き込み、感想ブログなどに明確に表れています。
多くの視聴者にとってごく身近な、おそらく恋愛ドラマよりもナーバスにならざるを得ないテーマを取り上げているだけに、このドラマについて我が事のように熱く語る人が多かった印象です。

一歩間違えば総スカンも食らいかねないところを、第一回の「タクシー廃車→クレーン登場」のありえないストーリー運びによってあくまでフィクション、コメディであることを印象付けて、社会派のドラマを想像していた視聴者を、肩透かしを食わせることで上手くクールダウンさせた(正直私は呆れ果てて脱落しそうになりましたが)。

その後も春子の行き過ぎたスーパーハケン振りやメインキャラとのやりとり―コメディ部分で笑わせ、恋愛パートの切なさで泣かせながら、抵抗の少ない形で本来のテーマを打ち出していった。
先に「志」と書いたのは、視聴者に対する巧みなくすぐりが単なる人気取りではなく、本来のテーマを伝えるための手段として用いられている、そこまでして伝えたい思いがあることを指しています。
里中が最終回で「ハケン弁当の本当の値打ちは(中略)社員と派遣社員が一つとなって困難を乗り越え、力を合わせられたことです」「(ハケンとも)人として向き合わなければいい仕事はできないのではないでしょうか」という二つの台詞を口にしますが、これらの台詞に表れた遠くない未来の正社員・会社と派遣社員のあり方へのエールがこのドラマの肝なのでは。
1の器に2を盛ったような、第3のタイプのドラマと書いた由縁です。

正直放映中はあまりにご都合主義な展開が目について不満点も多い作品でした。勝地くんが出てなかったら最後まで見ることはまずなかったでしょう(そもそも彼が出てなかったら最初から見てなかった)。テーマの性質上あえて視聴者が真剣になりすぎないよう痛快路線にしてあるんだろうとはわかっていても。
(プロデューサーの櫨山裕子さんはもっとリアルな方向を望んだそうですが、脚本の中園ミホさんが、派遣の女性たちは「クタクタになって帰って来て、そんなドラマを見たいだろうか。ウソでも楽しいドラマがいい。バカバカしいくらい、思いっきり笑えるドラマにしよう。」と主張して現行のような物語になったそうです。派遣社員をテーマにしたドラマの言い出しっぺも中園さんだったとのこと) 

しかし今回レビューを書くため全編をまとめて見返してみて、本放送時も好きだったテンポのよい掛け合いの魅力を再認識し、当時は気づかなかった小ネタを新たに発見し、何より上述の「志」とそれを提示するテクニックに感銘を受けたことで、この作品に対する評価が急上昇しました。

例えば第7回で里中が勝手に美雪の名前で企画を出すくだりは「いくら人が良いとはいえ8年会社勤めしてる男の行動としては状況が読めなすぎないか。新入社員の浅野が美雪恋しさで暴走した展開なら自然なのに(そうすれば勝地くんにスポットがあたるし)。ストーリーをメイン4人中心で回す必要上そうなったんだろうけど」などと考えてたんですが、作品をトータルで捉えると里中がここまで「バカ」である必然性が見えてきて一気に納得がいった。
というよりバカであるがゆえに今後里中がどう化けるか会社組織をどう変えてゆけるのか、筋は承知してるにもかかわらずワクワクしてしまった。

ほとんど全てのストーリーをメイン4人で動かす方向性を途中で選んだ副産物だとしても、当初からこの展開に持っていく前提だったかのように里中のキャラクターは首尾一貫している。
里中に限らず、ほぼ全キャラクターの性格が(当初の設定が無視されることはあっても)一貫していたし(一番キャラ的なブレがあったのはヒロインの春子でしょうか。第8回の言動はとくに)、小さな矛盾点は多々あれど物語全体の流れも大筋では意外なほど破綻なくまとめられていた。脚本家およびスタッフの技量をつくづくと感じました。改めて『ハケン~』の人気が頷けます。

 

※ 中園ミホ『恋愛大好きですが、何か?』(光文社、2007年)←『ハケンの品格』の裏話が若干あり。巻末に篠原涼子さんとの対談も収録。

 

p.s. 『Invitation』2008年3月号でプロデューサーの櫨山さんが語っていたところによると、予想外の高視聴率を受けて、途中、具体的には「ハケン弁当」のあたりから、ドラマの流れを社会派→人間中心に変更したとのこと。
最初はハケンも正社員も所詮は弱者で裏に真の強者がいる、といったストーリーを想定していたそうです。

 

 


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