about him

俳優・勝地涼くんのこと。

『恋うたSP カムフラージュ』(2)-2(注・ネタバレしてます)

2012-09-11 14:42:46 | 他作品
・会社で上司をうかがいつつ携帯チェックするさくら。「おうちで待ってるよハニー」の文字に笑顔になるさくら。対照的に鏡に映る百合は浮かない顔。周作がさくらの家に行くということは今日は百合はあぶれるわけですからね。たぶん今日は会えないというメールが来て、こないだのさくらと同じくさくらの顔色を確認して、今日はさくらの元に行くことを確信してるんでしょう。
ここで百合は香水のビンを出して両手首と首の後ろに香水をつけている。この晩、彼女が密かにさくら宅で周作と逢引したのがさくらに発覚したのはこの香水の匂いが原因だった。香水なんて結構香りが残るものなのに、それをわざわざつけたうえでさくらの家に上がりこもうとはいかに香水マニアとはいえ大胆すぎ。
これは明らかに発覚することを狙っての作戦ですね。さくらの目の前で就業時間中なのに堂々香水つけてるのも、今日自分はこの香水をつけているよというアピールなのかもしれません。この後さくらとお互い怖い感じの笑顔を交わしてるし・・・熾烈なる女の戦いです。

・暗くなるころ百合の携帯に母から電話。父ともども東京に出て来てるから会いたい、という内容らしい。急に言われても仕事があると百合が困ってるのを聞いて、帰るために席を立ちかけてたさくらは「いいよ、あたしやっとくから」と笑顔で申し出る。結局これはさくらの帰宅を遅らせてその間に周作と会うための芝居だったのが後でわかるわけですが。
しかし百合の思惑に気付いてないとはいえ、恋敵のために楽しみにしてた周作との時間を削るような提案を自分からするさくらの人の良いこと。もうそれだけで百合に負けてる感じがします。

・さくらの好意に百合は一礼すると「わかった。じゃあ会社出たら電話するね」と電話を切り「今度必ず埋め合わせしますんで」と謝りながら仕事のファイルを渡す。あまりの量にさしものさくらの顔もこわばり、お疲れさまと言うときも呆然の面持ち。
いかにしょっちゅう上司に怒られてるほどの仕事の出来なさでもどうやったらこんなに溜め込めるのか、と思ってるんでしょうね(不思議ちゃんキャラからは意外ですが、特に怒られてる場面のないさくらは仕事はそこそこしっかりできるらしい)。これが自分の残業を長引かせるための百合の戦略とはさすがに気付いてないみたいです。
おそらく周作から今日は会えないと連絡が来た時点で少しでも多くの仕事を残すよう画策した結果のこのファイル量なんでしょう。自分を家に帰さないためにそこまでするとはまさか考え付かなくて当然ですね。

・周作がさくらの部屋のキッチンで鍋の味をみて、おいしさに驚いてるとチャイムが鳴る。「おかえりハニー」とドアを開けた周作驚いた顔。何に驚いたのか(見当はつきますが)示さないまま、一人暗いオフィスで仕事するさくらに場面転換。
メール着信音が鳴り携帯をチェックすると「帰るとき連絡して。駅まで迎えに行ってあげるよハニー」という内容。「なにーやさしいー」と嬉しそうなさくら。視聴者的には急に帰ってこられると困る=百合が家にいるがゆえのメールだとすぐ察しがつくだけに、何も知らず喜んでるさくらの姿が気の毒です。

・夜遅くに「ただいまー」とドアを開けるさくら。あれ、結局迎えに来てもらわなかったのか?百合と鉢合わせちゃうんじゃ?もしや百合の芝居と周作のメールの意図に気づいて不意打ちを食らわせたのか?といろいろ考えてしまいましたが、次の瞬間周作が先に部屋の中に回りこんで「おかえりー」と両手を広げて大げさに出迎える。
要はやっぱり迎えにきてもらって一緒に帰ってきた、さくらの「ただいまー」は習慣的に(部屋に誰もいないときでも)言っているだけだったということですね。まださくらは何も気づいてない・・・ストーリー的にいずれ気づくんでしょうがそれがこの晩なのかもっと後なのか――楽しげな二人の様子とは裏腹に緊張感が高まってきます。

・「なんか変な感じ。周作がわざわざ迎えに来てくれるなんて」。嬉しそうなさくらに後ろから両腕を回す周作。楽しげににあれこれ言い合いながらベッドに寝転んださくらはそこで香水の匂いをかぎつける。
一方で肉じゃがの味を隠し味まで当てる周作は、一人テンション高く上機嫌に話すがさくらの顔はこわばったまま。彼女の家で他の女と逢引したんだから(しかもベッドまで使う図々しさ)もっと後ろめたさを感じてていい、さくらのちょっとした態度の変化にも敏感であってしかるべき局面なんですが。このくらい鈍い、学習しない周作だから女と長続きしないんでしょうけど。

・さくらに抱きついたところでさしもの周作もさくらの様子がおかしいのに気づく。「百合ちゃんいたんだ」「今日はバニラ(の香り)」。
さすがに顔色変えつつもなんか突然来てさ、と笑いながら必死に言い訳するものの、一つ鉢植えがなくなってるのに気づいたさくらに百合が欲しがったからあげた、「でもいいじゃんこんなにあるんだからひとつくらい」と答えた時点でもう完全にアウト。
彼女が大事にしてるものを、そうでなくても家のものを勝手に浮気相手にあげてしまうとは言語道断。百合がわざわざさくらに自分と周作の仲がバレるように行動してるのはもう疑いようがないですが、百合にお願いされたからといって浮気の証拠を積極的に残すような真似を許してしまった周作は何やってるんだか。
「こんなにあるんだから」の台詞が示すとおり、1つくらいなくなってもさくらは気づかない、もし気づいても百合がいたことがバレる前だったら気のせいじゃないかと言って済ますつもりだったのか。さくらのことも百合のことも、プレイボーイのくせに(だからこそ?)女を甘く見積もりすぎてますね。結果、(彼なりに)本気だった相手も失うことになってしまいました。

・「もう限界。出てって」と言うさくらにさすがに真面目に謝ろうとする周作ですが、「出てって!」と怒鳴られ、やむなくすごすごと出て行く。玄関で「肉じゃがごちそうさま」と微笑むが返事もらえないまま去っていく。これが二人の交わした最後の会話だったのか。

・ベッドに顔をうずめて「誰か助けて」と呟いたさくらは続けて「チャクラくん」と口にする。ここで祐樹でなくチャクラくんの名が出てくるのはまだ祐樹の存在がそこまで大きくなってないのか、祐樹には彼女がいることがストッパーになっているのか。
ただずっと彼氏の浮気で受けた傷を植物を買いこむことでしか表せなかったさくらが「誰か」に助けを求めようとしてるのは(それだけ傷が大きい証でもありますが)、彼女の心が外に向かい出してるゆえと見ていいのでは。直後に枕を机に叩きつけて暴れてるのも内に溜め込まず外にはけ口を見出してる点では成長かも。

・枕から飛び散った大量の羽根に埋もれたまま床に転がってるさくら。気配を感じたのか首をドアのほうに向けるとスーツ姿(仕事帰り?)の祐樹が立っている。
綺麗な女の子が羽に埋もれてるシチュエーションが一枚絵として美しいです。床に転がってるさくらの視点で横向きに玄関に立つ祐樹の姿を捉えたショットも変則的な構図が印象的。

・「なんかその、前通りかかったら肉じゃがの匂いがして」。なぜこんな時間に前を通りかかるのか。こないだ自転車で公園に来てたから家が近所なんでしょうか。それにしても建物の前でなく“二階にある彼女の部屋の前”を通りかからないと料理の匂いまでわかんないよなあ。
今までもこうやって時々彼女の様子覗きに来てたのだろうか。しかも勝手にドア開けるってどうよ。もし百合の特攻がなかったら、周作とのラブラブシーンに遭遇してたわけですよ?

・「なにかあった?」とあわてた様子で靴を脱いで入ってくる祐樹。半身起こしたさくらは「周作とけんか?肉じゃががまずいっていうからさあ」。この期に及んで本当のことを言わないのは、祐樹が周作の友達だから周作を悪くはいいにくいという遠慮か、真相はあまりにひどすぎて口にするのも辛かったのか。
ラストの告白シーンからいくと祐樹には彼女がいるんだから彼を好きになっちゃいけないという思いがあって周作と続いてる振りをしてたということですが、この時点でまだ(別れた当日だし)そこまで祐樹に傾いてないと思うんですけどね。

・今日のはおいしくできたのにといいながらキッチンに立っていくさくら、植物に話かけながら水をやるさくらを祐樹はひどく心配そうな顔で目で追っている。無理して元気に振る舞ってるのが見え見えですからね。
加えて周作が植物を勝手にどこかへやったと聞いてさらに眉根を寄せる。「ほらリカちゃんさみしそうだよ」などと話しつつ水やり続けるさくらは水が思い切り床に零れてるのにも気づかない。ついに祐樹がつかつか歩みよってさくらの手からジョーロを取り、水を零しまくってたことに気付いたさくらはしばし無言になる。
さくらの傷の深さ、それを察し案じながら友達の彼女であるゆえになかなか積極的に動けない祐樹の心の揺れをじっくりと描くワンシーン。

・「・・・こんな子、やだよね。そりゃ愛想つかすよね。味わかんないし、体おかしいのかな。悲しくても涙出ないの」。ここでまた一つさくらの異常体質が明らかに。味覚オンチ同様気持ちを押さえ込みすぎた弊害ですね。
この状況なのに笑顔で膝抱えたまま祐樹を見上げるさくらの姿は涙を流す以上に悲しく、そんな彼女を祐樹は痛ましそうに見下ろす。何度か瞬きして泣きそうな表情になって「さくらちゃん」と呼びかけ、「おかしいよね」とまだ笑顔でいう彼女に「おかしくなんかない」ときっぱり言い切る。このへんの切ない表情の動きは勝地くんの真骨頂ですね。

・テーブル前に座りこんだ祐樹は鍋の蓋を開けて手づかみで肉じゃがを食べる。「おいしいよ」と言ってさらにもう一口。本当に肉じゃがの味が原因で喧嘩したとは思ってないでしょうが、他に慰める手段も思いつかなかった。そんな祐樹のせっぱつまった感情が滲み出ている行動です。
続けて「いいよもう」と笑いながら止めるさくらの両手を掴んで「よくないよ」「なんで笑うの。つらいんでしょ。なんで笑うの」とぎゅっと抱きしめる場面も、明らかにさくらに惹かれていながらずっと行動を起こせずにきた祐樹がついにハードルを乗り越えた瞬間と言う感じでじんときます。

・「どうして祐樹くんが泣くの」「さくらちゃんが泣かないから」。すっかり涙声の祐樹。アップになると祐樹の口の左端が肉じゃがの油で光っていて、それがいくぶん抱擁シーンの絵的美しさを削いでいるのですが、これはあえてそうしたんでしょうね。あまり綺麗に撮りすぎてもクサくなるからとわざと少し“崩して”みた。結果普通に綺麗な抱擁シーンよりなお視聴者の心に残る場面になった気がします。

・こんなタイミングでまたまた祐樹の携帯が鳴る。しかし祐樹はそれを無視。出るよう促すさくらに首を振り、「だめだよ。彼女からでしょ」と言われても答えるかわりに彼女を抱き直す。
この首を振る仕草、抱き直す時の表情がいやいやをする子供みたいで、見ていてこう、愛おしさがこみあげてきます。可愛いなあ祐樹。

・翌朝一人部屋で座っているさくら。チャットに入るとチャクラからおはようのメッセージ。「おはよう」と返してはじめて普通に会話を交わす。いい天気だねと言われたさくらは「公園にでも行こうかな」と席を立つ。やぶへびというか、結局またチャットしてもらえないチャクラくんです(笑)。
それでも昨日の今日で天気がいいから公園に、という気分になれたのは明らかに祐樹のおかげですね。彼は何時頃までいたんだろ。

・さくらは植物をひとつ選んで抱えて公園へ。芝生にマット(茣蓙?)引いて寝転ぶ。とても昨日あんなことがあったとは信じられないような、のどやかで羨ましくなるような休日の風景です。
いつしか祐樹がやってきてそんなさくらを覗きこんでる。「何してるの」「見てのとおり散歩。さくらちゃんは」「見てのとおり光合成」。やはり会話が不思議ちゃんだ。それだけ元気が出た証拠かもですが。
それにしてもなぜこんなに祐樹は神出鬼没なんだろう。公園に行っていなければ部屋まで訪ねてくるつもりだったんでしょうか。

・起き上がったさくらと祐樹は植物を挟んで背中合わせに座る。二人ともひざ抱えたポーズで視線が合わない状態で話してる。でも遠慮してるとか心がバラバラという印象はなく、いい感じの距離感と感じられます。
それが「仲直り、した?」と言う祐樹の質問にさくらが振り向いたことで崩れる。仲直りしたと嘘をつくさくらに、良かったとちょっと間がありつつ答える祐樹。さくらが元気を取り戻してるだけによりも戻ったかと気になって仕方なかったのはわかるものの、結果的に彼女とのいい時間を翳らせてしまったような。
しかし祐樹は本当にまだ喧嘩別れの真相を知らないんですかね。周作のことだから速攻祐樹にぺらぺら喋ってそうなのに。ただ周作的にはまだ全然より戻せる気でいるわけだから、祐樹にも“でもすぐ仲直りするから”と報告し祐樹もそれを信じたということかもしれません。

・並んでブランコに乗る二人。立ち漕ぎの祐樹は片方スニーカーを飛ばして「さくらちゃんも」と促す。さくらも飛ばしてみるもののブランコの柱に当たって後ろへ行ってしまう。これ狙って撮ったんだろうか。なかなか柱に当てるのも難しそうなので偶然の産物?
「おれの勝ちー」子供のような反応の祐樹。特にここから先の言動を見るに、祐樹は必ずしもさくらに合わせてるのでなく、もともと多分に不思議体験を信じたり童心を忘れてないようなところがあるので、さくらが相手だと自分のそういう面を自然に出せる、気張らなくて済む相手というのも祐樹がさくらに惹かれた一因だったかもしれません。

・祐樹くんが勝ったからとさくらはジョーロに生けてきた鉢をあげる。「もらえないよ。大事なもんなんでしょ」。困ったような祐樹に昨日のお礼だと押し付けてバスケット拾うと走って帰ってしまう。困った顔のまま見送る祐樹。さくらの部屋は別世界みたいでいいと言ってた祐樹ですが、植物の世話自体に興味あるわけじゃなさそうだし。

・家に帰ってチャクラとチャットするさくら。いわく「迷惑だったかな」「大切なものだからあげたの」。周作にあげたら一ヶ月で枯らした、それが周作が一つのものをかまっていられる期間だったと言うさくら。
これはちょっと重い言葉です。一ヶ月が限度か・・・。祐樹くんなら、と思ってるところへ周作からメールが。顔こわばらせたさくらは読まずに削除。周作の面影を振り切り祐樹に気持ちが向かっていく、ターニングポイントとなる出来事です。

・さくらが職場のデスクにつっぷしてると百合がやってきて植物の鉢を無言で置く。気配で顔をあげて驚くさくら。「すみませんでした」と俯いて目を合わせずに言って立ち去る。
さくらが「周作とはもう別れたから」と声をかけると一瞬足を止めるがそのまま行ってしまう百合。さくらとしては百合があんなあからさまなやり方で周作を奪いにかかってきた以上、百合は周作に本気なんだと踏んで「もう別れたから」遠慮なく周作と付き合っていいよ、というニュアンスを篭めた台詞だったんでしょう。さくらの人の良さを改めて表してるようでもあり、あんな男自分はもうどうでもいいと宣言してるようでもあり。
一方百合の方もさくらへの済まなさだけではない暗い雰囲気が漂っていて、結局彼女も周作と早々に上手く行かなくなった、おそらくさくらに最後通牒を突きつけられた周作があわてて百合と別れようとし、彼にとって自分はあくまで遊びの相手でしかなかったのを痛感させられたんじゃないでしょうか。
鉢植えを返してきたのも、さくらに周作との仲を知らしめるための小道具としての役割を終えた、用済みだからという以上に、周作との関係も終わったことを意味してるように思えます。

・晴れた日の公園。さくらは祐樹の前に立って歩き、木の名前を紹介して回る。大きな公孫樹の木に寄り添い耳を当てるさくら。真似して反対側から木に寄り添い耳あてる祐樹。祐樹の方がより木に抱きついてる感があります。
勝地くんが大きな木に寄り添ってると『銀色の髪のアギト』PVを何となく思い出したりします。「木の鼓動が聞こえてきそうじゃない?」と言ったそばから木の鼓動ならぬさくらのお腹の鳴る音が聞こえて二人で笑う。ほんわかムードでどう見てもいい雰囲気すぎる二人です。

・さくらの家。冷蔵庫の在りものを出し、これしかないけどというさくらに祐樹は「まかせて」と笑顔で材料受けとる。祐樹の方がご飯作ることにすでになっているらしい。まあ肉じゃがはなんとかクリアしたものの、基本的にさくら味オンチ→料理下手ですからね。そういやほぼ同時期に放映された『キャットストリート』でも勝地くん演じる浩一の方がヒロインよりも料理上手(彼が上手いというより彼女が下手)な設定でした。
「以前中華料理屋でバイトしてたんだ」「チャーハンしかできないけどね」とエプロンしてお料理。「すごい主婦みたい」と褒められて「シェフじゃなくて?」と苦笑するなんてのも微笑ましい光景。

・二人で座って「いただきます」。一口食べておいしいと言うさくらをちょっと訝るように見る祐樹。「わかる」と続けるさくら。味オンチなのにわかるのか?と思ったわけですね。
このチャーハンの美味しさがわかるというならそれは祐樹の作った料理だから美味しく感じるということなのでは。祐樹との関わりを通して、さくらの心が少しずつ放たれていっているのがわかります。
・楽しげに食事してる光景に「こわいんだ」というさくらの(場違いな)台詞がかぶさるので何かと思ったら、一人になってからのチャットの内容だった。バックでラジオが“そこまで好きな人に出会えるっていうのは奇跡みたいなものです”といった内容を喋っている。「居心地よすぎて」と続けるさくら。「好きになりそう」という表現を使わないのはまだまだストッパーが強く働いてる印ですね。
「だめだよ。人のものだもん。彼女の気持ちわかるから」。さんざん周作の浮気に苦しめられてきたさくらだから、自分が祐樹の彼女を苦しめる側に回るわけにはいかない。自分がずっと被害者側だっただけにストッパーが一段と強くなるのも無理からぬことですね。

・ラジオが「竹内まりやの「カムフラージュ」」と告げて曲が流れはじめる。曲をバックにまた公園に植物を持っていくさくらの姿。前に二人で座ったベンチを眺める、家に帰って卵をご飯に先に混ぜてから炒める祐樹風チャーハンを作る、といった祐樹との関係に繋がるいろんな場面を曲に合わせPV的に流す画面が続きます。
チャーハンはちょっと焦げていて、心なし暗い表情で食べたさくらは納得いかない顔をする。祐樹の作ったものより美味しくないと感じてるんでしょうが、ちょっとした味の違いが理解できるようになった表れか、一人で食べる(そして彼が作ったのでない)ご飯だからなのか。

・オフィスの机に置いたままの鉢植え「もものすけ」を物思わしげに触るさくらを向こうでコピー取ってた百合が振り返ってちょっと気にしてる。さくらが周作のことをまだ引きずってると思ってるんでしょうね。もうさくらの心は完全に他の男に行ってるわけですが。
そういや周作はその後さくらに連絡してこないんですかね。通りすがりをよそおって夜分に家でやってくる祐樹と比べてずいぶん淡白な反応。「帰る場所はさくらのところ」と言ってはいたけど、去ったものをいつまでも追わない主義なんでしょうね。結局はその程度というか。

・さくらは公園の公孫樹の木に一人近づき、幹に触れて耳をつけ目を閉じる。反対側に誰かきて木に手を触れる(手しか映らない)。さくらが目を開けて驚いた顔するとやはり木に耳当ててる祐樹の姿が。さくらを見て微笑む祐樹と薄く笑い返すさくら。
ロマンティックな場面ではありますが祐樹の神出鬼没っぷりとメルヘンチックな行動は考えようによっては相当怖い。美男美女だから絵になってますがストーカーぎりぎり。さくらが「笑顔であたしの隣にいた」と喜んでるからいいようなものの。そういう意味でもベストカップルなのかも。

・夕方?の薄暗い公園で棒で地面に大きく何かを書いてるさくら。少し離れたところで見ている祐樹。左手を上に伸ばしてみせた祐樹の足元まで線をひき、線に沿って歩きだすさくらと後をついて歩く祐樹。線から外れたら海に落ちてサメに食べられてアウトだそうな。二人の知る子供時代のゲームの再現らしいです。
お互い子供時代のいろんなルールを一つずつ言い合う。他愛もないやりとりを楽しそうにやっている二人。さくらも周作といるときよりずっと生き生きしてるんですよね。

・しかしそこでさくらが「違う島国の彼女に毎日電話するとか」と口にして祐樹の表情がちょっと曇る。こんなに仲良くしてても恋人同士じゃない、なれない理由に目をつぶったまま友達以上恋人未満を続けてしまってる二人。時々その中途半端さに苛立って、心地好い時間に水を差すような台詞を言わずにいられなくなったりもする。
細い線の上をバランス取りながら歩くゲームはそんな不安定な二人の関係の象徴ですね。

・バランス崩してこけそうになるさくらの手を祐樹がつかんで支える。そのまましばし見つめあい、祐樹は少しためらったあと恋人握りで手をつなぐ。そのときまた電話が。なんでこう、いつも見てるかのようなタイミングで電話が来るんでしょう。
少し間があって「ごめん。ごめんなさい」と手をほどいて去っていってしまうさくら。周作と別れた日の抱擁といい、勇気を出して一線を踏み越えようとするのはいつも祐樹のほう。さくらは自分がさんざん浮気された記憶も生々しいから一歩を踏み出せない。
これ、要は祐樹がきっぱりロンドンの彼女と別れてそれをさくらに告げれば一気に解決すると思うんですが(自分のせいで彼女が捨てられてしまった!みたいにさくらが気に病む可能性は大いにあるものの積極的にさくらが奪った形にはならずに済む)、なかなか、というか最後までそれをしないんですよねえ。

・晴れた昼間。植物2つ持って公園歩くさくら。暗い表情。表情からすると家の植木との散歩じゃなくてまたやけ買いなんだろうか。結局恋人とちゃんと別れないままさくらに気を持たせるようなことをして、ついに彼女に植木を買わせてしまった。周作のことを責められませんね。

・さくらが家で水をやっているとチャイムが鳴る。レンズから外を覗き、開けるのをためらう。誰なのかすぐに明かさないので、まあ普通に考えて祐樹が来たんだろうけど大穴で今さら周作が訪ねてきてさらに関係がややこしくなるのか?とか想像したんですが、やはり祐樹のほうでしたね。
「おれ、嫌われるようなことしちゃったかな」とちょっと咎めるような声。答えないさくら。アングルがドアの内外行き来しながら二人の姿、表情を交互に映し出す。「嫌いに、なっちゃった?」「・・・きらい」。「なんで」と言いかけた祐樹は「なんで・・・なんて聞くもんじゃないよね。ごめん」と去ってゆく。
祐樹の質問はさくらが手をふりほどいて帰ってしまったことを言ってるのか。それとも描写がないだけでその後会った時にもっとわかりやすく避けるような態度とったとか祐樹が来そうなときには公園に寄りつかないとかするようになったのか。
「祐樹が来そうなときには公園に寄りつかない」が一番ありそうな気がします。特に約束せずともあそこで落ち合って一緒に過ごすのが二人の休日の形になってそうでしたし。

・チャクラとチャットするさくら。椅子に座らず椅子の背もたれ越しにパソコンを打つ不自然な姿勢は、ここのシーンのラストで背もたれに顔を伏せる場面に繋げるためですね。「嫌いなの?」というチャクラの質問にさくらは「優しすぎるんだもん」「ずるいよ」と打ったあと「好きになっちゃうじゃん」と声のみ続ける。
「好き」という言葉を文字にして残すことにためらいがある、それだけ祐樹への気持ちを許されないものと感じてる彼女の煩悶が浮かび上がってきます。

・またも初歩的なミスで百合が上司に怒鳴られている。「だからいまどきの若いもんは頭が悪い」という決まり文句のところでさくらが書類を机にたたきつけて立ち上がる。「課長、いいかげんにしてください。若いだけで頭が悪いとか仕事ができないとか決め付けないでください」。おっとりイメージのさくらがこんなにポンポンものをいうのは意外。
そのあと「売り上げ悪いのメタボのせいにされたらむかつきませんか」「いまだに結婚できないのをメタボのせいにされたら傷つきませんか」と一言ずつ区切るようにいいながら課長のお腹をタプタプするに至っては。ここまでやって大丈夫なのかと思いきや「いやん」という課長の反応 (笑)。結構正面からがつんと反論されるのに弱いタイプのよう。これでさくらに頭上がらなくなるのでは。

・さくらは百合の体を抱えるようにして「百合ちゃんいこう」と机の前から連れて行くが、途中から逆転して百合がさくらの手をつかんで部屋の端へ引っ張っていく。ほかのデスクは閑散としてるのでみな外回り中、内勤はさくらと百合と課長くらいという部署のようです。
「周作さんとはもう会ってません。別れようって言われて。・・・どうして優しくするんですか。さくらさんにひどいことしたのに」「ごめんなさいほんとにごめんなさい」。
やはり周作とは長続きしなかったよう。彼の情のなさに触れ頭が冷えてくると、さくらに対するすまなさがだんだんにつのってきて、今日かばわれたことでそれが爆発した形なんでしょう。

・家に帰ってから例によってチャクラとチャットし、(上司にがつんと言ったことで)すっきりしたというさくらに「言いたいこと言わなかったら後悔するよ」との返事が。「好きな人に好きくらい言えなくてどうするの」「彼、きっと週末は公園にいるんじゃない?」。
チャクラの言葉に対して「なんでそんなことわかるの」と尋ねると「何でかな?」。もしかしてチャクラくんて・・・そういうこと?と初めてさくらはチャクラ=祐樹じゃないかと感じる。確かにチャクラくんがチャットに誘ってきたのは祐樹と知り合いチャクラくんの話をして以降だし、SEでさくらのパソコンを直してくれた祐樹ならさくらのパソコンのメアドを知ってても不思議じゃない。
これまで祐樹には彼女がいるんだから好きになっちゃいけないと思ってきたさくらですが、チャクラ=祐樹となれば、すでに自分が祐樹に惹かれてることを知られちゃってるんだし、知ったうえでさくらからの告白を促してきてることになる。それがさくらに越えまいとしてきた一線を越える原動力を与えたのでしょう。

・そして公園にやってきたさくら。ベンチに座る祐樹におそるおそる近づくと、向こうもさくらに気がついて立ってくる。久しぶりと言い合う二人の立ち位置が少し遠いのが、会わずにいた時間が生んだ心理的距離を示しています。

・ベンチに座るさくら。その隣に座る祐樹。さらにその隣りにさくらにもらった鉢植え。最初に公園で二人日光浴した時は鉢を間にはさんで背中合わせに座っていた。あの時よりは少し距離がせばまっている感じでしょうか。何せここから告白タイムに入るわけですし。

・「本当はあのとき周作とは別れてたの。でも」「あおいとは気持ちはつながってなかったんだ。でも」「気になる人には彼女がいて」「好きな子は友達の彼女で」「嘘ついてでも気持ちにブレーキかけないと」「気持ちが走り出しちゃいそうだったから」。
正面向いたまま割り台詞のように交互に喋ってた二人がここで顔を向け合う。お互いついに気持ちを伝えられた、心が通いあったはずなのにそこでまた目をそらしてしまう。単純に照れなのか、周作はともかく明確に別れたわけじゃない(少なくとも祐樹はそう言ってない)あおいを傷つけることへの迷いが残ってるゆえなのか。

・「あ、チャッピー(注・この植木の名前)。花、咲いたよ。(ここで主題歌が流れ出す)毎日ちゃんと世話したから」「うそ。だってこれ普通花咲かないんだよ」「でも咲いてるよ」。その迷いを最後に踏み越えさせたのは、本来咲かないはずの花が咲いたという“奇跡”だった。さくらがよく見ると確かに下の方にピンクの花が咲いている。
この奇跡に背中を押されて「好き。祐樹くんが、好きです」とついにさくらが告白。お父さんの甘い料理を文句言わずに食べ続けたように、他人の心を傷つけるくらいならとことん自分が我慢したほうがまし、という生き方をしてきたさくらが、ついに誰かを傷つけることになったとしても自分の思いを優先させることを選んだ。こうした“強さ”がさくらが幸せになるために足りなかったものだったんでしょう。
泣けないはずのさくらがここで初めて涙を流すのも、他人のために殺してきた自分の心を取り戻した結果なのだと思います。

・泣き出したさくらの頭を優しい笑顔で撫でながら、「さくらちゃんが、好きです」と祐樹も告白する。ロマンティックないいシーンではあるんですが、最後まで好きな人の彼女=恋敵を傷つけることを気にし続けたさくらと違い、祐樹はさくらにどんどん惹かれていながら、あおいともきちんと別れずずるずる付き合いを続けていた。不誠実といっていい態度です。
なんといってもチャッピーを持ってここまできたということはさくらに花を見せるため、花を見せる口実でさくらに会うためだったと思っていいでしょう。チャッピーの品種が花をつけることがどれだけ珍しいか知らなかったとはいえ、花の咲いた鉢植えにことよせて、さくらにはっきり気持ちを打ち明けるつもりがあったものと思われます。にもかかわらず、まだあおいとの関係をきちんと清算してないっぽいのは(1)で書いたように不誠実と言わざるを得ない。
さくらがなかなか祐樹との恋に踏み出せなかったのも、もしかしたら彼女への遠慮だけではなく、あおいと自分を実質二股かけるような祐樹の“周作的不実さ”に対する抵抗があったかもしれません。

・並んで芝生に寝転ぶさくらと祐樹。「チャクラくんともお別れか」「え」「こんな身近にいたなんて。祐樹くんがチャクラくんだったんだね」。そして起き上がってお礼を言うとさくらは走りだす。続けて体起こした祐樹がぽつりと「なんのこと?」。
中盤からさも祐樹=チャクラのように匂わせておいて、実は違ってたというオチ。まあ他人のふりしてさくらをチャットに誘ったことについては結果的に彼女の心の支えになりえたんだからいいとして、さくらが祐樹に惹かれていく過程をチャクラとしてリサーチしたあげくさくらの方から告白するよう仕組んだというのは、なんか陰湿ぽいですもんね。“祐樹とチャクラは別人”オチで良かったと思います。

・じゃあチャクラくんは結局誰だったのか。その頃無人のさくらの部屋のパソコンに「さよなら お幸せに チャクラ」という文字が浮かぶ。さくらはパソコンの電源入れっぱなしだったのか?おそらくそうではなくチャクラがメッセージを出力するために電源を入れたのでしょう。
さくらの脳内友達ということでストレスが生んだ多重人格と解釈すると、さくらのいない所でこうやってメッセージを出せる理由が立たない。これはもう素直に子供時代からさくらを折りに触れ守ってくれた妖精さん、くらいに思っとくのが正解じゃないかと思います。チャッピーに花が咲いた件といい(絶対咲かないわけじゃないらしいから超常現象まではいきませんが)、全体にファンシー風味の物語には似つかわしいんじゃないですかね。
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