・重く悲壮感のある音楽を背景に鶏(と最初は思ったが軍鶏だった)が鳴く。ややあって軽快な音楽に切り替わりぼろぼろの服の男たちが軍鶏をおって走りこんでくる。そのまま軍鶏をつかまえようとしての騒ぎ。
その中に比較的身奇麗なのが一人・・・あれ、勝地くんだ。というわけで銀之助も早々に登場。これは出ずっぱりなのかも、とストーリーに関係ないところでホクホク。
・「そしたらこうしよう!」と男の一人が叫ぶと、銀之助が元気よく舞台中央に跳んで出て「石だ石だ、石をぶつけろー」。勝地くんがさんざん難儀した、というかこればっか練習してたとよくネタにされてるセリフですね。面白みはもひとつわかるようなわからないようなですけど。やや低めのよく通るいい声です。
言った以上軍鶏に石ぶつけてやっつけるのかと思ったら別にぶつけないし。まああの混乱度合いじゃほかの人にぶつかるだけか。
・軍鶏を追って男たちが舞台からはけたあとに、フラメンコギター風の音楽が流れぼわぼわ髪(ぱっと見歌舞伎の百日鬘みたいな)の男(闇太郎)が茂み ?からぬっと現れる。登場音楽からしてアウトローな風情いっぱいです。
・闇太郎の頭が茂みに引っ込むとまたまたさっきの軽快な音楽とともに軍鶏追って男たちが舞台へ走りこんでくる。しかし今度は軍鶏は彼らから離れた(闇太郎がひそんでいる)茂みのほうにいってしまう。軍鶏の足の速さに疲れ気味の男たち。
あれ銀之助がいない ?と思ったらさっきの男が高らかに「そしたらこうしよう」と叫ぶと舞台に踊りこんできて「石だ石だ、石をぶつけろー」。すでに3回しゃべっていながらセリフはこれ一つというのもすごい。セリフを覚えられない(結果セリフをもらえない)三文役者のような。
・軍鶏を追って茂みのほうへ男たちが向かったのでここで闇太郎と出会うかと思いきや、彼らは軍鶏追ってまたまた舞台から退場。
入れ違いにまたフラメンコな曲でぬっと登場する闇太郎。さっきに引き続きなんか手に持ったものをむしゃむしゃ食べてます。この時点ではまさかあんなものとは・・・。
・そして再び軍鶏登場・・・って今回はあからさまに着ぐるみきた人間。「コケーコッコッコッコ」とか言ってますけど。ダークヒーロー役の堤真一さん、まずは軍鶏として登場です(笑)。
これ堤さんファン的にはどうなのか。闇太郎と間近で目があった軍鶏は「なに?」。なんか軍鶏のくせにしゃべってるよ。薄いサングラスもかけてるよ。
・茂みに引っ込んだ闇太郎をちょっと覗き込むようにしてた軍鶏。そこへ再び男たちが現れる。またこれで軍鶏と追いかけっこするのかと思ったら「何してるん自分らはよこいや」と軍鶏がいきなり人間に指図を。しかも関西弁。
さらにそこへ並べといわれて順番を決めかねてる男たちを「順番なんかどうでもええねん」と手にした棒 ?でしばき倒す。ほとんど一人を集中攻撃でしたけど。
・「百姓も侍もあるけえ。板の上ではみな平等や」。堂々と客席のほうを指差す軍鶏。なんか軍鶏のくせに格好いいです。
ん ?板 ?案の定というか「板?道じゃね?」と男たちも口をそろえて問い返してます。
・それに対して軍鶏は「ごちゃごちゃ言うとったら産むぞコラア」。「ええー!メスー!?」と叫ぶ人々。まあそういう反応だろうな。
・百姓の一人がおそるおそる進み出て「お、お言葉でござるが」。あら粟根さんだ。「板の上だからこそこうして侍になったり百姓になったりできるのではござらぬか」。殺気すらはらんでゆっくり振り向くシャモに向かって右方向を手を広げて示して「劇団員とか」。左を示し「客演さんとか」。「年が上とか下とかそういうぼんやりしたヒエラルキーは忘れて」。
ぶっちゃけすぎです。新感線らしいメタネタというか。しかしそういう粟根さんも客演じゃないのか。
・「板の上ではなんや」とすごむ軍鶏に粟根さんが切りかかり一刀両断に。わあいきなりだ。彼のこの強さは後の用心棒の先生(流石)と掛けてるのか。倒れる軍鶏の悲鳴がすごいです(笑)。
・しかし「やるやんけー」の一言であっさり回復。「ええー !斬ったのにー」と驚愕する一同。「おのれらわしが開演そうそう何を憤っているのかわかるか」メタネタ長いなあ。
百姓たちひそひそ相談してから一人が手をあげ、「つかまえて食べようとしてたから」「下手から上手へと追いかけまわしたから」。
この間いつのまにか銀之助がいなくなってる、と思うとそこへ「石だ石だ石をぶつけろー」と叫びつつさっそうと飛び込んでくる(笑)。ほんとこればっかりだ、と思ったら軍鶏にも「さっきからそればかりやな自分」と言われてました。
真正面から軍鶏に棒?で頭ぶたれたのに全然痛そうにもせず、それしかセリフないんかい、と言われても「はい !」と笑顔でさわやかに答える銀之助。そのストレートな肯定ぶりと表情がアホの子全開です。
・「わしの頭に石ぶつけたんもお前やな」と頭のわかりやすいたんこぶを示す軍鶏。「それは彼です !」と答える銀之助。声のトーンの高さとですます調が後輩的というか。
石をぶつけたという男があっさり名のり出る。「あたらないはずのコースだったのにシャモさんが」「シャモさん?」「シャモリさんが」と言い直すと軍鶏はご満悦な表情に。そこポイントなのか。
こんな会話してると百姓の一人が「スキありー」と後ろから駆け寄り軍鶏の腰をぐさっと刺す。キエーッというまさに鳥的な悲鳴をあげ、膝からくず折れた軍鶏はしかしすぐに「やるやんけ」とあっさり立ち上がる。「刺したのにー」。こういう繰り返しはいかにも宮藤さんらしい。
・「そこの暗がりに落ちとったわ」と軍鶏は何かを示す。「クギですね」という百姓に「クギですねーやない」「こちとら素足で頑張っとんねん」。ここでカメラが軍鶏の足を大写しに。たしかに素足だけども。
・「ほんまはわしかてええやつなんやで」と言ったあとに「ええダシ出すねんでー」と続く。そっちかい。
そこへまた「そんなら」「石だ」のかけあいが。軍鶏はおもむろにクギで「そんなら」の人のわき腹をさす。ショッキングな音楽とスポットライトがなんとも(笑)。あわててさされた本人含めみなおびえて逃げ出す。刺された人なんで動けるんだよ。
軍鶏がそれを「おい」と呼び止めると過半数が舞台上で足を止める。「動物プロなめとったらあかんぞ」。そういう問題なんだ。
・有名人との関係を自慢しはじめた軍鶏。しかし鶴太郎さんが書いたという軍鶏の絵にみな見入ってしまい軍鶏の話を聞いてない。
寂しかったらしい軍鶏が「そしたらこうしよう」と何度もいうが無視される。しかたないので言い方のトーンを少しずつ変えてみたり。
4回目くらいで銀之助があ、と気付いて「石だ石だ」をやるが途中で「もうええわ!」と棒でしばかれる。このとき太ももまで着物がめくれあがるのがちょっとセクシーです。
・「ひもじいおまえらにアタックチャンスや」と軍鶏が言うとチャララという音楽とともにスポットライトが。そこでシャモが客席にお尻を向けて大きな卵を産む(笑)。「あー卵だー」と人々はまだお尻にくっついた状態の卵に駆け寄り拝むようにする。どれだけ飢えてるんだ。
・しかし軍鶏は唐突に卵出すのを止めて起き直り、「ただでやるわけにはいかん」「そこに隠れてるおっちゃん」「こいつを切ったもんにわいの卵やるちゅうのは、どや ?」。
闇太郎に敵意持つのは後々の伏線か。
・すると皆は笑いだし「シャモリさん、こいつはここいらじゃ有名なアホですよ」。この時銀之助だけ皆が笑う理由がわからないぽい顔してることから彼がよそ者なのがわかります。
・「このようなうつけを斬れば刀が穢れる。拙者辞退いたす」。この蜉蝣峠の粟根さんはイコール流石先生なのだろうか。
ここまで見る限り軍鶏(天晴)以外の人物は、闇太郎・銀之助・百姓たちとも蜉蝣峠の内部と外部で人格がちゃんと連続してますが、蜉蝣峠の粟根さんは性格は流石先生と同一人物ぽいけど、流石先生はしばらく前からろまん街に滞在してるような(そして闇太郎や銀之助ともろまん街が初対面のような)態度だったからなあ。
(おそらくは天晴もそうであるように)魂だけが体から抜け出て蜉蝣峠に来ている、本人は夢のようにしか蜉蝣峠でのことを覚えていない、とかですかね。
・しかし背を向けて去ろうとした粟根さんがすぽんという音に振り向くと、軍鶏がでかい卵を持って立っている。そして卵を放るとふわふわクッションぽい感触で無事着地。普通割れるだろ。
そして「拾え」と凄みのある態度。ほとんど札束投げたくらいの態度です。
・武士は食わねど高楊枝とばかり懸命に背を向ける粟根さんに言葉で揺さぶりをかける軍鶏。「米もない水もない。もはやこれは卵ちゃうで。おのれの命や」。
ここってどれだけ環境悪いんだ。ろまん街はそんなに飢えてる感じないのになあ。
・誇りを捨てて卵を拾えと言われてついに誘惑に屈する粟根さん。ろまん街での本格登場の前に流石先生のヘタレな性格がすでに予告されています。
そこまでしたのに卵に飛びつこうとすると横から闇太郎がさらっていってしまう。ひどいなあ(笑)。
・ついに全身をあらわした闇太郎に「えらい挑発的やなキミ。マイクロミニやんけ」と軍鶏。なんか声が笑ってます。
ちなみにDVDでは闇太郎の丸出しの股間はモザイク処理がされています。なまじモザイクかけられた方がよりエロいような。劇シネ以降の演出ですね。なんともかんとも。
・闇太郎が食べてるものが自分のうんこだとわかって人々+軍鶏は右往左往。さらに闇太郎が桶からなにやら取り出して一同に投げ始めたことでさらに大混乱に。
ひとり舞台袖近くに残された銀之助は「ええーっ」と叫びながら舞台中央へ。そこへひときわまぶしいスポットライトが。ついに銀之助がメインの場面に。期待大です。
・「と、初めて与えられたセリフ以外の言葉を発してしまうほどおいら驚いた。この物語の主人公が登場シーンでおのれのババを立ち食い ?」。
このとき「立ち食い ?」で声が裏返り、続く「これはあらたなヒーローの誕生なのかぁ ?」は面白がるような口調で最後は声を張り上げず優しく抜けるようなトーン。
変幻自在かつ大げさな声の操り方に銀之助の突き抜けて明るい性格と勝地くんの力量の双方を感じます。
・その語尾にかぶるように「かあー !」と甲高い悲鳴。銀之助がいぶかっていると闇太郎が足早にやってきて絞めた軍鶏(普通の軍鶏の小道具)を銀之助に無言手渡す。
「ありがとう。いいやつだな」とはずむような声の銀之助。やはり人の心を繋ぐのは第一に食べ物ですか。
「おれ銀之助。売れない役者。銀ちゃんでいいよー。」と笑顔で。このあけっぴろげな、馴れ馴れしい態度が銀之助。
・銀之助が一座をクビになったあらましを語る。看板女優とねんごろになったのが座長にバレたということですが、この看板女優がまたすごい顔(笑)。銀之助女なら誰でもいいのか存外悪食なのか。お菓子ちゃんもアレだったし。
でも座長を殴り飛ばして「あたしたち本気よ」と抱きついてくる女優に対してえらいうんざり顔をしてるので、向こうから熱烈に迫られて据え膳食っちゃったあとに後悔してる感じなんでしょうね。
・座長をなだめてくれたのはアンパンの旦那。なぜここでアンパンマン?真ん中から顔が出るデザインのせいであんまり似てないし。地回りのやくざとかでしょうか。銀の一物を切断するというケジメの付け方がそれっぽいです。
しかし斬られた銀之助の悲鳴より女優の悲鳴の方がすごいです。
・この峠を降りると宿場があって闇の医者がいるってアンパンの旦那に聞かされたという銀之助。
「縫いあわせてもらうんだー」と腰に手をやって胸を張るようなポーズ。その行動も言い方も子供のようで無邪気というか呑気というか・・・。
・「なにを(縫い合わせてもらう)って?今おまえさんがくちゃくちゃ食ってるおいらのキンタマを・・・ちょ食うなよー!!」。呑気で陽気な会話口調から絶叫に転じるその呼吸、声の変化が見事です。気付くの遅いって(笑)。
「あーあーあー、それ食われたらおいら・・・女形になるしかねえやー」とか落ち込むポイントの微妙さも笑えます。
・そんな銀之助の悲嘆にかまわず残骸をぺっと吐き出す闇太郎。うわーひどい(笑)。「なんで出したー」という銀之助の怒り方も面白い。実はものすごく悲惨なことが起きてるわけなんですけどね。
・「蜉蝣」といきなり一言発した闇太郎が陽炎についての説明をはじめる。餓えと暑さで頭がおかしくなってくると人は幻を見る。おっかさんや生き別れた女や絞め殺して食ったであろう軍鶏の姿を見る。
母親と生き別れの女は後から振り返ってみればまさに予言。軍鶏=天晴の幻を見ることもあるのだろうか。
・闇太郎の言葉を聞いて軍鶏の死骸が消えてるのに気付く銀之助。この「軍鶏が消えた」というのは、あの軍鶏も蜉蝣峠が見せた幻で本当は人間天晴として実在してることの伏線でしょうか。
・おまえバカじゃねえな。という銀之助。「ああおれはバカじゃない。あのキャラで二時間半通すのはきつい」。
またもメタネタが。「そんなこと誰も望んではいないってのはそのとおりですが。
・「あんた、名前は」と聞く銀之助。あんた呼びになったのは闇太郎にちょっと敬意を抱くようになったからでしょうか。
「闇太郎。蜉蝣峠の闇太郎」ここでやっと主人公の名前が判明。「バカではない。常識はある。ただ記憶がない。思い出がない。だから陽炎の向こうに幻を見ることもない」。
幻を見ることも叶わなかった闇太郎が母の幻を見るのがラストシーンなのを思うと深いセリフです。
・闇太郎いわく、いろんな人にどこから来たどこへ行くなどと聞かれるのがわずらわしいからバカの振りをしているそう。そんな範疇は超えていたが。
「大衆とは勝手なものだ。次会うときはさらなるバカを期待する。おれは期待にこたえてバカになる」。「で、とうとうおのれのクソも食ってしまったんだな」と銀之助。当然の突っ込みですね。
闇太郎しばし沈黙して、「それについては今、とても後悔している」。なぜそうまでして赤の他人の期待に応える必要があるのか不思議ですが、思えば“大衆の期待に応えようと”芸がエスカレートするのは芸人的、役者的行動。ここが「板の上」だから役者的になるんですかね。
・「あれ以上のバカはない。もうギブ」という闇太郎に「だったらどっか他に行ったらいいじゃないか」と銀之助。バカでありつづけなければ峠にいる資格がないのか。
・誰かにここで待つよう言われたからという闇太郎に、誰に言われたのか覚えてないなら待つ必要はない、一緒にいこうと銀之助は旅笠を差し出す。
バカを演じることに限界を感じた―現状の生き方に行き詰まっていた闇太郎に銀之助が新たな道を指し示す。沈滞していた闇太郎の人生が再び動き出した瞬間です。
・大きく着物の裾がはだけた銀の股間を指差して「血が出てる」という闇太郎に「ああチンコ斬られちまったから」と銀之助はあっさりと応える。
キンタマ食った相手を恨む様子もなく実にさっぱりしてるのに驚きます。セリフ回しにいやらしさも照れもなく本当にさらっと自然なのが上手いなあ。
・「痛くないのか」と聞く闇太郎。実際いまだに傷が塞がりきってないのはヤバいのでは。
銀之助いわく「・・・忘れてた。あっちいから。太陽って暑いよねー」。アホもここまでくるとさすがに空元気に思えてきます。
・「いいからおれについてこい、闇太郎!」と銀之助はいい笑顔で再度笠を差し出す。
そして二人の後ろ姿に音楽がかぶり「蜉蝣峠」のタイトルが浮かぶ。半分銀之助が主役みたいな扱いの良さについ感動してしまいました。
その中に比較的身奇麗なのが一人・・・あれ、勝地くんだ。というわけで銀之助も早々に登場。これは出ずっぱりなのかも、とストーリーに関係ないところでホクホク。
・「そしたらこうしよう!」と男の一人が叫ぶと、銀之助が元気よく舞台中央に跳んで出て「石だ石だ、石をぶつけろー」。勝地くんがさんざん難儀した、というかこればっか練習してたとよくネタにされてるセリフですね。面白みはもひとつわかるようなわからないようなですけど。やや低めのよく通るいい声です。
言った以上軍鶏に石ぶつけてやっつけるのかと思ったら別にぶつけないし。まああの混乱度合いじゃほかの人にぶつかるだけか。
・軍鶏を追って男たちが舞台からはけたあとに、フラメンコギター風の音楽が流れぼわぼわ髪(ぱっと見歌舞伎の百日鬘みたいな)の男(闇太郎)が茂み ?からぬっと現れる。登場音楽からしてアウトローな風情いっぱいです。
・闇太郎の頭が茂みに引っ込むとまたまたさっきの軽快な音楽とともに軍鶏追って男たちが舞台へ走りこんでくる。しかし今度は軍鶏は彼らから離れた(闇太郎がひそんでいる)茂みのほうにいってしまう。軍鶏の足の速さに疲れ気味の男たち。
あれ銀之助がいない ?と思ったらさっきの男が高らかに「そしたらこうしよう」と叫ぶと舞台に踊りこんできて「石だ石だ、石をぶつけろー」。すでに3回しゃべっていながらセリフはこれ一つというのもすごい。セリフを覚えられない(結果セリフをもらえない)三文役者のような。
・軍鶏を追って茂みのほうへ男たちが向かったのでここで闇太郎と出会うかと思いきや、彼らは軍鶏追ってまたまた舞台から退場。
入れ違いにまたフラメンコな曲でぬっと登場する闇太郎。さっきに引き続きなんか手に持ったものをむしゃむしゃ食べてます。この時点ではまさかあんなものとは・・・。
・そして再び軍鶏登場・・・って今回はあからさまに着ぐるみきた人間。「コケーコッコッコッコ」とか言ってますけど。ダークヒーロー役の堤真一さん、まずは軍鶏として登場です(笑)。
これ堤さんファン的にはどうなのか。闇太郎と間近で目があった軍鶏は「なに?」。なんか軍鶏のくせにしゃべってるよ。薄いサングラスもかけてるよ。
・茂みに引っ込んだ闇太郎をちょっと覗き込むようにしてた軍鶏。そこへ再び男たちが現れる。またこれで軍鶏と追いかけっこするのかと思ったら「何してるん自分らはよこいや」と軍鶏がいきなり人間に指図を。しかも関西弁。
さらにそこへ並べといわれて順番を決めかねてる男たちを「順番なんかどうでもええねん」と手にした棒 ?でしばき倒す。ほとんど一人を集中攻撃でしたけど。
・「百姓も侍もあるけえ。板の上ではみな平等や」。堂々と客席のほうを指差す軍鶏。なんか軍鶏のくせに格好いいです。
ん ?板 ?案の定というか「板?道じゃね?」と男たちも口をそろえて問い返してます。
・それに対して軍鶏は「ごちゃごちゃ言うとったら産むぞコラア」。「ええー!メスー!?」と叫ぶ人々。まあそういう反応だろうな。
・百姓の一人がおそるおそる進み出て「お、お言葉でござるが」。あら粟根さんだ。「板の上だからこそこうして侍になったり百姓になったりできるのではござらぬか」。殺気すらはらんでゆっくり振り向くシャモに向かって右方向を手を広げて示して「劇団員とか」。左を示し「客演さんとか」。「年が上とか下とかそういうぼんやりしたヒエラルキーは忘れて」。
ぶっちゃけすぎです。新感線らしいメタネタというか。しかしそういう粟根さんも客演じゃないのか。
・「板の上ではなんや」とすごむ軍鶏に粟根さんが切りかかり一刀両断に。わあいきなりだ。彼のこの強さは後の用心棒の先生(流石)と掛けてるのか。倒れる軍鶏の悲鳴がすごいです(笑)。
・しかし「やるやんけー」の一言であっさり回復。「ええー !斬ったのにー」と驚愕する一同。「おのれらわしが開演そうそう何を憤っているのかわかるか」メタネタ長いなあ。
百姓たちひそひそ相談してから一人が手をあげ、「つかまえて食べようとしてたから」「下手から上手へと追いかけまわしたから」。
この間いつのまにか銀之助がいなくなってる、と思うとそこへ「石だ石だ石をぶつけろー」と叫びつつさっそうと飛び込んでくる(笑)。ほんとこればっかりだ、と思ったら軍鶏にも「さっきからそればかりやな自分」と言われてました。
真正面から軍鶏に棒?で頭ぶたれたのに全然痛そうにもせず、それしかセリフないんかい、と言われても「はい !」と笑顔でさわやかに答える銀之助。そのストレートな肯定ぶりと表情がアホの子全開です。
・「わしの頭に石ぶつけたんもお前やな」と頭のわかりやすいたんこぶを示す軍鶏。「それは彼です !」と答える銀之助。声のトーンの高さとですます調が後輩的というか。
石をぶつけたという男があっさり名のり出る。「あたらないはずのコースだったのにシャモさんが」「シャモさん?」「シャモリさんが」と言い直すと軍鶏はご満悦な表情に。そこポイントなのか。
こんな会話してると百姓の一人が「スキありー」と後ろから駆け寄り軍鶏の腰をぐさっと刺す。キエーッというまさに鳥的な悲鳴をあげ、膝からくず折れた軍鶏はしかしすぐに「やるやんけ」とあっさり立ち上がる。「刺したのにー」。こういう繰り返しはいかにも宮藤さんらしい。
・「そこの暗がりに落ちとったわ」と軍鶏は何かを示す。「クギですね」という百姓に「クギですねーやない」「こちとら素足で頑張っとんねん」。ここでカメラが軍鶏の足を大写しに。たしかに素足だけども。
・「ほんまはわしかてええやつなんやで」と言ったあとに「ええダシ出すねんでー」と続く。そっちかい。
そこへまた「そんなら」「石だ」のかけあいが。軍鶏はおもむろにクギで「そんなら」の人のわき腹をさす。ショッキングな音楽とスポットライトがなんとも(笑)。あわててさされた本人含めみなおびえて逃げ出す。刺された人なんで動けるんだよ。
軍鶏がそれを「おい」と呼び止めると過半数が舞台上で足を止める。「動物プロなめとったらあかんぞ」。そういう問題なんだ。
・有名人との関係を自慢しはじめた軍鶏。しかし鶴太郎さんが書いたという軍鶏の絵にみな見入ってしまい軍鶏の話を聞いてない。
寂しかったらしい軍鶏が「そしたらこうしよう」と何度もいうが無視される。しかたないので言い方のトーンを少しずつ変えてみたり。
4回目くらいで銀之助があ、と気付いて「石だ石だ」をやるが途中で「もうええわ!」と棒でしばかれる。このとき太ももまで着物がめくれあがるのがちょっとセクシーです。
・「ひもじいおまえらにアタックチャンスや」と軍鶏が言うとチャララという音楽とともにスポットライトが。そこでシャモが客席にお尻を向けて大きな卵を産む(笑)。「あー卵だー」と人々はまだお尻にくっついた状態の卵に駆け寄り拝むようにする。どれだけ飢えてるんだ。
・しかし軍鶏は唐突に卵出すのを止めて起き直り、「ただでやるわけにはいかん」「そこに隠れてるおっちゃん」「こいつを切ったもんにわいの卵やるちゅうのは、どや ?」。
闇太郎に敵意持つのは後々の伏線か。
・すると皆は笑いだし「シャモリさん、こいつはここいらじゃ有名なアホですよ」。この時銀之助だけ皆が笑う理由がわからないぽい顔してることから彼がよそ者なのがわかります。
・「このようなうつけを斬れば刀が穢れる。拙者辞退いたす」。この蜉蝣峠の粟根さんはイコール流石先生なのだろうか。
ここまで見る限り軍鶏(天晴)以外の人物は、闇太郎・銀之助・百姓たちとも蜉蝣峠の内部と外部で人格がちゃんと連続してますが、蜉蝣峠の粟根さんは性格は流石先生と同一人物ぽいけど、流石先生はしばらく前からろまん街に滞在してるような(そして闇太郎や銀之助ともろまん街が初対面のような)態度だったからなあ。
(おそらくは天晴もそうであるように)魂だけが体から抜け出て蜉蝣峠に来ている、本人は夢のようにしか蜉蝣峠でのことを覚えていない、とかですかね。
・しかし背を向けて去ろうとした粟根さんがすぽんという音に振り向くと、軍鶏がでかい卵を持って立っている。そして卵を放るとふわふわクッションぽい感触で無事着地。普通割れるだろ。
そして「拾え」と凄みのある態度。ほとんど札束投げたくらいの態度です。
・武士は食わねど高楊枝とばかり懸命に背を向ける粟根さんに言葉で揺さぶりをかける軍鶏。「米もない水もない。もはやこれは卵ちゃうで。おのれの命や」。
ここってどれだけ環境悪いんだ。ろまん街はそんなに飢えてる感じないのになあ。
・誇りを捨てて卵を拾えと言われてついに誘惑に屈する粟根さん。ろまん街での本格登場の前に流石先生のヘタレな性格がすでに予告されています。
そこまでしたのに卵に飛びつこうとすると横から闇太郎がさらっていってしまう。ひどいなあ(笑)。
・ついに全身をあらわした闇太郎に「えらい挑発的やなキミ。マイクロミニやんけ」と軍鶏。なんか声が笑ってます。
ちなみにDVDでは闇太郎の丸出しの股間はモザイク処理がされています。なまじモザイクかけられた方がよりエロいような。劇シネ以降の演出ですね。なんともかんとも。
・闇太郎が食べてるものが自分のうんこだとわかって人々+軍鶏は右往左往。さらに闇太郎が桶からなにやら取り出して一同に投げ始めたことでさらに大混乱に。
ひとり舞台袖近くに残された銀之助は「ええーっ」と叫びながら舞台中央へ。そこへひときわまぶしいスポットライトが。ついに銀之助がメインの場面に。期待大です。
・「と、初めて与えられたセリフ以外の言葉を発してしまうほどおいら驚いた。この物語の主人公が登場シーンでおのれのババを立ち食い ?」。
このとき「立ち食い ?」で声が裏返り、続く「これはあらたなヒーローの誕生なのかぁ ?」は面白がるような口調で最後は声を張り上げず優しく抜けるようなトーン。
変幻自在かつ大げさな声の操り方に銀之助の突き抜けて明るい性格と勝地くんの力量の双方を感じます。
・その語尾にかぶるように「かあー !」と甲高い悲鳴。銀之助がいぶかっていると闇太郎が足早にやってきて絞めた軍鶏(普通の軍鶏の小道具)を銀之助に無言手渡す。
「ありがとう。いいやつだな」とはずむような声の銀之助。やはり人の心を繋ぐのは第一に食べ物ですか。
「おれ銀之助。売れない役者。銀ちゃんでいいよー。」と笑顔で。このあけっぴろげな、馴れ馴れしい態度が銀之助。
・銀之助が一座をクビになったあらましを語る。看板女優とねんごろになったのが座長にバレたということですが、この看板女優がまたすごい顔(笑)。銀之助女なら誰でもいいのか存外悪食なのか。お菓子ちゃんもアレだったし。
でも座長を殴り飛ばして「あたしたち本気よ」と抱きついてくる女優に対してえらいうんざり顔をしてるので、向こうから熱烈に迫られて据え膳食っちゃったあとに後悔してる感じなんでしょうね。
・座長をなだめてくれたのはアンパンの旦那。なぜここでアンパンマン?真ん中から顔が出るデザインのせいであんまり似てないし。地回りのやくざとかでしょうか。銀の一物を切断するというケジメの付け方がそれっぽいです。
しかし斬られた銀之助の悲鳴より女優の悲鳴の方がすごいです。
・この峠を降りると宿場があって闇の医者がいるってアンパンの旦那に聞かされたという銀之助。
「縫いあわせてもらうんだー」と腰に手をやって胸を張るようなポーズ。その行動も言い方も子供のようで無邪気というか呑気というか・・・。
・「なにを(縫い合わせてもらう)って?今おまえさんがくちゃくちゃ食ってるおいらのキンタマを・・・ちょ食うなよー!!」。呑気で陽気な会話口調から絶叫に転じるその呼吸、声の変化が見事です。気付くの遅いって(笑)。
「あーあーあー、それ食われたらおいら・・・女形になるしかねえやー」とか落ち込むポイントの微妙さも笑えます。
・そんな銀之助の悲嘆にかまわず残骸をぺっと吐き出す闇太郎。うわーひどい(笑)。「なんで出したー」という銀之助の怒り方も面白い。実はものすごく悲惨なことが起きてるわけなんですけどね。
・「蜉蝣」といきなり一言発した闇太郎が陽炎についての説明をはじめる。餓えと暑さで頭がおかしくなってくると人は幻を見る。おっかさんや生き別れた女や絞め殺して食ったであろう軍鶏の姿を見る。
母親と生き別れの女は後から振り返ってみればまさに予言。軍鶏=天晴の幻を見ることもあるのだろうか。
・闇太郎の言葉を聞いて軍鶏の死骸が消えてるのに気付く銀之助。この「軍鶏が消えた」というのは、あの軍鶏も蜉蝣峠が見せた幻で本当は人間天晴として実在してることの伏線でしょうか。
・おまえバカじゃねえな。という銀之助。「ああおれはバカじゃない。あのキャラで二時間半通すのはきつい」。
またもメタネタが。「そんなこと誰も望んではいないってのはそのとおりですが。
・「あんた、名前は」と聞く銀之助。あんた呼びになったのは闇太郎にちょっと敬意を抱くようになったからでしょうか。
「闇太郎。蜉蝣峠の闇太郎」ここでやっと主人公の名前が判明。「バカではない。常識はある。ただ記憶がない。思い出がない。だから陽炎の向こうに幻を見ることもない」。
幻を見ることも叶わなかった闇太郎が母の幻を見るのがラストシーンなのを思うと深いセリフです。
・闇太郎いわく、いろんな人にどこから来たどこへ行くなどと聞かれるのがわずらわしいからバカの振りをしているそう。そんな範疇は超えていたが。
「大衆とは勝手なものだ。次会うときはさらなるバカを期待する。おれは期待にこたえてバカになる」。「で、とうとうおのれのクソも食ってしまったんだな」と銀之助。当然の突っ込みですね。
闇太郎しばし沈黙して、「それについては今、とても後悔している」。なぜそうまでして赤の他人の期待に応える必要があるのか不思議ですが、思えば“大衆の期待に応えようと”芸がエスカレートするのは芸人的、役者的行動。ここが「板の上」だから役者的になるんですかね。
・「あれ以上のバカはない。もうギブ」という闇太郎に「だったらどっか他に行ったらいいじゃないか」と銀之助。バカでありつづけなければ峠にいる資格がないのか。
・誰かにここで待つよう言われたからという闇太郎に、誰に言われたのか覚えてないなら待つ必要はない、一緒にいこうと銀之助は旅笠を差し出す。
バカを演じることに限界を感じた―現状の生き方に行き詰まっていた闇太郎に銀之助が新たな道を指し示す。沈滞していた闇太郎の人生が再び動き出した瞬間です。
・大きく着物の裾がはだけた銀の股間を指差して「血が出てる」という闇太郎に「ああチンコ斬られちまったから」と銀之助はあっさりと応える。
キンタマ食った相手を恨む様子もなく実にさっぱりしてるのに驚きます。セリフ回しにいやらしさも照れもなく本当にさらっと自然なのが上手いなあ。
・「痛くないのか」と聞く闇太郎。実際いまだに傷が塞がりきってないのはヤバいのでは。
銀之助いわく「・・・忘れてた。あっちいから。太陽って暑いよねー」。アホもここまでくるとさすがに空元気に思えてきます。
・「いいからおれについてこい、闇太郎!」と銀之助はいい笑顔で再度笠を差し出す。
そして二人の後ろ姿に音楽がかぶり「蜉蝣峠」のタイトルが浮かぶ。半分銀之助が主役みたいな扱いの良さについ感動してしまいました。