・ひかるのハンストについて両親が議論するところへ、「なあに心配なんかいらんよいらんよー」と軽いノリで登場する和尚。
ふつうに障子開けて出てきたんですが、人の家に勝手に上がりこんで飲んでたわけですか?
・酒を酌み交わす伝衛門と和尚。若い頃からの付き合いだからか、普段は何をせずとも威厳と風格を感じさせる伝衛門が、ちょっと拗ねたような悪童じみた顔つきなのが何か可愛いです。
机が低いのかちょっと前屈み気味になって肘をついてるせいもあるかな。和尚に対しては一人称も「俺」ですしね。
・猛が自分の無実を信じない三枝家の人々に腹を立ててるとの和尚の言葉に、伝衛門は特に反発も反省した風も見せない。
伝衛門自身はこの件について最初から猛は無実だと思っているので、自分を「無実を信じない三枝家の人々」に含んでないからですね。
・猛の無実を主張して、「わしの言うことに間違いはないよ。だってわしゃあ、あいつがガキの頃からちゃーんと見てきたんだから。」
同じように子供の頃から見てきたはずの文彦の人間性は見抜けないんでしょうか(笑)。それとも見抜いたうえで、いつまでも勘当状態もよくないと家に戻すことに反対しなかったのか。
・夜更け、猛は立ち上がって窓から外を見つめる。その物思わし気な顔からして、目線の先にあるのはひかるの部屋でしょう。
彼はひかるが自分のためにハンストしてるなんて事は知りませんが、いったんは疑っても結局は自分を信じると言ってくれたひかるにひどい言い方をしたとちょっと後悔しているのでは。
・同じ頃机に向かっているひかる。寝巻きでなく洋服を着てるところからして、食べないだけでなく寝るつもりもないらしい。
眠った方が空腹が紛らわせると思いますが、起きた状態で空腹に耐えるのも罰のうちだと考えてるのでしょうか。
・ここぞとばかりに豪勢な食事を用意してひかるの部屋を訪ねてくる絹。
甘味(カステラのアラモード?)を目の前に差しつけるあたりなど結構やり方がえげつない。ここで誘惑に負けてしまったら心の傷になりそうです。
・ひかるが自分のためにハンストしてると聞いたとき、無表情に近い(心を閉ざしていた)猛の目に強い光が宿る。
猛に食べるよう訴える絹の目にも、相手を何とか説き伏せようとする切実な光と(ひかるへの)気遣いがある。それでも動かない猛にじれて、無理やり汁物を飲ませようとする時などかすかに涙が光っている。名演技です。
・興奮して猛を罵る絹を押さえつける伝衛門は去り際に、「猛、おまんもいいかげんにせんか」と言う。
猛をレイプ未遂犯だと信じている絹と違い、伝衛門は和尚との会話でもわかるように猛がハンストを続ける真意をわかっているので、「いつまでも拗ねるのはやめろ」という意味ですね。
はっきり自分は猛を信じているが、立場上おおっぴらにそれを表明できないのだ、という事をもっとちゃんと話してあげればいいと思うのだけれど。
・猛に食事をすすめても拒否され、汁がこぼれた服を拭いてやるのも拒否され、口さえきいてもらえないことをお花は悲しみ部屋を飛び出す。
この時お花も絹同様涙ぐんでいる。顔を背けうなだれる猛も、自分の意地のためにひかるや絹、お花たちにも辛い思いをさせてることがだんだん重くなってきてるんじゃないだろうか。
・土蔵の猛はともかく、ひかるもハンスト中ずっと同じ服なような。食べない眠らないだけでなく、着替えも風呂もなしで引きこもってるんでしょうね。
・バー「アザミ」にやってきて、女給に「坊や」扱いされながらも、浅草で流行ってるカクテルを頼む文彦。
「浅草で流行ってるあのカクテル」という言い方からすると、実はカクテルの名前を知らないんじゃ。服装もいかにも遊びなれた風を気取ってるのがかえって情けない。
女給が「ああ、あれね」というのも、そのへんを見抜いたうえで内心バカにしつつ遊び人ごっこに付き合ってあげてる感じです。
・でも崇子の肩に手をかけたり自然に手を握ったりするあたりはさすがに女慣れしている。
崇子の過去をめぐるこの二人の応酬は、顔の距離がやたら近いのと、互いに大げさな身振りのせいもあって、ちょっとしたサスペンス。
・椅子に片足を乗せて「靴に接吻してくれたら教えてあげる」
「むしゃぶりつきなさい」に続く高飛車系名台詞。この二人お店的にはいい迷惑です。
そしてさすがにちょっと戸惑ったもののしっかりあっさり接吻してのける文彦。
目的意識がはっきりしていて些末なことは気にしない性質、と好意的に解釈できなくもないですが、このような屈辱的行為を平然と受け入れる文彦は、下郎呼ばわりに怒った猛よりはるかにプライドがないと言わざるをえない。崇子もそう感じていることでしょう。
・「猛くんに初めて会った時、何故だか惹かれたわ」 「猛くん」という呼び方に、ひかるの良き先生だった頃の優しく毅然とした崇子先生の面影が垣間見えた気がしました。
この時彼女が評する猛の魅力ポイント「あの寂しそうな眼差し、じっと健気に耐えているあの背中」には多くの視聴者が頷いたのでは。続く「あの子には私と同じ匂いがあった」はどうかと思うけど。
・「思いっきり抱きしめたくなった。あの子と抱き合えば心の隙間を埋められるような気がした」との想いが高じて猛に迫ったそうですが、それが何故「むしゃぶりつきなさい」発言になるのだ。
もっと普通に告白していれば、拒絶されるなりにもう少し事態は軽く済んだと思うのだが。根っからのS体質ですか。
土壇場で自分を裏切った恋人と同列に捉えて腹立てるのもなあ。
・さすがに力尽きたか土間で転がっていた猛が、和尚の存在に気づいて起き直る。
これまで伝衛門が来ても絹が来てもこんな反応はしなかった。「俺は汚らわしい人間なんですか」の問いかけといい、和尚には素直に心を開いてるのがわかります。
・「わしは今だかつて汚らわしい人間になどあったことはない!」
力強く言い切る和尚の言葉に目を伏せたときの猛が、憂いを帯びた「男」の顔をしていてドキッとした。
随所で不可思議なフェロモンを振りまいてくれますねえ。
・「ひかるはまだまだ子供じゃ」と言ったそばから「ひかるももう大人じゃ」と矛盾しまくりの和尚。まあ全体として言わんとするところはわかりますが。
しかし「猛も男ざかり」って・・・。まだ16ですよ?(笑)
・「猛とひかるを一緒にする気があるのか」との問いに即座に「冗談ではございません」と言い切った絹に「何故じゃ」と繰り返す和尚。
これは絹だけでなく伝衛門に対しても発した言葉ですね。猛とひかるが惹かれあっているのは明白なのに、二人の仲を認めないまま猛を片腕として身分も不安定な状態でそばに置こうというのは、要は飼い殺しじゃないかと匂わす和尚の言葉に伝衛門は反論できない。
このあと自然界に比べて人間など小さい小さい、と続けるのは唐突な気もしますが、身分の違いなど何ほどのものでもないという事が言いたかったんですよね。
・和尚が襖を開けると文彦が立っている。
この時の文彦の妙に偉そうな、親に対してまでからむような態度は何だろう。目障りなはずの猛の無実をなぜか証明してやるのもどういう心境の変化か。
皆が猛の処遇について語るのを聞いて、父と和尚の猛への思い入れを改めて感じたゆえに、自分も役に立つことをして彼らに認めてほしかったのだろうか。
・文彦の話を聞いた絹は衝撃に絶えない様子で、早朝からおにぎりを自作。
自分の態度が猛の気持ちを硬化させたことを反省はしても、彼の無実をこれまでは信じてなかったのですね。それだけに済まなさもひとしおなんでしょう。
・土蔵で力なく座っている猛。絹が入ってきたのに気づくとそっと目を向けるが、いかにも気がない様子で目線をそらし顔を背ける。
崇子が真実を語ったと聞いても「何をいまさら」と言いたげな顔で何もリアクションを返さない。
被害者側の証言を待たず自分の言葉だけでは信用してもらえなかったという点では変わりませんからね。
・絹が詫びても手をついても表情を変えなかった猛が、絹自らおにぎりを握ったと聞いてはっと顔をあげる。
ひかるのハンストもそうですが、言葉ではなく身をもって誠意を示してこそ猛の心を溶かせるということですね。
・おにぎりを持ってひかるを訪ねる猛(絹はひかるの分は作らなかったんだろうか?)。
手製おにぎりによって心の溶けた猛は、さっきまでとはまるで違う、めったに見せないほど少年らしい顔になっています。
・相当空腹なはずなのに、おにぎりを手付かずのまま、まずひかるの元へ持ってくる猛。まず猛の手におにぎりを渡すひかる。
互いを思いやる二人の姿が清清しい。鼻をすすりつつおにぎりを頬張る表情も可愛らしいです。
・落盤事故で小作が生き埋めに。一難去ってまた一難。
長期の絶食後なのに急ぎ現場へ駆けつける猛。元気だなあ。
(つづく)