about him

俳優・勝地涼くんのこと。

『六番目の小夜子』(1)

2007-04-27 00:20:39 | 他作品
2000年4月にNHK教育の「ドラマ愛の詩」枠で放映されたジュブナイルドラマ。
恩田陸さんの同名の小説を原作としながら大胆な改変を行い、かつ原作の香りを十二分に残した名作として、今も熱烈なファンが多いようです。

大胆な改変の一つは舞台を高校から中学に移したこと。
過剰気味の自意識を上手くコントロールできず人間関係に苦しみもがく、一番不安定な時期の少年少女に焦点を当てることで、彼らが「サヨコ」という傍から見れば異様な「ゲーム」に学校ぐるみ何年にもわたって振り回されのめりこんでゆく展開に説得力を持たせていました。

またオリジナルキャラクター・潮田玲を主人公に据え、原作には存在しなかった玲-沙世子-秋の三角関係を作り出したこと。
三角関係といっても普通なら玲(女)と沙世子(女)で秋(男)を競うところを、沙世子と秋が玲を挟んで睨み合うという展開。
玲と秋の関係も家が隣同士の「親友」であり、しょっちゅう二人でいるのに周囲から「秋は玲の保護者」と認識されている色気のなさ。
一方で玲と沙世子の関係にも「女の友情」で片付けられない一種の艶っぽさがある。

また玲は秋や沙世子の頭の良さ・冷静さに憧れ、秋と沙世子は玲の天真爛漫な明るさ、前向きさ、人から愛される性格に憧れと嫉妬を抱き、秋と沙世子は互いに相手を自分と同種の人間だと感じるゆえの反感と仲間意識を同時に持っている
(沙世子が玲に「潮田さんは関根くんの事どれくらい知ってるの?」と尋ねたのは「自分の方が秋を理解できる」と自負してたからじゃないだろうか)。

この作品には不思議なほど恋愛がからんでこない。雅子と由紀夫が付き合ってるらしい描写がちらちらあるくらい(原作でははっきりとカップル)。
思い切って恋愛色を排することで、まだ男にも女にもなりきらない、性的にも精神的にも未熟な少年少女の、性差を超えた「特別な友情」を瑞々しく描いたのが、この作品の特徴であり成功の理由であったんじゃないでしょうか。

また、キャラクターの性格付けも、たとえば基本的には「陽」のキャラである玲が「なにも特別な才能のない、誰からも選んでもらえない自分」に悩んでいたり、基本「陰」で妖しい魅力に溢れた沙世子が玲がらみではごく無邪気な笑顔を見せたりと決して単純ではない。
佐野先生(一色紗英さん)が語ったように「誰だって複雑で繊細」なのである。
ストーリーの運び方やエピソードの組み入れ方、台詞にもそうした脚本家の人間理解が表れていたように思います。

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『おれがあいつであいつがおれで』(2)-2(注・ネタバレしてます)

2007-04-23 00:45:27 | おれがあいつであいつがおれで
・アケミに「一夫くん」と呼ばれて同時に「はい」と返事する一美と一夫。
一美/一夫の事務的な返事に比べて一夫/一美は顔を振り向ける瞬間から実に嬉しそう。
この一連の表情の動きは「吉澤さん上手いなあ」と感じました。

・思わず「はい」と答えてしまったのを「歯~痛ってえ~」とごまかす一夫/一美。コントのようで可笑しいです。

・「アケミちゃんがおれと?うそだろお~」という一夫のモノローグの声が鼻の下伸びまくっている。
一夫/一美の顔も、もろににやけてるわけじゃないのに見開いた目と口元の緩み方、体の乗り出し方でデレデレっぷりがわかる。
勝地くんも吉澤さんもナイス演技。

・アケミが一美/一夫の手を握ったとき、陰から見守る一夫/一美が目も口も開きっぱなし。いい表情だ(笑)。

・山本が一夫/一美を連れ去るのに気づいた一美/一夫は少し目を細めていて、入れ替わりの秘密がばれるのを心配するより、自分を「狙ってる」という山本がどうするつもりなのかの方が気になっているように見える。

・「ううん、なんでもない。プリン買ってくる」。この台詞のあとに一美/一夫は歯を見せて晴れやかに笑う。
初見のとき「なんか妙な笑い方するなあ」と思ったんですが、なぜこんなに不自然な感じを覚えるのか考えてみたら・・・女の子特有の表情だったから。男の子はまずしない類の、女の子ならではの笑い方。
これまでは、男女どちらにもありうる表情か、あるいは笑いどころとして女の子らしさを誇張して演じているので「不自然なのが自然」な表情かだったんですが、ストーリーの流れに直接関係ないようなごく何気ない場面、言葉づかいも格別女言葉ではないのに、表情はナチュラルに女の子なために違和感が生じる。
そう気づいたとき正直ショックを受けました。
今まで男と女でちょっとした表情がこんなに違うものだなんて意識したことがなかった。
でも16歳の勝地くんはそれをわかっていてきっちり演じてのけていた。
度肝抜かれました、まったく。

・上の台詞の直後、男子生徒とぶつかるシーン。「ごめんなさい」という声のトーンが実にエレガント(笑)。
ぶつかる方もぶつかられる方も動きがすごく自然なのにも感心しました。

・山本に口説かれた一夫/一美の「賭けだろ、それ」と白けきった表情が上手い。

・山本を殴った理由を「あいつちゃらちゃらしててむかついたから」と言って首筋をさわりスカートをさわる一夫/一美の手つきが自然で上手い。
殴った本当の理由を伏せるのは一美が山本に惹かれているのを薄々察していて、彼女の気持ちを思いやったからだろう。
出会い(再会)のシーンから一貫している一夫の不器用な優しさが現れた場面。

・体育用具室に入って「だいじょうぶ?」と問いかける時の声の調子が、つくづくと女の子。

・「一美ちゃんにせまってみたんだよ、こう、」と顔を近づけられて、うっとり目を閉じる一美/一夫に爆笑。

・「私がいつもパパの話をしてるから」って昨日再会したばかりなわけだが。しかも表現の大げさなこと(笑)。
まあとっさのごまかしとしては上出来です。パパもそんな事には気づかず喜んでるし。

・「さっきの保健体育の問題」という比喩。ちょっと一ひねりされてて、かつ高校生らしい語彙が可愛らしいな、と。

・一夫の父親が一美の父親を悪くいうのに反発する一美/一夫。
普段はつれなくしてても外の人に父が悪く言われるのに堪えられないところがやっぱり親子。
先に父が自分の親離れを寂しがってるのに気づくシーンがここで生きる。

・部屋で暴れる一美/一夫。「もういや!もういやあーー!!」の叫びと鞄の振り回し方が見事に女の子のヒステリーという感じ。さすがです。

・回想の子供時代。当時は一美の方が背が高かった。今は逆転してるところにそれだけ二人が大人になったんだな、と時の流れを感じました。

・喫茶店での一美と一夫の会話。まわりのお客さんは彼らの言葉使いにさぞ驚いたことだろう。
実際ロケ現場を見た人たちも「どういうドラマ!?」って思ったのでは。

・落雷のとき、肝心の立つべき位置からはずれちゃってるんだが・・・。

・山本と出会って間もない一美が一夫に「心変わり」するのはわかるんですが、長らくアケミを想ってきた一夫があっさり一美を選ぶのはちょっと違和感があるかも。尺の関係で仕方ないんでしょうが。
まあラストにもあるように「赤い糸」のせいということで(笑)。

 


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『おれがあいつであいつがおれで』(2)-1(注・ネタバレしてます)

2007-04-20 00:50:58 | おれがあいつであいつがおれで
・「危なかったー。ギリギリ、セーフ!」の台詞とともに山本(速水もこみちくん)初登場。
太陽をしょった笑顔に「キラーン」という効果音まで重なる見事なベタっぷりが良いなあ。

・車に轢かれかけた一美を助けた一夫は、眼鏡をかけなおす直前一瞬爽やかな笑顔を浮かべ、それがすぐに曇り拗ねた顔に変わる。
一美に笑顔で「大丈夫?」と言おうとしたのを山本に先を越されたと気づいたからでしょうが、数秒間でのちょっとした表情の変化で一夫の心理がしっかり説明されている。

・クラスに斉藤一夫という名の男子がいると聞かされた直後、山本が手を振るのを見て一美は照れくさそうな笑顔になる。が、山本が通路隔てて隣の席の一夫を指差すとがっかりした表情に。
山本が「斉藤一夫」だと思い込んで、「彼と名前が似てるなんて♪」と嬉しくなったら、「一夫はこっちの奴だよ」と山本の仕草に教えられたので「なーんだ」と落胆したのがよくわかります。

・窓際の席のアケミの方を見つめる一夫。顔を前に傾けて彼の視界を塞ぐ形になった一美を一瞬不快そうに睨んでいる。
その後アケミの横顔を見つめてそっとにやける顔。この短いシーンだけでアケミを好きなのが丸分かり。

・山本が「一美を一週間で落とす宣言」したときの一夫の「またー!?」という声の響きが幼くて、彼の少年らしい正義感の強さを引き立てている。
ここのシーンの言い回しはどこも巧み。「そのうち刺されんぞ」と山本の脇腹をつつく仕草も。

・落雷で入れ替わってしまった一美in一夫。自分の変化に気づかぬまま話す口調がちゃんと勝地くん演じる一夫と似ているのに感心しました。

・「なんでおれがあの転校生に!?」。一夫のモノローグの声がヘタレ気味でユーモラス。

・一美in一夫の第一声に爆笑。どこから声を出しているんだ。

・「ぶって!思いっきり!」。一夫の体が傷つくのは別にいいという・・・。

・バッグで殴られた時の悲鳴と倒れる時の膝の揃い方が(笑)。

・「ほんとのことなんだってば!」と言う前でちょっとため息を吐き出すのがリアルな感じを出している。

・「あたしの部屋、引っ掻き回さないでよ」の時の表情が女の子らしい。「お風呂に入らないで」とか「乳液つけて」とか・・・可愛いなあ。
眼鏡を外してちょっと上目使いしてると女の子な表情も違和感なく似合っている。

・一美/一夫は部屋で一人の時は眼鏡を外している。
導入部で一夫は落とした眼鏡を拾うのに地面を手探りしていたので、眼鏡なしではほとんど見えないど近眼だと思われますが、一美/一夫は携帯の操作や窓からベッドまで歩くのを眼鏡なしで普通にこなしていた。
見ないでも歩けるほどに部屋の間取りが頭に入ってはないと思うんですが。中の人格が違うと視力も変化するのだろうか?

・「二人とも学校行ってきなよ」という二葉ちゃん。彼女自身は学校行かなくていいのか?

・「赤い糸ってほんとにあるのかね」。授業の内容にからめてラストへの伏線をここで出しておく。ベタというより手堅い演出。

・「一美ちゃんは俺が狙ってんだから」と言われた一美/一夫の表情がごく僅かに和らぐ。
一美の内心のときめきがあるかなしかの表情の変化で表現されている。

・アケミに見とれる一夫/一美のとろーんとした目付きがお見事(一夫本人がアケミを見るときの目付きとはちょっと違うけど)。吉澤さんの最大の見せ場、かな?

(つづく)


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『おれがあいつであいつがおれで』(1)

2007-04-16 23:21:56 | おれがあいつであいつがおれで
基本的に勝地くんの過去の作品はレンタルはせず、テレビ(CSなど)の再放送で見て、そのうえで「これは」と思えば購入、という形を取っているのですが(放映予定がわかってから実際の放映日までをわくわくして過ごせる&2006年5月頃のような「勝地枯れ」の時期のために未見の作品を残しておきたいので)、これはレンタルしてしまった。
「勝地くんが女の子(の人格)を演じる」というのがどうにも好奇心にひっかかったのです。 

まずドラマ全体の感想としては、アイドルドラマとしてよく出来てたんじゃないかなと思います。
主演のアイドルたちを可愛く生き生きと映し出し、回りの大人は手堅いキャストで固めて作品に安定感を出す。
芸術的ひねりなどは入れず職人的堅実さによって、難解さとは無縁の誰にもわかるストレートなストーリーの中に萌えポイントを適宜設定して視聴者を惹きつけ、適度なカタルシスとともにエンドマークへと持ってゆく。
単純に楽しめる良質のエンタテインメント作品でした。

またヒロイン一美役の吉澤ひとみさんが思いのほか健闘していたのに驚きました。正直若手キャストの演技力には基本的に期待してなかったので。
けれど意外にも台詞なし、表情や仕草のみで気持ちを示す演出が結構あったのにもかかわらず、ちゃんと感情が伝わってきた。
勝地くんともなかなか息が合っていて、掛け合いの場面、二人の声が揃う場面などのテンポもよかった(当時のインタビューで勝地くんが話していたところによると、各シーンをどう演じるか、吉澤さんといろいろ話し合ってたそうです)。 

そして勝地くんですが・・・正直、驚愕。見事な女の子っぷりとは噂に聞いてましたが、女装してるわけではなく、外見も声も勝地くんそのままなのに、人格は女の子だということが自然に納得できた。
走り方・座り方・一部の仕草はやや女らしさを誇張して(笑いを取る箇所なのであえてそういうふうに)演じていましたが、声の出し方、ちょっとした仕草、何気ない表情などはナチュラルに女の子のごとくだった。
とくにある場面のある表情については(ネタバレなので次回以降で)、これが本当に16歳(当時)の子の芝居なのかと度肝を抜かれました。
なんかもう感心を通り越して呆れたというか、「本気でそっちの気があるんじゃないか?」と思わず疑いたくなったぐらい。
いったいどこであんな「女の子らしさ」を身に付けたものか(この原作は大林宣彦監督の『転校生』をはじめ何度も映像化されているので、そうした先行作品を参考にしたんでしょうか)。
女らしく見えるために仕草や表情が占める割合がいかに大きいかということに気づかされた気がします。

外見がそのままでもあれだけ女の子らしく見えるんだから、女装する役をやったらさぞ見事に化けるんじゃないだろうか。
眉さえ前髪で隠してしまえば、ごつさのない滑らかな輪郭と端整な顔立ちはメイク次第で十分女性に見えそうな気がします。
細いのにどこか曲線的な体つきは体型がもろに出る服でなければ違和感なく着こなせそうだし、肌が綺麗なのでドアップにも耐えられる。
世間的には男っぽいイメージがあるようなので、そのギャップが面白いんじゃないかと。
本人も以前「ゲイの役でもオカマの役でもどんとこい!」というようなことを言ってたので嫌がりはしないだろうし
(俳優さんはこういう「癖のある」役はむしろやりたがる。実際現在公開中の映画『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』でオカマでゲイの青年を演じてます。女装はしてないけど)。
十六、七の頃がベストだったとは思いますが(講談社『PICT』の
この写真など男装の少女のよう)、まだ年齢的にぎりぎりいけると思うので、ぜひ二十~二十一歳くらいのうちに演じてみてほしいです。

なんか余談が長かったですが、次回箇条書きで感想を。

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『亡国のイージス』DVD(2)

2007-04-14 00:47:55 | 亡国のイージス
・潜水艦「せとしお」を言い間違えそうだからと「せとしお」と書いた紙をスタッフに持っててもらう佐藤さん。
「これメイキングに入れないでね」と喋ってるのも入ってるというオチまでついている(笑)。

・水中シーン撮影のさい、普段コンタクト使用の勝地くんは裸眼で挑まねばならず、待機中は眼鏡着用。
でもメイキング用のカメラの視界を通るとき、「おはようございまーす」と挨拶しつつ眼鏡を外してる(笑)。
視力両目とも0.01だそうだから外すとほとんど見えないはずですが、そんなに眼鏡姿を見られたくなかったのか
(ラジオ番組で「すごく度が強いので眼鏡をかけると目が小さく見えてしまう」と語ってます)。
カメラに背を向けた途端に眼鏡かけ直してますし。
でもボートで撮影場所まで行く場面で結局眼鏡かけた横顔が映っちゃってる。いかにも秀才ぽい賢そうな感じで格好良かったですけどねえ。

・ヨンファ一味に捕らわれた行が脱走する場面を撮影するにあたって、監督の指示を聞いている勝地くんが行の顔になっていて「おお!」と思いました。
一方で行の血の飛んだ地図を見ながらヨンファと副長が「寺尾さんの家どのへんですか」なんて話をしてるのがシュール。

・水中キスシーン撮影のあと、「ハズカシー」と笑って顔を覆うミンソさんがすこぶる可愛らしい。
キスシーンそのものは二人とも照れなど微塵も見えない超真顔でしたけどね。撮影後、勝地くんの方はどんな顔してたのだろう。

・撮影所内、ワイヤーで宙に吊られるミンソさん。たぶん「いそかぜ」のスクリューに巻き込まれるシーンの撮影だと思います。
これが彼女のクランクアップで、カットがかかったところに勝地くんが小走りでやってくるのですが、その弾むような足取りも表情も無邪気な感じで・・・。
彼の方はちょっと前にクランクアップだったようですが、もう全然行に見えなくなってる。「如月行」から「勝地涼」に切り替わる瞬間も見てみたかったな。

 

私が原作を読んだのはもう映画版のキャストが全部発表されたあとだったのでリアルタイムでは知らないのですが、メイン4人以外のキャストが発表された前後は、「如月行を演じるのが誰か」ネット上で相当な盛り上がりだったようです。
行に思い入れの深い原作ファンは勿論のこと、海上自衛隊前面協力&超豪華キャストの大作映画ですこぶる重要かつ格好良い役回りを演じることになるとあって、「行」に選ばれる可能性のある若手俳優のファンの人たちの注目度も高かったらしい。

それだけに誰が選ばれたとしても、納得がいかないという人が大量に発生するわけで、行役の俳優へのブーイングは必至といってよかったでしょう。
それを思うと、勝地くん演じる行がおおよその観客に受け入れられたらしい(ネット上でのもろもろのレビューを読むかぎり、「アイドルをキャスティングしなかっただけまし」というような消極的評価も含めると、8割がたは「勝地行」を肯定している印象)のは、結構すごいことなんじゃないかという気がします。
『イージス』をきっかけに勝地くんファンになったという人もすごく多いですし。
そうしたファンの一人として、勝地くんを行に選んでくれたスタッフの慧眼に改めて感謝したいです。

 


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『亡国のイージス』DVD(1)

2007-04-11 01:13:44 | 亡国のイージス

発売当日にマスターズコレクションを購入しました。

勝地くんファン、そして如月行のファンとしてこのDVDで見たいと思ってたものが二つありました。
一つは体験入隊で見られるはずの「如月行´(ダッシュ)」。
ネットで勝地くんが行の衣装(海自の作業服)を着てる(行を演じてるのではなく衣装を着てるだけ)写真を見たことがあったのですが、何だか制服が似合ってないような気がしたのです。
映画の中で「如月行」として制服を着てるときはあんなに様になっているのに。
中の人格が変わったら外見の印象までこんなに変わるということに改めて驚いたものでした。
体験入隊では、作業服を着てるはずですが演技をしてるわけじゃないので、言うなれば「行のコスプレをした勝地くん」が見られるはず。
そう思ってたんですが、実際見てみればきりっと正面を見据える眼差しのせいか思ったよりも行っぽく見えました。
でもオープンセット記者会見やインタビュー映像で制服姿のまま話している勝地くんはやっぱり「行に似た別人」だったので、こちらの方で期待通りのものを見せていただきました
(オープンセット記者会見でも「お勉強」って言ってましたよね?挨拶かんじゃって「何でそこで噛むの」って突っ込まれてたり)。

ちなみに体験入隊の映像ですが、DVDのどこに入ってるのか探すのに苦労しました。自衛隊に詳しい人なら「下総」と見ただけでわかるんでしょうけど。
『オール・アバウト・如月行』で、「(菊政役森岡くんと二人だけの除隊式の時に)泣きそうになりました」とコメントしてましたが、確かにちょっと涙をこらえてる感じ。
そして行進のさい、年長の勝地くんが号令をかけるのですが、改めて張りのあるいい声だなあと感じたものでした。 

そしてこのDVDに期待していたもう一つは、メイキングや未公開映像で見られるはずの「如月行」の姿。
勝地くんを見る機会はこれからもいくらもあるだろうけれど「如月行」は『イージス』のフィルムの中にしかいない。これが新しい行に会える最後になる。
・・・なのに未公開映像の方は結果はあの通り(笑)。艦船オタク向けですかねあれは。
少なくとも行がダイスの訓練で食用ヘビを食べる場面を撮影していたことがはっきりしているので、これが入るだろうと予想、というより確信してたんですが・・・。
『イージス』関連のインタビューで「内心半泣きでトライしたのに本編でカットされた」というようなことを勝地くんが苦笑しつつ語っているのを読んで、日頃不平不満を口にしない彼がたびたび言及してるんだから、この場面をカットされたのがよくよく無念だったんだろうなあと感じていたので、ぜひこの機会に日の目を見せて欲しかった。
幻の映像ほかにもいっぱいあるんだろうなあ。嗚呼。

ただメイキングの方にはちらちらと「如月行」が出てきたので、それは嬉しかったです。このメイキングの個人的ポイントを箇条書きしてみます。

(つづく)


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『ちょっと待って、神様』(2)-4(注・ネタバレしてます)

2007-04-07 23:04:52 | ちょっと待って、神様
〈第16回〉

・必死に竜子/秋日子のもとを目指して走るお父さんを見つめての霊体秋日子のナレーション「あなたのためにこんなに一生懸命走ってくれる人がここに一人いるのだから」はフランクリンを取り戻すべくゴミ収集車を追いかける竜子を見つつ、「あんなに必死に何かを追いかけることが私にもあるだろうか」と自問する場面と対になっている。
しかし茂多くんたちが竜子を成仏させようとしてるときに、体に戻るべき秋日子がこんな離れた場所にいていいんだろうか?

〈第17回〉

・カウントダウンの途中で茂多くんの部屋に飛び込んでくるお父さん。
飾りつけはパーティー風だが、三人手を繋ぐ姿はほとんど降霊会。お父さんは何の集まりだと思っただろうか。

・原田さんの告白に対して、自分が今もおそらくはこれからもずっと、死んだ妻を思い続けて忘れることはない、と断りを入れるお父さん。
意外にさっぱり引き下がった原田さんは口調は明るく口元も微笑んでいたが、大きな目が涙でうるんでいる。
立ち上がったあと振り返ることなく足早に走り去ったのはきっと涙を見せたくなかったからだろう・・・。

・竜子が夫からこうも愛されていたと知って、「自分の代わりにおばさんが生きればいい」と言う秋日子を、竜子は「こんなに長いことあたしといっしょにいてまだわかんないの?どんなに人生が素晴らしいか。どんなにぎゅうぎゅう中身が詰まってるか」と諭す。
死んだ当初「こんな人生じゃ全然納得いかない」と神様に訴え、娘からは「お母さんみたいにはなりたくない」とまで言われた竜子が、今は人生の勝利者の顔をしている。
人の値打ちは優れた業績を打ち立てるとかそんなことばかりじゃないのだと教えてくれる場面。

・「あなたも自分の人生生きてみなさい。いろんなことやってみなさい。恋もしなさい。結婚もしなさい。できたら子供も作りなさい。やれることはなんでもやってみなさい。人生どんな味がするものか、苦いもの、甘いもの、しょっぱいもの、せいいっぱい味わってみなさい。生きていて損することなんか何ひとつない。」 
良い事も悪い事も含めさまざまな経験を積んで、泣いて笑って苦しんで悩んで、そうして人生も感性も豊かになってゆく。このドラマの中で一番好きな、一番重かった台詞です。
最近勝地くんがインタビューで、「二十年間生きてきて、その間にあった事を覚えてはいるものの、ちゃんと自分の引き出しに出来ていない、それが僕が今全然足りないところなんだとすごく痛感しています。もっと日常でいろんな事を感じ取ってそのことをちゃんと記憶として残していかないと」(「エンタメキャッチ」2007年1月21日放映分、概要)と話していたのを聞いて、この台詞が強く思い出されました。 

〈第18回〉

・お父さんと竜子/秋日子が思わず抱き合うところで、いきなり春夫が現れるという流れに笑う。ちょっとしたホラー作品のような怖さ。
最終回手前まで竜子がお父さんの前にも関わらず秋日子の姿を保っていたのは、来るべき別れをこれ以上辛くしないために気合いを入れて竜子の顔にならないようしてたんでしょうね・・・。

・お父さんと竜子/秋日子の関係を疑う春夫は、相手が女子高生ということでなく、「死んでから一ヶ月しか経たないのに、おふくろが可哀想だ」という観点から怒っている。
今まで母親を悪し様に言ってきた春夫の言葉だけにぐっとくる。
「ありがとう」と竜子/秋日子が応える本当の意味が彼には理解しようもないのがまた切ない。

〈第19回〉

・石の上から海に落ちた竜子/秋日子を助けに飛び込む春夫。あの程度の深さにあの飛び込み方は頭打ちそうで怖い(笑)。

・「今はまだ泣けない」。そう言いながら声を詰まらせ鼻をすする春夫。彼の一番の見せ場ではないかと思います。

・記念撮影から海辺を歩くシーンにかけて、いつもは(霊体の)秋日子によるナレーションが竜子(秋日子ボイス)のナレーションになっている。
家族一人一人への別れを込めた場面だからこそですね。

〈最終回〉

・海辺で本来の姿をとった竜子に出会うお父さん。強引に竜子を抱きしめ・・・えええ!? 
「冥土の土産」って!? 「言葉もいらない、見つめ交わす目もいらない」のはどうなった!?

・自分のことを、子供たちと話すときは「お父さん」、よその人と話すときは「私」という久留さんが竜子に対しては「俺」と話すのが新鮮で、お父さんがにわかに「男性」に見えてしまった。眼鏡を外した顔も二枚目だ。

・自分の体に戻ることへの不安を訴える秋日子の口調がリサと変わらないほどに幼くて、竜子の前では「娘」になってしまうんだなあ、としみじみ。

・「人生ってほんと素晴らしい。だからお父さん、あたしのために人生狭くしないで」。
台詞の内容もピン子さんの演技も素晴らしいが、それ以上にボキャブラリー、表現そのものの美しさにぐっときてしまった。
この作品にはこうした魅力的なフレーズが多い。「(人生が)どんなにぎゅうぎゅう中身が詰まってるか」「今お母さんにありがとうって言いたいよ」「あの子のこと、大目に見てやっていただけないでしょうか」などなど。
特別詩的ではない、ごく平易な語彙なのに、相手を思う気持ちや優しさに溢れた素敵な言葉たち。脚本の力ですね!

・最後のカウントダウン後に振りかえった時の秋日子の微笑み。
竜子の笑顔とも陰を背負っていた秋日子の表情とも違う、生まれ変わった秋日子の顔。
朝一番の日差しの中での微笑が印象的でした。

・空港での別れ際、秋日子とリサはハグしあうが、リサは今も秋日子に母親を感じ続けているのだろうか。
鋭敏な彼女は「おねえちゃんが変わった」のを無意識に察しているだろうと思いますが。
米子が見送りに来なかったのは用事があったのかもしれないけれど、茂多くんが外で待機してるのはなぜだろう。お父さんともリサとも大いに面識はあるのに。

・茂多くんのバイクの後ろに乗る秋日子。結局この二人付き合うことになったんでしょうね。
お母さんと彼と親友とに支えられ、また支えて、秋日子は元気に生きているようです。明るく笑う彼女の顔は竜子に負けないくらい生き生きとしているから。


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『ちょっと待って、神様』(2)-3(注・ネタバレしてます)

2007-04-04 00:49:44 | ちょっと待って、神様
〈第11回〉

・秋日子に「ごちそうさまは!?」と言われて椅子に掛けなおし「ごちそうさまでした」と言う茂多くんがなんだか嬉しそう(笑)。
事務所から逃げ出すシーンのあと消息不明だったのでどうしたかと案じていたら、夕べのうちに無事追っ手をまいて帰りついていた模様。秋日子とリサの寝顔を盗撮までしてるし。
しかしこの家の子たち、朝ゆっくりのようですが、ちゃんと学校行ってるんでしょうかね。

・「お嬢さん、どうかなさったんですか?」と尋ねてかわされたときの原田さん(裕木奈江さん)がとても悲しげな表情をする。「関係ない」とつっぱねられた気がしたんでしょうね。

・久留さんを訪ねた秋日子のお母さんが「あの子のこと、大目に見てやっていただけないでしょうか」という場面。秋日子の気持ちを思い、恥をしのんで家庭の事情を打ち明けてでも他人に娘のことを頼まざるをえなかったお母さんの愛情が胸に痛いです。
秋日子はちゃんと親から愛されているし、本人もそれをわかってないわけじゃないのだけれど、長い間両親の関係を取り持つことを自分の居場所にしてきたために、両親の離婚でそれがなくなってしまうことに対応できずにいる。上手くいかないものです。

・「遊んでから帰ろうか」という竜子/秋日子にリサが「いいの?」と聞き返す表情や声が、すっかり母親に対するものになっている。
しかし茂多くんは完全にパシリというかおまけというか・・・。本人が嬉々としてるからいいんですけどね。

・三人並んで繁華街を歩きながら、軽く唇を噛むようにして顔がにやけるのを自制しつつもやっぱりにこにこ嬉しそうな茂多くん。こういう「ついつい出てしまった」風情の表情が勝地くんは上手い。

・服を試着しまくり写真とりまくりの三人。すっかり「店内での撮影はお控えください」状態(荷物を見るに一着も買っちゃいないし)。
竜子/秋日子のセンスが意外におばさんぽくなかった。そしてシャッターを切る茂多くんの楽しそうなことよ(笑)。

・「おまえ、まっすぐなんだよな」。そういう茂多くんの目も実にまっすぐでなんだか見てるこちらが照れてしまう。
アップになると、茂多くんはやや眉を不揃いな感じにしてちょっと野暮ったい感じを出すようにしてるのがわかる。もっぱら写真と室内装飾(あの部屋すごすぎる)に時間とお金をかけていてお洒落には無頓着ってタイプなんでしょう。
それでもオタク臭くならず、飾り気のないさっぱり爽やか少年に見えますから、顔がいいと得ですねえ(もちろん雰囲気も大)。

・リサが帰ってきたとき、振り向いた春夫の顔が本当に嬉しそう。なんだかんだいっても妹が可愛いんだな。

・家に帰るなりの離婚騒動。怒ってドアを閉めた顔は竜子/秋日子だったけれど、その前のショックに固まった顔は本物の秋日子のように見えた。
以前の「やめてよ!」同様秋日子の心に同化しての表情だったんじゃないだろうか。

・「お父さんとお母さんのどちらと暮らすかおばさんが決めて」と言う秋日子。両親の間が彼女の居場所だったからどちらに付くこともできない。
選べない苦しみに泣く秋日子を膝枕して、こちらも涙ぐみながら黙って頭をなでる竜子。切ないけれど二人の強い絆がはっきりわかる場面。

・秋日子の両親が別れ話の途中だったと聞いてもリサはとくに驚かないし同情の顔も見せない。
単に東京で両親が離婚五秒前だと聞き知っていたというだけでなく、秋日子の立場を自分の孤独に重ね合わせて気持ちが同一化しているからでしょう。

〈第12回〉

・学校に出てこない秋日子を心配して電話をかけたものの、肝心なことを言えないうちに一方的に切られて屋上でへたれる茂多くん。その頃大学構内で春夫もへたれ気味に座り込んでいる。
この若い男子二人はしばしば対比的に描かれます。春夫がバイトで学費稼ぐことになるあたりも。

・緊張にちょっと口篭りながらも真正面から秋日子を見据えて「俺、おまえが好きだよ」ときっぱり告白する茂多くん。
竜子/秋日子があせって(浮かれて)後ずさりしつつ段差につまずきかけたりしてるのと対照的に、上から見下ろす霊体秋日子の視線は冷ややか。
竜子に語ったように彼女は茂多くんが好きなのはあくまで竜子の人格だと思っている(もっとも薬子が茂多くんに「秋日子のこと好きでしょ」と語るのを秋日子は見てるんですよね。この時点では竜子と入れ替わってまだ二、三日だったのに、「茂多くんが好きなのは自分」だと思わなかったんだろうか?)。
だから彼が好きなのは自分じゃないことに傷ついているのか、彼に別段興味がないのか。何となく後者のような・・・。告白の場面のモノローグでも薬子とセットで「得がたい友達」なんて表現してたし・・・。

〈第13回〉

・告白翌日の学校での竜子/秋日子と茂多くんとのぎくしゃくっぷりが可笑しい。とくに「何もないわよー。ねえ茂多くん!」といきなりふられた茂多くんが「えっ!?」と聞き返すところ。何に同意を求められてるのかわかってるんだろか?

・「天城のおねえちゃんってお父さんのこと好きなんじゃない?」と語るリサは何だか嬉しそう。少し後に原田さんがお父さんに告白した時はあんなに嫌がっていたのに。
リサが竜子/秋日子を母親としてとらえているのがはっきりわかる。

・竜子/秋日子の背中に「お母さん!」とすがるリサちゃん。リサが秋日子を「お母さん」と呼ぶシーンはどれも感動的。外見が全然違うのに娘は自分だと察してくれた・・・竜子さんさぞ嬉しかったろう。

・お父さんのことを思い竜子/秋日子が涙ぐんでいるところにやってくる茂多くん。絶妙のタイミングで登場し、沈んでいる女の子を自分の家に誘う。
とんだ女たらしに見えかねないシチュエーションですが、せいいっぱい強がって笑う彼女を見る茂多くんの目には心からの気遣いと誠実さがある。
2005年11月発売の『QRANK』で勝地くんが「(役の感情に自身の感情を自在にシンクロさせられる役者さんは)演技してる時の目が全然嘘を言ってないんです。」と語っていましたが、彼自身の目も嘘を言ってなかったです。

・家の離れにあるらしい自分の部屋に秋日子を招き入れる茂多くんはちょっと嬉しそう(動きもなんかいそいそしている)。彼みたいに趣味まるだしの部屋に暮らしてる子にとって、そこに他人を―とりわけ好きな女の子を―入れるというのは、いわば自分の内面世界をさらすようなものなので、結構な緊張があったと思われます。
しかしどこの60年代風カフェかというようなこの部屋。バイクはもってるわカメラは持ってるわ、部屋にお茶セットを常備してるわ現像設備もありそうだわ東京までサクサク出てくるわ、彼の家はどれだけお金持ちなのか。現在バイトはしてないっぽいし。

・アルバムを見たいと言われたとき、一瞬躊躇を見せる茂多くん。盗撮写真ありまくりだからなあ。

・最終週のタイトルでもある「そこにあるのに気づかないこと」というアルバムの名称、被写体の選び方、撮り方(個人的に好みの図が多いです)に茂多くんの感受性の豊かさと暖かな人柄が表れている。
そして最初は無機物ばかり、人は写っても体の一部という感じだった被写体が、途中から秋日子ばかりになってゆく。
茂多くんを知らない人が何らかの理由でこのアルバムを見たとしても、「恋をしたんだな」というのがすぐわかってしまうだろう写真の並びが微笑ましい。
しかし見事にピントが秋日子ばかりにあっていて、薬子やリサはときにピンボケだったりするのがまああからさまと言うか(笑)。

・泣いている女の子に、告白の返事も聞かないうちからいきなりキス。しかも前ふりの台詞が「泣いてるの?」。本当に表面の言動だけ見るとタラシだなこの子(笑)。
真っ直ぐな目や真剣な表情から誠意や愛情深さが伝わってくるから大丈夫なんですけど。演じたのが勝地くんでほんとよかった。

・キスに驚いて茂多くんの部屋を飛び出して走る竜子/秋日子を見守る霊体秋日子は、告白された時と同じくおよそ動揺していない(別の意味で心が揺れ動いてはいるのだが)。
自分の体の貞操問題にこうも無関心とは。まだまだ生きる気力が低いからでしょうか。

〈第14回〉

・秋日子を家の前で待っていた茂多くんの第一声、「夜景、見に行かない?」。いきなりキスしたことは謝らないのかーい!
まあ謝るのも微妙な気がしないものでもないし、まずは彼女の反応を見てから、怒ってるようなら謝ろう、と思ってた(あっさりバイクの後ろに乗ってくれたので結局謝らなかった)ってとこでしょうか。
そういやこの二人朝学校で顔を合わせてるはずですが・・・告白の後あれだけぎこちなかった彼らですから、この日もさぞやぎくしゃくしてたのでは。

・夜空からお父さんと行ったプラネタリウムを思い出し、茂多くんの「写真に残せないものがたくさんある」という話からの連想もあわせて、幼い頃の子供たちの写真が夜空に映写機で映し出される、と想像が広がってゆく。
複数の伏線を生かしつつこんな洒落た、温かみのあるシーンを作り出した脚本と演出に拍手です。

・秋日子の手をぎゅっと握り、彼女を抱き寄せる茂多くん。告白このかた、秋日子をじっと見つめる時の茂多くんの表情は恐いほどに真摯でどこかしら切ない。
秋日子に対する真剣な想いが伝わってきて、見てるこちらまで切なくなってしまう。

・竜子/秋日子に「ほかに好きな人がいる」と言われた時、茂多くんはさほど驚いたという顔はしない。
彼女の態度に自分をどう思ってるのか不安を感じながら、薄氷を踏むように探り探り彼女の心に近づこうとしていた(ように見える)彼はこうなる可能性も常に頭にあったのでしょう。
とはいえショックでないはずもなく・・・秋日子を送っていった別れ際、言葉もなく彼女を見た表情にその痛みが表れていた。

〈第15回〉

・「あたしのこと本当に友達だと思ってる?茂多くんも?」
この台詞を聞かされるのは振られたばかりの茂多くんにはきつかろうに。うなずかれてもうなずかれなくても嫌だよなあ。

(つづく)


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『ちょっと待って、神様』(2)-2(注・ネタバレしてます)

2007-04-01 00:16:27 | ちょっと待って、神様
〈第6回〉

・女先生の持っているピンクの羽は何だったんだろう。揺れるたびにぽよよんと音がするのも不思議。なにか深い意味があるのかと思っちゃったじゃないか。

・自分を(秋日子目線からすれば)過剰に心配する母に「やめてよ!」と竜子/秋日子が怒鳴る場面で一瞬強風に髪と服をなびかせた背後霊秋日子のカットが入る。
本物の秋日子が瞬間自分の体を取り戻して叫んだように思えてはっとした。
あとで竜子は「つい秋日子の気持ちで喋ってしまった」「親ってめんどくさい、そう思った」と言う。秋日子が竜子との関わりを通して親の思いを知るだけでなく、竜子も秋日子を通して子供の思いを知ってゆくのですね。

〈第7回〉

・米子に向かって(そうと知らずに)竜子/秋日子が作ったお弁当を誉めてしまう春夫。
「こういうお袋の味も作れるんだなあ」とお義理じゃなく感心してるわりに、それが母親と同じ味とは気づかない。彼がいつもの食事、それを作り続けてくれる母の苦労にいかに無関心だったかが表れている。
あるいはこの前米子に対して母親の料理を「やぼったい料理」よばわりしてしまった手前、「うちのおふくろの味にそっくり」とは言えなかったものか。
まあ慣用表現としてでも「お袋の味」という言葉を口にしているので、少なくとも無意識では「母の味」を知覚しているのでしょうが。

・息子には無意味なつまらない趣味として批判された「昼ドラ鑑賞」を、お父さんは「会社で嫌なことがあっても全く関係ない話を楽しげにしてくれるので気持ちが明るくなる」とプラスに評価する。
第一話では竜子が何を話しても生返事、それどころか「黙れ」と言うようにTVのボリュームをあげたりしていたお父さんが、ああ見えてちゃんと話を聞いてくれていたと知った竜子はさぞ嬉しかったでしょう。学校で弁当も食べずぽーっとなってるのも無理ないかも。
しかしこの学校(クラス?)、仲いい同士机をくっつけて食べたりしないんですかね?

・秋日子から将来の夢について質問された茂多くんがちょっと嬉しそうな顔をする。
秋日子の方から話しかけてきた、自分に興味を持ってくれたことが単純に嬉しくてしょうがないのがうかがえる。本当に秋日子が大好きなんだなあ。

・目をきらきらさせながらカメラマンになる夢を語る茂多くん。
彼は基本的に低めの落ち着いた、とても優しいトーンの声で話をする(そのぶんときどき語尾が聞き取りにくいけど)。この声だけでも茂多くんの人柄がわかります。 
そして「カメラマンになりたい」という夢に、『さとうきび畑の唄』の昇を思い出しました。彼が現代に生まれ変わってまた同じ夢を抱いている、というような。今度こそ夢が叶うといいね。
夢が見つからずに留年した春夫とちょうど対照的。
春夫の悩みも若者らしくて気持ちはよくわかります。ある意味人生に真剣だからこそですよね。親に隠しているあたりさっぱり根性は座ってないんですが。

〈第8回〉

・お父さんが原田さん(裕木奈江さん)と食事するのを見てショックを受けた竜子の「お父さんにこれから先いくらでもありえるわよね・・・若い綺麗な女の人が横に座って、笑いかけてるって・・・」という台詞。
おそらくお父さんは50歳近く、一般的にいってすでに恋愛対象にはなりにくい(とくに若い女性にとっては)年齢だと思うんですが、こういう心配をしてしまうあたり竜子にとってお父さんは20年以上連れ添った今も魅力的な男性として映ってるんですね。
結婚記念日のプレゼントを買ったときに口紅を塗りなおしてたのにもそれがうかがえます。

・息子の留年を知っても怒らない父親(自分もリストラ予備軍で、それを家族に隠している負い目があるからでしょう)に逆に怒りをぶつける春夫。
塚本くんは、長めの茶髪と天然の赤い唇もあいまって、ちょっとヤンキー入った役が上手いなあと思います。

・リサの家出を知って久留家に走る竜子を水鏡で見守る秋日子と神様(のお使い)。
この神様、困ったような顔をしつつも常に竜子と秋日子を見守り、竜子が昇天する期限もずるずる延ばしてくれる。
この二人しか担当がなくて、暇つぶしにせっかくの特例ケースを長持ちさせて楽しんでるようにも思えます。

〈第9回〉

・久留家にかけつけた竜子/秋日子はチャイムを鳴らすのでなくドアをばんばん叩き、春夫がドアを開けるなり転がるように中に走り込む。
この一連の動作には娘を案じる竜子の思いが詰まっている。

・秋日子が事故前によこしたメールを茂多くんに見せて、秋日子がおばさん化するに至る心境を推察する薬子。
彼女が秋日子のことをよく見てて気遣っているのがわかるシーン。
原作では交換日記だったのがメールに代わったのは時代ですねえ。

・リサの友達のマンションを訪ねる秋日子。
女の子ばかりが集団生活しているこの家、食生活の貧しさは気になりますが、子供の完全非行化を食い止める最後の防波堤、駆け込み寺といった趣きでホッとします。なんかいいなこういうの。

・竜子/秋日子に電話してきた茂多くん、いつになくぶっきらぼうで必要最小限のことしか言わないところに秋日子を心配すればこそ苛立っているのがうかがえる。

・渋谷としか聞いてないのに数時間で秋日子と合流してしまう茂多くん。そんなばかなー(笑)。
名古屋から東京まで出てくるだけで1時間以上かかるだろうに。
そもそも茂多くん名古屋の子なのに東京の土地鑑あるのか(竜子は少し前まで東京にいたので「魔界の入口」渋谷も多少はわかるはずだけど)。
もう秋日子に発信機でも仕掛けているとしか・・・。

・茂多くんが竜子/秋日子に振り払われて倒れる場面、「コケッ」とか擬音を入れたくなるナイスコケッぷり。
教室でも竜子/秋日子にはたかれてつんのめってたり・・・。なーんか微妙に頼りないところが可愛いです。

〈第10回〉

・「君もいいよ。なんか悪いことしそうにないタイプだし」。すごい説得力(笑)。
実際食事のシーンで女の子の集団に一人交じってても全然違和感がない。
別にカマッぽいわけでもない、むしろカッコいいし十分魅力的なのに普通に女の子の群れに同化してしまう、女の子に警戒心を抱かせない男子ってクラスに一人くらいいたりしますね。
茂多くんはまさにそれ。だから薬子も平気で彼と二人きりになれるんだろうし(ラストなど二人で旅行している)。
女友達から相談を受けることもしばしばだという勝地くん自身も、多分そういうタイプなんじゃないかという気がします。

・リサのそばにしゃがみこんで話しかける茂多くん。この場面の声はいつにも増してソフトでとても好きです。
話しかける直前秋日子の方を気遣うように見ていますが、秋日子が「あんたも何かワケありなんでしょ」と言われたのを聞いて、「生きるのがかったるい」と口にしていたという秋日子が改めて心配になり(もともと心配だからこそ東京まで追っかけてきたのだし)、「彼女のために何かしてやりたい」と思ってリサを説得しようとした、という気持ちの流れがわかります。
リサ自身が心配だからというより秋日子のため。とにかく秋日子中心。
もちろんリサのことに全くの無関心なわけではなく、危ない道に入りかけてる小さな女の子が気にはなってるでしょうが(話しかける声だってとても優しい)、秋日子の存在が大きすぎるのですよね。恋する少年だなあ。

・みんなに食事を作ってあげる竜子/秋日子の生き生きした姿。やっぱり「主婦」してるのが彼女には一番自分の居場所を感じられる時なんでしょうね。
女の子の一人と茂多くんがつまみ食いしてますが、茂多くんが実に幸せそうな顔をしてるのは、「料理が美味しいから」以上に「秋日子の手料理」というところにあるんでしょうねえ。
そしてみんなに料理を運ぶ姿の似合うこと。将来はマイホームパパになりそうな感じ。それとも被写体追いかけてどこまでも駆け回る仕事人間?

・「うちの両親離婚5秒前なのよ」という竜子/秋日子の言葉に茂多くんがはっと体を起こす。
顔が画面から切れているので表情はわかりませんが、その急な動作から彼の動揺は十分伝わってきます。

・いんちき事務所に向かうリサに「ついてくるな」と言われて「わかった」と応える竜子/秋日子。
その決然とした表情、実際にはしっかり後をつけて事務所にあがりこんでることからすると、この台詞は「気持ちはわかった。なら力づくで止めてみせる」の意味だったわけだ。

・秋日子の顔が竜子に代わるのを目撃してしまった茂多くん。その後彼がそれを問題にしていないのは、まあ普通に目の錯覚だと思ったんでしょうね。

・「お兄ちゃんもお父さんもよその女の人が来るとそっちばかり・・・」と竜子/秋日子に語るリサ。
無意識でしょうが、秋日子は彼女のなかで「よその女の人」にカウントされていないのがわかる。

・竜子/秋日子に「お母さんにありがとうっていいたいよ」と涙声で語るリサちゃん。
失って初めて母のありがたみを知る、というのは定番ではありますが、リサの心の動きを丁寧に描いているので陳腐に感じさせない。
リサちゃんを抱き寄せる竜子/秋日子は秋日子の顔のままなのに表情が「母親」になっている。
あおいちゃんはピン子さんの表情を研究しつつ秋日子を演じたそうですが、このあたりから竜子/秋日子の表情がどんどん竜子になっていってます。すごいよ。

(つづく)


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