〈第11回〉
・秋日子に「ごちそうさまは!?」と言われて椅子に掛けなおし「ごちそうさまでした」と言う茂多くんがなんだか嬉しそう(笑)。
事務所から逃げ出すシーンのあと消息不明だったのでどうしたかと案じていたら、夕べのうちに無事追っ手をまいて帰りついていた模様。秋日子とリサの寝顔を盗撮までしてるし。
しかしこの家の子たち、朝ゆっくりのようですが、ちゃんと学校行ってるんでしょうかね。
・「お嬢さん、どうかなさったんですか?」と尋ねてかわされたときの原田さん(裕木奈江さん)がとても悲しげな表情をする。「関係ない」とつっぱねられた気がしたんでしょうね。
・久留さんを訪ねた秋日子のお母さんが「あの子のこと、大目に見てやっていただけないでしょうか」という場面。秋日子の気持ちを思い、恥をしのんで家庭の事情を打ち明けてでも他人に娘のことを頼まざるをえなかったお母さんの愛情が胸に痛いです。
秋日子はちゃんと親から愛されているし、本人もそれをわかってないわけじゃないのだけれど、長い間両親の関係を取り持つことを自分の居場所にしてきたために、両親の離婚でそれがなくなってしまうことに対応できずにいる。上手くいかないものです。
・「遊んでから帰ろうか」という竜子/秋日子にリサが「いいの?」と聞き返す表情や声が、すっかり母親に対するものになっている。
しかし茂多くんは完全にパシリというかおまけというか・・・。本人が嬉々としてるからいいんですけどね。
・三人並んで繁華街を歩きながら、軽く唇を噛むようにして顔がにやけるのを自制しつつもやっぱりにこにこ嬉しそうな茂多くん。こういう「ついつい出てしまった」風情の表情が勝地くんは上手い。
・服を試着しまくり写真とりまくりの三人。すっかり「店内での撮影はお控えください」状態(荷物を見るに一着も買っちゃいないし)。
竜子/秋日子のセンスが意外におばさんぽくなかった。そしてシャッターを切る茂多くんの楽しそうなことよ(笑)。
・「おまえ、まっすぐなんだよな」。そういう茂多くんの目も実にまっすぐでなんだか見てるこちらが照れてしまう。
アップになると、茂多くんはやや眉を不揃いな感じにしてちょっと野暮ったい感じを出すようにしてるのがわかる。もっぱら写真と室内装飾(あの部屋すごすぎる)に時間とお金をかけていてお洒落には無頓着ってタイプなんでしょう。
それでもオタク臭くならず、飾り気のないさっぱり爽やか少年に見えますから、顔がいいと得ですねえ(もちろん雰囲気も大)。
・リサが帰ってきたとき、振り向いた春夫の顔が本当に嬉しそう。なんだかんだいっても妹が可愛いんだな。
・家に帰るなりの離婚騒動。怒ってドアを閉めた顔は竜子/秋日子だったけれど、その前のショックに固まった顔は本物の秋日子のように見えた。
以前の「やめてよ!」同様秋日子の心に同化しての表情だったんじゃないだろうか。
・「お父さんとお母さんのどちらと暮らすかおばさんが決めて」と言う秋日子。両親の間が彼女の居場所だったからどちらに付くこともできない。
選べない苦しみに泣く秋日子を膝枕して、こちらも涙ぐみながら黙って頭をなでる竜子。切ないけれど二人の強い絆がはっきりわかる場面。
・秋日子の両親が別れ話の途中だったと聞いてもリサはとくに驚かないし同情の顔も見せない。
単に東京で両親が離婚五秒前だと聞き知っていたというだけでなく、秋日子の立場を自分の孤独に重ね合わせて気持ちが同一化しているからでしょう。
〈第12回〉
・学校に出てこない秋日子を心配して電話をかけたものの、肝心なことを言えないうちに一方的に切られて屋上でへたれる茂多くん。その頃大学構内で春夫もへたれ気味に座り込んでいる。
この若い男子二人はしばしば対比的に描かれます。春夫がバイトで学費稼ぐことになるあたりも。
・緊張にちょっと口篭りながらも真正面から秋日子を見据えて「俺、おまえが好きだよ」ときっぱり告白する茂多くん。
竜子/秋日子があせって(浮かれて)後ずさりしつつ段差につまずきかけたりしてるのと対照的に、上から見下ろす霊体秋日子の視線は冷ややか。
竜子に語ったように彼女は茂多くんが好きなのはあくまで竜子の人格だと思っている(もっとも薬子が茂多くんに「秋日子のこと好きでしょ」と語るのを秋日子は見てるんですよね。この時点では竜子と入れ替わってまだ二、三日だったのに、「茂多くんが好きなのは自分」だと思わなかったんだろうか?)。
だから彼が好きなのは自分じゃないことに傷ついているのか、彼に別段興味がないのか。何となく後者のような・・・。告白の場面のモノローグでも薬子とセットで「得がたい友達」なんて表現してたし・・・。
〈第13回〉
・告白翌日の学校での竜子/秋日子と茂多くんとのぎくしゃくっぷりが可笑しい。とくに「何もないわよー。ねえ茂多くん!」といきなりふられた茂多くんが「えっ!?」と聞き返すところ。何に同意を求められてるのかわかってるんだろか?
・「天城のおねえちゃんってお父さんのこと好きなんじゃない?」と語るリサは何だか嬉しそう。少し後に原田さんがお父さんに告白した時はあんなに嫌がっていたのに。
リサが竜子/秋日子を母親としてとらえているのがはっきりわかる。
・竜子/秋日子の背中に「お母さん!」とすがるリサちゃん。リサが秋日子を「お母さん」と呼ぶシーンはどれも感動的。外見が全然違うのに娘は自分だと察してくれた・・・竜子さんさぞ嬉しかったろう。
・お父さんのことを思い竜子/秋日子が涙ぐんでいるところにやってくる茂多くん。絶妙のタイミングで登場し、沈んでいる女の子を自分の家に誘う。
とんだ女たらしに見えかねないシチュエーションですが、せいいっぱい強がって笑う彼女を見る茂多くんの目には心からの気遣いと誠実さがある。
2005年11月発売の『QRANK』で勝地くんが「(役の感情に自身の感情を自在にシンクロさせられる役者さんは)演技してる時の目が全然嘘を言ってないんです。」と語っていましたが、彼自身の目も嘘を言ってなかったです。
・家の離れにあるらしい自分の部屋に秋日子を招き入れる茂多くんはちょっと嬉しそう(動きもなんかいそいそしている)。彼みたいに趣味まるだしの部屋に暮らしてる子にとって、そこに他人を―とりわけ好きな女の子を―入れるというのは、いわば自分の内面世界をさらすようなものなので、結構な緊張があったと思われます。
しかしどこの60年代風カフェかというようなこの部屋。バイクはもってるわカメラは持ってるわ、部屋にお茶セットを常備してるわ現像設備もありそうだわ東京までサクサク出てくるわ、彼の家はどれだけお金持ちなのか。現在バイトはしてないっぽいし。
・アルバムを見たいと言われたとき、一瞬躊躇を見せる茂多くん。盗撮写真ありまくりだからなあ。
・最終週のタイトルでもある「そこにあるのに気づかないこと」というアルバムの名称、被写体の選び方、撮り方(個人的に好みの図が多いです)に茂多くんの感受性の豊かさと暖かな人柄が表れている。
そして最初は無機物ばかり、人は写っても体の一部という感じだった被写体が、途中から秋日子ばかりになってゆく。
茂多くんを知らない人が何らかの理由でこのアルバムを見たとしても、「恋をしたんだな」というのがすぐわかってしまうだろう写真の並びが微笑ましい。
しかし見事にピントが秋日子ばかりにあっていて、薬子やリサはときにピンボケだったりするのがまああからさまと言うか(笑)。
・泣いている女の子に、告白の返事も聞かないうちからいきなりキス。しかも前ふりの台詞が「泣いてるの?」。本当に表面の言動だけ見るとタラシだなこの子(笑)。
真っ直ぐな目や真剣な表情から誠意や愛情深さが伝わってくるから大丈夫なんですけど。演じたのが勝地くんでほんとよかった。
・キスに驚いて茂多くんの部屋を飛び出して走る竜子/秋日子を見守る霊体秋日子は、告白された時と同じくおよそ動揺していない(別の意味で心が揺れ動いてはいるのだが)。
自分の体の貞操問題にこうも無関心とは。まだまだ生きる気力が低いからでしょうか。
〈第14回〉
・秋日子を家の前で待っていた茂多くんの第一声、「夜景、見に行かない?」。いきなりキスしたことは謝らないのかーい!
まあ謝るのも微妙な気がしないものでもないし、まずは彼女の反応を見てから、怒ってるようなら謝ろう、と思ってた(あっさりバイクの後ろに乗ってくれたので結局謝らなかった)ってとこでしょうか。
そういやこの二人朝学校で顔を合わせてるはずですが・・・告白の後あれだけぎこちなかった彼らですから、この日もさぞやぎくしゃくしてたのでは。
・夜空からお父さんと行ったプラネタリウムを思い出し、茂多くんの「写真に残せないものがたくさんある」という話からの連想もあわせて、幼い頃の子供たちの写真が夜空に映写機で映し出される、と想像が広がってゆく。
複数の伏線を生かしつつこんな洒落た、温かみのあるシーンを作り出した脚本と演出に拍手です。
・秋日子の手をぎゅっと握り、彼女を抱き寄せる茂多くん。告白このかた、秋日子をじっと見つめる時の茂多くんの表情は恐いほどに真摯でどこかしら切ない。
秋日子に対する真剣な想いが伝わってきて、見てるこちらまで切なくなってしまう。
・竜子/秋日子に「ほかに好きな人がいる」と言われた時、茂多くんはさほど驚いたという顔はしない。
彼女の態度に自分をどう思ってるのか不安を感じながら、薄氷を踏むように探り探り彼女の心に近づこうとしていた(ように見える)彼はこうなる可能性も常に頭にあったのでしょう。
とはいえショックでないはずもなく・・・秋日子を送っていった別れ際、言葉もなく彼女を見た表情にその痛みが表れていた。
〈第15回〉
・「あたしのこと本当に友達だと思ってる?茂多くんも?」
この台詞を聞かされるのは振られたばかりの茂多くんにはきつかろうに。うなずかれてもうなずかれなくても嫌だよなあ。
(つづく)