アレルヤ・ハプティズム
ソレスタルビーイングのガンダムマイスターの一人。機体は可変飛行型のガンダムキュリオス(ファーストシーズン)→アリオスガンダム(セカンドシーズン)→ガンダムハルート(劇場版)。人革連軍の秘密組織「超人機関」の人体実験によって生み出された「超兵」の一人。
他のプトレマイオスクルーが基本的にソレスタルビーイングで与えられたコードネームを名乗っているのに対し(刹那、ロックオン、スメラギは確定。イノベイドのティエリアはもともとソレスタルビーイング外の世界で生きたことがないはずなのでコードネーム=本名だろう。一方第二世代のガンダムマイスター同士のカップルを両親に持つフェルトは、外伝小説『機動戦士ガンダム00P』によると、やはりソレスタルビーイング外の世界を知らないにもかかわらず別に本名―もしかすると本人と死んだ両親しか知らないかもしれない―が存在しているそうだ。イアンと医師のJBモレノはソレスタルビーイングへの参加の経緯からすると本名っぽい。イアンが本名ならその妻子のリンダとミレイナも本名か?)、アレルヤという名は超人機関時代にマリー・パーファシーにもらった名前であることが作中で語られている。
それをそのままコードネームとして用いたのは、アレルヤという名前が本名ではなく超人機関内での通称ですらなく(超人機関での名前=識別番号はE-57)、マリーと二人の間だけでの呼び名だったからだろう。
もし仮にアレルヤという名前が組織外の人間に知られたとしても、そこから彼の過去に辿りつくことはできない。それがわかっていたからソレスタルビーイングもアレルヤという名の使用を認めたと考えられる(小説版では、マリーの存在とアレルヤという名の意味―神への感謝の言葉―が当時の彼にとって唯一の希望であったがゆえに、ソレスタルビーイング参加後もコードネームとして用いたと記されている)。
ハプティズムという姓(?)の由来は不明だが、一字違いの「バプティスム」(baptism)は「洗礼」(キリスト教入信の儀式の一つ)の意味なので、「アレルヤ」が神を称える言葉であることからしてバプティズムを意識して(制作陣が)命名したのだろう。アレルヤのもう一つの人格がアレルヤ(alleluia)の頭にHを加えたハレルヤ(hallelujah)なので、同じくバプティズムのbをhにずらしてハプティズムとしたのかも?
ちなみに再び小説版では上で書いたアレルヤという名前をソレスタルビーイングでも使用した理由に続けて「それは文字どおり、彼にとっての「洗礼」であった・・・・・・。」との一文がある。
穏やかかつ優しい気質の常識人で、マイスターの中ではロックオンについで話しやすそうな人(刹那とティエリアが話しかけにくすぎるともいえるが)。彼の不安定要素はもっぱら戦闘面――アレルヤ同様超兵である人革連のソーマ・ピーリスとの脳量子波共鳴現象及び戦闘時(有事)に限って現れる狂暴なもう一つの人格・ハレルヤの存在に由来する。
後者は「ハレルヤ」の項で詳述する予定なので措くとして、前者については(3)-5でも書いたように脳量子波を遮断するための措置を何かしら取れなかったのかと(笑)。戦場でピーリスとかちあうたびに実質無力化させられてたというのに。
ファーストシーズンのラストでハレルヤが〈消滅〉したあとハレルヤが復活するまでアレルヤが脳量子波を失っていたこと、劇場版で脳量子波に引かれるELSがアレルヤよりマリー(ピーリス)、マリーよりハレルヤを追いかけていたことからいっても、実際に脳量子波を操れるのはハレルヤの方らしいのに、脳量子波の干渉だけは受けてしまうというのも不便極まりない話である。
アレルヤはハレルヤの必要以上に残忍な戦闘スタイルや物言いを嘆き、そんなハレルヤ=もう一人の自分の言動は自分が心の奥で望んでいることなのではないかと悩んでいるが、実際ハレルヤという人格が現れたのはいつなのだろうか。
超人機関に〈脳や身体をいじくりまわされた〉結果、脳量子波に目覚めたのと同時期にハレルヤの人格も生まれたと考えるのが妥当だろうが(超人機関の担当官?がアレルヤの資料を調べたさいに「脳量子波処置後新たな人格が形成。狂暴性あり」と独り言を言っているのもこれを裏付ける)、ハレルヤが表に出て何がしかの行動を起こしたのは分かっている限りでは、〈処分〉を免れるべくアレルヤが仲間たちと共に輸送船を奪って施設を脱走した後、行く当てもなく漂流するうちに酸素と食料が尽きかけて、自分が生き延びる(少ない酸素と食料を独り占めにする)ために仲間を皆殺しにした時である。
マリーが「知っていたわ。あなたの中にもう一つの人格があったことは」と語っているが、この事件以前はハレルヤの人格は存在はしたもののアレルヤの中で眠っている状態で、アレルヤが本格的に生命の危機にさらされた時初めてアレルヤを、そして自分を守るために人格交替が起こったのではないだろうか。
きっかけは人体実験でも、強烈なストレスにさらされている主人格を守り、その苦しみを肩代わりするために生まれた人格と考えると、いわゆる多重人格障害の定型に沿っているといえる(もっともアレルヤがハレルヤの存在を自覚しているのみならず会話まで出来てしまうあたりは定型から外れている。脳量子波というファクターがあるゆえか)。
それだけにハレルヤが超人機関の施設の破壊をアレルヤに持ちかけた時に皮肉ったように、「自分がやりたくなかったことに蓋をして、自分は悪くなかったとでも」言いたいために辛い役割をハレルヤに押し付けている、自分が綺麗なままでいたいためにハレルヤに汚れ役をやらせているようにも見えてしまう。
ピンチになるとハレルヤが主導権を握って残酷過ぎるほどの戦法で敵を屠るのを、一番間近で見ながら止められず事後に「なぜなんだハレルヤ・・・」と涙を流すアレルヤは、優しいけれどそれゆえに弱々しく頼りない。こうした彼の〈弱さ〉が前面に出たのが上で書いた超人機関研究施設の破壊作戦である。