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俳優・勝地涼くんのこと。

『機動戦士ガンダム00』(1)ー32(注・ネタバレしてます)

2025-08-15 07:34:31 | ガンダム00

セカンドシーズン開始早々に存在を明かされたツインドライヴシステム。実はトランザム機能がオリジナルのGNドライヴに付与された際にセットでイオリアから贈られたものだ。
「エウロパ」で造られたGNドライヴは5つあったにもかかわらずソレスタルビーイングが公に活動を開始してから稼働している機体は4体のみ、第一世代のガンダムであるガンダム0に使われたGNドライヴは本編に登場しないソレスタルビーイング内のサポートチーム「フェレシュテ」で管理されていた。
せっかくの貴重なGNドライヴを一つ実質遊ばせておいた、もう一体ガンダムを造ってそのためのマイスターをスカウトすればいいのにそうしなかった理由がツインドライヴシステムの登場でわかった形(ツインドライヴを搭載した機体を造るためには、すでに稼働していた機体とパイロットをクビにしなくてはならなくなる)だが、それまでプトレマイオスチーム的には大いに不思議だったことだろう。
武力介入を始めた初期は良かったものの、合同軍事演習以降、敵の圧倒的物量を前にプトレマイオスチームは苦戦を強いられるようになった。あと一機ガンダムがいればとの思いは次第に強まっていったのではないか。チームトリニティはいるものの仲間と呼べる関係ではないし。

(実のところ機体なら0ガンダムが修理すれば使えるし、マイスターなら予備マイスターのラッセがいるっちゃいるのである。セカンドシーズンの最終戦では実際に“念のため”で持ってきた0ガンダムをラッセが動かしている。この時の0ガンダムは粒子貯蔵タンクで動かしているが、ファーストシーズンの頃ならオリジナルのGNドライヴを搭載して稼働時間を気にせず運用できたはずだ。
フォーリンエンジェルス作戦の時などラッセが0ガンダムで参戦できたら結果は大分違っていたかもしれない。その場合今度はGNアームズを操縦する人間がいなくなるが・・・。フォーリンエンジェルス時のGNアームズによるラッセの活躍が目覚ましかっただけに、0ガンダムが増える代わりにあれが無くなるのは痛い)

さておき「二つの太陽炉を同調させ、粒子生産量を二乗化する」ツインドライヴを載せた機体“ダブルオーガンダム”が支援機の“オーライザー”をドッキングさせた状態=“ダブルオーライザー”になった状態で“トランザム”を使用する=“トランザムライザー”になることによって、トランザムライザー周辺の領域にいる人間が“白い世界”に包まれて意識を共有できるようになる。
オーライザーのロールアウト直後、最初にダブルオーとのドッキングテスト及びドッキング状態でのトランザム始動実験を行った際、ダブルオーライザーの粒子生産量・放出量は論理的限界値を超え、ダブルオーガンダム及びオーライザーの開発者であるイアンとリンダの夫婦らを唖然とさせた。
「これがイオリアが予見したツインドライヴの、真の力だというのか」とイアン(と刹那)が呆然と呟いている通り、機体の直接の開発者さえ把握していない機能をもイオリアはあらかじめGNドライヴの理論を組み立てた時点で予見していたのだろう。
もちろんイオリアとて万能ではない。5基のGNドライヴのうちツインドライヴとして使用するためのマッチングテストをクリアできたのは旧エクシアと0ガンダムのドライヴの組み合わせのみ、それも安定値に達しないものをトランザムで強制起動するという刹那の無茶(当人的には「ここには0ガンダムとエクシアと、俺がいる!」という根拠不明の自信に裏打ちされた行動だったようだが)が効を奏した結果である。
もしファーシーズンでエクシアのドライヴが失われていたら、ツインドライヴもダブルオーガンダムも実用化は叶わなかったろう(ダブルオーはとりあえずGNドライヴ一基のみ、または粒子貯蔵タンクと組み合わせて使えたかもしれないが、本来ダブルオーに期待していたろうアロウズに対する物量的劣勢をはね返すほどの効果はまず見込めない)。
また上記のダブルオーライザードッキングテストの場面に表れているように、ツインドライヴの「真の力」が発揮されるには「この機体にはツインドライヴの制御機能が搭載されているわ。トランザムの増幅機能もね」とリンダが評するところのオーライザーが必要となる。
オーライザーはダブルオー単体ではツインドライヴの制御が不完全と見たイアンたちが独自に造った機体であろうから、イオリアがもともと“ツインドライヴ搭載の機体は支援機と組み合わせてこそ真価を発揮する”という仕様を想定したわけではあるまい。
おそらくそのあたりの、ガンダム単体でツインドライヴを運用するのか支援機など補助装置を取りつけるのかなどの細部はあえて詰めず、「200年後の科学水準を見越して」未来のエンジニア、実際に武力介入を行う当事者たちに判断を委ねたのだろう。実地の戦闘の中で彼ら自身が最適解を求めてゆけばよいと。
イオリアが仕組んだのは大まかに、ツインドライヴがその性能を最大に引き出せる状態でトランザムを行った時に周辺領域の人間が意識の共有が行えること、そしてツインドライヴを搭載する機体のパイロットが純粋種のイノベイターとして目覚めた暁に、意識共有可能なエリアと共有の程度・深度を遥かに増大させること。

セカンドシーズンの大詰めでダブルオーライザーは隠された究極の機能・トランザムバーストを発動させるが、その発動の契機は金色に輝く刹那の目をスキャニングしたことである。先にグラハムと戦った際にも刹那は目が金色に輝いているしトランザムを起動してもいるのにトランザムバーストは発現しなかった。これはこの時点ではまだ刹那のイノベイターとしての目覚めが完全でないと判断されたからだろう。
つまりGNドライヴないしその周辺装置にはパイロットの脳量子波のレベルを判定する機能もついていて、真のイノベイターに対してだけトランザムバーストを解放する仕組みになっている。オリジナルのGNドライヴを二基積んだ機体=ツインドライヴを搭載したガンダムは最初から真のイノベイターを乗せるために、というよりパイロットを純粋種のイノベイターとして覚醒させることを目的として造られているのだ。
加えてツインドライヴを搭載する機体はエクシアの後継機、つまり近接戦闘型の機体でなければならなかった。イアンたちがツインドライヴ搭載の機体としてダブルオーガンダムを建造していた時、刹那はまだ行方不明で生死も定かでない状態だった。プトレマイオス2のクルーたちは皆刹那は生きているとなぜか確信していたようだが、いつ帰ってくるとも知れない刹那のためにツインドライヴの機体を造るより、マイスターで唯一健在なティエリアの機体―セラヴィーガンダムをツインドライヴ用に造った方が良かったのではないか。
どのみちマッチングテストでつまずくことにはなったろうが、最初からティエリアを差し置いて、近接戦闘型=明らかなエクシア後継機つまりは刹那用のガンダムを一つしか造れないツインドライヴ仕様に選んだのはなぜなのか。
主人公特権というメタな理由を脇に置くなら、おそらくツインドライヴは最初から近接戦闘型の機体に馴染むような設定付けがされていたのだと思う。ダブルオーだけでなく疑似GNドライヴによるツインドライヴを実現した機体―リボーンズガンダムもまた近接戦闘型だった。これはイオリアが近接戦闘型のガンダムマイスターこそがイノベイターになりうる可能性を最も多く秘めていると判断したということではないか。

私はガンダムシリーズはじめロボットものアニメにあまり詳しくはないが、主人公の乗る機体は基本的に遠隔攻撃型ではなく直接剣状の武器で相手と斬り結ぶタイプが多いイメージがある。これは長くチャンバラものを愛してきた日本人の習性を踏まえたものであり、かつ敵と直に刀を交える中での言葉と命のやりとりにドラマが生まれるという考え方が根底にあるものかと思う。
ファーストシーズン、セカンドシーズンとも最後の戦いが刹那VSグラハム、刹那VSリボンズの1対1の斬って斬られての応酬&言葉争いだったのがまさにその表れだろう。敵の気配を最も間近に感じながら戦う近接戦は、ある意味通信回路を開かずとも相手と会話しているようなものだ。
いわゆる“拳で語り合う”というやつで、初めて刹那と戦ったグラハムは「モビルスーツの動きに感情が乗っていた」ことから相手パイロットがごく若い人間だと察しをつけている。こうした勘を研ぎ澄まされた人間は、それだけ言語によるコミュニケーションは困難であろう未知の生命体と「来たるべき対話」を行う新人類の要件に近いのではないか。
またファーストシーズンの終盤、刹那がアレハンドロと戦ったさいに亡きロックオンの「なぜエクシアに実体剣が装備されているかわかるか?それはGNフィールドに対抗するためだ。計画の中には対ガンダム戦も入っているのさ。もしもの時はおまえが切り札になる」という言葉を思い出す場面がある。
三国家群が疑似GNドライヴ搭載の疑似ガンダムを手に入れるよう仕向けるのも計画のうちなどとロックオンが知っていたとは思えないので、これはトライアルシステム同様マイスター中から裏切り者が出るまさかの事態への備えという意味で言ったのだろうが、実のところソレスタルビーイングが敵のガンダム部隊と戦うのは既定路線だったわけであり、ならば「切り札」としての役割を担わされる近接戦闘型のガンダムマイスターがイオリアから特別な期待をかけられているのは疑いないだろう。
トライアルシステムを持つナドレも対ガンダム戦闘の切り札ではあるはずなのだが、ガンダム4機へのヴェーダのバックアップを予定通り切った後にはトライアルシステムは使えないし(そもそもスローネやイノベイドたちの機体以外のガンダム系MS―GN-Xやその発展形であるアヘッドにトライアルシステムが効くのかもわからない。セカンドシーズン終盤でティエリアがトライアルシステムを発動させた際はイノベイド及びイノベイドから機体を提供されたサーシェス以外は影響を受けてないようだったが、たまたまトライアルシステムの効力圏内にいなかっただけかもしれない。小説版だと「疑似であるものをふくめ、GNドライヴを搭載しているモビルスーツは、すべてヴェーダからのバックアップを受けており(中略)ヴェーダさえ手に入れてしまえば、アロウズやイノベイターの使っているGNドライヴ搭載型を、すべて機能停止に追い込むことも可能となる」とある。この記述に従うなら、イオリアが「エウロパ」に残したハロを入手させて三国家群が疑似GNドライヴ搭載機を造らせようとした理由がさらに明確になる。ヴェーダの匙加減で三国家群れのMSを丸々機能低減、トライアルシステムも使用すれば機能停止にすら追い込めるのだから)。そもそもナドレのマイスターはイノベイドにすると決まっていたそうなのでその時点で純粋種のイノベイター候補としての期待はかけられていないのがわかる。

イオリアがもともと「意識を伝達する新たな原初粒子」を「製造する半永久機関」、つまりはコミュニケーションツールとして理論を構築したはずのGNドライヴを戦闘ロボットのエンジンとして利用することにした理由もおそらくここにある。
最終目的の「(純粋種イノベイターによる)来たるべき対話」に至る前の第一段階として「武力介入を発端とする世界の統合」は必須であり、意識伝達物質が同時にモビルスーツのエンジンとして極めて優秀な性質を持つなら武器転用というか兼用が成されるのは自然なことではあるが多分それだけではない。
上述のダブルオーライザードッキングテストでトランザム始動時に、近くにいた脳量子波を操る者たち―マリー、ティエリア、アレルヤの中のハレルヤが反応したのに対し、大量粒子放出現象の渦中にいた刹那は特に影響を受けていない。しかしそれからしばらくしてアロウズの奇襲を受けた際、劣勢の中で沙慈の操縦で駆け付けたオーライザーと合体したダブルオーがトランザムを使ったとき、初めて“白い世界”が出現し、刹那も沙慈も、敵味方含め近くにいた機体のパイロットたちの心の声が直接脳に響くという現象が起こる。少し前にはトランザムライザーになってもすでに脳量子波を操れる者しか影響を受けず白い世界も出現しなかったのにこの差は何なのか。
沙慈―オーライザーのパイロットの有無という違いもあるが、それよりも今回は実戦だったというのが大きいのではないか。ラボの中のテストではなく自分と仲間たちの命が懸かっている状況。戦闘状態、生命の危機というストレスを受けることで生き伸びるための能力の成長が促される。その成長をトランザムライザーの放出する大量のGN粒子が後押しし、刹那は急速にイノベイターとしての覚醒へ向けて歩みだした、それが“白い世界”の発現だったのではないか。
また刹那はリボンズと初めて顔を合わせた際に、サーシェスによって銃創を負わされている。この時の銃弾には疑似GNドライヴが造り出す毒性のあるGN粒子が詰められていたが、本来ならほどなく細胞障害を起こして死ぬところがなぜか「細胞障害の進行がきわめて緩やか」だった。
銃弾を撃ち込んでから四か月が経過しても一向に死なず出撃すらしている刹那に疑念を感じたリボンズは刹那が純粋種のイノベイターとして覚醒しつつあることに気づいたが、これも細胞障害という死に直結する身体的ストレスを受けたことが刹那のイノベイター化を促進させたのかもしれない。実際このリボンズとの邂逅あたりから刹那の“変革”はスピードを増しているように感じられる。
ちなみにダブルオーライザーのパイロットが刹那であるかどうかに関係なく、仮に全くイノベイターとしての素質のない人間が乗っていたとしてもトランザムさえ起動すれば白い世界は発現した、という可能性はあるだろうか。
これは劇場版で連邦初のイノベイターであるデカルト・シャーマン大尉の初登場時にイノベイターの定義として「GN粒子散布領域内では脳量子波による意識共有すら可能」と説明されていることからすればおそらくないだろう。イノベイターなら可能ということは普通の人間には不可能ということ。普通人にはトランザムライザーまたはトランザムバーストによるGN粒子散布領域内であっても脳量子波が使えないゆえに意識共有はできない、となる。
ダブルオーライザーのトランザム時に人造イノベイターとも言うべきルイスはともかく沙慈やその他のアロウズのパイロットたち、トランザムバースト下でスメラギやビリーまで意識を共有していたのは、純粋種のイノベイターになりかけの刹那が中継点となったからだったのだろう。
まとめると、鍔迫り合いを通じて敵と無言の対話をある程度可能としている近接戦闘型ガンダムのパイロットにさらにツインドライヴとトランザム機能を与えて他者との意識共有を体験させ、かつ戦闘による心身への負荷をかけ続けることでイノベイターへの進化を促すというのがイオリアの描いた設計図だったのではないか(ただ外伝小説『ガンダム00P』によるとナドレのマイスターに限らずマイスターを全員イノベイドにする案もかなり有力視されていたそうなので、もしこちらが採用になっていたら人類のイノベイター化促進は別の形で行われることになっただろうが)。
この「進化」というのがミソで、イオリアがイノベイターを生み出すのにリボンズがルイスに行ったような特殊ナノマシン投与といった手段を取らず、進化を促すような環境を用意するという迂遠とも見える方法を選んだのは、彼が望んだのが人類全体としての進化、全員とは行かなくとも大多数の人間がイノベイターへと変化する未来だったからではないだろうか。
SF小説の名作『幼年期の終わり』(『ガンダム00』が影響を受けているのはセカンドシーン最終回を見ても明らか)でも最初の一人が“進化”を遂げた後、あっという間にそれが地球全体に波及したが、イオリアにも一人がイノベイターとして覚醒することが人類という種族全体を変革させるという確信めいたものがあったのではないだろうか。

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