読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

第20回宮崎映画祭観覧記(その3) あらためて迫力とイマジネーションに圧倒された『AKIRA』

2014-07-13 08:27:08 | 映画のお噂
宮崎映画祭は、3日目の7月7日からは平日の開催へと移りました。
平日の期間中も、仕事帰りを利用して3本は観ようと計画していたのですが、週の半ばに九州へ接近、上陸した台風8号による天候悪化により予定が狂い、結果的に観たのは7日夜に上映された『AKIRA』のみとなってしまいました。残念です。
とはいえ、今回の映画祭の大きな目的の一つが、『AKIRA』を劇場で観ることでしたので、それが実現できたのは誠に幸いでありました。


(写真はDVDのジャケット写真を拝借いたしました)

『AKIRA』 (1988年 日本)
監督・原作=大友克洋
脚本=大友克洋、橋本以蔵
音楽監督=山城祥二
声の出演=岩田光央、佐々木望、小山茉美、玄田哲章、石田太郎、鈴木瑞穂

近未来の日本。突然の大爆発により崩壊した東京に変わり、「ネオ東京」が新たな首都となっていた。
2020年の東京オリンピックを前に再開発に沸くネオ東京のハイウェイを、金田正太郎率いる暴走族がバイクに乗って疾走する。すると、突然前方に白髪の少年が現れ、先頭を走っていた金田の仲間・島鉄雄はそれを避けきれずに転倒してしまう。少年は軍の研究機関から、反政府ゲリラによって連れ出されていた超能力者「タカシ」であった。負傷した鉄雄は、タカシとともに研究機関に連れ去られ、治療が施される。しかし、投与された薬の影響から、鉄雄の中でとてつもない力が目覚め始める。
一方、鉄雄の行方を追う金田は、反政府ゲリラグループの一員である少女・ケイと出会う。ケイが属するゲリラのグループは、「アキラ」という謎の存在を追っていた。そして、ついに鉄雄の居場所を突き止めた二人だったが、そこに現れた鉄雄は、以前の臆病な鉄雄からは想像もつかない姿となって、金田たちの前に立ちはだかってきたのであった•••。

大友克洋さんが、監督と脚本を兼任して自作の漫画をアニメーション映画化した本作は、日本のみならず世界各国で熱狂的なファンを生み出し、現在ハリウッドでも実写によるリメイク企画が進行中です。
本作を最初に観たのは、製作の翌年(だったかな)に発売されたレーザーディスク(懐)を購入した時でした。その後、LDのプレイヤーもソフトも手放してしまいましたので、かなり久しぶりの、それも劇場での再会となりました。
緻密で迫力のある描写とイマジネーションに、あらためて圧倒されっぱなしでした。いや、劇場のスクリーンで観ることができた本作は、以前テレビの小さな画面で観たのとはまったく別ものという感じがいたしましたね。
今ではアニメの製作もデジタル化されておりますが、この頃はまだまだセルによる製作が主流でした。3年の製作期間と10億円もの制作費、そして総セル画枚数が約15万枚とすべてが破格のスケールで、まさにセルアニメーションの極北といえる本作。密度の高い近未来都市の描かれ方や、疾走するバイクのスピード感も素晴らしいのですが、なんといっても圧倒的なのが、細部まで揺るがせにしない「破壊」のイリュージョンです。これはやはり、劇場の大きなスクリーンで観てこそ意味があるということを、とことん実感させられました。
そんな高密度な映像のバックに流れるのが、山城祥二さん率いる「芸能山城組」による音楽です。その土着的な響きは、近未来都市を舞台にした物語のイリュージョンを大いに盛り上げてくれます。また、音響効果における丁寧な仕事ぶりも聞きどころでした。
最初に観た時には、圧倒的な映像に呆然としつつ、ただただ押し流されるように観ていただけだったのですが、今回は映像と音楽の迫力を堪能しつつも、物語の内容もすんなりと頭に入ってきました。そして、その内容が25年を経ていてもまったく古びていないことに、また驚かされたのでありました。

本作が上映された7日の夜は、平日にもかかわらず観客は多めでした。中には、小学生の子ども2人を連れた家族連れの姿も。小学生にはいささか刺激の強いシーンもあったとは思いますが•••でも、なんだかちょっと嬉しい気持ちでありました。