読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

【読了本】『円谷プロ全怪獣図鑑』(円谷プロダクション監修、小学館) ~50年のイマジネーションを集大成

2013-04-16 22:37:34 | 本のお噂

『円谷プロ全怪獣図鑑』円谷プロダクション監修、小学館、2013年


1963年、特撮の父(もしくは神様)、円谷英二監督により創設され、今月12日で創立50周年を迎えた円谷プロダクション。ウルトラシリーズをはじめとした、職人的こだわりによる高いクオリティと、卓越したイマジネーションにより創り上げられた作品群を生み出し、日本特撮を代表するブランドであり続けています。
本書は、その円谷プロにより製作された『ウルトラQ』(1966年)から、最新作『ネオ・ウルトラQ』(2013年)に至る作品群に登場した、怪獣や怪人、宇宙人、ロボット、そしてヒーローといったキャラクターを一堂に集めた、大人のための図鑑です。

収録されているのは2500体以上。それらを作品ごとにオールカラーによる写真(モノクロ作品の『ウルトラQ』などを除く)と、身長・体重や特徴などをコンパクトにまとめたデータにより紹介しています。また、別形態や使用した円盤があるキャラクターについては、それらサブ情報もしっかり写真で紹介されています(写真はかなり小さいのですが)。補足情報をフォローした囲みコラムも多数設けられていて、なかなかの充実ぶりであります。
特筆すべきは、ウルトラシリーズ以外の作品に登場したキャラクターも、ほぼ完璧な形で網羅していること。
『ミラーマン』や『ジャンボーグA』『電光超人グリッドマン』などの巨大ヒーローもの。『トリプルファイター』や『プロレスの星 アステカイザー』といった等身大ヒーローもの。『快獣ブースカ』や『チビラくん』といったコメディもの。『怪奇大作戦』などの怪奇もの。『猿の軍団』や『スターウルフ』などのSFもの、等々。
ウルトラシリーズに登場したキャラクターは、これまでも様々な出版物で取り上げられてきましたが、それ以外の作品群のキャラクターについては、取り上げられる機会がなかなかありませんでした。それだけに、それら不遇なキャラクターたちにも光が当てられたことは、特撮好きにとっては誠に嬉しいことであります。
怪獣コメディ『チビラくん』のページでは、レギュラーのキャラはもちろん、ゲストキャラの面々までしっかり写真で網羅(ウルトラシリーズに登場した怪獣たちが形を変えて出てきていたり)。SFもの『猿の軍団』の猿キャラや『スターウルフ』の宇宙人キャラといった、どマイナーな面々もかなりフォローされていて、その徹底ぶりには感服いたしました。
驚いたのは、1970年代に円谷プロが手がけた、ナショナル掃除機「隼」のCM(掃除機をキャラクター化した巨大ヒーローとゴミ怪獣が戦うという内容)も、場面写真とともに紹介されていたこと。このCMはまったく知らなかったので、個人的には嬉しいサプライズでありました。

ウルトラシリーズのほうも、テレビや映画、オリジナルビデオはもちろんのこと、本シリーズから派生したミニ番組やアニメ作品、怪獣人形劇に登場したキャラクターもとことん網羅。さらには、イベントやステージショーのみに登場したキャラまで紹介されていて、こちらの徹底ぶりにも目を見張りました。
バルタン星人やゴモラ、ゼットン、レッドキングなどといったお馴染みのキャラにも、実にいろいろなバリエーションが。バルタン星人については、怪獣格闘ミニ番組『ウルトラファイト』に登場した、手がハサミではないヤツ(しかも木の棒を持って戦ったという)までが証拠写真つきで紹介されていて、ちょっと笑いました。

さすがにわたくしも全ての作品を観ているわけではないので、本図鑑で初めて知ったキャラも数多くあり、なかなか楽しめました。
通読してみて、1体1体の怪獣たちのデザインや設定の多彩さと、そこから生み出されるキャラクター性の強さを、あらためて感じました。
人類やヒーローに敵対する存在でありながら、ある意味ではヒーロー以上に愛され、親しまれ、観た者の心にずっと残り続ける怪獣や宇宙人たち。
怪獣たちを単なる化け物扱いにはせず、愛すべき存在として世に送り出した円谷英二監督の思いは、時代の移り変わりの中で形を変えながらも受け継がれているのだろうな、と思います。だからこそ、円谷プロの怪獣たちは長きにわたり多くの人びとに、世代を超えて愛される存在となり得ているのでしょうね。
同時にこの図鑑は、円谷プロが50年にわたって創造してきた空想・ファンタスティック系作品の総覧でもあります。日本におけるこのジャンルに、豊かなイマジネーションや実験的な試みで彩りを与えてきたその功績にも、あらためて思いをめぐらせました。
特撮好き座右の書として、末長く大事にしていきたい図鑑であります。