こんな女性の話。「女の幸せは結婚」と親に言われて結婚をして、その相手がDV夫だった。さんざん我慢したが、3人の子どもを連れてとうとう離婚。離婚しなければ、自分が死ぬか、夫を殺すしかない、というところまでいった、とのこと。しかし、離婚して子どもを3人もかかえて食べていけるような、仕事がない。そもそも、結婚が人生の目的のような育てられ方をしたから、キャリアに結びつくような教育歴もなく、結婚したときに寿退社をしているので、中年女性の自分にはパート職しかない。やっとさがしたパート職も、子ども3人を養っていけるほどの給料はない。それでも、ダブルワークでなんとか生活費を稼いで子どもを育てていた。が、生活の苦しさに体調もくずしがちで、仕事が困難になってきて、暮らしが逼迫し、精神的にも鬱っぽくなる。そういう事情であるから、DV夫から受けたダメージが癒されるどころか深刻になり、鬱病になってしまい、仕事に行けなくなった。病院にかかって、なんとか生活保護を受けるようになったが、生活保護からは本当は早く抜け出したい。役所の職員も何かとせっついて、早く仕事をしろ、と言う。が、せっつかれると、余計精神的に不安定になる。しかも、病院で処方される薬が良いのか悪いのか、不安定さが増してきて、時々解離症状が出るようになった。そうなると、解離している時には自分が何をしたか記憶がまだらになり、友人知人が距離を置くようになる。仕事もなく、精神的にも不安定で、友人たちも離れていき、、、というようにどんどん状況は悪化する。
もともとは頭の良い、きちんと論理的にものを考えられる人だ。他人への思いやりも深く、良識のある人だ。にもかかわらず、一度、人生のつまづきに遭遇してしまうと、どんどん負のスパイラルに入ってしまい、浮上が難しくなっている。
今の社会状況は、不利益を被る立場の人を固定し、そこに落とし込むことによって、やりくりしているように見える。「努力した人が報われる社会」ということがよく言われるが、私には「努力しているように見せるのが上手い人が報われる社会」のように見える。あまりにも困難な状況に、脱力して生きる力を失った人は、努力しない人と呼ばれるのか。
解離の症状を理解しない人は、記憶がない、というその人の言い分を信用しない。それほどまでに不幸なのだ、ということを理解しない。
間の悪い人は、間の悪い循環にはまっている。そこを許容する力のある社会は、ほんとうにキャパのある社会なのだろうが、この、余裕を失った時代、人々は狭量で他人の事情を斟酌する力さえ失っている。ただ、自分がたくさん得ることだけを考える。自分がたくさん得ると、他の人の取り分が減るのだ、という当たり前の事実に気づけなくなっている。
もともとは頭の良い、きちんと論理的にものを考えられる人だ。他人への思いやりも深く、良識のある人だ。にもかかわらず、一度、人生のつまづきに遭遇してしまうと、どんどん負のスパイラルに入ってしまい、浮上が難しくなっている。
今の社会状況は、不利益を被る立場の人を固定し、そこに落とし込むことによって、やりくりしているように見える。「努力した人が報われる社会」ということがよく言われるが、私には「努力しているように見せるのが上手い人が報われる社会」のように見える。あまりにも困難な状況に、脱力して生きる力を失った人は、努力しない人と呼ばれるのか。
解離の症状を理解しない人は、記憶がない、というその人の言い分を信用しない。それほどまでに不幸なのだ、ということを理解しない。
間の悪い人は、間の悪い循環にはまっている。そこを許容する力のある社会は、ほんとうにキャパのある社会なのだろうが、この、余裕を失った時代、人々は狭量で他人の事情を斟酌する力さえ失っている。ただ、自分がたくさん得ることだけを考える。自分がたくさん得ると、他の人の取り分が減るのだ、という当たり前の事実に気づけなくなっている。