聴くネタバレ映画・ドラマと英語日記

~元MC苅田三貴が見た映画やドラマを私情バンバンはさんでご紹介♪

そうするしかなかった時代

2012-09-27 12:11:48 | 邦画ヒューマン
″出来なくて、やらなかった″のではなく
″出来るのに、あえてやらなかった″というのは
大きな違いでしょう。
良い時も悪い時も。


1932年日本で初めてのトーキー作品
「マダムと女房」が世に送り出されてから約30年。

映画の中で台詞を耳にするのは当たり前になったのに
あえて、排した意欲作


裸の島


今年100歳で亡くなるまで
日本最高齢の監督だった新藤 兼人さん。

監督は独立プロの先駆者でもありますが、
実はこの作品を撮る前まで
その会社″近代映画協会″は資金繰りが悪化していた。

けれどこの作品が61年、モスクワ国際映画祭で
グランプリ(=最高賞)を受賞したり、
世界60か国以上で上映される大ヒットになったりして
会社も持ち直したんですって


ヒットしたのも納得。
台詞は一切ないのに、今見ても胸に迫るものがあります




瀬戸内海の小さな島に
トヨ(乙羽 信子)と千太(殿山 泰司)夫妻は
子供2人と暮らしています。


土は乾き、平らな部分などなく、
急な傾斜のある土地で
春は麦をとり、夏はサツマイモを植えながら。


とは言っても、この島に水はほとんどありません


だから彼らの生活は
大半が隣の島から水を汲んでくる事。
来る日も。
来る日も。
来る日も…



そんな厳しい自然の中で
今を必死で生きる女を
のちに監督の奥さんとなる乙羽 信子さんが体現し、
数十人のスタッフが合宿して撮ったヒューマンドラマです















″裸の島″というのは
″何もない島″という事なんでしょうか


最初に海に浮かぶその島が
映し出されるのですが、
ラストにもまた映るんです。


同じ島なんだけど
苛酷な状況をまざまざと見せつけられた後だから
全然違って見える。


改めて、何もない、
酷い所で暮らしているんだなぁと。
北の国からなんていい方だよ



あの、木の根っこを抜くシーンも
衝撃的でしたよね~

作物を育てるには非常に厳しい土地。
それでも、少しでも広げたいから
抜いたんでしょうけど、
くさりの様なものをひっかけて
夫婦2人でぐるぐる回って、抜いていたのには驚きでした。
いや、ショックに近い状態でしたね。

生きる事がそんなにも大変なのかと。



ショックと言えば、パシッーンですよ


今の時代ならあり得ないですよね。
水をこぼしただけで
倒れるほど頬をひっぱたくなんて


まあ、でもその認識が甘いんでしょう。
たたくほど、水が貴重だという事なんですね。

しかもこのシーンがあるからこそ
ラストがより感動的


裸の島には物だけでなく、人も居ない。
当然お医者さんも居ないのです。
だから息子が熱を出した時、
わざわざ隣の島まで迎えに行ったのですが…


間に合わなかった


幼い息子を亡くした母親。
悲しみがどれほどのものか
それはやはり亡くした人でなければ分からないでしょう…


全身で表現している乙羽さんと、
それをただ黙って見ているしかない殿山さんの表情に
胸が痛みました。

そのまま、また元の生活に戻るのも。

そう言えば同じ60年に作られたおとうともまた
同じ様なラストでしたね。

働く事で気を紛らわす。
食っていくだけで精一杯の時代、
そうするしかなかったのかもしれません


裸の島 [DVD]
角川映画


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