貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

蜘蛛の鳴き声は?

2021-06-30 15:28:50 | 日記

蜘蛛の鳴き声は?

令和3年6月30日(水)

 今朝は、入院前のPCR検査を

受けに行った。

 鼻の右の奥の方に突っ込まれ採取。

 ちょっと痛くツンとした。

 あっという間の出来事!

 今日は、蜘蛛の句。

蜘何と 

  音(ね)をなにと鳴 

      秋の風

   蜘蛛よ、この秋風の中、どんな声で

何と鳴くのか、

の意。

 延宝八年以前(1680)作。

 『枕草子』43段に、蓑虫が秋風に

「よちよちよとはかなげになく」

とあるのを踏まえ、蓑虫と同じく

本来は鳴かない蜘蛛に鳴き声を

尋ねたもの。

◎ 秋といえば虫の鳴き声だ。

秋風の寂しさを盛んに鳴き立てる虫

にもとめず、

かえって鳴かないで沈黙を守る蜘蛛に

求めた。

 こういうのを逆転の感覚とでも

呼ぶのだろうか。

 作句の平凡な感覚を、

非凡な感覚でひっくり返している。

 これも、芭蕉、若き日の特異作だ。


秋風、耳朶で感じ取る

2021-06-29 15:14:17 | 日記

秋風、耳朶で感じ取る

令和3年6月29日(火)

 火曜日は、主として食料品の

買い物デー。

 最近は生協のみが多い。

 鮪の冊のいいのが最近は少ない。

 魚ももう少し新鮮なのが・・・と、

かつてを懐かしむ。

 夏野菜も家庭菜園の収穫で間に合う

し、やはり新鮮さとみずみずしさが

段違い!!!

 さて、今日も秋風!立秋の風。

秋来にけり 

   耳をたづねて 

      枕の風

    立秋の朝、ひんやりとした風が、

枕元の耳を訪ねて来た、

の意。

 延宝五年(1677)の作。

 歌が風の音で秋の訪れを知ると、

詠んだのを受け、

風の方から知らせに来たとする。

 「音」の抜けとも、敢えて触角の句

にしたともとれる。

◎ 立秋の朝、寝室の枕元で、

微かに涼しい気配があった。

 秋の来たことは目でははっきり

察知できないが、閨(ねや)で

微かに感じる冷気が耳には感じ

られた。

 この場合、働いたのは音ではなく、

耳(じ)朶(だ)に触れた冷気であるのが、

芭蕉の抜きん出た感覚。

 芭蕉の若き日の傑作である。

◎ 古今和歌集、藤原敏行。

「秋来ぬと 

  目にはさやかに 

      見えねども、

  風の音にぞ 

     おどろかれぬる 」

 が作意の源か。

 風の音や冷気で、秋を知る。

 芭蕉はひとひねりして

秋は耳から来たと詠む。

 寂しさとわびしさを同時に感じるなあ!!!

 


鸛の巣?

2021-06-28 11:12:25 | 日記

鸛の巣?

令和3年6月28日(月)

 今朝も日射し、碧空の広がり!

 そして、10時過ぎ曇天への変化、

この数日このパターン。

 70%台の気象予報が外れ気味?

 今朝は「嵐」。

 鸛(こふ)の巣に 

    嵐の外の 

        桜哉

 貞享四年(1687)の作。

 鸛が巣を営む桜は、嵐とは無縁に

咲き誇っていることだ、

の意。

芭蕉の時代には、鸛(こうのとり)は、

ちょっと山の中に入ると、

高い木の上に巣を作って棲んでいた。 

 そして、桜の花は満開で、

嵐の荒れ狂っている下界とは

全く違う景色を見せていた。

 嵐の日に、

芭蕉は、恐らく風の筋を求めて、

山奥を歩いたのであろう。

 花を散らし、葉を散らす嵐の狼藉を

避けた桃源郷が不意に開けてくるのを

見付けて、得意満面の芭蕉の姿が

目に見えるようだ。
 


風の筋・・竹の葉のなびき

2021-06-27 14:02:18 | 日記

風の筋・・竹の葉のなびき

令和3年6月27日(日)

 今日は、京都の嵐山の作。

嵐山 

  藪の茂りや 

     風の筋

   嵐の藪は青々と茂り、

その葉がなびくことで、

風の通る道筋がよく見える、

の意。

 元禄四年(1691)の作。

 京の嵐山には、竹藪が多く、

特に中腹から麓には、広い竹藪が

続いている。

 無論、その後の桜の名所を目指した

人工の作業で、

竹藪は減ったらしいのだが、

芭蕉の頃には、青々と茂った竹藪の

山であったろう。

 すると、私が経験したように風は

竹藪のあるところ、

芭蕉が「風の筋」と詠んだ風の通り道が

あって、動きと音を出していた。

 それをこの句は、見事に描き出している。


風の匂い、風の色、風の動き

2021-06-26 13:21:38 | 日記

風の匂い、風の色、風の動き

令和3年6月26日(土)

 何十年も前から親しくして

いただいている銚子の魚屋さんから

梅雨鰯や金目鯛、メヒカリなど

届いた。

 家内がさばいている。

 夕飯が愉しみ!!!

 さて、さて、風色を示すのには・・・?

 雑木林は秋に全の葉の色を変える。

 賑やかでいいが、風色を示すには、

賑やか過ぎて、秋の寂しさを取って

しまう。

 これでは、駄目だと決定打にしたのが、

最初の句。

風色や 

  しどろに植し 

      庭の萩

  風には木々のかおる匂いがあり、

花を映す色がある。

 むろん、動きもある。

 この動きは、同じ方向に一斉に

動くのではない。

 私は高原の森を好んで散策するが、

梢を見上げると、

有るところは盛んに動き、

その反対に静止してピタッと動かぬ処

もある。

 また、風には通り道、

則ち風の筋があって、森の木々を

様々な風姿が動かしているのだ。

 目を閉じれば、森はごうごうと鳴って、

森の木々が一斉に鳴るように

聞こえてくるが、

目を開けば、風は己が好む道を

あちらこちらとバラバラに動いている。

と、師は宣う。

 拙い貢蕉庵の周囲に吹く風も全く同じ

現象。

 風は己が好む道をあちこちへと!

 しっかり味わう一句としよう。

 風色や 

  しどろに植し 

     庭の萩