貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

人恋の境地

2021-06-06 15:22:12 | 日記

人恋の境地

令和3年6月6日(日)

月雪と 

  のさばりけらし 

    としの昏(くれ)

 今日は、一年の中頃、初夏。

 今日から雪月花の、雪の俳句に。

 時節が合わないが、乞うご勘弁の程。

 この句は、

   年の暮れを迎え、思えばこの一年、

月だ雪だと思いのままに暮らしたなあ、

の意。

 貞享三年(1686)の作。

 「のさばる」は、勝手気ままな振る舞い。

 「けらし」・・・「けるらし」と同様、

あることに思い至ってしみじみ詠嘆する

表現。

 「のさばりけらし」の表現が印象的。

 此処に一種の反省や自嘲を読み取る

ことも可能ながら、

それが風雅に活きる自負の裏返し

であることに間違いない。

 ◎ 俳句の対象として、

ひたすら雪月花を追って一年が

過ぎてしまったが、

ふと気がつくと、世間では暮れだ、

正月だと騒いでいる。

 自分が俳人として、雪月花にだけ、

興味を持つのは、何だか寂しい。

 世の中に置いて行かれる寂しさ、

世の人と交際しない寂しさ、

つまり、雪月花が「のさばって」いる

我が人生なのであった。

 芭蕉の境地は、よく分かる。

 それは言ってみれば、

「人恋の境地」

である。