貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

無常迅速・・・蟬の声

2021-05-31 15:53:27 | 日記

無常迅速・・・蟬の声

令和3年5月31日(月)

 ああ、五月も大晦日!

 書斎兼寝室の模様替えを、

二日掛けてやる。

 断捨離も兼ね実施。

二度目だが、やっぱり本や物が

増えている。

 活きているのだから仕方ないか・・・?

頓て死ぬ 

  けしきは見えず 

      蟬の声

   間もなく死んでしまうのに、

そんな様子は全く見えず、

蟬が鳴きしきっている、

の意。

 元禄三年作。

 前書きは「無常迅速」

・・・芭蕉が好む語の一つ。

  ◎ 蟬の命は泣き出してから、

すぐに尽きてしまうのに、

そんな悲劇は知らぬげに、

陽気に精一杯鳴いている。

 「無常迅速」の題がつけてあり、

蟬の不思議を夏の太陽の照りつける

中に言い当てている。

 この句と、

「京なつかしき」とを結ぶと、

次の一句「玉祭り」の焼き場の煙り

が生きてくる。

 玉祭 

  けふも焼場の 

     けぶり哉


居ながらにして懐かしく

2021-05-28 15:31:03 | 日記

居ながらにして懐かしく

令和3年5月28日(金)

京にても 

  京なつかしや 

    ほととぎす

  京の都で、時鳥を聞くと、

遠い昔が偲ばれて、

京にいながら京が懐かしく

感じられる、のい。

  元禄三年作。

 小春宛て書簡は、6月20日に

幻住庵から発信したもの。

 芭蕉は、6月初めから18日まで

京に出ており、その間の作と見られる。

 上句の「京」は現在、

 中句の「京」は古のそれを言う。

 師匠は、

「何故、京が急に懐かしくなったのか。

私はこの句の付近に死を詠った句が

あるのが何かの意味があるように

思えてならない。

 京が懐かしく思えるのは、

長い歴史とともに、多くの墓場が

あるからだろう。」

と語っている。


たかくの郭公

2021-05-26 14:01:02 | 日記

たかくの郭公

令和3年5月26日(水)

 7月入って右目の手術。

 網膜前膜症になり、マス目の線が

歪んで見えるので、眼科にかかったら、

手術しか治療方法はないと・・・。

 紹介状を書いてもらい、先月

隣町の病院に行く。

 昨日は、手術前の全身検査と入院

手続きなどで3時間近くかかる。

 白内障の手術のようにやるそうだ。

 生活に不自由はないが、視力が

低下していくので、元気なうちに

やっておくことに・・・・。

 手術デビュー!

 今日もほととぎす。

落くるや 

  たかく宿の 

      郭公

   高久の宿だけに、高い空から

郭公の高い声が落ちてくることだ、

の意。

 元禄二年作。

 前書「みちのく一見の桑門、

同行二人、なすの篠原を尋て

猶殺生石見んと急侍るほどに、

あめ降り出ければ、先此処に

とゞまり候」

   たかく・・・地名の高久に、

「空高く、声高く」の意を掛ける。

 4月16日から二泊した庄屋宅での

挨拶吟である。

 謡曲仕立ての発想は、旅中に兆し

ていたことが知られる。

 


優先順位は?

2021-05-23 15:43:51 | 日記

優先順位は?

令和3年5月23日(日)

 久しぶりのお日様!

 午後から庭木の剪定をする。

 取り敢えず道路側に枝が張りだ

している枝をばっさり。

 木に謝罪しながら・・・・・・。

 さて、

初句は、

  麦や田や 

   中にも夏は 

     ほとゝぎす

  「麦や田や」とすると、

麦秋が先になる。

 黄金色の景色より、みずみずしい田園の

方を優先させようと、先ず考える。

 早苗の青々として、力強い色を優先

させたのだ。

 夏の句とはっきりと読者に意識

させようと、更に明白な句を作ってみる。

  田や麦や 

   中にも夏時鳥

   「夏時鳥」をさらに「ほとゝぎす」

という音を際立たせるために、

「夏のほとゝぎす」としたのが成句。

  田や麦や 

  中にも夏の 

    ほとゝぎす


卯月の夏らしさ

2021-05-22 15:52:46 | 日記

卯月の夏らしさ

令和3年5月22日(土)

田や麦や 

  中にも夏の 

    ほとゝぎす 

    青々とした早苗と金色の麦、

全てが夏らしい風景の中でも

時鳥は、特に素晴らしい、の意。

 元禄二年。

 4月7日、黒羽の秋鴉󠄃(あ)  邸での吟で、

曽良書留には、前書きが付される。

 『もゝよ草』等の上・中

「麦や田や 中にも夏は」は真

蹟によるとする。」

 ◎ 青々とした卯月の早夏、

麦秋の麦の黄金色、その対比が

素晴らしい季節だ。

  その景色を楽の音で引き立てている

のが時鳥である。

 卯の花月の薄紅の見事さを引き立てて

いる。

 芭蕉は、この句について、

「春秋のあハれ、月雪のながめより、

この時はやゝ卯月のはじめになん侍れば、

百景一ツをだに見たことあたハず、

たゞ声をのミて、黙して筆を捨る

のミなりけらし」

と言っている。

 この一句に対する芭蕉の熱意は、

並々ならぬもので、初句、字句と

推敲を重ねている。

 初句は、

  麦や田や 

   中にも夏は 

       ほとゝぎす

つづく。