「植(うう)る」と「植(うえ)し」の違い!
令和3年6月24日(木)
この句には、遺稿が残されていて、
句作の苦心の跡を辿ることができる。
芭蕉は最初「風色や」が、
「風吹くや」と吟じて、
どちらにしようか迷ったらしい。
しかし、後者の表現はあまりにも
通俗だと思い、
「風色や」に新表現があると思い至る。
それで修句を続けることにする。
最初の詠み句は、
風色や
しどろに植(うう)る
庭の萩
「植る」という現在進行形では、
作庭に現在から未来への変化が
生じてしまう。
折角の萩の紫紅色が風の色としては
弱くなると気づく。
そこで、「植(うゑ)し」と過去形に
してしまえば、萩の色に変化がなくて、
風は現在の紫紅色の動きを捉える
ことができる。
結果、現在形の「ううる」は没に。
僅かな言葉の差が風色という表現を
弱めていることに、
芭蕉は気付いたのである。
そこで、思いついたのが、
萩と断る必要はないだろうということ。
秋の花といえば、萩に決まっている。
修正句は、
風色や
しどろに植えし
庭の秋