貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

転調の妙

2021-09-14 11:23:03 | 日記
令和3年9月14日(火)
 別句は、
面白うて 
  やがて悲しき 
     鵜飼かな
 これは確かに、今定説として芭蕉句に
なっている方がいい。
 「鵜飼かな」では、平凡である。
 「鵜舟哉」が、不意中の鮎を照らし出
して実在感がある。
 しかも、静まった後の悲しさを、水の
冷たさとともに描き出している。
 こういうところに、俳句は文字数が
少ないだけに作者の才能の差が
はっきり出てしまう。
 なお、「おもしろうてやがて」は
平仮名で、あっという間に鵜飼の喧騒の中に
引き込まれる。
 その後、漢字がきて、
「悲しき」と転調し、
「鵜舟哉」と、重々しい舟の構造の描写で
終わる。
 この転調の妙が、おもしろさから
悲しみと舟の暗さを呼び起こす。
 何とも奥の深い一句である。