貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

三好達治氏の母音説

2021-09-06 10:13:20 | 日記
令和3年9月6日(月)
 感動、感激のパラリンピックも昨夜閉会式。162カ国の人たちのベストな姿、
戦った相手と終了後の笑顔や抱擁、温かい魂のふれあいを感じることもできた。
 コロナ禍の最中での大会で、全ての人たちのご苦労やご努力、抜きん出た智惠に感謝の気持ちを捧げたい。そして、ありがとう!!!!
 さて、
荒海や 佐渡によこたふ 天河
 この一句の続きだ。
 佐渡金山と遠流の歴史。
 つまり、重労働で苦しめられている罪人たちと、政治の世界の刑罰としての遠流の苦しみである。
 順徳院、日蓮、世阿弥などの思い出が、佐渡にはまつわっている。
 佐渡は、浮かぶ島でありながら、歴史上の辛い出来事の象徴である監禁の不自由の苦しみの島から目を離し仰ぎ見ると、広大無辺な天の川が自由と造化伸びを見せたというのだ。

 ところで、この句「荒海や」に、母音のA音が多いと指摘したのは詩人の三好達治である。
 これは、随筆『温感』にある「母音の説」である。
 母音のAは、何かしら鷹揚で温かい感じがする。Oもまたそれにやゝ似ている。Uになると、その度を減じて、代わりに柔らかく穏やかな感じになるようである。EとIは、鋭く冷たい。
 詩人はその例として芭蕉の三句をあげている。
 A九つが、「荒海や 佐渡によこたふ 天河」
 A八つが、「さみだれを あつめて早し 最上川」
 A七つが、「あかあかと 日は難(つれ)面(なく)も 秋の風」である。
 「芭蕉の句のどっしりとした風格の大きい落ち着きは、どうやらこの開口母音としばしば関聨していそうに考えられる。」と、詩人は言った。
 まず、「荒海や」以下の三句が、詩人の言う通りの傑作であることに、師匠は同意する。
 そして、声を出してこれらの句を吟じてみると、それぞれ、海、川、太陽、風という自然と合一できるような愉快な心地になることを認められる。
 ほんと、その通りだと心底合掌する朝である。