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アーウィン・ウィンクラー監督『五線譜のラブレター』

2009-12-19 13:47:00 | ノンジャンル
 ジェニファー・ジョーンズの死亡記事が昨日の夕刊に出ていました。私にとっての彼女の代表作は少女から大人まで演じた「ジェニーの肖像」と、ういういしい娘役を演じた「君去りし後」です。特に幻想的な映画「ジェニーの肖像」での美しさは忘れがたいものでした。心よりご冥福をお祈りします。

 さて、蓮實重彦先生が本「映画崩壊前夜」の中で取り上げていた、アーウィン・ウィンクラー監督の'04年作品「五線譜のラブレター」をDVDで見ました。
 老いたコール・ポーターがピアノで弾き語りをしているところへ旧知の舞台監督が訪れ、コールの人生を描いた映画に立ち合うように言います。二人はいつの間にか劇場に移動していて、舞台ではコールの人生に関わった人々が歌い踊り、やがて中央にリンダが登場します。場面は二人が出会ったパリでのパーティへ移り、庭園での散歩とコールのピアノの弾き語りによる求愛と二人のダンス、そしてそれを見つめる老いたコールと舞台監督の会話が挿入されます。コールはリンダに自らの同性愛癖を告白しますが受け入れられ、ベッドを共にし、二人は結婚します。新居を構えたベニスで仕事の進まないコールに対し、リンダはアーヴィング・バーリンとその妻を呼び、彼の才能を認めさせます。男のバレエダンサーとの逢瀬があったものの、バーリンの推薦でブロードウェイの舞台の仕事を得たコールはニューヨークに渡り、大成功を収めます。コールは親友の子供と過ごすリンダの楽し気な様子から子供を作ることをリンダに提案し受け入れられますが、すぐに自分の舞台の男性歌手と浮気したことがリンダにばれ、リンダは流産してしまいます。コールは心機一転するためにハリウッドに渡りMGMの大プロデューサー・メイヤーの注文通りに仕事をこなして財産を築きますが、また男との浮気に走ったコールに愛想を尽かしたリンダは自分の肺の病気の療養のためにアリゾナに向かいます。するとリンダの元に男とキスしているコールの写真を持ってきて金を無心する者が現れ、リンダはコールの元へ行き慎みを持つように言いますが拒否され、彼の元を去りパリに戻ります。親友の息子が病死して意気消沈したコールは馬の遠乗りで事故に会い両足に大ケガを負います。意識が戻るとリンダが戻ってくれていました。コールは足が使えるようになるまで数年かかりますが、リンダの支えで乗り越えます。しかしリンダは肺の病気が悪化して死に、コールは彼女の死を見届けてから以前から医者に勧められていた右足の切断を行います。彼は心を閉ざし、訪れてくれた友人たちも追い返してしまい、それを客席で見ていた老いたコールは涙しますが、舞台監督がエンディングを盛り上げるために歌い始めると、リンダ以外の登場人物たちが再度登場しコールに1人ずつ挨拶します。それが終わると劇場の客席に1人残されたコールは舞台のピアノに近づき、弾き語りを始めます。すると、背後に若いリンダが現れて声を合わせ、コールも若返ると、画面がアイリスアウトしていくのでした。
 印象的なワンシーンワンカットが2箇所あり、その中で人物や背景が入れ替わったりするのが見事でした。バックにはほとんど常にコールの歌が歌われたり演奏されたりしていて(歌っている歌手たちがすごい顔ぶれです)、まさに音楽映画なのですが、観客として老いたコールを置いたり、またミュージカルシーンにどこか居心地の悪さを感じさせるなど、異化効果があったような気がします。いずれにしてもコール・ポーターの偉大さを改めて認識しました。(淀川長治さんが担当していた頃の「日曜洋画劇場」のエンディングテーマもポーターの「キス・ミー・ケイト」の音楽であることを初めて知りました。)コール・ポーター・ファンの方には特にオススメです。

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