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奥田英朗『無理』

2009-12-18 16:45:00 | ノンジャンル
 奥田英朗さんの'09年作品「無理」を読みました。
 東北の地方都市。福祉事務所の生活保護課に県から出向している相原は民生委員から寝たきりの母と同居する引きこもり状態の西田を紹介されますが、生活保護費削減を命じられている相原は西田が働けるはずだとして門前払いします。西田の家は電気もガスも止められ母は凍死しますが、西田の言動に相原は激怒してしまいます。それから相原は謎のダンプの襲撃に会うようになり、やがてそれが西田の仕業であると分かりますが、証拠がなく上司も警察も取り合ってはくれません。一方、女子高生の久保史恵は30才前後の日野に拉致され彼の部屋に閉じ込められますが、彼は親に暴力を働き、アニメやゲームの妄想にとりつかれた、部屋にこもる狂気の男でした。また、日野の同級生だった加藤は詐欺商法の会社で働いていますが、正当に評価されないことから社長を殺してしまった先輩に頼まれ、その後始末を手伝います。新興宗教にはまっている50前の堀部妙子は他の新興宗教との軋轢が原因で万引きGメンの職を追われ増々信仰に走りますが、寝たきりの母を兄から引き取ることでどうしても金銭が必要になり、相手の宗教の人々が働く職場で職を得ます。市議の山本は産廃施設の建設で利益を得ようとしていたところを市民団体に反対され、父の代から関係の深い暴力団まがいの兄弟にそのリーダーである坂上を殺されてしまい、その後始末を手伝わされます。そしてラスト、西田のダンプが主婦援交の帰りだった相原を襲い、それによって起こった事故に、史恵がトランクに押し込まれている日野の運転する車、社長の死体をトランクに乗せた加藤の車、母の車椅子を万引きして捕まり妹に引き取られた妙子が乗った車、坂上の死体を焼くための焼却炉を乗せ山本も乗るトラックがすべて巻き込まれるのでした。
 奥田さんの小説を読み始めたのは「イン・ザ・プール」や「町長選挙」といったユーモラスな小説を読んだのがきっかけでしたが、前作の「オリンピックの身代金」といい今回の小説といい、明るさはみじんもなく残念でした。今回は主要な登場人物5人の話が1章ごとに平行して展開されているので、それが最後にどのようなつながりを持っていくのを楽しみに読み進めましたが、最後のあまりの安易さには絶望的になりました。文体が読みやすいのがせめてもの救いです。次回作に期待です。

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