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小松左京『影が重なる時』

2010-01-17 15:20:00 | ノンジャンル
 小松左京さんの'64年の短編集「影が重なる時」を読みました。
 「影が重なる時」は、ある地域内で本人にしか存在しない分身が現れ始めますが、それは未来に起こる核爆発による時空間の歪みで生じたものであり、被爆直後の広島を思わせるという話。
 「さとるの化物」は、相手の考えが分かる人間を探しては、自分のテレパシー能力を使ってその者の思念を奪ってしまう女の話。
 「カマガサキ2013年」は、21世紀の乞食が26世紀からやってきた乞食に、誰もがお金を恵みたくなる機械を開発してもらいますが、目先の金に目がくらんで政府にその機械を売ってしまう話。
 「サラリーマンは気楽な稼業‥‥」は、22世紀に長寿のために定年が100才に延長され絶望する5才のサラリーマンの話。
 「痩せがまんの系譜」は、家の唯一の生き残りとなった独身女性のもとに、未来の子孫が江戸時代の侍を夫にするために連れて来る話。
 「墓標かえりぬ」は、列車事故で体をまっぷたつにされ、右半身だけパラレルワールドに飛ばされてしまった男の話。
 「三界の首枷」は、透視能力のある私が読心能力を持つ妻との間に、思念を送ることができる息子と念動能力を持つ娘を持つようになる話。
 「花のこころ」は、ある星で生きる意識のある植物が美しい花を咲かせたいと思い、人間の遺伝子を取り込むために人間を誘惑し始める話。
 「御先祖様万歳」は、100年前の幕末とつながった洞窟が出現したことによって生まれた悲喜劇。
 「遺跡」は、真田幸村のぬけ穴に入っていて水爆から命拾いした老人の話。
 「女か怪物(ベム)か」は、ある惑星に1人で滞在していると現れる理想の女性が本物か怪物かと隊員たちが悩む話。
 「さんぷる一号」は、合成食料を試食する仕事をする僕が社長一族の食料として自分が肥育させられていたことを知る話。
 「ダブル三角」は、家事から解放された主婦が強くなった世の中で、一時的に性転換し娘と付き合うようになった私が、その娘が性転換した青年と、やはり性転換した夫が付き合っているのに遭遇する話。
 「墓地での会合」は、団地の建設予定地にある墓地に出るという幽霊を見に行くと、それは核爆発後の人々の姿で、彼らにとっては自分たちが爆発前の幽霊だったという話。
 「お召し」は、三千年前の古文書に、ある日突然11才以下の子供たちだけの世界になったことが書かれていて、12才になると姿が消える現在がその時に始まったことが分かるという話。
 「火星の金(かね)」は、火星の宝石と交換するために運ばれてきた膨大な量の札束を囚人たちが強奪しますが、それは宝石型の安価な火星の貨幣と交換するための古紙幣だと分かる話。
 「恵みの糧」は、高度近代化社会の中で、飢えた猟師の一家が人間を食べるようになり、核爆発で一気に食料が増えるという話。
 「恥」は、北九州の炭鉱夫の子孫が退化した種族を見ていた観光客を醜悪なものとして宇宙人の観光客が見ているという話。
 「自然の呼ぶ声」は、男性が女性を殺す事件が続発し始めた星で、それまでは性ホルモン抑制剤が食料に添加されていたことが分かるという話です。
 ほんの数ページしかない短いものもありましたが、どれもオチがついていてそれなりに楽しめました。レムの「惑星ソラリス」を思わせる「女か怪物か」など他の作品と関連しているものも多く、またユーモアにあふれた短編も多くありました。SF好きな方以外にもオススメです。

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