本『教養主義!』の中で山田宏一さんが映画史ベスト50の中に選んでいた、バッド・ベティカー監督の'53年作品『平原の待伏せ』(原題;「The Man from The Aramo」)をDVDで見ました。
「テキサスの歴史は全てのアメリカ人がとても大切にしている独立精神を象徴している。テキサスの人々はメキシコがスペインから独立するために一緒に戦った。そして独立したテキサス州には平和が訪れた‥‥メキシコのサンタ・アナ将軍がメキシコを占領するまでは。テキサスの人々は将軍と戦うか、彼の独裁軍事政権の元に下るかの選択を迫られた。テキサスのサム・ヒューストン将軍はテキサスの将来を懸けての作戦を任されることになった」の字幕。議論するテキサスの有力者たち。ヒューストン将軍はメキシコの大軍から200足らずの兵で最後の砦であるアラモを守っているトラヴィス大佐に援軍を送る必要を力説しますが、なかなか同意を得られません。「アラモ」の字幕。メキシコ軍は最後通牒を突き付けてきますが、大佐は砲撃で答え、壮絶な砲撃合戦となります。ジョン・ストラウド(グレン・フォード)は、サンタ・アナ将軍が一部のテキサスの人々に土地を与えて、秘かに自分たちの味方につけていることを大佐に教えます。そこへ伝令の少尉が到着し、北のオックスボーでの戦いにより援軍を出す余裕がないので、そこでなるべく長く持ちこたえてくれというヒューストン将軍からの伝言を伝えます。「1836年3月22日、テキサスは独立を宣言する」とトラヴィス大佐が発表し、歓声を上げる兵士たち。全滅を覚悟で残ってもいいという者を募る大佐に対して、1週間以上寝ていないにもかかわらず、ストラウド以外の全員が志願し、大佐はストラウドには事情があるのだろうと言って、彼に「1000人以上ものサンタ・アナ軍に包囲されていて、3、4日後には3000人から4000人へとその数は増えるだろう。勝利か死か、どちらにしても最後まで我々は戦う」という内容の将軍への伝令を託します。猛烈な砲撃の中、砦を飛び出すストラウド。焼け落ちた家々を辿り、やがて燃えカスと化した自分の家に着くと、一緒に住んでいて生き残ったメキシコ人のカルロス少年が、メキシコ軍の軍服を着たアメリカ人たちが、ストラウドの妻と息子、そしてカルロスの父を殺したことを教えます。ストラウドはすぐにならず者のワーデ一味の仕業であると見抜き、とりあえずカルロスを預かってくれる人を探しに行きます。ヒューストン将軍はフランクリンの町に着くと、旧知の仲でありインディアンに片手を奪われた新聞屋のフレッドに町民を集めさせ、アラモが全滅したこと、次の標的にされるのはこの町であること、自分たちが町の手前で敵の進撃を阻んでいる間に女子供とお年寄りを避難させることを命じます。そこへ現れたストラウドは事情を話して若い女性ベス(ジュリア・アダムス)に少年を預けますが、彼がアダモから逃げ出したと誤解した町の人々によってリンチに会いそうになり、保安官によって留置場に保護されます。酔っ払って騒ぎを起こしストラウドと同じ留置場に入れられたダーヴェスらを見たカルロスは、彼らがストラウドの妻子を殺した連中だとストラウドに教えます。ストラウドはダーヴェスから、彼がワーデの一味であり、町民が避難した後にワーデが町の銀行を襲う計画であることを聞き出します。少尉の小隊に守られ、避難民を乗せた幌馬車隊は出発し、カルロスはベスに、ストラウドがメキシコ人のカルロスの身を案じてアラモを出たこと、彼の身元引受人を見つけた後にアラモに戻るつもりだったことをベスに話し、その事実を皆に伝えてくれと懇願しますが、ベスはもう遅すぎると言います。女子供たちが町を出発した後、町に残った男たちはメキシコ軍が来るまえに処刑してしまおうと、ストラウドを留置場から引き出し首にロープをかけますが、そこへワーデ一味が襲いかかります。銀行の金が避難民とともに消えたことを知ったワーデはすぐに退散し、その騒ぎの中でストラウドは彼らに合流します。その夜、ストラウドにアラモの守備隊のことをしつこく聞くコビーを彼が殴り倒すと、ワーデは一応彼を仲間に加えてやることにします。幌馬車隊は避難先へ近道をするために谷を進みますが、そこをワーデは襲おうとし、コビーとともに見張りに出されたストラウドは、自分をナイフで襲ってきたコビーを射殺し、その音を聞いた幌馬車隊は逃げ出し、ストラウドの裏切りを知ったワーデはストラウドと乱闘となりますが、ストラウドは崖から落ちて気を失い、ワーデは一旦引きます。カルロスによって発見されたケガを負うストラウドを、自業自得だと置き去りにして見殺しにしようとする町民。しかし周囲の反対にもかかわらず人道的な理由からベスは彼を助け、回復させます。ストラウドは、ワーデが銀行の金を奪うために再び幌馬車隊を襲って来るだろうと避難民たちに教えますが、ちょうどそこへ将軍からの伝令がやって来て、少尉の小隊は将軍に合流するために幌馬車隊を離脱する命令が下されます。家族のいる幌馬車隊を命令に反して守ろうとする少尉に対し、ストラウドは軍規よりも家族を守る方を選んだ自分と少尉を重ね合わせて彼を説得し、彼を将軍の元へ向かわせ、自分が幌馬車隊を守ることを彼に誓います。少尉の守備隊が幌馬車隊を離れたのを見たワーデらは幌馬車隊に襲いかかり、ストラウドが守備陣型を作らせた幌馬車隊は平原を全力疾走します。川に出た彼らは川を背にして防御陣型を引き、ワーデの最初の攻撃を撃退します。ストラウドはフレッドを従えて裏に回り、残った女性らは再度攻撃してきた一味を全滅させ、ストラウドらは裏から攻めてきた一味を撃退し、一人残ったワーデとストラウドは川の中で乱闘となり、最後はストラウドが殴り倒したワーデが滝から落ち、大団円を迎えるのでした。
これだけの内容の話を76分にまとめてあることからも分かるように、無駄なショットなど一切なく、息せき切ってドラマが進行していきました。冒頭の砲撃のシーンは世界大戦を思わせるほどの迫力で、ラストの戦いのシーンも登場人物の一言の台詞、一瞬の表情やなまざしで劇的にドラマが展開されていく素晴らしいもので、私はそのあまりの見事さに号泣してしまいました。夜の黒も尋常ではなく、夜の乱闘シーンは何が起こっているのか分からないほどの闇で、これも特徴的だったと思います。今までバッド・ベティカーを絶賛する蓮實先生や山田さんの文章を多く読んで来ましたが、ここに来てやっと私もベティカーの凄さに触れられたような気がしました。映画好きの方、必見です!
「テキサスの歴史は全てのアメリカ人がとても大切にしている独立精神を象徴している。テキサスの人々はメキシコがスペインから独立するために一緒に戦った。そして独立したテキサス州には平和が訪れた‥‥メキシコのサンタ・アナ将軍がメキシコを占領するまでは。テキサスの人々は将軍と戦うか、彼の独裁軍事政権の元に下るかの選択を迫られた。テキサスのサム・ヒューストン将軍はテキサスの将来を懸けての作戦を任されることになった」の字幕。議論するテキサスの有力者たち。ヒューストン将軍はメキシコの大軍から200足らずの兵で最後の砦であるアラモを守っているトラヴィス大佐に援軍を送る必要を力説しますが、なかなか同意を得られません。「アラモ」の字幕。メキシコ軍は最後通牒を突き付けてきますが、大佐は砲撃で答え、壮絶な砲撃合戦となります。ジョン・ストラウド(グレン・フォード)は、サンタ・アナ将軍が一部のテキサスの人々に土地を与えて、秘かに自分たちの味方につけていることを大佐に教えます。そこへ伝令の少尉が到着し、北のオックスボーでの戦いにより援軍を出す余裕がないので、そこでなるべく長く持ちこたえてくれというヒューストン将軍からの伝言を伝えます。「1836年3月22日、テキサスは独立を宣言する」とトラヴィス大佐が発表し、歓声を上げる兵士たち。全滅を覚悟で残ってもいいという者を募る大佐に対して、1週間以上寝ていないにもかかわらず、ストラウド以外の全員が志願し、大佐はストラウドには事情があるのだろうと言って、彼に「1000人以上ものサンタ・アナ軍に包囲されていて、3、4日後には3000人から4000人へとその数は増えるだろう。勝利か死か、どちらにしても最後まで我々は戦う」という内容の将軍への伝令を託します。猛烈な砲撃の中、砦を飛び出すストラウド。焼け落ちた家々を辿り、やがて燃えカスと化した自分の家に着くと、一緒に住んでいて生き残ったメキシコ人のカルロス少年が、メキシコ軍の軍服を着たアメリカ人たちが、ストラウドの妻と息子、そしてカルロスの父を殺したことを教えます。ストラウドはすぐにならず者のワーデ一味の仕業であると見抜き、とりあえずカルロスを預かってくれる人を探しに行きます。ヒューストン将軍はフランクリンの町に着くと、旧知の仲でありインディアンに片手を奪われた新聞屋のフレッドに町民を集めさせ、アラモが全滅したこと、次の標的にされるのはこの町であること、自分たちが町の手前で敵の進撃を阻んでいる間に女子供とお年寄りを避難させることを命じます。そこへ現れたストラウドは事情を話して若い女性ベス(ジュリア・アダムス)に少年を預けますが、彼がアダモから逃げ出したと誤解した町の人々によってリンチに会いそうになり、保安官によって留置場に保護されます。酔っ払って騒ぎを起こしストラウドと同じ留置場に入れられたダーヴェスらを見たカルロスは、彼らがストラウドの妻子を殺した連中だとストラウドに教えます。ストラウドはダーヴェスから、彼がワーデの一味であり、町民が避難した後にワーデが町の銀行を襲う計画であることを聞き出します。少尉の小隊に守られ、避難民を乗せた幌馬車隊は出発し、カルロスはベスに、ストラウドがメキシコ人のカルロスの身を案じてアラモを出たこと、彼の身元引受人を見つけた後にアラモに戻るつもりだったことをベスに話し、その事実を皆に伝えてくれと懇願しますが、ベスはもう遅すぎると言います。女子供たちが町を出発した後、町に残った男たちはメキシコ軍が来るまえに処刑してしまおうと、ストラウドを留置場から引き出し首にロープをかけますが、そこへワーデ一味が襲いかかります。銀行の金が避難民とともに消えたことを知ったワーデはすぐに退散し、その騒ぎの中でストラウドは彼らに合流します。その夜、ストラウドにアラモの守備隊のことをしつこく聞くコビーを彼が殴り倒すと、ワーデは一応彼を仲間に加えてやることにします。幌馬車隊は避難先へ近道をするために谷を進みますが、そこをワーデは襲おうとし、コビーとともに見張りに出されたストラウドは、自分をナイフで襲ってきたコビーを射殺し、その音を聞いた幌馬車隊は逃げ出し、ストラウドの裏切りを知ったワーデはストラウドと乱闘となりますが、ストラウドは崖から落ちて気を失い、ワーデは一旦引きます。カルロスによって発見されたケガを負うストラウドを、自業自得だと置き去りにして見殺しにしようとする町民。しかし周囲の反対にもかかわらず人道的な理由からベスは彼を助け、回復させます。ストラウドは、ワーデが銀行の金を奪うために再び幌馬車隊を襲って来るだろうと避難民たちに教えますが、ちょうどそこへ将軍からの伝令がやって来て、少尉の小隊は将軍に合流するために幌馬車隊を離脱する命令が下されます。家族のいる幌馬車隊を命令に反して守ろうとする少尉に対し、ストラウドは軍規よりも家族を守る方を選んだ自分と少尉を重ね合わせて彼を説得し、彼を将軍の元へ向かわせ、自分が幌馬車隊を守ることを彼に誓います。少尉の守備隊が幌馬車隊を離れたのを見たワーデらは幌馬車隊に襲いかかり、ストラウドが守備陣型を作らせた幌馬車隊は平原を全力疾走します。川に出た彼らは川を背にして防御陣型を引き、ワーデの最初の攻撃を撃退します。ストラウドはフレッドを従えて裏に回り、残った女性らは再度攻撃してきた一味を全滅させ、ストラウドらは裏から攻めてきた一味を撃退し、一人残ったワーデとストラウドは川の中で乱闘となり、最後はストラウドが殴り倒したワーデが滝から落ち、大団円を迎えるのでした。
これだけの内容の話を76分にまとめてあることからも分かるように、無駄なショットなど一切なく、息せき切ってドラマが進行していきました。冒頭の砲撃のシーンは世界大戦を思わせるほどの迫力で、ラストの戦いのシーンも登場人物の一言の台詞、一瞬の表情やなまざしで劇的にドラマが展開されていく素晴らしいもので、私はそのあまりの見事さに号泣してしまいました。夜の黒も尋常ではなく、夜の乱闘シーンは何が起こっているのか分からないほどの闇で、これも特徴的だったと思います。今までバッド・ベティカーを絶賛する蓮實先生や山田さんの文章を多く読んで来ましたが、ここに来てやっと私もベティカーの凄さに触れられたような気がしました。映画好きの方、必見です!
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