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小路幸也『東京公園』

2007-03-06 17:26:36 | ノンジャンル
 朝日新聞の特集記事「2006年 この一冊」の中で、八重洲ブックセンター汐留メディカルタワー店の店員さんがエンターテイメント系の小説として推薦していた小路幸也さんの「東京公園」を読みました。
 大学生で公園の家族の写真を撮るのが好きなカメラマン志望の主人公は、ある日バイトの関係で知り合った初島から、自分の妻と娘が公園を散歩する姿を盗撮してくれ、と頼まれます。理由は2歳の娘がテレビに写し出されたホテルに行った事がある、と言ってから、妻が浮気をしているのでは、と疑っているからだといいます。さっそく、主人公は盗撮を始めますが、一日目にいきなり至近距離で妻と視線が合い、二日目には二人から手を振られてしまいます。主人公は改めて初島に今度の件を聞くと、庶民から結婚してセレブとなった妻が、公園を散歩しているうちにまた庶民の世界へ帰っていってしまうのではないか、と恐いのだと言います。主人公の盗撮は明らかに本人たちにばれ、一緒に行動し、写真を撮り、できた写真を渡して娘を喜ばせるようになります。そして、初島の妻が本当に公園に来てほしいのは初島であり、仕事で忙しい初島が二人と過ごせる時間が少ないことが、妻を公園の散歩へ駆出しているのだ、と理解し、そのことを初島に話します。そして、ある日、主人公になりかわった初島はカメラを持って、妻と子供を盗み撮りするのでした。
 これ以外に、主人公と血のつながってない姉との恋愛や、主人公がバイトで働くバーの人間模様などが描かれます。
 気持ちよく読め、また、いつものことですが、2歳の子供の描写がかわいくて、参ってしまいました。特集記事をきっかけに読んだ本の中では、かなり面白い部類に入ると思います。

 ということで、「2006年 この一冊」。しつこく続けて来ましたが、これにて終了です。読んだ本は、27册。その中で出会った好きな作家は、佐藤多佳子さん、天童荒太さん、デイヴィッド・ソズノウスキーさんの3人でした。この3人の本はすべて読みたいと思っています。長い間つきあってくださって、皆様ありがとうございました!

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