15日発行のフリーペーパー「R25」に、面白い記事が載っていました。悲しい時やうれしい時は、副交感神経がよく働いて、薄く水っぽい涙が出て、悔しい時や腹が立った時は、交感神経がよく働いて、ナトリウムの多い涙が出るそうです。そして涙は人間が排出するものの中でピュアな生理食塩水に近い一番キレイなものとのこと。感情を洗い流す涙が、一番キレイな体液だという、嘘のような本当の話でした。
さて、先日直木賞を受賞した、天童荒太さんの最新作「悼む人」を読みました。
雑誌記者の蒔野は、殺人事件の現場で死者を悼む動作をしている謎の青年・静人に出会います。彼は人が死んだ場所を全国に訪ね、その周囲で、死んだ人が愛していた人、死んだ人を愛していた人、死んだ人に感謝していた人のことを聞き、それを心に刻みながら悼むということをしていると本人から聞きますが、その真意を聞こうとしているうちに、静人の姿を見失います。静人の母・巡子は末期ガンにかかり、自宅でホスピスケアをしていて、静人の妹・美汐は、婚約者の子供を身ごもりながらも、静人の奇行を理由に婚約者から婚約を破棄され、かわりに美汐の従兄が、美汐とこれから産まれてくる子供の面倒を見ると言います。奈義倖世は、親から愛されずに育ち、そのため大人になっても愛のないセックスを繰り返して、男の嫉妬を買い、暴力を受ける毎日を送ってきました。最初の夫のDVに耐えられず、シェルターを運営している僧侶と知り合い、彼から求婚されて、その僧侶と再婚しますが、その男も母の愛を受けられなかったことから、世を恨み、神仏が思いもよらないような死に方をしたいと望んで、自分を愛している妻に殺されることを思いつき、倖世を心理的に追いつめた結果、自分を殺させることに成功します。そして倖世は刑に服した後も、夫の霊に取り憑かれて、自殺を考えている時に静人に出会います。そして、‥‥。
この小説を書くのに、天童さんは8年の歳月をかけたのだそうです。無駄な表現がまったくなく、研ぎすまされた文体は見事という他はないのですが、静人の悼みの行動がどうも奇怪に思え、その部分だけどうも乗れませんでした。ところが、後半、特に蒔野が不良少年に殺されかかる場面のすさまじさは、鳥肌が立つほどのすごさで、それは以前報道ステーションで聞いた、監禁されて輪姦と暴力を繰り返されて殺されてコンクリート詰めにされた女子高生の事件を思わせるほどでした。ラストの倖世の夫の霊が消えていくシーン、倖世と静人とが結ばれるシーン、巡子が必死に生きようとしながらも天に召されていくシーンには、胸が熱くなりました。それにしても、倖世と静人が一緒に生きていくことなく、また巡子が静人と会えずに死んでいくとは、天童さんは何と厳しい人なのでしょう。もう少し救いを与えてほしかったと思うのは贅沢でしょうか? というか、そういうことを思うほどに登場人物が魅力的であるとも言えるでしょう。傑作だと思います。文句無しにオススメです。
なお、詳細に関しては「Favorite Novels」の「天童荒太」のコーナーにアップしておきました。興味のある方は、是非ご覧ください。
さて、先日直木賞を受賞した、天童荒太さんの最新作「悼む人」を読みました。
雑誌記者の蒔野は、殺人事件の現場で死者を悼む動作をしている謎の青年・静人に出会います。彼は人が死んだ場所を全国に訪ね、その周囲で、死んだ人が愛していた人、死んだ人を愛していた人、死んだ人に感謝していた人のことを聞き、それを心に刻みながら悼むということをしていると本人から聞きますが、その真意を聞こうとしているうちに、静人の姿を見失います。静人の母・巡子は末期ガンにかかり、自宅でホスピスケアをしていて、静人の妹・美汐は、婚約者の子供を身ごもりながらも、静人の奇行を理由に婚約者から婚約を破棄され、かわりに美汐の従兄が、美汐とこれから産まれてくる子供の面倒を見ると言います。奈義倖世は、親から愛されずに育ち、そのため大人になっても愛のないセックスを繰り返して、男の嫉妬を買い、暴力を受ける毎日を送ってきました。最初の夫のDVに耐えられず、シェルターを運営している僧侶と知り合い、彼から求婚されて、その僧侶と再婚しますが、その男も母の愛を受けられなかったことから、世を恨み、神仏が思いもよらないような死に方をしたいと望んで、自分を愛している妻に殺されることを思いつき、倖世を心理的に追いつめた結果、自分を殺させることに成功します。そして倖世は刑に服した後も、夫の霊に取り憑かれて、自殺を考えている時に静人に出会います。そして、‥‥。
この小説を書くのに、天童さんは8年の歳月をかけたのだそうです。無駄な表現がまったくなく、研ぎすまされた文体は見事という他はないのですが、静人の悼みの行動がどうも奇怪に思え、その部分だけどうも乗れませんでした。ところが、後半、特に蒔野が不良少年に殺されかかる場面のすさまじさは、鳥肌が立つほどのすごさで、それは以前報道ステーションで聞いた、監禁されて輪姦と暴力を繰り返されて殺されてコンクリート詰めにされた女子高生の事件を思わせるほどでした。ラストの倖世の夫の霊が消えていくシーン、倖世と静人とが結ばれるシーン、巡子が必死に生きようとしながらも天に召されていくシーンには、胸が熱くなりました。それにしても、倖世と静人が一緒に生きていくことなく、また巡子が静人と会えずに死んでいくとは、天童さんは何と厳しい人なのでしょう。もう少し救いを与えてほしかったと思うのは贅沢でしょうか? というか、そういうことを思うほどに登場人物が魅力的であるとも言えるでしょう。傑作だと思います。文句無しにオススメです。
なお、詳細に関しては「Favorite Novels」の「天童荒太」のコーナーにアップしておきました。興味のある方は、是非ご覧ください。
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