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高野秀行『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』その3

2019-10-21 06:12:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。

・エチオピアには茶道ならぬ「珈琲道(コーヒーどう)」なんてものもある。人類がコーヒーを飲む歴史はここから始まったとされているし、コーヒーノキの原産地の一つでもある。(後略)

・チュニジアも田舎の一般家庭は床にすわるのだ。

・ところがカート宴会に参加したら、最低でも三時間ぐらいは席を同じくする。日本の飲み会でも一時間程度で「今日はお先に」などと席を立ったら失礼な感じがするだろう。それと同じだ。
 長時間一緒にいるし、メルカン状態で何でも率直に話ができる。私はこのような宴会で、氏族の掟からイスラム過激派の内幕、さらには夫婦生活や浮気が妻にバレないための方策まで聞きまくった。

・食べれば多幸感と鮮やかな覚醒をもたらす中東・アフリカの植物「カート」。しかしこの嗜好品には恐るべき副作用がある。(中略)
 まず、食欲。(中略)
 もう一つは性欲。人によっては「すごくセックスがしたくなる」という。(後略)

・食欲も性欲も生じない“小市民体質”の私は、(中略)その日の宴会で仕入れた情報やソマリ語をメモ帳やノートに何時間も書いてまとめる。まだ十分に集中力があるので、楽にそのような作業ができるのだ。(中略)。だが、問題は宴会が盛り上がってカートを食べ過ぎてしまったとき。食欲・性欲の有無にかかわらず、不眠、不安、神経過敏といった副作用が出るのだ。(中略)まあ、たいていは何時間かして、疲れて寝入ってしまうのだが、翌朝はひどくだるい。(中略)こんなときに唯一最善の対応策はというと、まさに酒の二日酔いと同じ。前日の残りのカートを食うことなのだ。(後略)

・(前略)パキスタンの北部山岳地帯フンザで過ごした。正確にはインドと中国との国境が画定しておらず、パキスタンが「実効支配」している場所だ。(中略)
 来てみたら、あまりの美しさに絶句してしまった。白い雪を頂いた七千メートル級のカラコルム山脈、岩を削って怒涛のごとく流れるインダス川上流部、そしてその谷間にひっそりと緑豊かな村が佇んでいる。どこを切り取っても絶景というしかない。
 ここはかつてアジア大陸屈指の辺境地だっただけでなく、「桃源郷」としても名を馳せた。(中略)
 ところが9・11以降、状況は一変した。パキスタン全土が「危険地帯」と見なされ、外国からの旅行者は激減してしまった。

・フンザの住民は皆ムスリムだから、酒はご法度なのだが、実はこっそり造っている人がいて、愛飲する人も多いという。

・「ネワール族は水牛が好きです。生の肉も食べますよ」。

・タイは世界屈指の食文化大国。高級レストランでも屋台でも家庭でも、どこで食べても美味いのが特徴だ。そして買い食いやお土産の類いも充実している。(後略)

・(タイの)ローカルバスは今でもエアコンなど効いていない。(中略)はがれかかった高僧ポスター(タイでは有名なお坊さんのポスターが大好き)がパタパタはためいている。

・(タイは)世界でも最も昆虫食のバリエーションが多く、「昆虫食のメッカ」とも呼べる地域なのだが、(後略)。

・「世界で最も美味いビールのつまみ」と私が勝手に認定しているタイの食べ物がある。
 その名は「ネーム」。(後略)

・先生がお土産にビニールパックされた商品〈(株)あら与「ふぐの子ぬか漬」〉を一つくれたので、家に持ち帰って食べてみた。(中略)なるほど、これは酒のあてにもご飯の供にもよさそうだ。実際、熱々のご飯にこれを載せお湯をかけると、塩気とうま味がほどよくご飯に染み渡り、最高にうまい。

・日本の鯨肉の大半は、冷凍と解凍を繰り返したり、あまりに長く冷凍しすぎたりで、肉が劣化してしまっているらしい。

・今まで食べた肉でワニ(鮫)ほど不思議なものはない。(中略)第一の理由は調理法によって味や食感が極端に変わることだ。

・胎盤とは胎児の肝臓なのだ。

・(イラクに)実際に行ってみたら意外なことにグルメ大国だった。

・よく考えると、チョウザメは恐竜の時代から生きていた。世界的に稀な古代魚。もちろんワニもその時代から存在する。(後略)

・チーキョフテは羊生肉がヘンなだけではなかった。世界で最もウンコに見かけが似た料理だった。(後略)

・ペルーは南米でも屈指の面白い国だと思う。理由は多様性。乾燥した海岸部、標高が三千~四千メートルもあるアンデス山脈、そして熱帯雨林のアマゾンと、極端に異なる三つの地域があるうえ、先住民とスペイン系とアフリカ系がごっちゃになって暮らしている。(後略)

・町の人間でもベランダ園芸並みの気楽さで食用ネズミを飼育しているのだ。

 以上、あっと言う間に読めてしまう本でした。

P.S. 今日は映画監督フランソワ・トリュフォーの35回忌に当たる日です。改めて素晴らしい映画を数多く残してくれたことに感謝し、ご冥福をお祈りいたします。

 →サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

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