体調を崩し、しばらくこちらの更新を行っていませんでしたが、今日からまた再開したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、宮崎誉子さんの'12年作品『女子虫』を読みました。4つの短編からなる本です。
第1話『自慢の娘』では、小学校教師である俺は、小学校4年生とは思えない大人びた眼差しで、この学校で一番美しい少女、桜木アヤメが俺を見るのでゾクゾクします。
昼休みに誰もいない体育館でボスこと青木マサキの相手をしていていた俺。「先生、山本先生ってなんで突然に田舎に帰っちゃったの? もしかして辞めたんじゃなくて辞めさせられたんじゃないの? あいつ使えないってウワサだったもん。大人って隠すの好き?」正直すぎる子供は残酷で憎めません。
俺は生徒の太田を図工準備室に呼び出しました。「‥‥アズマン、俺まっまさか青木が不登校になるなんておっ思わなかったんだ」太田の声と膝は震えています。「先生の予想だと、山崎がみんなでやろーぜってけしかけて、田中もおもしれーってノリノリになっちゃって、太田と伊藤はその場のノリで流されたんだろ? 元担任にはわかるよ。ベタだけど、青木に手紙書けば? 太田と田中に誘われて断るわけねーよ」太田は目に涙をため深く頷き半笑いです。
昼休みに誰もいない体育館でボスと喋る俺。「先生、ありがとう。兄貴まだ学校に来てないけど、今日ランドセルに教科書入れようとしてたんだ」「先生は何もしてないよ」「太田の馬鹿が手紙書くなんて、先生がなんかしてくれたに決まってるじゃん! ! それから先生、桜木アヤメには用心しろよな」
「今まで誰にも言えなかったけど、私の靴箱にこんなものが入っていました」姫川マリエは手のモデルになれそうな美しい指をしています。クシャクシャに丸められたノートの切れはしには、死ね死ねとぎっしり書かれています。「もしかして姫川は桜木を犯人だとでも思っているのか」「‥‥そんなこと」「そんなことありますなんだろ?」「先生はアヤメちゃんをひいきしてるって、みんな言ってますよ! ! 」「みんなに言いふらしてるの姫川らしいな?」姫川マリエに意地悪しても退屈なだけです。「ちっ違います! ! わっ私じゃありません! ! 」母親がフランス人のハーフの女の子姫川マリエは、桜木アヤメと犬猿の仲です。
その翌日の昼休みに、桜木アヤメがやってきて言いました。「先生、女子トイレに卑劣な置き手紙があったので持ってきました」クシャクシャに丸められた給食の献立表の裏には、わざとヘタに書いてあるとしか思えない字で、桜木アヤメ死ね! ! 桜木アヤメと仲良くしている浜中エリカ貴山キリコも死ね! ! 死なないと絶交だ! ! と書いてありました。「悪いけど、先生は犯人を探すの優しくないと思うよ。桜木は自分に自信ありすぎるよ」一瞬怯えた表情を俺は見逃してやろう。
夜中に電話が鳴ると嫌な予感に包まれます。「桜木アヤメの母ですが、娘のランドセルに太い油性のマジックで、死ね、殺すって書いてあるんですけど、東先生は担任としてどうなさるおつもりなんですか?」俺は一方的に母親に責められる桜木アヤメも気の毒だなと無表情になります‥‥。
本文のところどころを抜粋しているだけなので、文章がブツンブツンと切れている印象を持たれると思いますが、そうした事情をお察しください。それぞれの短編の終わり方が「!」となっている印象があり、「聖=死」VS「俗=生」という対立軸で考えると、宮崎さんの小説は徹底的に「俗=生」で通そうという固い意思が見え、そこが感動的でした。はぎれのいい会話文も魅力的で、是非実際に本を手にして読んでいただきたいと思います。今回もあっと言う間に読んでしまい、至福の時を味わわせていただいた本でした。なお、本全体の詳細に関しましては、私のサイト(Nature LIfe(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto))の「Favorite Novels」の「宮崎誉子」の場所にアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。
→Nature LIfe(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
さて、宮崎誉子さんの'12年作品『女子虫』を読みました。4つの短編からなる本です。
第1話『自慢の娘』では、小学校教師である俺は、小学校4年生とは思えない大人びた眼差しで、この学校で一番美しい少女、桜木アヤメが俺を見るのでゾクゾクします。
昼休みに誰もいない体育館でボスこと青木マサキの相手をしていていた俺。「先生、山本先生ってなんで突然に田舎に帰っちゃったの? もしかして辞めたんじゃなくて辞めさせられたんじゃないの? あいつ使えないってウワサだったもん。大人って隠すの好き?」正直すぎる子供は残酷で憎めません。
俺は生徒の太田を図工準備室に呼び出しました。「‥‥アズマン、俺まっまさか青木が不登校になるなんておっ思わなかったんだ」太田の声と膝は震えています。「先生の予想だと、山崎がみんなでやろーぜってけしかけて、田中もおもしれーってノリノリになっちゃって、太田と伊藤はその場のノリで流されたんだろ? 元担任にはわかるよ。ベタだけど、青木に手紙書けば? 太田と田中に誘われて断るわけねーよ」太田は目に涙をため深く頷き半笑いです。
昼休みに誰もいない体育館でボスと喋る俺。「先生、ありがとう。兄貴まだ学校に来てないけど、今日ランドセルに教科書入れようとしてたんだ」「先生は何もしてないよ」「太田の馬鹿が手紙書くなんて、先生がなんかしてくれたに決まってるじゃん! ! それから先生、桜木アヤメには用心しろよな」
「今まで誰にも言えなかったけど、私の靴箱にこんなものが入っていました」姫川マリエは手のモデルになれそうな美しい指をしています。クシャクシャに丸められたノートの切れはしには、死ね死ねとぎっしり書かれています。「もしかして姫川は桜木を犯人だとでも思っているのか」「‥‥そんなこと」「そんなことありますなんだろ?」「先生はアヤメちゃんをひいきしてるって、みんな言ってますよ! ! 」「みんなに言いふらしてるの姫川らしいな?」姫川マリエに意地悪しても退屈なだけです。「ちっ違います! ! わっ私じゃありません! ! 」母親がフランス人のハーフの女の子姫川マリエは、桜木アヤメと犬猿の仲です。
その翌日の昼休みに、桜木アヤメがやってきて言いました。「先生、女子トイレに卑劣な置き手紙があったので持ってきました」クシャクシャに丸められた給食の献立表の裏には、わざとヘタに書いてあるとしか思えない字で、桜木アヤメ死ね! ! 桜木アヤメと仲良くしている浜中エリカ貴山キリコも死ね! ! 死なないと絶交だ! ! と書いてありました。「悪いけど、先生は犯人を探すの優しくないと思うよ。桜木は自分に自信ありすぎるよ」一瞬怯えた表情を俺は見逃してやろう。
夜中に電話が鳴ると嫌な予感に包まれます。「桜木アヤメの母ですが、娘のランドセルに太い油性のマジックで、死ね、殺すって書いてあるんですけど、東先生は担任としてどうなさるおつもりなんですか?」俺は一方的に母親に責められる桜木アヤメも気の毒だなと無表情になります‥‥。
本文のところどころを抜粋しているだけなので、文章がブツンブツンと切れている印象を持たれると思いますが、そうした事情をお察しください。それぞれの短編の終わり方が「!」となっている印象があり、「聖=死」VS「俗=生」という対立軸で考えると、宮崎さんの小説は徹底的に「俗=生」で通そうという固い意思が見え、そこが感動的でした。はぎれのいい会話文も魅力的で、是非実際に本を手にして読んでいただきたいと思います。今回もあっと言う間に読んでしまい、至福の時を味わわせていただいた本でした。なお、本全体の詳細に関しましては、私のサイト(Nature LIfe(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto))の「Favorite Novels」の「宮崎誉子」の場所にアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。
→Nature LIfe(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
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