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岩貞るみこ『青い鳥文庫ができるまで』

2013-03-01 06:57:00 | ノンジャンル
 新藤兼人監督・原作・脚本の'11年作品『一枚のハガキ』をWOWOWシネマで見ました。戦争で2人の夫を失った女(大竹しのぶ)と兵役中に妻を父に奪われた男(豊川悦司)が新しい生活を始めるまでを描いた映画でしたが、確かに“ショット”は存在するにもかかわらず、演技(演出)が過剰で今一ノレませんでした。

 さて、朝日新聞で紹介されていた、岩貞るみこさんの'12年作品『青い鳥文庫ができるまで』を読みました。固有名詞以外は事実度99%以上のノンフィクションだそうです。
 女性編集者モモタは、青い鳥文庫の人気シリーズ「白浜夢一座がいく!」の第14巻の編集を任されます。発売予定は12月。今は3月。著者には8月下旬までに書きあげてもらわなければなりません。モモタは早速著者に原稿の依頼をすると、現在かかえている原稿を仕上げた後だと7月から書き始められるという答えを得ます。ところが著者は最初の出だしでつまずき、9月末に三話のうちの第1話の原稿だけがやっと上がります。しかし、『青い鳥通信』では12月発売を発表することになり、モモタは後には引けなくなります。
 校了まであと48日。やっと原稿は完成します。原稿はここから普通は3ヶ月で校了となりますが、今回は超特急の2ヶ月の旅となります。原稿はまず講談社が独自に作った本作りに関するルールが入れられた専用ソフト『セント・ワーズ』というパソコンソフトに送られ、様々なパソコンソフトで書かれたデータを印刷の規格にあった状態に揃えられるとともに、誤字や、送りがなの間違い、おかしな使い方の言葉などが、それぞれ色分けされて一気にあぶりだされます。その2日後、セント・ワーズによって指摘された箇所がモモタのところに送られて来て、モモタはそれに判断を下して送り返し、それによりセント・ワーズの旅は終わります。
 今度はプリプレスへ原稿データを渡す「入稿」が行われます。そこでは、フォントの変換、目次や章の扉ページの作成、漢字へのルビふりが行われます。モモタは無理を言って2日間で仕上げてもらうように印刷所へ頼みます。校了まであと41日。紙の束としての『ゲラ』3束の形で初校が出てきます。そのうち2束が校閲局へ行き、間違い探しが行われ、残りの1束は編集部用で、モモタは4部コピーを取り、それを著者、編集部長、販売部長、青い鳥文庫ファンクラブに届けます。ゲラには12月9日の発売日までの進行表も入っていました。これまで見たこともないようなぎりぎりのスゲジュールです。校了日は11月22日。この日に間に合わなければ印刷する時間がなくなります。校閲局には無理を言って初校を10日前後で上げてもらうことにし、それを著者に回してプリプレスに戻すことにします。校閲は地方に住む校閲者が文字のチェック、事実関係のチェック、物語の流れでおかしい部分のチェックもやってくれました。その間、別の校閲者も同じようにチェックしていきます。モモタはその間、業務部を訪れ、カバーや帯に関する希望を叶えてもらえるように交渉し、編集部にカバーデザインの手配をし、既に決まっている本のページ数の中のどこにどんなイラストを入れるかも決め、イラストレイターへの手配もします。
 校了日まであと25日。校閲からゲラが戻ってきたのに合わせ、著者に自分で直したゲラと合わせて、どう直していくかを決める作業をしてもらいます。そしてできた初校もどしを印刷所に届け、プリプレスで赤ペンでの直しの部分の訂正と、イラストのスペース作りをしてもらいます。2日後に出た再校を再び校閲局に回し、通常2週間のところを1週間でやってもらい、その間に編集部で本の最初にある登場人物の紹介やあとがきのページを作ります。校了日まであと11日。予定より1日遅れて校閲局からゲラが戻り、最終チェックをして、校了日まであと6日で再校もどしをして、最後の赤字修正、イラスト入れをし、2日後最終校ができ、万が一ここで何かあった時は、すぐプリプレスに戻して、翌日に校了となります。最終校でやっとイラストを間に合わせたモモタは、何とか校了日に間に合い、発売日当日に本は出荷されるのでした。

 様々なエピソードを折り込みながら、本ができあがっていく過程を楽しく読ませる本となっていました。すべての漢字にルビがふってあるので、子供用の本だったようです。

 →Nature LIfe(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

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