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溝口健二監督『女性の勝利』その2

2012-05-30 05:05:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 河野の家にいずらくなったみち子は実家に帰り、母から河野家を出て戻って来いと言われ、ひろ子からも「お姉さんは自立すべきだ」と言われますが、思い切れず、とぼとぼと河野家に戻っていきます。
 そんな折り、浅倉の母が姿を消し、自宅に戻っているところを発見されますが、浅倉の母は自分がみち子の家に面倒をかけていると思い、身を引こうとしているのでした。そんな浅倉の母を温かく迎えるみち子の家族。みち子は河野から借りたものを全て返してしまいたいので、家を売ってほしいと母に言うと、母もうなずきます。
 いよいよ浅倉の裁判の結審が始まろうとしているその時、山岡が危篤との連絡がひろ子に届きます。駆けつけたひろ子は山岡から励まされ、自分個人のためでなく社会みんなのために闘って来てくれと言って、ひろ子を送り出します。
 浅倉の裁判の結審が始まります。検事の河野は、計画的殺人として、浅倉に懲役5年を求刑しますが、ひろ子は河野が女性の社会的立場に対して無知であると指摘し、男性優位の封建的社会が今回の事件の背景にあり、なぜ浅倉がわが子を窒息死させるに至ったかを詳細に語ります。それに対して、法律にしたがって厳正に処罰すべきだと河野が反論すると、ひろ子は河野が戦時中に軍閥の言いなりになって、自由主義者を次々に刑務所に送った過去を暴くと、河野は下を向いてしまいます。ひろ子はさらに、浅倉の夫が工場の不正の犠牲者となって死んだことを述べ、法は民衆の敵であってはならず、裁判、そして法は人を罰するためにあるのではなく、人を愛せる社会を作り出すためにあるのだと主張します。
 そこまでひろ子が述べたところで、法廷は一旦休憩となり、浅倉の母は感激してひろ子に駆け寄り感謝の言葉を言って泣き出します。そこへ山岡が亡くなったとの知らせが入り、彼が最後までひろ子に感謝していたということも伝えられます。ひろ子が動揺しているところへ、開廷の知らせが入りますが、ひろ子の母はみち子の手紙をひろ子に渡し、みち子も実家に帰って自立する決心をしたことを知ります。そして決意にあふれた表情で法廷に向かうひろ子の姿を正面からとらえて、映画は終わります。

 浅丘がひろ子の家を訪れ、わが子を死なせてしまったことを告げるシーンはワンシーン・ワンカットで撮られていて、このシーンは浅丘を演じた女優さんの素晴らしい演技とともに、溝口監督しか撮れないであろう、見事なシーンとなっていました。それ以外にも奥の障子に人影が写ってから人が部屋に入って来るシーンなど、印象的なシーンが数多くあったと思います。知られざる溝口監督の名作の一つです。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

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