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専修大学経営学部森本ゼミナール編『大学生、限界集落へ行く』

2017-05-20 08:56:00 | ノンジャンル
 ‘16年に刊行された、専修大学経営学部森本ゼミナール編『大学生、限界集落へ行く---「情報システム」による南魚沼市辻又活性化プログラム』を読みました。人口の過半数を65歳以上の住民が占めている集落を限界集落と呼ぶのですが、それに該当する新潟県南魚沼市辻又の集落の活性化を大学生のゼミ生たちが目指して活動した記録をした本です。
 森本ゼミでは、「情報戦略」や「情報システム」について学んでいますが、ここでいう情報はパソコンが誕生してから生まれた概念ではなく、単純に相手と会話して情報のやりとりをすることを指します。したがって、1週間のフィールドワークで辻又の住民との情報交換をスムーズにするため、まずゼミ生たちは、辻又についての情報を事前に得て、それに基づいて住民との会話や共通の体験を積み、村が直面している問題をあぶり出していきます。
 その結果、分かったことは「豊かな自然や魅力が多い一方で、冬の生活はかなり厳しいです。厳冬期は積雪が3mを
超え、南道は封鎖されてしまうため、浦佐方面に抜けるには大きく迂回しなければなりません。このような冬の生活の厳しさが原因で移住する人も多く、一度集落から出てしまうと、戻ってくる人は少ないのです。こうした人口減少により、さまざまな弊害も出ています。辻又はもともと南北に細長いため、広域の田んぼの確保が難しく、大型の稲作機械を使用できないので手作業になります。そして加齢や人口減少により人手不足となり、耕作放棄地が増えてしまったそうです。同様に林業も、人口減少や十分な利益が得られないために辞める人が多く、人手不足になり衰退してしまいました。これが影響して、野生動物による作物被害が増加しています。対策をしたくても、人手不足で難しいとのことでした。集落の小学校も1984(昭和59)年に閉校となり、児童のいる世帯は住みづらくなり、移住者が増えないという悪循環に陥っています。また人手不足により、さまざまな祭事が催されなくなり、集落の人と人のコミュニケーション機会が減少していきました。辻又には、土地や作物、林産資源、観光資源などは豊富にあるのですが、人手不足でこれらを十分に活用できない状況です。そして辻又の特産物であるコシヒカリについてもさまざまな問題があります。まず作付面積が広くないため、1戸当たりの収穫量が少ないのです。また一般の米の流通と同様に買取価格と混米の問題があります。辻又産コシヒカリは非常に上質な米ですが、結局は消費者の手に届くまでに他のものと混ぜられ、安く売られてしまいます。産地表示にも当然辻又の名は出ません。そのために米作のみで生計を立てることが難しく、兼業農家が多くなっていきます。自家用車を持たない世帯では交通手段の欠如も問題になっています。滞在中に何度も同じ家庭を訪問して話をするあいだ、私たちは辻又の人の強い願いを聞くことになりました。とにかく辻又という集落が存続して欲しい、先祖から受け継いだ田んぼを守りたい、内外を問わず人との交流を増やしたい、若い人に移住してほしい、お嫁さんに来てほしい、というようなものでした。こうしたそれぞれの真摯な思いに触れて、なんとか私たちにできる解決策はないものかと考えました。」
 そして8つの案が提出され、結局「都市型マルシェへの出店」、「米を使った加工品の商品化(ライスミルク)」の2つに絞って実現化の道を探り、前者に関しては協力者が幾人が現れ、成果を出します。そして集落の住民も大学生を村に迎え入れることにより、以前よりも住民同士のコミュニケーションの機会が増すのでした。
 あっという間に読んでしまえる一冊でした。

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