gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

斎藤美奈子さんのコラムその116&前川喜平さんのコラムその77

2022-06-05 08:11:00 | ノンジャンル
 恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。

 まず5月29日に掲載された「憲法に教育の理念?」と題された前川さんのコラムを全文転載させていただくと、
「26日の衆議院憲法審査会で自民党は、憲法に「教育環境の整備」に関する規定を盛り込むことを主張した。それ自体は同党の改憲四項目の一つだから驚きはない。
 問題は、その際の自民党新藤義孝氏の主張が、教育環境の整備にとどまらず、教育理念を憲法に書き込むというものだったことだ。「現行憲法は教育理念について一切触れていない」「教育環境の変化に応じた教育の理念について、憲法を改正し規定すべきだ」
 新藤氏の言う教育理念とは、いったいどのような理念なのか。自民党の改憲案には「教育が(中略)国の未来を切り拓(ひら)く上で極めて重要な役割を担うものである」という規定があるから、まず教育は国家のためにあるという理念なのだろう。さらに2012年の自民党憲法改正草案には「長い歴史と固有の文化」「天皇を戴(いただ)く国家」「国と郷土を誇りと気概をもって自ら守り」「よき伝統と我々の国家を末永く子孫に継承する」「日本国民は国旗及び国歌を尊重しなければならない」「家族は互いに助け合わなければならない」などの規定があるから、そんなことを「教育理念」と考えているのだろう。
 日本の教育の理念はすでにある。それは今の憲法そのものだ。個人の尊厳、自由、平等、人権の尊重、平和主義、国民主権。それ以外の「教育理念」など要らない。」

 また、6月1日に掲載された「天動説的な報道」と題された斎藤さんのコラム。
「景勝地のパンフレットや案内板で「ここは日本三大〇〇のひとつで…」といった文章に出合うことがある。そんなとき私が思うのは「すると、あとの二つはどこ?」。多くの紹介文は残りの二つを無視するのだ。
 カンヌ国際映画祭で、是枝裕和監督の韓国映画「ベイビー・ブローカー」で主演のソン・ガンホさんが男優賞に、早川千絵監督の「PLAN75」が新人監督の作品に贈られるスペシャルメンション(特別表彰)に選ばれた。それ自体は慶賀すべきことながら、やはり思う。「すると最高賞のパルムドールは何?」。なかにはリューベン・オーストルンド監督(スウェーデン)の「トライアングル・オブ・サッドネス」が受賞したという情報をつけ足した記事もあったが、それがどんな映画かは伝えない。
 優れた翻訳小説に与えられる英国のブッカー国際賞で川上未映子さんの『ヘヴン』が惜しくも受賞を逃した。受賞作はジータンジャリ・シュリーさんの『Tomb of Sand』。ヒンディー語からの翻訳だったが、どんな小説かは伝えず、共同通信の記事に至っては「受賞しなかったのはインドの作家の作品だった」で終わり。
 こうして日本は世界の文化から文化から取り残される。ノーベル賞もそう。こんな天動説的報道をいつまで続ける気だろうか。ダサすぎる。」

 そして、6月5日に掲載された「非常勤残酷物語続き」と題された前川さんのコラム。
「ご隠居から言われて来やした。若旦那」
「三木のご隠居から言われて来た? でも私は若旦那って柄じゃない」
「へえ、じゃあ若大将」
「ますます柄じゃない」
「若隠居、でどうです」
「う~ん。まあご隠居よりは若いから、それでもいいか」
「じゃあ若隠居、お聞きしてえのは大学の非常勤講師のことなんで」
「ああ、木曜の本欄でご隠居が話しておられたあれか。実際、日本の大学教育は非常勤講師に支えられていると言っても過言でもないが、その報酬は常勤の教員に比べてきわめて低い。平均年収は三百万円程度。ワーキングプアと言っていいほどだ」
「なんだってそんなに安いんで?」
「元をたどれば、国の高等教育政策だろう。大学の新設をどんどん認めたため、私立大学の三割は定員割れだ。経営が苦しいから人件費を抑えようとする。大学院を増やして大学教員のなり手が増えたため、いわば使い捨てにされてしまう。何より国立大学法人運営費交付金や私立大学等経常費補助金が減らされてきたことが最大の問題だ」
「要は大学にカネがねえから非常勤が安く使われてるってことか」
「かねがねそう思っていた。非常勤が非常に気になると」
「おっと、ダジャレはご隠居の方がまだましですぜ」。

 どの文章も一読の価値のある文章だと思いました。