青木理さんの2021年作品『破壊者たちへ』を読みました。著者が『サンデー毎日』に寄稿してきた文章をまとめた本です。
その内容からいくつか引用すると、
・昨年12月の米軍大型ヘリによる窓落下事故があった沖縄県宜野湾市の普天間第二小学校で、米軍機接近による児童の避難は、運動場の使用が再開された2月13日から3学期が終了した3月23日までの39日間に合計242回に上ったことが同校のまとめで分かった。最も多い日は一日に29回で、20回以上の日が3日間あった。米軍機接近による避難によって体育の授業は中断する。
・そもそも普天間飛行場周辺では、昨年の窓落下事故を受け、政府と在日米軍が「可能な限り宜野湾市内にある学校上空の飛行を避ける」と約束したはず。
・ひとたび他人事(ひとごと)になると、人間はこうも酷薄になれるのか。自殺、溺死、凍死、若年での心疾患や脳疾患、そんな不可解かつ理不尽な理由で過去3年間、計69人もの外国人技能実習生の命が失われたことをどう捉えるか、国会の場で問われたこの国の首相は、いかにもうんざりした表情で、時に薄笑いすら浮かべながら、平然とこう言い放った。
「いま初めて聞いたので答えようがない」
・文民統制を逸脱した海外での情報活動が明らかになった陸上自衛隊の秘密情報部隊「別班」を、特殊部隊「特殊作戦群(特戦群)」と一体運用する構想が2008年ごろから陸自内部で検討されていることが分かった。(中略)想定する任務には、海外での人質救出、敵地への潜入と攻撃目標の偵察なども含まれている。武器使用基準の緩和、憲法解釈で禁じられている「海外での武力行使」に踏み込むもので、改憲を見越した構想とみられる。
・防衛省の情報機関である情報本部には、ヒューミントや衛星情報もなども集まりますが、最大の武器はなんといっても電波情報です。特にロシア、中国、北朝鮮をターゲットにした電波傍受の基地を一番持っているのは自衛隊ですから、米国もその情報を欲しがるほどの力を持っています。
・世界中のありとあらゆる通信を対象とし、NSAが貪欲かつ大規模に監視・盗聴活動を繰り広げていた実態が明らかになったからである。
その全貌はここではとても記しきれないが、ごく一部を列挙すれば、例えばプリズム(PRISM)と称されるシステムを使って米国内で行っていた網羅的な通信情報収集がある。また、日本などを含む各国の大使館、代表部、果てはドイツ首相らの携帯電話までをも対象とした盗聴も実施し、果てはマイクロソフトやグーグルなどの協力も取りつけ、インターネット上での通信監視・傍受は世界規模で実施されていた。
・(『国体の本義』では)人びとがいて国家を構成するのではない。国家が先にあり、人はその“部品”にすぎず、余計なことは考えずに没我服従せよ━━つまりそういうことである。
・要は日本の刑事司法の後進性━━つまりは被疑者や刑事被告人の人権を軽視する姿勢と制度を放置する限り、米国が協定の改定に応じる可能性は低い、ということだろう。最近では日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の事件によって、そうした悪弊はさらに強く国際的に印象づけられた。
・2016年に大幅改定された盗聴法(通信傍受法)がこの6月1日、ついに完全施行された。警察庁はすでに専用の盗聴機器を141台も導入し、今年度中に200台近くまで増やすという。これによって警察当局の盗聴捜査は飛躍的に“利便性”を増し、制御を誤れば個人のプライバシーなど丸裸にされてしまうだろう。
一読の価値のある本だと思いました。
その内容からいくつか引用すると、
・昨年12月の米軍大型ヘリによる窓落下事故があった沖縄県宜野湾市の普天間第二小学校で、米軍機接近による児童の避難は、運動場の使用が再開された2月13日から3学期が終了した3月23日までの39日間に合計242回に上ったことが同校のまとめで分かった。最も多い日は一日に29回で、20回以上の日が3日間あった。米軍機接近による避難によって体育の授業は中断する。
・そもそも普天間飛行場周辺では、昨年の窓落下事故を受け、政府と在日米軍が「可能な限り宜野湾市内にある学校上空の飛行を避ける」と約束したはず。
・ひとたび他人事(ひとごと)になると、人間はこうも酷薄になれるのか。自殺、溺死、凍死、若年での心疾患や脳疾患、そんな不可解かつ理不尽な理由で過去3年間、計69人もの外国人技能実習生の命が失われたことをどう捉えるか、国会の場で問われたこの国の首相は、いかにもうんざりした表情で、時に薄笑いすら浮かべながら、平然とこう言い放った。
「いま初めて聞いたので答えようがない」
・文民統制を逸脱した海外での情報活動が明らかになった陸上自衛隊の秘密情報部隊「別班」を、特殊部隊「特殊作戦群(特戦群)」と一体運用する構想が2008年ごろから陸自内部で検討されていることが分かった。(中略)想定する任務には、海外での人質救出、敵地への潜入と攻撃目標の偵察なども含まれている。武器使用基準の緩和、憲法解釈で禁じられている「海外での武力行使」に踏み込むもので、改憲を見越した構想とみられる。
・防衛省の情報機関である情報本部には、ヒューミントや衛星情報もなども集まりますが、最大の武器はなんといっても電波情報です。特にロシア、中国、北朝鮮をターゲットにした電波傍受の基地を一番持っているのは自衛隊ですから、米国もその情報を欲しがるほどの力を持っています。
・世界中のありとあらゆる通信を対象とし、NSAが貪欲かつ大規模に監視・盗聴活動を繰り広げていた実態が明らかになったからである。
その全貌はここではとても記しきれないが、ごく一部を列挙すれば、例えばプリズム(PRISM)と称されるシステムを使って米国内で行っていた網羅的な通信情報収集がある。また、日本などを含む各国の大使館、代表部、果てはドイツ首相らの携帯電話までをも対象とした盗聴も実施し、果てはマイクロソフトやグーグルなどの協力も取りつけ、インターネット上での通信監視・傍受は世界規模で実施されていた。
・(『国体の本義』では)人びとがいて国家を構成するのではない。国家が先にあり、人はその“部品”にすぎず、余計なことは考えずに没我服従せよ━━つまりそういうことである。
・要は日本の刑事司法の後進性━━つまりは被疑者や刑事被告人の人権を軽視する姿勢と制度を放置する限り、米国が協定の改定に応じる可能性は低い、ということだろう。最近では日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の事件によって、そうした悪弊はさらに強く国際的に印象づけられた。
・2016年に大幅改定された盗聴法(通信傍受法)がこの6月1日、ついに完全施行された。警察庁はすでに専用の盗聴機器を141台も導入し、今年度中に200台近くまで増やすという。これによって警察当局の盗聴捜査は飛躍的に“利便性”を増し、制御を誤れば個人のプライバシーなど丸裸にされてしまうだろう。
一読の価値のある本だと思いました。