ウィリアム・A・ウェルマン監督、ダリル・F・ザナック製作総指揮の'48年作品『鉄のカーテン』をWOWOWで見ました。
ソビエトのスパイ10名が有罪となったカナダの実際の事件を現場でロケして事実に忠実に映画化したものだという主旨の字幕。1943年、民間機でモスクワからオタワにソ連大使館の武官トリゴーリン大佐とその補佐のクーリン少佐、そして暗号の専門家グーセンコ(ダナ・アンドリュース)がやって来ます。大使館の副書記長でありまた秘密警察の主任でもあるラニエフは、グーセンコに民間人との接触を避け、嘘の経歴で押し通すように念を押します。ラニエフの秘書が早速誘惑してきますが、グーセンコは私には美しい妻がいると言い、探りを入れるならもっとうまくやれと言い残して彼女のアパートを去ります。グーセンコが最初に受けた暗号は、カナダのスパイ組織の頭であるコードネーム“ポール”ことグラブにラニエフと大佐がすぐ会うように、という内容でした。大佐はグラブに、政府と軍の上層部にも浸透するような大規模なスパイ組織の構築を命じられてきたと言い、スパイ候補者のリストを渡します。グラブはリーツ下院議員をすぐにオルグし、“ソビエト友の会”を使ってクラス大尉も引き入れ、彼を通して多くのカナダ人共産党員を仲間にすることに成功し、あらゆる情報の入手が可能になります。クーリンは人の命を何とも思わない彼らの手口に嫌気がさし、酒に溺れ始め、グーセンコにも注意を促します。やがてグーセンコの妻アンナ(ジーン・ティアニー)が到着し、彼女から妊娠を告げられたグーセンコは喜びます。休日を満喫して過ごす彼らでしたが、妻が隣人のフォスター夫人と親しくしようとするのを見て、グーセンコは妻に厳しく注意し、アンナは表情を曇らせます。出産予定日の1週間前の深夜に大使館に呼び出されたグーセンコは、アメリカとカナダが共同して原爆製造に乗り出しているというニュースをモスクワに送り終わると、同僚からアンナが無事男子を出産したことを知らされ、狂喜します。そしてその夜以来、モスクワでは原爆開発の情報は最優先事項となり、グラブは実際に原爆開発に携わっているノーマン博士を訪ね、ソ連にも原爆を持たせることが戦争への抑止力になると説得して、博士が入手できる原爆に関する情報をすべて流してもらうことに成功します。やがて原爆は日本に落とされ、終戦を迎えますが、ラニエフは協力者を集めて、反資本主義の戦いとカナダ人への警戒の継続についての演説を行います。帰宅したグーセンコはフォスター夫人が息子の世話をしているのを見て、夫人が帰った後、妻を詰問しますが、アンナはカナダ人は友人だと言い返し、ラニエフへの反感をあらわにします。数日後、大佐が原爆製造の具体的な情報の入手をスパイたちに命じ、原爆の破壊力を讃えると、クーリンは目的のために殺人を犯すことの愚かしさを主張して、大佐から帰国を命じられます。帰国すれば銃殺は間違えいないことを知っているクーリンは、自室に戻ると、訪ねてきたグーセンコの前で、革命の闘士だった父を回想し、グーセンコは心の葛藤を経て、亡命を決意し、妻に知らせます。翌日帰国命令を受けたグーセンコは、スパイ行為を証明する書類を盗み出して、妻子とともに法務省の大臣を訪ねますが門前払いを食い、新聞社でも気狂い扱いされ、仕方なくアパートに戻ります。グーセンコはフォスター夫人に妻子を預け、やって来たラニエフと大佐と相対しますが、故郷の親族への処刑をちらつかせるラニエフに激昂して乱闘になりかけます。そこへ物音を聞きつけて警察に連絡したアンナが警官とともに駆けつけ、事情を聞いた警官はラニエフが盗まれたという書類を一旦預かることにして、グーセンコらを保護します。結局それがきっかけとなって、スパイ組織の全貌が公の知るところとなり、ラニエフや大佐らには帰国命令がなされ、リーツ下院議員やノーマン博士らは有罪となり、グーセンコ一家はカナダの市民権を与えられ、警察の保護下で無事に毎日を暮らすのでした。
墨のような真っ黒な色が印象的なモノクロ画面で、コントラストの強いその画面はウェルマン監督の代表作『オックス・ボウ・インシデント』をも想起させるものでした。ティアニーの最良の作でもあると思います。必見です。
ソビエトのスパイ10名が有罪となったカナダの実際の事件を現場でロケして事実に忠実に映画化したものだという主旨の字幕。1943年、民間機でモスクワからオタワにソ連大使館の武官トリゴーリン大佐とその補佐のクーリン少佐、そして暗号の専門家グーセンコ(ダナ・アンドリュース)がやって来ます。大使館の副書記長でありまた秘密警察の主任でもあるラニエフは、グーセンコに民間人との接触を避け、嘘の経歴で押し通すように念を押します。ラニエフの秘書が早速誘惑してきますが、グーセンコは私には美しい妻がいると言い、探りを入れるならもっとうまくやれと言い残して彼女のアパートを去ります。グーセンコが最初に受けた暗号は、カナダのスパイ組織の頭であるコードネーム“ポール”ことグラブにラニエフと大佐がすぐ会うように、という内容でした。大佐はグラブに、政府と軍の上層部にも浸透するような大規模なスパイ組織の構築を命じられてきたと言い、スパイ候補者のリストを渡します。グラブはリーツ下院議員をすぐにオルグし、“ソビエト友の会”を使ってクラス大尉も引き入れ、彼を通して多くのカナダ人共産党員を仲間にすることに成功し、あらゆる情報の入手が可能になります。クーリンは人の命を何とも思わない彼らの手口に嫌気がさし、酒に溺れ始め、グーセンコにも注意を促します。やがてグーセンコの妻アンナ(ジーン・ティアニー)が到着し、彼女から妊娠を告げられたグーセンコは喜びます。休日を満喫して過ごす彼らでしたが、妻が隣人のフォスター夫人と親しくしようとするのを見て、グーセンコは妻に厳しく注意し、アンナは表情を曇らせます。出産予定日の1週間前の深夜に大使館に呼び出されたグーセンコは、アメリカとカナダが共同して原爆製造に乗り出しているというニュースをモスクワに送り終わると、同僚からアンナが無事男子を出産したことを知らされ、狂喜します。そしてその夜以来、モスクワでは原爆開発の情報は最優先事項となり、グラブは実際に原爆開発に携わっているノーマン博士を訪ね、ソ連にも原爆を持たせることが戦争への抑止力になると説得して、博士が入手できる原爆に関する情報をすべて流してもらうことに成功します。やがて原爆は日本に落とされ、終戦を迎えますが、ラニエフは協力者を集めて、反資本主義の戦いとカナダ人への警戒の継続についての演説を行います。帰宅したグーセンコはフォスター夫人が息子の世話をしているのを見て、夫人が帰った後、妻を詰問しますが、アンナはカナダ人は友人だと言い返し、ラニエフへの反感をあらわにします。数日後、大佐が原爆製造の具体的な情報の入手をスパイたちに命じ、原爆の破壊力を讃えると、クーリンは目的のために殺人を犯すことの愚かしさを主張して、大佐から帰国を命じられます。帰国すれば銃殺は間違えいないことを知っているクーリンは、自室に戻ると、訪ねてきたグーセンコの前で、革命の闘士だった父を回想し、グーセンコは心の葛藤を経て、亡命を決意し、妻に知らせます。翌日帰国命令を受けたグーセンコは、スパイ行為を証明する書類を盗み出して、妻子とともに法務省の大臣を訪ねますが門前払いを食い、新聞社でも気狂い扱いされ、仕方なくアパートに戻ります。グーセンコはフォスター夫人に妻子を預け、やって来たラニエフと大佐と相対しますが、故郷の親族への処刑をちらつかせるラニエフに激昂して乱闘になりかけます。そこへ物音を聞きつけて警察に連絡したアンナが警官とともに駆けつけ、事情を聞いた警官はラニエフが盗まれたという書類を一旦預かることにして、グーセンコらを保護します。結局それがきっかけとなって、スパイ組織の全貌が公の知るところとなり、ラニエフや大佐らには帰国命令がなされ、リーツ下院議員やノーマン博士らは有罪となり、グーセンコ一家はカナダの市民権を与えられ、警察の保護下で無事に毎日を暮らすのでした。
墨のような真っ黒な色が印象的なモノクロ画面で、コントラストの強いその画面はウェルマン監督の代表作『オックス・ボウ・インシデント』をも想起させるものでした。ティアニーの最良の作でもあると思います。必見です。